トップ 差分 一覧 ソース 検索 ヘルプ PDF RSS ログイン

次世代スパコン「京」世界ランキング1位

[政治][社会問題]

ニュース

2011年6月の世界ランキングで「京」が1位になったことについて、何も知らずに世界1位という事実だけを見て快挙だとか騒いでいる馬鹿も多い。もちろん、オンリーワンを目指せとか言ってるレンホーが一番馬鹿なことは言うまでまでもないが、「京」が世界1位になったことは快挙でも何でもない。スパコン1台に対して世界でも例を見ないほどの巨額の直接投資を行なったのだから世界1位をとれて当然なのであって、これで世界1位をとれなかったら日本は完全に終わっている。

というと、何も知らない馬鹿は「スパコンへの巨額投資は他国もやってるじゃないか」と言うだろう。確かに、米国も間接的投資額は日本より巨額の資金をつぎ込んでいる。しかし、米国の投資は、基礎技術に限定した間接的投資であって、日本のような直接投資はやっていない。政府が直接音頭をとって、かつ、巨額の国費をつぎ込んで国策スパコンを開発するなんて、一体、どこの発展途上国のやり方か?確かに、そのやり方は発展途上国では有効なやり方だろう。国内企業がスパコンを自力で開発できる技術も体力も持たないなら、国が直接援助してスパコン作りを体験する機会を与えることで、最低限の技術を身に付けさせることができる。しかし、日本はその段階をとっくの昔の通り越しているはずであって、日本企業にとって国策パソコンでしか得られない技術はない。

まとめると、次のとおりである。

  • 同クラスのスパコンの世界相場の5〜10倍の価格のスパコンで世界1位をとった
  • 国策スパコンの速度計測が、ちょうど、米国の新型スパコンが続々と生まれる直前の谷間の時期に間に合った
  • 先進国が発展登場国の真似をする愚かな政策でITゼネコンへの利益供与を行なった
  • 日本企業にとって得た物は巨額の国費だけであって、技術的には何も得ていない

これは決して良いニュースではなく世界に向けて日本が大恥を晒しただけである。以上は、次世代スパコン開発費は復活すべきか?にも書いたとおりである。

湯水の様に金をかけた力技のハード

2011〜2012年稼働予定の米国発注スパコンが1〜2億ドル(1ドル100円で換算して100〜200億円)で落札している。GPGPUの導入で、100億円もかけずに世界一が狙える時代。「京」が1位になった半年前のランキングでは、100億円以下の中国のスパコンが1位をとった。同時期に1位が見込めそうだったTSUBAME2.0は僅か32億円。

そのような時代に1千億円以上もかけた「京」は、ハードに湯水の様に金をかけただけの力技での世界一でしかない。そして、同等以上の米国スパコンが稼働する直前の隙に割り込んで、タイミング良く1位になっただけである。

2010年11月の「京」システムの3264コアのシステムでの測定やBlue Gene/Qプロトタイプの測定のようにごく小規模のシステムでの試験的な測定結果がTop500に登録されることはあるが、全体の8割というようなシステムでの測定結果が登録されたことは例が無いと思われる。LINPACKのチューニングを行い、性能を測定するには少なくとも2〜3週間程度はシステムを占有する必要があるので、通常はフルシステムが完成してからの測定になる。

80%の計算ノードで測定値を出したのは、10〜20PFlopsを目指す米国のBlue Waters、Sequoia、Titanなどのシステムが結果を出してくる前となる2011年6月のTop500に間に合わせて1位を取るためのウルトラCではないかと思われる。

もしも、「例が無い」「全体の8割というようなシステムでの測定結果」という「1位を取るためのウルトラC」がなければ1位にはなれなかっただろう。大金で、かつ、不意打ちで米国を出し抜いて1位になっただけでは到底、日本の技術を誇示できない。誰もが「それだけ大金つぎこめば1位とれて当然だろ」と思うであろうが、「日本の技術は凄い」とは誰も思わない。世界では「ハード技術では中国にすら負けてるんじゃないの?」と嘲笑われているのかもしれない。

唯一の評価点

唯一評価できる点は、93%という実行効率の高さだけである。しかし、それは、1千億円以上もかけなければ実現できないような技術ではないはずである。コストも含めて見れば、決して、評価には値しない。

