間違った「8割おじさん」批判

間違った「8割おじさん」批判への反論まとめ 

「8割おじさん」こと西浦博氏への批判は主に次の内容である。

  • 緊急事態宣言は必要なかった
  • 実際の死者数は42万人を大きく下回っている

前者については、何もしなくても自然収束したとする意見と宣言以前の対策で十分とする意見がある。 自然収束論は論外として、宣言以前の対策で十分とする意見も具体的根拠に欠ける。 いずれも、宣言前に実効再生産数が1を下回っていたとするが、宣言前の実効再生産数を維持した場合の医療崩壊の危険性の有無については全く検証していない。 実際、医療崩壊寸前の所まで行っており、宣言によって実効再生産数をさらに下げたことにより最悪の危機を回避したことはデータからも明らかである。

陽性者数と患者数のピークのズレ 第2波のPCR陽性者数(7日平均)前日比

オープンデータ - 厚生労働省

尚、K値なる疑似科学に基づいて緊急事態宣言は必要なかったと主張する者がいるが、K値による将来予測は尽く外れており、このようなトンデモ理論も論外である。

後者については、論外であろう。 何も対策しないときの予測値だと明言されている数値に対して、実際に対策を行ったときの実測値を比較しても、予測が外れた根拠にはなり得ない。 確かに、何も対策しないときの予測値だと明言せずに「42万人死ぬ」と言ったなら、「実際にはそんなに死んでない」という批判も成立しよう。 しかし、何も対策しないときの予測値だと明言されている以上、実際に対策を行ったときの実測値との差を持ち出して批判するのは見当違いも甚だしい。 そして、西浦博氏は、対策をした場合としなかった場合について試算し、対策した場合についても対策の程度別の試算を行なっている。 だから、実測値がそれら予測の範囲を大きく逸脱しているなら、「予測を外した」とする主張も成立しよう。 しかし、予測の範囲のうちの最も現実から遠い予測値と実測値を比較し、試算上で想定されている両者の条件の違いをも無視して、「予測を外した」などと主張するのでは、あまりに無理がありすぎる。

間違ったおじさん批判

以下、それぞれについて詳細に解説する。

緊急事態宣言の必要性 

緊急事態宣言が不要だったとする主張は概ね次のとおりである。

これは「緊急事態宣言でRtは下がらなかった」という批判に対する反論だが、この説明はおかしい。 感染がピークアウトしたのは3月末であり、4月7日の緊急事態宣言より10日以上前だ。 上の図からもわかるように、緊急事態宣言の前後でRtは同じ0.7程度である。

厚労省と共謀して失敗をごまかす8割おじさん - アゴラ


つまり、この西浦氏作成データは、日本の(実効)再生産数が3月下旬以降「1を下回る」状況になっており、したがって3月下旬以降は、特に何の取り組みをしなくても、必然的にゼロに収束する状況になっていた事を意味しているのです。

だからこのデータを見る限り、4月7日の時点で、緊急事態宣言/8割自粛などを国民に要請せずとも、感染者数は早晩収束していたことは間違い無いのです。

しかも、このグラフからは緊急事態宣言/8割自粛を出した4月7日の「前後」で、感染者の増加速度にほとんど何の状況変化も見て取れない、ということも分かります。

これはつまり、緊急事態宣言を行っても行わなくても、感染者数の推移は、現状とほとんど変わらなかった可能性を示唆しています(仮に変わったとしても、極めて僅少な差異に止まる可能性を強く示しています)

【藤井聡】【正式の回答を要請します】わたしは、西浦・尾身氏らによる「GW空けの緊急事態延長」支持は「大罪」であると考えます。 - 「新」経世済民新聞

この主張が見当違いであることは以下に説明する。

実効再生産数<1は十分条件ではない 

実効再生産数が1を下回ることは、時間をかければ患者が減少することを意味しているのであり、すぐに患者が0になることを意味しない。 早期に収束させるためには可能な限り接触削減率を下げるべきことは「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」にも明記されている。

