トップ 差分 一覧 ソース 検索 ヘルプ PDF RSS ログイン

地域振興券と二千円札

[政治]

地域振興券と二千円札には経済効果を期待する声があるが、果たして本当に期待できるものであろうか。結論から言えば、そんなものは期待できない。その理由を以下に述べる。

地域振興券

例えば、100万円の借金をして、借りた分をそのまま豪遊に使い、100万円儲かったと思う人がいるだろうか。正常な思考能力を持った人ならば、そうは思うまい。ところが、これが国の政策となると、まるっきり正反対の結果となるようである。

地域振興券の経済効果に関する調査の中で、商店主に行ったアンケート結果によれば、あったと実感している人が意外に多い。しかし、発行時に想定されていた耐久消費財にはほとんど使われなかったという事実は、この実感に反する結果を裏づけている。地域振興券の発行以後も失業率の改善の兆しは全く見られず、とても経済効果があったとは考えにくい。この現実と実感の違いは何故か。種を明かせば、国債という名の借金をしてばらまいたお金で、裕福になった気がしているだけなのである。

ばらまいた金が直接的に懐を潤すことは経済効果でも何でもないのは、借金の例え話と同じである。借りた金を元手にして増やしてこその儲けであり、国債を元手にそれ以上の効果をあげてこその経済効果である。

借りた金は必ず返さなければならない。貰いっぱなしというわけにはいかない。しかし、個人の借金の返済義務を厳しく受け止めている人も、国債となると軽く考えがちである。他人事のように誰かが払ってくれるような気がしているのである。しかし、現実はそんなに甘くはない。国債は、税負担という形で国民一人一人に強制的に返済を求められるものである。日本政府の累積債務は、既に、国民一人あたり何百万円にもなっていることを知れば、他人事では居られまい。

地域振興券に経済効果がないことは周知の事実であった。与党はもちろん、提案主の某野党でさえ本当に経済効果があるとは思っていなかったのである。そんな馬鹿なと、仮にも経済大国である日本の国会がそんな愚かなことをするはずがないと思うなかれ。現実に、その愚かなことが行われたのである。地域振興券は、権力闘争に利用された。参議院の安定議席数を確保したい与党と政策実現力を謳う既成事実が欲しい某野党の利害が一致し、成立したのである。その結果、国民の全体の利益を低下させようともおかまいなしである。しかも、券を貰えた人が儲かったと思うのはもちろんのこと、貰えなかった人が損失を実感しにくいという点は、国民を騙すには誠に都合が良い。

二千円札

もし、現行の通貨体系に不備があるのであれば、新通貨の発行は景気対策として十分な効果があるといえよう。では、二千円札の発行はどうか。現状において、二千円札がないことで特段の不都合があるだろうか?個人的には、特に不都合は感じないし、五千円札と千円札の間を埋める通貨の必要性は全く感じない。そもそも、二千円札がなくて不便であるというなら、二円玉や二十円玉や二百円玉がないのも不便であるということになる。これらを発行する予定がないということは、二千円札の発行の必要性がないことを認めているということである。すべての貨幣が直近下位の貨幣で両替が可能となっている現状において、その状況を崩す二千円札の発行は、かえって不便さを増すのではないかという危惧もある。(つまり、五千円札1枚を二千円札だけでは両替できない。)むしろ、現状においては、五万円札や十万円札のほうが必要性が高いであろう。もっとも、これらの超高額紙幣については、釣銭強盗の問題もあって、慎重に検討する必要があるだろうが。とにかく、発行にかかる手数料などを考えれば、以後に述べる自販機特需と同様、景気回復の足かせにしかならない。

自販機特需などといっても、国民には、これと行った利益を産み出さない。先にも述べたとおり、二千円札の発行が通貨体系を劇的に便利にするものではないのだから、自販機が二千円札に対応したところで同様である。国民のニーズに見合った生産が行われなければ景気が良くならないことは、経済の本質で述べたとおりである。むしろ、自販機の改修に貴重な労働力が浪費されることは、経済にとって足かせにしかならない。

もう少し具体的に述べよう。自販機の改修費用を負担する企業等は、その分の費用をどこから捻出するのだろうか。わざわざ借金をしてまで費用負担したところで、売り上げの倍増が見込めるわけでもない。この不況期に金をばらまき放題の能天気な経営者では会社も危ない。普通に考えれば、改修費用の分だけ他の消費を押さえるというのが妥当だろう。つまり、ニーズが減るぶんだけ、経済の本質で述べたところの、ニーズに見合った生産量が減るのである。ようするに、自販機特需で需要が増えるというのは幻想で、現実には、需要は現状維持であり実質的に見れば減るのである。

結局のところ、自販機を製造するメーカーに利益を誘導するだけである。誰かに損をさせて、その分、誰かに得をさせる。まさに、右のものを左に動かしただけに過ぎず、景気回復には何の効果も期待できない。

最終更新時間:2005年08月30日 19時16分16秒

政治