経済効果のない「1位」

地球シミュレータを構成するSXシリーズは、地球シミュレータ以外の目的でも販売された汎用製品である。SXシリーズはベクトル型スパコンであり、当時台頭し始めたスカラ型よりも圧倒的な実行効率の高さが売りであった。そして、地球シミュレータは5期連続でトップを維持し続けるほど、当時の他社製品を圧倒していた。さらに言えば、ベクトル型の強みとして、スカラ型で効率が大きく落ちるような用途でも高い効率を維持できるため、数値に出て来ない性能もアピールできた。表のスペックで圧勝しつつ、裏のスペックでは表スペック以上に大きく差をつけたSXシリーズは、性能では他社を全く寄せ付けなかったのである。当時、ライバル他社のベクトル計算機は性能で伸び悩み、全く、SXシリーズに太刀打ちできなかった。つまり、SXシリーズは他社には真似の出来ない性能、お金で解決できない性能を実現していたのだ。地球シミュレータが1位をとることは、実性能の高いスパコンはSXシリーズしか選択肢がない事実を世界に知らしめた。地球シミュレータの世界1位は、SXシリーズにとって大いに宣伝に貢献したことだろう。

一方、「京」は、スカラ型スパコンであり、他社製品と比べて取り立てて長所があるわけではない。コストパフォーマンスでは2位以下のスパコンよりも劣る。単に大金で実現しただけの1位で、同じだけの金額をつぎ込めば、他社製品でも同等以上の性能が実現可能である。そして、次期かその次あたりに1位の座を明け渡す公算が高い。鳴り物入りで開発した心臓部のSPARC64 VIIIfxも、他社製品に比べて取り立てて性能が良いわけではない。スパコンのソフトは使用者が組む物である故に、実行効率の高さも直接的には製品の評価に繋がらない。SPARC64 VIIIfxには実行効率を高める技術が導入されているが、他社製品と圧倒的な差を付けるほどの技術ではない。以上のとおり、「京」は全くと言って良いほど見るべき所がないスパコンである。よって、世界1位になっても、全く製品としての宣伝にならない。

結局、「京」の1位は「日本は金の力で1位を手に入れました。秋葉原製品を組み合わせて安いスパコンを作った中国にも劣ります。」と世界の笑い話になるだけである。

株主からは「スパコン世界1位は日本を明るくする慶事だ」、「富士通の技術が立証された」と称賛の声が挙がる一方で、「スパコンを世界に売っていくための努力が必要」や「世界1位になっても株価への影響がなかった」との注文も出された。

「世界1位になっても株価への影響がなかった」のは、大多数の投資家が富士通の利益にはつながらないと考えているからである。政府に1台売って終わりだから、世界1位をとっても何の役にも立たない。だから、株主から「スパコンを世界に売っていくための努力が必要」と注文が出されるのである。

最悪の未来

GPUだけがスーパーコンピューターの将来と思っているというわけではなくて、中国では自前のCPUもやってます。日本との大きな違いは、日本では「次世代スパコン」が唯一の国家プロジェクトとして走っていて、他のハードウェア構築や研究を立ち上げることすらできないというふうになっているのに対して、自前のCPUもやるしGPUでの大規模クラスタも数箇所に構築、アプリケーション開発はそこらじゅうでやる、という感じで広くやっていることです。

大規模なハードウェアがどんどん構築されているので、使っている予算は大きいか、というと、それぞれが実は日本の7大学センターの予算に比べて差はないと思います。この辺は、東工大の松岡さんがいっている通りで、そんなお金を払って、、、という話ですね。

ヨーロッパも結構色々やっている、という話を、ずーっと昔にTMCにいたLennartJohnsonがしていて、これも興味深いものでした。GPUのほか、Clearspeedの大規模クラスタ、QPACE、また低消費電力版のOpteronクラスタと、様々なものが試みられています。

まあ、要するに、日本以外はどこも、一つだけの国家プロジェクトにお金を全部いれて、他の芽をつぶすようなことはしていない、というだけのことのような気もします。思想が15年遅れのプロジェクトを続けることが悪いわけでは必ずしもないのですが、もうちょっと新しいことも並行してやらないと 確実に将来はなくなるわけですから。

「京」の世界1位が「快挙」として扱われば「一つだけの国家プロジェクトにお金を全部いれて、他の芽をつぶすようなこと」が正しいやり方だったと社会的に評価されることにつながる。しかし、将来の技術の方向性は不透明であり、「一つだけの国家プロジェクトにお金を全部いれて、他の芽をつぶすようなこと」が今後も通用する保証はない。確かに、今回は、世界相場の5〜10倍の資金投資と不意打ちが通用した。しかし、今後もそれが通用する保証はない。このままでは日本は世界から取り残されかねない。

最終更新時間:2011年07月04日 01時21分48秒

政治

社会問題