新自由主義

最初に 

一般に新自由主義は次の3通りの意味で使われることが多い。

  • 社会自由主義(New Liberalism)
  • 公的な市場介入を最小限にする主義(Neoliberalism)
  • 共産主義者が使うレッテル

とくに、批判的な意味で使われる場合は3つ目の意味で使われていることが多い。

社会自由主義(New Liberalism) 

ジョン・メイナード・ケインズらが唱えた、市場原理に全て任せるのではなく、市場への公的介入が一定程度必要とする自由主義を言う。 これはアダム・スミスらが唱えた古典的な自由主義と対比してNew Liberalismと呼ばれる。

公的な市場介入を最小限にする主義(Neoliberalism) 

ミルトン・フリードマンらが唱えた、市場への公的介入は最小限にすべきとする自由主義を言う。 これは社会自由主義と対比してNeoliberalismと呼ばれる。

共産主義者が使うレッテル 

共産主義者は、共産主義に与しない自由主義思想全般に対して「新自由主義」というレッテルを貼る。 とくに、批判的な意味で使われる場合は、共産主義者による主張であることが多い。

共産主義を支持しない者に対して、正面から共産主義を賞賛し、反自由主義的な思想を展開しても逆効果になる。 だから、非共産主義者に反自由主義的な思想を植え付けるには、自由主義的な思想の一つ一つに対して、それらが行き過ぎた市場原理至上主義であるという印象を与える必要がある。 そのレッテル貼りのために使われる用語が「新自由主義」である。 しかし、そのレッテルを貼られた中身を見ると、取り立てて騒ぐことのない普通の自由主義思想であることが多い。 とくに、次のような国家間の自由な取引を実現するに過ぎないものを目の敵のように攻撃する。

彼らは、格差が貧困を産むとして格差を敵視し、相対的貧困率を事更に問題視し、搾取は貧困を産むとまで言う。 実際には、国が豊かになれば自然と格差は拡大するし、「相対的貧困率」なるものは貧困率を全く表していないし、搾取率が高いほど豊かになれるのであるが、彼らは現実を全く見ない。 挙げ句の果てにはエレファントカーブなるものを偽装して、世界規模での自由主義の拡大が先進国の中間層を犠牲にしているなどという虚構を平気で作り上げる。

一方で、彼らは、本物の行き過ぎた市場原理至上主義に対しては批判の矛先を向けず、普通の自由主義の批判に悪用することが多い。 例えば、途上国では、Azurix事件、Vivendi事件、Aguas del Tunari事件(コチャバンバ水紛争)等、途上国での水事業の民営化の失敗事例が多数ある(ISD仲裁事例参照)。 これらの根本原因は、国連がミレニアム開発目標(貧困と飢餓の撲滅等)として、「安全な飲料水と基本的な衛生施設に持続的にアクセスできない人の割合を1990年から2015年までに半減させるという目標」を実現するにあたって、行き過ぎた市場原理至上主義者が途上国の実態を考慮せずに民営化すれば上手く行くという安易な計画を立てたことによる。 途上国の水事業が抱える問題は、途上国にとって水道の整備コストが高すぎることと、国民の大半が貧困でコストに応じた料金を負担できないことにより、継続的に公費を投入する赤字事業を行わざるを得ないことにある。 しかし、行き過ぎた市場原理至上主義者はそうした実態を考慮せず、官営事業であることが自転車操業の原因と決めつけ、水道事業を民営化する国には低金利を融資を約束して、強引に民営化を推し進めようとした。 安易にその融資に飛びついた途上国が実際に民営化を行うと、現実的な問題が表面化して事業化権を取得した民間企業を事実上の破綻に追い込んでしまった。 ところが、共産主義者たちは、この問題に対して、強引に民営化を推し進めようとした行き過ぎた市場原理至上主義を一切批判しない。 それどころか、共産主義者たちは、違反によって生じた損害を賠償する仕組みに過ぎないISD条項を悪の根源に仕立て上げて、善意の第三者である民間企業が受けた損害の賠償を求めたに過ぎない事実を改変し、貧しい途上国から金銭を騙し取る陰謀論を捏造している。 しかし、常識で考えれば、水を手に入れるのに乾いたスポンジを絞るのは馬鹿げている。 それと同じで、本気で金銭を搾取するのに途上国の国民から搾取するのは馬鹿げている。

このように、現実に行き過ぎた市場原理至上主義が存在するのは事実である。 しかし、共産主義者たちが「新自由主義」というレッテルを貼る対象は、こうした行き過ぎた市場原理至上主義ではなく、普通の自由主義に過ぎない。 だから、「新自由主義」というレッテルに惑わさず、真実をしっかり検証することが重要である。


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