二重解の理論

はじめに 

ここでは量子力学隠れた変数理論の一種である二重解の理論とその派生形について紹介する。

先導方程式 

ド・ブロイは、論文および第5回ソルベー会議で、波と粒子の二重の解を持つ理論を提唱した。

Bornが彼の確率的解釈を提案したのと大体同じ頃に,Louis de Broglieは,後に彼が“2重解の理論”と呼んだアイディアを発展させた. 1926年の夏に書かれたこの主題に関する最初の論文は,Einsteinの光の量子(後に光子と呼ばれたもの)を波動の特異点と見なすことによって,光の量子を干渉や回折という光学的現象と融合させようと試みたものであった.


1927年春,de Broglieはこうしたアイディアをさらに成熟させ,“2重解の理論”と彼が称した形で提出した. この理論によれば,波動方程式は,統計的な意味合いをもつ連続的なφ関数と,その特異点が問題にしている物理的粒子を構成する特異点を示す解という二つの異なった種類の解を許すものとされる.


要するに,波動-粒子という二重性は,de Broglieによれば波動-粒子という一つの綜合へと還元されることになった: つまり,物理的実在を構成するのは,波動あるいは粒子ではなくて波動ならびに粒子なのである!


de Broglieが強調したように明らかにこの公式は粒子の初めの位置が分かっておればその粒子の運動を完全に決定する; もしもそうでなければ,空間のあらゆる与えられた位置にその粒子が存在する確率をφの助けをかりて計算することができる. つまり波動関数φは二重の役割を果たす; それは確率波であるが,またそれは先導波[onde pilote]でもある,なぜならば,嚮導公式を通じてそれはその粒子の空間軌道を決定するから,とde Broglieは指摘した. de Broglieは彼のもとの“二重解の理論”のこうした縮約版を“先導波理論”と呼んだが,この理論は今述べたようにミクロ物理的な現象の決定論的あるいは因果論的な理論である. de Broglieが定常状態の一つに水素原子の場合について説明したように,この理論は実際の原子的系においてさえも粒子に対しては位置および速度の正確な値を付与する.

「量子力学の哲学 上」(ISBN-10:4314004029,ISBN-13:978-4314004022,著:マックスヤンマー,訳:井上健)P.56,57,60,132


これから紹介するのは,ド・ブロイが1924年から1927年にかけて考案した,量子力学に対するひとつの解釈である. この解釈は1952年になってボームによって再発見され,さらに練り上げられたことから,「ド・ブロイ=ボーム解釈」とよばれることもあるが,2人の見解にはある重要な差異があるため,本書では両者に共通した見解の本質という意味をこめて,「軌跡解釈」というあまり使われない呼称を用いることとにする.


したがって,この解釈ではいわゆる量子力学の粒子-波動の二重性について,「粒子」と「波動」の両方が存在する,という立場をとることになる. たとえば,シュレーディンガーであれば電子は波であるというところを,軌跡解釈では波(関係場)をともなった粒子であるという.


この方程式(4.3)(あるいは同じことだが(4.2))は,φ場がどのように各粒子の運動を定めているかを表すという意味で,先導方程式(guiding equation)と呼ばれる. 先導方程式は各粒子の速度についての微分方程式であり,その解Qk(t)は,各粒子の3次元空間における連続的な軌跡となる. こうして基本原則(2)によって,この解釈では各粒子が3次元空間内を連続的な軌跡を描いて運動するという描像が得られる.

「量子という謎」(ISBN-10:4326700750,ISBN-13:978-4326700752,著:白井仁人・東克明・森田邦久・渡部鉄兵)P.109-112


量子ポテンシャルとよく似た考えは,ド・ブロイも提案しており,彼は量子ポテンシャルに相当するものを「パイロット波」と呼んだ。

教育ノート1.波動関数のわかりやすい説明 - 日本女子大学紀要 理学部 第24号(2016)P.13


特に有名なのは、Bohm の量子ポテンシャル理論より以前に、Louis de Broglieが提唱した“2重解の理論”もしくは“パイロット波理論”である。

量子ポテンシャル理論と確率力学 - 核データニュース,No.76(2003)P.47

しかし、Pauliからの指摘に明確に反論できず、一度、自らの理論を撤回する。

de Broglieのこの先導波の理論はこの会合の参加者達の間で好意的な受け取られ方はほとんど見られなかった. 事実,それに対しては議論らしきものもほとんどなかった. 唯一の真剣な反応は,Pauliからのものであった. 彼は,de Broglieの考え方は,実験の統計的結果を問題にする限りではBornの弾性散乱の理論とは多分両立可能であろうが,非弾性散乱を考えるや否や支持し難くなることを注意した. ここでの文脈におけるその歴史的重要性に鑑みーというのは,1950年代の初期に到るまでde Broglieの因果的理論は決定的に反証されてしまっているものと思われたのは,何よりもまず類似の意見についてのPauliの批判の故であったからである-


その結果,1928年の初めHamburg大学での講義に招かれた際,de Broglieは初めて相補性解釈を公的に受け入れた. さらにその年の秋にParisの理学部での地位を引き受けた際には,その妥当性を疑っている理論を講義科目の中で教えることは正しくないと彼は思った. つまり、彼はSolvay会議の参加者の圧倒的多数によって受け入れられた正統的解釈の信奉者達の隊伍に加わったのであった.

「量子力学の哲学 上」(ISBN-10:4314004029,ISBN-13:978-4314004022,著:マックスヤンマー,訳:井上健)P.56,57,60,132


しかし、第5回ソルベイ会議中にPauliに批判され放棄してしまった。 特に有名なのは、Bohm の量子ポテンシャル理論より以前に、Louis de Broglieが提唱した“2 重解の理論”もしくは“パイロット波理論”である。

量子ポテンシャル理論と確率力学 - 核データニュース,No.76(2003)P.47

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