不確定性原理

波動関数から不確定性を導く 

粒子状の測定結果の正体が一点に凝集した波だと仮定する。 一点に凝集する波動関数をフーリエ解析すると、広がった周波数成分を持つことがわかる。 広がった周波数成分を持つことは、波長に幅があることを意味する。 量子の波長は運動量と反比例するので、波長に幅があることは、運動量に幅があることを意味する。 よって、位置が確定(一点に凝集)すると、運動量は不確定となる。

一方で、運動量を確定させると、波長も確定する。 波長が確定すれば、周波数も確定する。 単一の周波数の波動関数は無限の空間に広がりを持つ。

このように、位置を確定させると運動量が不確定となり、運動量を確定させると位置が不確定となる。 位置と運動量が両方とも確定した波動関数は作り出せない。 よって、粒子が一点に凝集した波であれば、位置と運動量の間に不確定性関係が成立する。

波動力学と行列力学は数学的に等価であるので、行列力学でも同様の結論が導ける。

Werner Karl Heisenbergの説明 

不確定性原理は量子力学の基本的原理とされる。 ハイゼンベルクは、これを測定装置からの受ける影響として説明した。 例えば、光学的手段で測定すると場合は、光子の持つ運動量が、測定対象に一定の影響を与える。 ただし、十分に大きな運動量や質量を持った物質を測定する場合は、測定誤差として片付けることができる。 一方で、量子力学のようなミクロの世界では、測定対象の運動量や質量が極めて小さいため、致命的な影響となる。 その結果として、量子力学の世界では、測定に一定の制約が生じる。

現在では、測定装置からの受ける影響がなくても、不確定性関係は成立すると考えられている。 量子自身の持つ揺らぎと測定装置から受ける影響の両方を記述した式として、小澤の不等式などが提唱されている。

相補性 

不確定性原理は、より根源的な原理と考えられている相補性原理によるものと考えられている。

さらに,電子がどちらのスリットを通過したかを監視する装置を備え付けると,干渉縞は損なわれてしまう. 電子の粒子性と波動性は同時には観測できないように自然は仕組まれているようである. 「どういう仕組みが,識別と干渉の両立を妨げているのか」というのがこの記事で議論したい問題である.


粒子らしさを観測するような実験条件を設定すれば粒子らしい振る舞いが見られるし(経路識別実験),波動らしさを観測する設定にすれば波動らしい振る舞いが見られる(干渉実験). しかし,粒子・波動の両方の性質を同時に観測するような実験のやり方はないし,両方の性質を同時に担うような実体も想定できない. 観測とは,観測装置が対象物に働きかけたところに生ずる現象であり,観測結果を対象物だけに帰属させることは意味がないし,異なる条件設定のもとに行われた観測の結果を単独のイメージにまとめることはできない. このようなミクロの世界の性質をBohrは相補性(complementarity)と呼んだ.


つまり,相補性は必ずしも不確定性関係の結果ではなく,相補性の方がより普遍的な概念である,という言い分の方が妥当である.

干渉と識別の相補性(谷村省吾) - 名古屋大学多自由度システム情報論講座

これは非常に不正確な言い回しであり、次の点を考慮して読む必要がある。

  • 「粒子性」=「粒子らしさ」は、過程の粒子性(粒子軌道)のみを指しており、結果の粒子性は含まれていない
  • 「波動性」=「波動らしさ」は、干渉縞のみを指しており、回折や隠れた干渉は含まれていない
  • 「同時に担うような実体も想定できない」「単独のイメージにまとめることはできない」は隠れた変数理論を想定していない。

以上を踏まえて、文章を修正すると次の様になろう。

粒子軌道(経路)を観測するような実験条件を設定すれば粒子軌道が見られるし(経路識別実験)、干渉縞を観測する設定にすれば干渉縞が見られる(干渉実験)。 しかし、粒子軌道・干渉縞の両方の性質を同時に観測するような実験のやり方はないし、隠れた変数理論を除けば、粒子・波動の両方の性質を同時に担うような実体も想定できない。 隠れた変数理論の除けば、観測とは、観測装置が対象物に働きかけたところに生ずる現象であり、観測結果を対象物だけに帰属させることは意味がないし、異なる条件設定のもとに行われた観測の結果を単独のイメージにまとめることはできない。 このようなミクロの世界の性質をBohrは相補性(complementarity)と呼んだ。

まとめると、経路を特定可能にする限り、干渉縞が成立するための必須条件のうちの何かが必ず擾乱される。 擾乱対象は、位置や運動量の場合もあれば、偏波(偏光)や位相である場合もある。 位置や運動量以外が擾乱される場合は、不確定性関係は無関係である。 いずれにせよ、干渉縞が成立するための必須条件であることには変わりがない。 その結果、経路測定と干渉縞が両立しなくなる。 それが、相補性原理の本質である。 不確定性原理は、相補性原理が位置や運動量に影響するケースのみを考慮した限定的な原理に過ぎないのである。

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