人と人との接触機会を8割削減するという目標は、単に2次感染を減少させるために必要となるだけでなく、短期間で(例えば、8割という劇的な削減であれば、緊急事態宣言後15日間で)感染者数が十分な程度減少するためにも必要である。 接触機会の8割削減が達成されている場合、緊急事態宣言後おおよそ1か月で確定患者データの十分な減少が観察可能となる。 他方、例えば、65%の接触の削減であるとすると、仮に新規感染者数が減少に転じるとしても、それが十分に新規感染者数を減少させるためには更に時間を要する。 なお、8割削減の達成ができた場合には、1か月後には、感染者数が限定的となり、より効果的なクラスター対策や「3つの密」の回避を中心とした行動変容で感染を制御する方法が一つの選択肢となり得る。 不十分な削減では感染者を減少させる期間が更に延びかねないことを十分に理解した上で、できるだけ早期に劇的な接触行動の削減を行うことが求められる。

図2

「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020年4月22日) - 厚生労働省p.3

新規感染者の減少速度が遅い場合、実効再生産数が1を下回った後も患者はどんどん増えていく。 事実、第1波における入院治療を要する者の数のピークは5月4日であり、PCR検査陽性者数のピークの20日以上後になっている。

陽性者数と患者数のピークのズレ

オープンデータ - 厚生労働省

つまり、新規感染者が減少に転じても、その減少率が低ければ、当面は入院患者数が増えていく。 減少率は大きい方が、入院患者数のピークも減らせる。 そのためには、実効再生産数が1を下回っても、さらに実効再生産数を減らす必要がある。 実効再生産数が1を下回ったのは4月1日であるが、緊急事態宣言が出た4月8日以降も4月12日までは下がっている(以降はグラフが切れているので不明)。

新型コロナの実効再生産数

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年 5 月 1 日)P.3

データを見ると、新規陽性者(7日平均)の前日比は、4月中は一貫して減少傾向にあった。

第2波のPCR陽性者数(7日平均)前日比

オープンデータ - 厚生労働省

この間の接触削減率の目安として、都営地下鉄の平日利用者数を示す。

都営地下鉄の平日利用者数の推移

都内の最新感染動向 - 東京

もっと一般的なデータとして日本全体の人の動向を示す。

Googleより(日本)

COVID-19:コミュニティ モビリティ レポート - Google

尚、定義は次のとおり。

小売、娯楽
レストラン、カフェ、ショッピング セン ター、テーマパーク、博物館、図書館、映画館など
食料品店、薬局
食料品店、食品問屋、青果市場、高級食料品 店、ドラッグストア、薬局など
公園
国立公園、公共のビーチ、マリーナ、ドッグ パーク、広場、庭園など
乗換駅
公共交通機関の拠点(例: 地下鉄、バス、電 車の駅)など
職場
職場
住宅
住居

グラフから、それぞれ、以下の傾向が見て取れる。

3月下旬 GW明け 連休期間 その他
職場一貫して減少やや増加大きく減少
乗換駅一貫して減少やや増加やや減少
小売、娯楽一貫して減少やや増加増加
食料品一貫して減少停滞不明長期的変動小
公園一貫して減少停滞大きく増加長期的変動小、中期的変動大
住宅一貫して増加やや減少やや増加

全体的に、3月下旬以降、ゴールデンウィークまでは一貫して自粛が強化されていることが読み取れる。 ゴールデンウィーク明けは、自粛の緩みが見られ、その後も、どんどん自粛が緩んでいることがわかる。 これらは、感染から検査陽性まで大凡2週間遅れと見なすと、新規陽性者(7日平均)の前日比と非常に良い正の相関が見て取れる。 つまり、自粛によって感染が抑えられていたことは一目瞭然である。

この自粛効果による感染低減がなければ、入院患者数は実際よりも多くなっていたと考えられる。 「直ちに緊急事態宣言を再発出する状況にない、イベントの規制緩和も予定通り」菅官房長官 - NEWSWEEK によれば、東京都の「コロナ感染者用に確保したベッドが約3300床」である。 都内の最新感染動向によれば、東京都の第1波の入院患者数の最大は2974人であった。 つまり、第1波では、東京都のコロナ感染者用のベッドの9割埋まっていたのである。 実効再生産数があとほんの少し高ければ、東京都のコロナ感染者用のベッドが不足していたかもしれない。 事実、入院治療を要する者の数のピーク近くで、死者数が急増している。

