ベルの不等式
局所性
非局所的な理論では、力は、時間経過なしに遠隔地に伝搬する。 一方で、局所的な理論では、ある地点の現象は、まず、その地点の周囲に影響を与え、さらに、その周囲に影響を与え、ということを繰り返して、最終的に遠隔地に影響を及ぼす。 結果、局所的な理論では、力は、光速を超えない有限の速度で遠隔地に伝搬する。
ニュートン力学における万有引力は非局所的な遠隔相互作用として扱われていた。 一方、マクスウェルの方程式は電磁気の局所的理論であり、一般相対性理論は重力の局所的理論である。 それ以降、物理学で扱うあらゆる力は局所的な力であると解釈されている。
以上のような経緯から、今日では、物理法則の局所性を否定することは、確立した理論をひっくり返す大ごととなる。 一方で、ブラックボックスの外からのaccessibleとならない非局所性は相対性理論に反しないとする指摘もある。 例えば、井元信之氏は、以前は、「相対論を満たさない」という理由で量子ポテンシャル理論を認めていなかった。
しかし、ボームの解釈は、あまりに信じることができないというのが正直なところです。 相対論を満たさないという点が受け入れられない。
「SF小説がリアルになる 量子の新時代」(ISBN-10:4022732873,ISBN−13:978-4022732873,著:佐藤文隆/井元信之/尾関章)kindle版p.173-174
尚、その後、井元信之氏は次のように態度を改めている。
その後、私は「Bohmの理論」すなわち「非局所隠れた変数の理論」を「問答無用」とまで拒絶することはなくなった。
その理由について次のように説明されている。
この意味で、ブラックボックスの中では実在としての変数RやSが非局所的に動き回るモデルである。
もちろんブラックボックスの外にいる我々は、その応答を利用して超光速通信をすることはできない。
「非局所性」の意味:
Bohmの量子ポテンシャルの非局所性とは、「ブラックボックスの中で超高速で伝わる」ことを意味。
「影響が空間を連続的に伝わる」意の局所性は、ブラックボックスの外からのaccessibleなものの性質。
常識で考えて、真っ当な科学者であれば「相対論を満たさないという点」を受け入れるようになった、すなわち、相対性理論を否定するようになったとは考えにくい。 よって、これは、局所性の制限はブラックボックスの外からのaccessible(アクセス可能)な現象のみに適用されるのであって、ブラックボックスの外からのaccessible(アクセス可能)でない所で非局所性が現れても相対性理論には反しないという意味である。 これは、事象の水平面内のような現実的に問題にならない所で物理法則が破綻する特異点があっても問題ないのと同じであろう。
アインシュタインが指摘した量子もつれの相関性
EPR論文では、2つの粒子1と2の相対位置(位置座標の差)および全運動量(運動量の和)が同時に確定できることが波動関数を使って示され、その上で、相対的位置と全運動量がわかっている2つの粒子が十分に離れたときに、一方の粒子に対して観測を行うケースが検討された。 粒子1の位置を測定すると、相対位置の値から粒子2の位置が直ちに判明する。 同じように、粒子1の運動量を測定すると、粒子2の運動量がわかる。
粒子2から十分に離れた時点で粒子1の観測を行う場合、測定するのが位置であっても運動量であっても、粒子2の状態は(充分に離れているので)擾乱されず、それ以前の状態からは変化してないはずである。 とすると、粒子2は、粒子1の観測が行われる以前から位置と運動量が確定した状態にあり、位置と運動量は同時に確定できないとする量子論の基礎に抵触するのではないか? -これが、EPR論文で提起された問いである(科学史的に正確なことを言うと、これはアインシュタインが提起した問いで、3人で議論した内容をまとめる形でポドルスキーが単独執筆したEPR論文では、論点が少しずれている)
