「新型コロナ感染増減の主原因は気象」の嘘

はじめに 

以下も参考に。

トリック事例 

また、ミクロに見ると、この指標の変動のボトム(最低点)は実効再生産数の変動のピーク(最高点)とよく一致しています(図-2)。 つまり、日最低気温の前週差が低くなるタイミングで実効再生産数が高くなっているのです。

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この後のデータにも言えることだが、タイミング、変動方向、変動幅が必ずしも一致しているとは言えず、相関係数を示さないことには相関性を論じることはできない。

この式によって得られた回帰値と観測値の関係を示したものが図-7です。 本図には回帰誤差(回帰値と観測値との差)も同時にプロットしています。

東京都の実効再生産数のVAR回帰 図-7 東京都の実効再生産数のVAR回帰(第2波&第3波)

本図を見ると、回帰値は観測値と概ね一致し、その誤差も全期間を通してほぼ一様に小さいことがわかります。 このことは、東京都のコロナの実効再生産数の変動メカニズムは、第2波以降の期間を通して【不変 invariant】であり、実効再生産数と日最低気圧の前週差と日最低湿度の過去の変動で説明できるということになります。 いつでも同じメカニズムで感染が生じているのです。

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一見それっぽく見えるが、実は、これは解析結果から導けない結論である。 学術論文なら査読段階でリジェクトされよう。

「ここまで綺麗に一致しているなら分析は正しいのではないか」と思う人は騙されやすいので注意が必要である。 むしろ、一致しすぎていることが極めて不自然で胡散臭いこと極まりない。 というのも、実効再生産数は様々な要因によって影響を受けているはずであり、限られた変数だけで正確に予測できるはずがないからだ。 とくに、概算実効再生産数と真の実効再生産数の差が誤差に表れないのはおかしい。 様々な変数が影響を与えるのは真の実効再生産数であり、かつ、概算実効再生産数と真の実効再生産数の差はほぼランダムと考えられるので、概算実効再生産数を正確に計算することは困難である。 よって、仮に、真の実効再生産数が正確に予測できるとすれば、概算実効再生産数と差が誤差として現れるはずである。 現れるはずの誤差が現れていないということは、真の実効再生産数を正確に予測しているのではなく、概算実効再生産数に合うように辻褄合わせがされている可能性が高い。

このトリックは「多変量自己回帰モデル」なる「自己回帰」モデルにある。 このようなモデルでは次の条件を満たすと計算誤差は非常に小さくなる。

  • 求める値が過去の自分自身の値と非常に良く相関する
  • それ以外の変数は殆ど求める値に影響しない

ようするに、自己相関性が高い関数において、自己以外の他の変数の影響が非常に小さい場合には、自分自身を元に自分自身を忠実に再現できるのである。 つまり、この「多変量自己回帰モデル」が実測値と綺麗に一致している原因は、単なる自己相関の結果である可能性が高い。 しかし、ここでは、計算結果を支配している項目が、自分自身の過去のデータなのか、それ以外のデータなのかが全く検証されていない。 そして、「表-1 VARモデルの回帰定数」を見れば、計算結果を支配している項目が、自分自身の過去のデータであることがわかる。

t CR(t) CT(t) CM(t)
11.35160.00000.0000
2-0.44650.00000.0000
30.23340.00000.0000
4-0.25410.00000.0000
50.25920.00000.0000
6-0.11820.00000.0000
7-0.48460.00000.0000
80.4857-0.0035-0.0040
9-0.07390.00140.0069
100.0000-0.0031-0.0072
110.0000-0.00170.0042
120.00000.02400.0045
130.0000-0.0377-0.0037
140.00000.01810.0045
150.0000-0.0044-0.0063
160.00000.00140.0015
合計0.9526-0.00550.0004

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各実値の前後1日との相関が高めなら、式の各行の1項めと2項めが相殺し、2項めと3項めが相殺し、…という関係が成り立つ。 結果、各係数の合計値がほぼ結果への寄与度を決めることになる。 「日最低気圧の前週差」の変動はグラフからの目分量で20程度であり、Rtの変動幅として最大0.11程度(±0.055)にしかならない。 「日最低湿度」については値の記載がないのが、仮に変動幅が100としても、Rtの変動幅として最大0.04程度(±0.02)にしかならない。 そして、過去の実効再生産数値の寄与度はほぼ0.9526であるので、計算結果は過去の実効再生産数値ほほぼそのまま採用しているに等しい。 CRの最大値は前日相当であるから、計算結果はほぼ前日の実効再生産数値そのままである。 ほぼ前日の実効再生産数値そのままなのだから、概算実効再生産数と真の実効再生産数の差が誤差に表れないのも当然であろう。