陽性者数と患者数のピークのズレ

オープンデータ - 厚生労働省

よって、緊急事態宣言がなければ、第1波で医療崩壊に至っていた可能性があるのである。 これに対して、ネット上では無症状者や軽症者も入院させていたからだとの主張がある。 しかし、厚生労働省通達では、地域で感染が拡大した状況では「無症状者及び軽症者については、自宅での安静・療養を原則」としている。

新型コロナウイルス感染症患者については、原則として、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)に基づく入院措置が行われているところです。 一方、「地域で新型コロナウイルス感染症の患者が増加した場合の対策の移行について」(令和2年3月1日付け事務連絡)において、今後、地域で感染が拡大した状況では、無症状者及び軽症者については、自宅での安静・療養を原則とすることも示しております。

[https://www.mhlw.go.jp/content/000651755.pdf 新型コロナウイルス感染症患者の自宅での安静・療養について(令和2年3月17日) - 厚生労働省

それは2020年7月22日の通達にも明記されている。

現在は、新型コロナウイルス感染症に感染している方であれば、医療的には入院加療が必要ではない軽症の方も入院しています。

○ 感染者が増加してくると、同様の対応をしていると、重症で入院による加療が必要な方や、重症化リスクが高い方の病床を確保が難しくなることが想定されます。

○ このため、感染者が増加した場合に、都道府県が、入院医療の体制について、重症者を優先とする体制へ移行することを決定します。

○ 都道府県において、こうした入院医療の体制を移行した場合、軽症の方については、これまでのように入院せず、自宅や宿泊施設で療養していただくことになります。

○ その際、軽症の方については、外出等をすると、感染を広げる可能性があるため、自宅や宿泊施設から外に出ず、一定期間療養していただく必要があります。

「新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養の対象並びに自治体における対応に向けた準備について」に関するQ&Aについて(その7)(令和2年7月22日) - 厚生労働省p.3

軽症者が自宅や宿泊施設で療養していたことは報道でも度々報じられていた。

よって、死者数の急増が、無症状者や軽症者のせいで医療リソースが無駄に消費されたせいではないことは明らかであろう。

宣言解除後は一貫して増加傾向 

緊急事態宣言が全面解除された5月25日以降の陽性者数は一貫して増加傾向にあるが、これは自粛の効果があったと考えなければ説明不可能である。

日本のPCR陽性者数の推移

オープンデータ - 厚生労働省

PCR陽性増は見掛け上の感染者増ではないに根拠を記載した通り、陽性者数が増加傾向にある時は陽性率も増加傾向にあるため、実際の感染者が増えていることに疑いの余地はない。 よって、緊急事態宣言が全面解除された5月25日以降の陽性者数の増加は、見かけ上の現象ではなく、実際の感染が拡大していると考えられる。 結果論となるが、この事実からは、緊急事態宣言を解除すれば自粛が一斉に解除されて感染者数が急増する可能性が高かったことが分かる。

ちなみに、【独自】流行前の生活に戻すと「都内の感染1日100人」…西浦教授ら試算 - 読売新聞によれば、西浦博氏は、「5月下旬までの東京都内の感染状況のデータ」を基に「流行前のような生活を続けた場合、7月中に東京都内の感染者数が1日100人以上になると予測」している。 実際に、7月中に東京都の陽性者数は1日100人を超えた。

宣言の前後の自粛要請等も一連の対応 

北海道は、2月28日に緊急事態宣言を出している。 個人的な経験だが、3月前半の千歳市市役所の窓口では、3分の1程度の待機者がマスクをしていた。 志村けん氏が亡くなったのは3月29日である。 安倍総理は、3月30日に緊急事態宣言の噂を否定しているが、これは少なくとも3月30日以前に緊急事態宣言の噂が流れていた事実を示している。 そして、学校の休校措置や自粛要請は早くから出されていた。 このように、「3月25日の東京都の記者会見」に限らず、新型コロナの深刻さと自粛を促す情報は早くから流れていた。 日本政府の緊急事態宣言は、ある日唐突に出されたものではなく、出る出ると言われ続けた末に出されたものである。 であれば、緊急事態宣言の効果が、緊急事態宣言が発効した瞬間に急激に発揮されたのではなく、緊急事態宣言の前後から徐々に発揮されたとしても何ら不思議はない。