粒子1で位置と運動量のどちらかを観測するかに応じて、粒子2の状態が瞬時に変化すると仮定すれば、粒子1の観測後に粒子2で確定しているのは位置か運動量のどちらかだけなので、量子論の基礎とは矛盾しない。 しかし、2つの粒子が十分に離れているにもかかわらず、粒子1の観測で粒子2の状態が変化するのは、一種の遠隔相互作用が起きたことになり、光速を越える相互作用を禁じた相対論の原理に矛盾する。 この遠隔相互作用が、アインシュタインが「spooky」と呼んだものである。
「量子論はなぜわかりにくいか」(ISBN−10:4774188182,ISBN−13:978-4774188188,著:吉田伸夫)P.159,160
以上を簡単に言うと、一方の可観測量が他方の測定の影響を受けると局所性が破れるということである。 しかし、量子力学の標準理論では一方の可観測量が他方の測定の影響を受ける。 だから、もしも、量子力学的現象に局所性が成立するならば、局所性が破れないように標準理論を修正する必要がある。
では、何故、一方の可観測量が他方の測定の影響を受けると局所性が破れるのか。 それは以下の図で説明する。

O点から発した2つの光子をそれぞれA点,B点で測定するものとする。 この場合、それぞれの光子は光速でそれぞれA点,B点に到達する。 そして、A点での測定の情報がA点からB点に伝わるとしよう。 A点での測定の情報は、A点での測定を実施した時の情報であるから、光子がA点に到達するまでは出発できない。 そして、どのような位置関係であっても0ABは常に0Bより長い。 結果、A点での測定の情報がAB間を光速で伝わったとしても、必ず、A点での測定の情報がB点に到達する前に、B点での測定が始まってしまう。 ここで、測定したら遅延なしに即座に可観測量が得られると仮定すると、B点での測定結果が得られた後に、A点での測定の情報がB点に到達する。 光速を超えない有限の速度である限り、A点での測定の情報はB点での測定に間に合わない。
しかし、これは、測定から遅延なしに可観測量が得られる場合に成立する理屈であって、測定から可観測量が得られるまでに遅延がある場合は必ずしも成立しない。
相関確率
特定の原子から同じ方向に直線偏光した2つの光子が放出されることがある。 この現象を利用して、偏光の相関を調べる実験を考えよう。
「量子論はなぜわかりにくいか」(ISBN−10:4774188182,ISBN−13:978-4774188188,著:吉田伸夫))P.167
ベルの不等式の検証はスピンを用いることが多いが、一般向けには難易度を下げるために偏光で説明されることが多い。 尚、この本の説明では何が言いたいのか、素人が読んでもさっぱり意味がわからないと思われるので、もう少しわかりやすく説明しょう。
そこで、2つの偏光板(光子1と光子2を照射する偏光板1と偏光板2)の軸を角度θだけずらしたセットアップで何度も実験を繰り返し、Rの統計的な平均値を求めることを考えよう。
「量子論はなぜわかりにくいか」(ISBN−10:4774188182,ISBN−13:978-4774188188,著:吉田伸夫)P.169
ようするに、光子1の照射方向に偏光板1を置き、光子2の照射方向に偏光板2を置くということである。

「量子論はなぜわかりにくいか」(ISBN−10:4774188182,ISBN−13:978-4774188188,著:吉田伸夫)P.168
偏光板の性質は偏波・偏光を読んでもらいたい。 尚、ここで言うRは次のとおりである。
相関を数値で表すために、光子が偏光板を通過したときには+1、通過しなかったときには−1という得点を与え、2つの光子の得点の積Rを見ることにする。
「量子論はなぜわかりにくいか」(ISBN−10:4774188182,ISBN−13:978-4774188188,著:吉田伸夫)P.169
この結果を光学的な波動性と確率規則だけで計算してみよう。
偏光の向きと偏光板の性質は偏波・偏光で説明する。 偏光の向きと偏光板の向きの角度差がφの場合、通過できる確率Pと通過できない確率Qはエネルギーベース透過率に依存するため次のとおりとなる。
- P=cos2φ
- Q=sin2φ
- P-Q=cos2φ