ようするに、実効再生産数の主たる変動要因は全く解析できていないのである。 この結果は、「最低気圧の前週差と日最低湿度の過去の変動」が実効再生産数を決める主要因であることを示していない。 精度向上に寄与しているかどうかの検証も為されていないため、「最低気圧の前週差と日最低湿度の過去の変動」が実効再生産数に多少の変動を与えている可能性にも言及できない。 確実に言えることは、当日の実効再生産数が過去の(主として前日の)実効再生産数で近似できることだけである。

これらの図を見ると、陽性者数が少なく僅かな感染者数の増加で実効再生産数が乱高下した第2波の上昇局面(7月中旬~7月末)を除けば、誤差は非常に小さく、ほぼ一様です。

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Rtの変動が大きな所で誤差が大きくなるのは、Rtの過去の値との相関が悪くなるからである。 過去のRt値ほほぼそのまま採用しているのだから、この結果は当然であろう。

さて、この時空間的定常はGoToトラベル前後でも不変です。 もし、GoToトラベルが感染に有意な影響を与えていたとしたら、現象メカニズムが変わってしまうので、回帰値は開始前後で大きく乱れて誤差が増加するはずです。 ところが、GoToトラベル開始(7月22日)の2週間後にも、GoToトラベル東京追加(11月1日)の2週間後にも、GoToトラベル札幌&大阪停止(11月24日)の2週間後にも、GoToトラベル東京&愛知停止(12月14日)の2週間後にも、GoToトラベル全国停止(12月28日)の2週間後にも、緊急事態宣言(1月8日)の2週間後にも顕著な回帰誤差の変化は認められません。 つまり、日本全国どこでもコロナの感染において、気象の有意な影響は認められますが、GoToトラベルや緊急事態宣言の有意な影響は認められません。 感染の増減の主たる要因は、国民の気の緩みのせいでも政府の失政のせいでもなく、気象のせいである可能性が高いのです。

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「最低気圧の前週差と日最低湿度の過去の変動」以外の要因は過去の実効再生産数のデータの中に組み込まれている。 だから、それ以外の要因については、対象となる要因と過去の実効再生産数の相関を調べなければ知りようがない。 例えば、「GoToトラベルが感染に有意な影響を与えていた」場合は、それが過去の実効再生産数に既に影響を与えており、それと相関した現在の実効再生産数にも影響が及ぶ。 そして、その影響は、GoToトラベルと実効再生産数の相関を直接調べなければ、知りようがない。 よって、「GoToトラベルが感染に有意な影響を与えていた」としても「回帰値は開始前後で大きく乱れて誤差が増加する」ことはない。 「GoToトラベルや緊急事態宣言の有意な影響は認められません」とは言えないのである。

先に説明したとおり、「気象の有意な影響は認められ」ないため、「感染の増減の主たる要因」が「気象のせいである可能性が高い」とは到底言えない。 むしろ、気象要因の寄与度が極めて低いため、「気象のせいである可能性」は極めて低い。 間違った「8割おじさん」批判に記載しているとおりCOVID-19 Community Mobility Reportsと実効再生産数の相関を取れば明らかである。

中長期的相関(日本)

COVID-19:コミュニティ モビリティ レポート - Google オープンデータ - 厚生労働省

第1波(3〜5月) 夏季(7〜9月) 年末年始(12〜1月) 全体
職場0.7740.6800.2910.613
乗換駅0.8570.5030.8410.573
住宅-0.807-0.411-0.474-0.539
小売、娯楽0.876-0.3750.9670.519
公園0.509-0.7410.8050.219
食料品店、薬局0.687-0.4940.9900.533
平均気温(東京)-0.359-0.6130.5940.029
平均湿度(東京)-0.3360.7290.1600.127

2020年3月15日〜2021年1月31日までの中長期的傾向の重回帰分析を行い、重回帰モデルを計算すると次のとおり。

概算実効再生産数(重回帰モデル比較)

COVID-19:コミュニティ モビリティ レポート - Google オープンデータ - 厚生労働省 過去の気象データ検索 - 気象庁

第1波(3〜5月) 夏季(7〜9月) 年末年始(12〜1月) 全体
重回帰(人流+気象)0.9680.7890.8930.893
重回帰(人流のみ)0.9170.8400.9220.846
重回帰(気象のみ)-0.2470.7520.0240.199

以上から、「感染の増減の主たる要因」は「国民の気の緩み」や「政府の失政」も含めた接触削減率の変動である可能性が高い。

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