また、緊急事態宣言が全面解除された5月25日以降の新規感染者数が一貫して増加傾向にある事実も、緊急事態宣言を見送ったり、解除することによる自粛の緩みの危険性を示唆している。

日本のPCR陽性者数の推移

オープンデータ - 厚生労働省

PCR陽性増は見掛け上の感染者増ではないに根拠を記載した通り、陽性者数が増加傾向にある時は陽性率も増加傾向にあるため、実際の感染者が増えていることに疑いの余地はない。 よって、仮に、「感染がピークアウトした」時期が「4月7日の緊急事態宣言より10日以上前」だったとしても、緊急事態宣言の効果を否定する根拠にはならない。

収束は自然要因では説明不可能 

新型コロナでは基本再生産数(Ro)が2.5だとすると、集団免疫閾値は(1-1/2.5)x100 = 60%となり、6割の人が免疫を保持することが流行を止めるために必要であることが示唆されます。

ただし注意すべきなのは、この場合、一般的には「免疫」とは抗体ができることを指していて、「獲得免疫」のことであるというのが暗黙の了解となっています。

しかし、個体レベルではウイルスに対する防御は2段構えであって、自然免疫と獲得免疫がウイルス排除に関与します。

もし自然免疫がうまく働けば、少数のウイルス粒子が侵入してきても自然免疫だけでウイルスを排除できる可能性があります。 つまり獲得免疫が働かなくてもウイルスは排除できる可能性があります。


例えばこれまで激しい流行があった中国湖北省武漢市でも、またクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」でも感染した人は全体の2割程度でした。 集団の6割も感染をするようなことは観察されていないのです。

その理由は大きな流行が始まると、人は隔離措置をとり、接触制限をするようになるからで、それとともに上記の基本再生産数が小さくなるのです(これを実効再生産数と言います)。

接触制限によってR値が1.2まで下がると、上記の公式で集団免疫閾値は20%以下(筆者注:16.7%)となります。 これが、実際に武漢市やダイヤモンド・プリンセスで起きていたことではないかと私は考えています。


集団免疫閾値はこの新型コロナウイルスの場合、60%は成立しない。 たぶん良くて20%だと思います。 2割だったら今後ワクチンができてくると確実にそこは到達できると思います。

一般に信じられている集団免疫理論はどこがおかしいのか免疫の宮坂先生に尋ねてみました(上) - YAHOO!ニュース

この宮坂昌之氏の主張は、要約すれば、自然免疫を考慮しなければ6割の人が獲得免疫を得なければ自然収束しないが、自然免疫を考慮すれば獲得免疫は2割で良いということである。 しかし、これは辻褄があっていない。 「接触制限によってR値が1.2まで下がる」なら、それは対策(自発的なものか公的指示によるかは問わない)による効果であり、自然免疫は関係ない。 自然免疫なしに「集団免疫閾値は20%以下」で済むなら「かなりの人たちは自然免疫だけを使ってウイルスを撃退した可能性がある」とは言えない。 また、「武漢市」や「ダイヤモンド・プリンセス」の事例は、対策が限定的に成らざるを得ない事例ではあろうが、対策が何もできない事例ではない。 よって、これらで感染率が2割止まりだったことについては、限定的な対策が功を奏したのか、あるいは、自然免疫によるのかは、これらの事例からは判断できない。

百歩譲って、自然免疫を考慮すれば獲得免疫は2割で良いとしよう。 宮坂昌之氏は、次のように、抗体ができても獲得免疫ができないケースを指摘している。

抗体の中には少なくとも3種類のものがあります。 善玉抗体と悪玉抗体と役なし抗体です。 SARS(重症急性呼吸器症候群)や MERS(中東呼吸器症候群)では善玉抗体とともに悪玉抗体ができることが報告されています。