ここで、ペア間の偏光の向きが同一であると仮定する。 偏光板の向きの角度差がθの場合で、かつ、ペアの一方における偏光の向きと偏光板の向きの角度差がφの場合の確率は次のとおりとなる。
- Pa=cos2φ
- Qa=sin2φ
- Pa-Qa=cos2φ
- Pb=cos2(φ+θ)
- Qb=sin2(φ+θ)
- Pb-Qb=cos2(φ+θ)
この時の得点の積R(a,b)は次のとおりとなる。
R(a,b)=Pa∙Pb+Qa∙Qb-(Pa∙Qb+Qa∙Pb )=(Pa-Qa )∙(Pb-Qb )=cos2φ∙cos2(φ+θ)={cos2θ+cos(4φ+2θ)}÷2
φを0°から360°まで平均化した〈R(a,b)〉は積分で計算できる。 cos2θの項は定数であるから、平均化しても変わらない。 cos(4φ+2θ)の項はcosをちょうど4周分平均化するので0となる。 結果、〈R(a,b) 〉=(cos2θ)/2となる

しかし、標準理論は計算の倍の値となっている。 ペア間の偏光の向きが同一ではなく、その差が定数値となる場合は、このグラフを横方向にシフトした値となる。 その場合も、標準理論とは一致しない。 また、ペア間の偏光に全く相関性がなければ〈R(a,b) 〉=0となるから、これも標準理論とは一致しない。 よって、光学的な波動性と確率規則だけで説明するためには、ペア間の偏光の向きが定数値ではない特殊な相関性となる必要となる。
一方の測定が他方に影響する場合
例えば、先に偏光板に到達した方が偏光板を通過した場合に他方の偏光の向きを通過した偏光板と同じ向きに変え、かつ、先に偏光板に到達した方が偏光板を通過しなかった場合に他方の偏光の向きを通過した偏光板と垂直な向きに変えると仮定すると、標準理論と辻褄が合う。 a側が先に偏光板に到達し、かつ、a側が偏光板を通過した場合に、b側の偏光がa側の偏光板と同じ向きに変えられてしまうと仮定すると、a側が偏光板を通過した場合のb側の確率は次のとおりとなる。
- Pbp=cos2θ
- Qbp=sin2θ
a側が先に偏光板に到達し、かつ、a側が偏光板を通過しなかった場合に、b側の偏光がa側の偏光板と垂直向きに変えられてしまうと仮定すると、a側が偏光板を通過しなかった場合のb側の確率は次のとおりとなる。
- Pbq=sin2θ
- Qbq=cos2θ
よって、この時の得点の積R(a,b)は次のとおりとなる。
R(a,b)=Pa∙Pbp+Qa∙Qbq-(Pa∙Qbp+Qa∙Pbq )=(Pa+Qa )(cos2θ-sin2θ )=cos2θ
同様に、b側が先に偏光板に到達した場合を計算しても、同じ計算結果となる。 R(a,b)が常にcos2θとなるならば、φを0°から360°まで平均化した<R(a,b)>もcos2θとなる。 これは標準理論と一致する。

一方の測定が他方に影響しない場合
標準理論では、θ=0°のときに<R(a,b)>=1となっているが、これはペアの測定結果が全て一致することを意味する。 1≦R(a,b)≦1であるから、<R(a,b)>=1となるためには、R(a,b)は常に1でなければならない。 偏光の向きがθに依存しないと仮定すれば、φ=0°またはφ=90°の場合は、ペアの偏光の向きが等しい限り、R(a,b)が1になる。 しかし、φ=45°となる場合は、R(a,b)=0となってしまう。 というのも、光学的には通過確率は50%であり、偏光の向き以外に通過の有無を決める変数がない場合は、完全にランダムとなるからである。 ランダムな結果なら、ペアの通過の間に相関性がなくなるため、R(a,b)=0となる。 φ=45°でもR(a,b)=1とするためには、偏光の向き以外に偏光板の通過の有無を決める隠れた変数が必要となる。 そして、それは光学的な通過確率と矛盾しないことが必要である。 では、あらゆるφ値およびθ値に対してこのような相関性が働く理論を構築することは可能だろうか。
