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機動戦士ガンダム

[創作物語]

機動戦士ガンダム

 開戦の動機

作品の背景を見た限りでは、登場人物たちが、何故、やたらと戦争をしたがるのか不思議でならない。戦争を嫌がるような発言をしながら、好んで戦争をしているように見える。戦争を避けて通れない事情が全く書かれていない。この辺りのリアリティの欠如が感情移入の大きな妨げになっている。トレンディドラマのようにスマートに生きる現代人っぽく描こうとし過ぎたためであろう。生と死の狭間に生きるということは綺麗事では済まないことである。視聴者層を意識して、そういったドロドロした部分の描写を避けたのであろうが、それがリアリティを大きく損なうことになってしまった。商業的な都合から、大衆ウケと作品の質とを天秤に掛けなければならない事情は理解するが、大変残念だという感想は述べておきたい。

今さら説明するまでもなく、初代ガンダムの物語において、ジオン公国の状況は、米独立戦争(入植者側)と第2次大戦(ドイツ側)をモチーフにしている。モチーフとなった両方の戦争とも、国民(米独立戦争においては入植者)の中に明確な戦争の動機が存在した。しかし、ガンダムには、それが見受けられない。

米独立戦争では、入植者達は生活苦に不満を抱えていた。彼らの大半は本国で職に溢れた人たちで、入植後のばら色の人生を期待していた。しかし、現実はそんなに甘くなかったのである。実情を知らない本国側は、入植者達に一方的に重税を課すなどしたため、彼らの不満が爆発し、それが戦争の動機になった。

第2次大戦では、ドイツ国民は貧困にあえいでいた。第1次大戦に敗戦し多額の賠償を支払わなければならなかったドイツは、その後の経済の復興に苦慮することになる。とどまるところを知らないインフレをデノミ政策で何とかしのいだものの、依然、失業率は極めて高く、景気回復の目処は全くたたなかった。そんな中、大規模公共工事などで失業率を飛躍的に回復し、圧倒的支持を取りつけたナチスが台頭してくるのである。しかし、公共工事で雇用を支えている状態では、安定した税収を得ることはできず、公共工事の財源は赤字国債によってまかなわれていた。公共工事をやめれば、すぐまた失業率が悪化してしまう。つまり、本当に景気が回復するのは、まだまだ時間がかかる。それまでの間は、公共工事で雇用を支え続けなければならない。しかし、長年に渡って多額の赤字国債を発行し続ければ、いずれ国家財政は破綻する。破綻が先か景気回復が先か、論じるまでもないくらいドイツ経済の状態は酷かった。そして、破綻か強奪か、究極の選択が行われたのである。

独立戦争においては本国の無理な要求を撤回させたい、第2次大戦においては失業を何とかしたいという動機が国民の中にある。ガンダムではどうか。確かに、ザビ家には野望という名の明確な動機がある。しかし、ザビ家を支持するジオン公国国民には、動機が全く見られない。このような状態では、指導者がどのような野望を持とうとも、それを実現することは不可能である。なぜなら、国民がついてこないから。戦争は、死というリスクを国民に負わせる。野望を正当化し必要性を唱えても、そのリスクと引き換えにしてでも手に入れたい物がなければ、戦争を起こす必要性はない。自分自身にとって必要性もなく高リスクな話を、誰が真面目に取りあうであろうか。もし、強引に戦争に持ち込もうとすれば、叛乱を誘発することになりかねない。

見たところ、宇宙入植者たちの生活レベルは高い。地球の状況も、職にあぶれて宇宙に出ざるを得ない状況にはみえない。銀河鉄道999のようにスラム化していれば、(続きは後日)

最終更新時間:2005年08月15日 21時56分19秒

創作物語