こういう役なし抗体も新型コロナウイルスではできています。 ですから単に抗体の量だけを見ても、本当にどの程度、正しい免疫ができたのか、よく分かりません。

一般に信じられている集団免疫理論はどこがおかしいのか免疫の宮坂先生に尋ねてみました(上) - YAHOO!ニュース

であれば、抗体ができた人の割合は、獲得免疫ができた人の割合よりも低いことになる。 ということは、抗体ができた人が2割以上がいないことには、自然免疫のみによって新型コロナが収束することはあり得ない。 宮坂昌之氏が挙げた事例では「東京都の500検体で0.6%」「東北6県の500検体では0.4%」である。 池田信夫氏が挙げた事例では「抗体陽性率は0.5%」である。 いずれも、自然免疫による収束を説明するには全然足りない。

感染した人が全て獲得免疫を得るという前提に立つと、日本人の2割が感染すれば、自然免疫による収束を説明できる。 そのためには、2000万人以上の感染者が必要になる。 しかし、2020年7月11日0:00現在でも、PCR検査陽性者数は累計で21,129である。 これも、自然免疫による収束を説明するには全然足りない。

以上の通り、自然免疫論では宣言後の収束をまったく説明できない。 その他の自然要因でも説明がつくものはなく、宣言後の収束を説明するためには人為的要因が必要である。 それは、言うまでもなく、自粛による接触削減に他ならない。 また、緊急事態宣言が全面解除された5月25日以降の新規感染者数が一貫して増加傾向にある事実も、宣言後の収束が自然要因では説明できないことを示唆している。

日本のPCR陽性者数の推移

オープンデータ - 厚生労働省

PCR陽性増は見掛け上の感染者増ではないに根拠を記載した通り、陽性者数が増加傾向にある時は陽性率も増加傾向にあるため、実際の感染者が増えていることに疑いの余地はない。 もしも、宣言後の収束が自然要因であったとするならば、緊急事態宣言が解除された途端に日本人の免疫が低下するというような奇妙な現象を認めなければならなくなる。

実効再生産数<1達成日には誤差がある 

実効再生産数<1を達成した時期は不正確である。

まず、中期的変動を考慮する必要がある。

新型コロナの実効再生産数

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年 5 月 1 日)P.3

第2波のPCR陽性者数(7日平均)前日比

オープンデータ - 厚生労働省

実効再生産数で見ても、PCR陽性者数(7日平均)前日比で見ても、1〜2日周期の短期変動のほかに、明らかに、10〜20日ほどの中期的変動が見られる。 そして、中期的変動は対策の効果とは関係がなさそうなので、対策の効果を見るためには中期的変動の影響を取り除く必要があろう。 中期的変動の増加期か減少期かによって、実効再生産数が1を下回るタイミングも影響を受ける。 だから、中期的変動の影響を取り除いた場合の実効再生産数が1を下回るタイミングが前後にずれる可能性がある。

また、池田信夫氏や藤井聡氏が引用した実効再生産数のグラフには不確定要素が多数含まれていることも考慮する必要がある。 そもそも、感染者数の推移から実効再生産数を正確に推定することは難しい。 例えば、感染者の増減率だけでは実効再生産数を計算することはできない。 分かりやすくするために、n次感染者が感染後に(n+1)次感染者に再感染させるまでの間隔(以下、「感染間隔」)によって、感染者数がどう変わるか次のグラフに示す。

実効再生産数=1.01 実効再生産数=0.99

見て明らかな通り、同じ実効再生産数でも、感染間隔が変われば、感染者の増減率も変わる。 感染間隔は、感染者の行動様式によって左右されるので個人差がある。 だから、誰から誰に何時感染させたか正確に把握できていないと、実効再生産数から感染者数の推移を正確に予測することはできない。 逆に言えば、誰から誰に何時感染させたか正確に把握できていないと、感染者数の推移から実効再生産数を正確に推定することはできない。 ただし、感染間隔の誤差では、1より大きい再生産数が1より小さくなったり、その逆はない。 勿論、感染時期の誤差があれば、それにより逆転現象が生じることはある。 結局のところ、再生産数は概念的な数値であって、必要な対策の程度を論じるには有効だが、感染者数の増減率を論じるには向いていない。 増減率を論じたいなら、前日比の方が圧倒的に適切である。