ここで、全ての光子が隠れた変数値0<N<1を持ち、かつ、量子もつれのペアの光子が全く同じN値を持つと仮定しよう。 Nは、θ値やφ値に依存せず、かつ、光子が誕生したときに持つ変数値であれば、疑う余地のない完全な局所的隠れた変数理論である。 そして、N値の発生確率が全ての値で一様であり、かつ、N<cos2φで偏光版を通過すると仮定すれば、光学的な通過確率cos2φとも全く矛盾しない。 そして、2つの偏光の向きが等しく、かつ、N値が等しい限り、φ値がいくらであろうともθ=0°のときには100%相関するので、R(a,b)は常に1となる。 つまり、θ=0°のときは、ペアの測定結果が全て一致するから<R(a,b)>=1となり、標準理論と一致する。 言い換えると、R(a,b)はN値にもφ値にも依存することなく常に1となるから<R(a,b)>=1となるのである。
では、θ=90°のときはどうなるか。 2つの偏光板の閾値cos2φとcos2(φ+θ)のいずれか小さい方をTmin、大きい方をTmaxとすると、任意のφおよびθにおいて、N<TminおよびTmax≦Nのときにペアの測定結果が一致する。 同様に、Tmin≦N<Tmaxのときにペアの測定結果が不一致となる。 θ=90°のときの閾値をグラフに描くと、相関の様子がよく分かる。

グラフの赤の領域はペアの通過結果が一致し(R(a,b)=1)、青の領域は一致しない(R(a,b)=−1)。 <R(a,b)>はR(a,b)の平均値であるから次の数式で求まる。
- <R(a,b)>=(赤の面積×1+青の面積×−1)÷全面積
よって、赤の面積が0の場合にのみ<R(a,b)>=−1となる。 グラフを見れば明らかなとおり、一致する場合と一致しない場合のそれぞれが一定確率で存在するので、<R(a,b)>=−1にならないことがわかる。 これは標準理論と一致しない。
以上のように考えると、θ=0°とθ=90°に限定しても、標準理論と一致する原理を構築することの困難さが良くわかろう。 ここでは、そうした原理が構築できないそうもないことを示唆できても、構築できないことを証明することは困難である。 その証明こそが、ベルの不等式である。
ベルの不等式(ベルの限界)
ベルの不等式は、可換測量がそれぞれ初期値と独立した作用によってのみ決定され、交絡因子が働かない(初期値と自身の側で起きたこと以外が影響しない)前提で成立する不等式である。
図7−5のように、偏光板1と2の軸が、それぞれaとa’、bとb’という2段階に切り替えられるものとする。
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「量子論はなぜわかりにくいか」(ISBN−10:4774188182,ISBN−13:978-4774188188,著:吉田伸夫)P.169
交絡因子が作用しない場合は次の不等式が成立するとされる。
−2≦〈R(a,b)〉+〈R(a',b)〉+〈R(a,b')〉-〈R(a',b')〉≦2
この限界値をベルの限界と呼ぶが、その証明は長くなるので省略する。
実験結果を光学的な波動性と確率規則だけで計算してみよう。 図より、a,b間、a’,b間、a,b’間の角度差は全て等しく、a’,b’間の角度差はその3倍である。 そのことから、次の通り計算できる。
〈R(a,b)〉+〈R(a',b)〉+〈R(a,b')〉-〈R(a',b')〉=(3cos2θ-cos6θ)/2
この値はベルの限界を超えない。

しかし、実際の実験結果はベルの限界を超えてしまう。 先ほど仮定したような、一方の通過結果が他方の偏光の向きを変えるような相関を仮定すると、この実験結果と一致する。
〈R(a,b)〉+〈R(a',b)〉+〈R(a,b')〉-〈R(a',b')〉=3cos2θ-cos6θ

いずれにせよ、実験結果はベルの限界を超えてしまう。
問題整理
ベルの不等式とその検証実験は、少なくとも、いずれか一方の可観測量が交絡因子の影響を受けていること、すなわち、一方の測定が他方の可観測量に影響することを示している。 そして、測定後に遅延なしに即座に可観測量が得られると仮定すると、次のようになる。
- 充足理由の法則と局所性は両立しない
- 局所性を捨てれば、充足理由の法則を取り戻せる
- 充足理由の法則を捨てても、局所的な作用では説明できない
つまり、測定遅延がない限り、局所的隠れた変数理論は成立せず、非局所的な長距離相関が必要になるから、隠れた変数理論は局所的ではないこととなる。 よって、「薄気味悪い長距離相関」が否定理由となるなら、それは隠れた変数理論にもブーメランとして帰ってきてしまう。 しかし、これは測定遅延がない前提での話であり、測定遅延があれば実験結果とは矛盾しない。 この場合、局所性が破れないためには、次のいずれかが必要となる。
- 光子の放出点から測定点までの距離が長いほど測定遅延も大きくなる
- 光子の放出点から測定点までの距離が一定以上になるとベルの不等式が破れない

0Bの距離が長くなるに従って0Bと0ABの距離差も大きくなる。 それでもベルの不等式が破れ、かつ、それを局所的作用で説明できるためには、0ABの距離差に比例した遅延時間が必要になる。 後者については実験で確認することは困難である。 というのも、そのような巨大な実験装置を作ることは困難だからである。 鏡を使って何度も往復させることで擬似的に距離を稼ぐことはできる。 しかし、その場合、OB間の距離を稼ぐことはできても、AB間の距離を稼ぐことができないため、仮にベルの不等式が破れても、それは局所的作用で説明できてしまう。 局所的作用で説明できないベルの不等式の破れを確認するには、擬似的に距離を稼ぐ方法では不十分であり、実空間上の直線距離を長くする必要がある。
ただし、これらの可能性を追求しても、局所的隠れた変数理論の構築が不可能ではないということに過ぎない。 以下が成立するとすれば、かなり歪な理論であろう。
- 常に決まった値を持つ隠れた変数が、他方の測定によって突然変えられてしまう
- 距離によって次のいずれかが起きる
- 測定遅延時間が、何故か、変化する
- 距離が遠くなると、何故か、他方の測定の影響を受けなくなる
素直な理論を構築できると見込めるからこその隠れた変数理論なのであって、そこまでして歪な隠れた変数理論に拘る理由はあるまい。 以上の意味で、ベルの不等式の検証実験は、隠れた変数理論を否定するわけではないが、隠れた変数理論に拘る理由を否定する。
標準理論の問題点
ベルの不等式の検証実験により、測定遅延がない限り、局所的隠れた変数理論が成立しないことがわかった。 しかし、距離に応じて次のいずれかの変化が起きることは標準理論でも奇妙であることには変わりない。
- 測定遅延時間が、何故か、変化する
- 距離が遠くなると、何故か、他方の測定の影響を受けなくなるe
よって、隠れた変数理論より標準理論もどちらもとても奇妙な理論である。 これは、例えるなら、カレー味のウ○コかウ○コ味のカレーかという究極の選択と変わらない。 悪い意味で2つの選択肢の優劣は付け難く、できればどちらも選ばない方が良さそうである。
検証は十分か?
実は、検証実験は完全な証明ではないようだ。
ただし,抜け道を完全に防ぐのは難しい. たとえば,測定装置の設定の変更は完全にランダムに行われるわけではない,あるいは粒子源から放出されるすべての粒子対が測定されるわけではない,などの事実をよりどころに,「局所的な」理論を構成すること(例えば文献[18])は可能かもしれない. こういった可能性を完全に排除するのは困難である.
「量子という謎」(ISBN−10:4326700750,ISBN−13:978-4326700752,著:白井仁人・東克明・森田邦久・渡部鉄兵)P.45
ただ、こうした証明の不完全さを突いて局所的理論を構築したとしても、かなり歪な理論になるであろうから、その現実的な意味があるかどうかは疑わしい。 素直な理論を構築できると見込めるからこその隠れた変数理論なのであって、そこまでして歪な隠れた変数理論に拘る理由はあるまい。 以上の意味で、ベルの不等式の検証実験は、隠れた変数理論を否定するわけではないが、隠れた変数理論に拘る理由を否定する。
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