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年 5 月 1 日)p.2によれば、「確定日」のグラフでは4月10日が最大になっているが、「発症日」のグラフでは4月3日が最大になっている。 また、「発症日データについては、無症状病原体保有者や発症時期が判然としない感染者が存在するため、確定日データよりも人数が小さくなる」と記載されていて、「確定日」に比べて「発症日」のピーク値は約半分になっている。 さらに、p.3の図3のグラフでは、3月28日が最大になり、日単位のバラツキが小さくなっている。 日単位のバラツキを除いたピーク値は、図3と「確定日」では大差ない。 以上のことから、図3のグラフは、「無症状病原体保有者や発症時期が判然としない感染者」も含めて全ての患者の感染日を推定したものと思われる。 つまり、陽性になった日から、それに対応する発症日を推定し、そらに、それに対応する感染日を推定し、そこから、実効再生産数が推定されている。 以上、3段階もの推定が重ねられており、誤差が多分に含まれているものと考えられる。

一方で、PCR検査陽性者数は陽性者数は4月10日の708名が最大値である。

日本のPCR陽性者数の推移

オープンデータ - 厚生労働省

以上から、専門家会議の「確定日」のグラフはPCR検査陽性者数を示しているものと思われる。 日単位のバラツキをなくすため、前後1週間の平均をとるとピークは4月11日~13日前後となる。 であれば、図3は14日前後、日付が前倒しされていることになる。 潜伏期間、症状が出てからの検査までの期間は個人差があるため、誰が誰に何時移したかを追跡できていない場合、感染日は不確かな推測になる。 そのため、グラフでは4月1日に実効再生産数が1を下回っているが、この時期にも誤差が生じる。

さらに、検査対象とならなかった患者の影響も考慮する必要がある。 2020年2月17日の厚生労働省通達では「風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く方」が相談・受診の目安となっていた。

○ 以下のいずれかに該当する方は、帰国者・接触者相談センターに御相談ください。

・ 風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く方 (解熱剤を飲み続けなければならない方も同様です。)

・ 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある方

○ なお、以下のような方は重症化しやすいため、この状態が2日程度続く場合には、帰国者・接触者相談センターに御相談ください。

・ 高齢者

・ 糖尿病、心不全、呼吸器疾患(COPD等)の基礎疾患がある方や透析を受けている方

・ 免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている方

(妊婦の方へ)

妊婦の方については、念のため、重症化しやすい方と同様に、早めに帰国者・接触者相談センターに御相談ください。 (お子様をお持ちの方へ)

小児については、現時点で重症化しやすいとの報告はなく、新型コロナウイルス感染症については、目安どおりの対応をお願いします。

新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安について(令和2年2月17日) - 厚生労働省

これは、相談・受診の目安であって、検査の基準ではない。 しかし、事実上、検査の基準として扱われている事例が多々あった。

目安は「三七・五度以上の発熱が四日以上続く方」などとなり、「必要な検査や診察を受けにくい」と問題視された。厚労省は取材に、重い症状でも四日以上待たなければならないという「誤解」を招いたと認める。


厚労省は、状況に応じて目安を柔軟に判断するよう自治体に通知した。 それでも、検査能力や病床が限られる中、目安を事実上の基準として運用する保健所もあった。

「4日を待たずに」はなぜ削られたのか <新型コロナ検証> - 東京新聞

検査が不当に抑制される問題を受けて、2020年5月8日、この通達は次のように改正された。

○ 少なくとも以下のいずれかに該当する場合には、すぐに御相談ください。(これらに該当しない場合の相談も可能です。)

☆ 息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状のいずれかがある場合

☆ 重症化しやすい方(※)で、発熱や咳などの比較的軽い風邪の症状がある場合

(※)高齢者、糖尿病、心不全、呼吸器疾患(COPD 等)等の基礎疾患がある方や透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている方

☆ 上記以外の方で発熱や咳など比較的軽い風邪の症状が続く場合

(症状が4日以上続く場合は必ずご相談ください。症状には個人差がありますので、強い症状と思う 場合にはすぐに相談してください。解熱剤などを飲み続けなければならない方も同様です。)

○ 相談は、帰国者・接触者相談センター(地域により名称が異なることがあります。)の他、地域によっては、医師会や診療所等で相談を受け付けている場合もあるので、ご活用ください。

(妊婦の方へ)

妊婦の方については、念のため、重症化しやすい方と同様に、早めに帰国者・接触者相談センター等に御相談ください。

(お子様をお持ちの方へ)

小児については、小児科医による診察が望ましく、帰国者・接触者相談センター やかかりつけ小児医療機関に電話などで御相談ください。

※なお、この目安は、国民のみなさまが、相談・受診する目安です。これまで通り、検査については医師が個別に判断します。

新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安(令和2年5月8日)別添 - 厚生労働省

自治体・医療機関向けの情報一覧(新型コロナウイルス感染症) - 厚生労働省

検査されなかった人は以下4つの全てに該当する人に限られるため、あまり多くはなかろう。

  • 「風邪の症状や37.5度以上の発熱」が3日以内で治った
  • 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がなかった
  • 以下の高リスク患者に該当しない
    • 高齢者
    • 基礎疾患がある
    • 透析を受けている
    • 免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている
    • 妊婦
  • 他の感染者の濃厚接触者等に該当しない

しかし、少なくとも、各機関の対応の違い等により、検査日が分散されたことは容易に予想され、それがどう影響したかは不明である。 結果として、実効再生産数が実際より高く見積もられた可能性も、実際より低く見積もられた可能性もある。 確実に言えることは、当時の陽性者数から推定した実効再生産数には一定の誤差が生じていることである。

8割削減の妥当性 

1人当たりが生み出す二次感染者数というのは、欧州では平均で2〜3人と言われています。 これを再生産数と言います。 この数が1を割ると、流行が収まっていきます。

2〜3人感染者を生み出すような接触のうち、平均50〜67%ぐらい以上が削減されると、再生産数が1を割るというのが単純計算になります。 2の時は50%以上、3の時は67%以上を削減する必要があります。

しかし、日本では今の流行対策で接触を制限するのは、強制ではなく、要請ベースで行われています。


どれだけ制限を求めても、介入しきれないところがあるのです。 医療機関はもちろん続けてもらわないといけませんし、性風俗などで止められないところがどうしても存在します。

仮に風営法で止められたとしても、性的接触が止まらないところはたくさんある。 人の行動に介入するのは、一つの数式の計算だけではカバーできません。

そういうことを加味して、二次感染が起こる再生産数をもっと詳しく検討していたんです。 医療従事者同士で感染が起こる確率、医療従事者から他の業界の人に感染が起きる確率、風俗での接触で感染が起こる確率などです。

数学的には職業別の感染しやすさを並べていくようなイメージですね


みなさんの行動をこの数値を元に止めないといけないので、正確に積み上げた数値です。

背後ではもう少し詳しい再生産数のデータを作っています。 医療と性風俗には残念ながら介入ができないと仮定して、一般の人口でそれを補填して、二次感染の平均値を1より下げるにはどれぐらい必要か見て、正確に言うと79%という数字が算出されました。

こういうのを「伝播の異質性」というのですが、人は社会で同じようには振る舞わないのです。 一般企業の人も、個々人で同じ仕事をしていても、友達の多さや交流の活発度は違います。

それを加味したデータを作って、その基本再生産数が2.5になるように計算して8割となったわけです。

翻って言うと、制御できない業界を除く接触が8割未満だと流行の制御は難しいかもしれません。

「このままでは8割減できない」 「8割おじさん」こと西浦博教授が、コロナ拡大阻止でこの数字にこだわる理由 - BuzzFeedNews

「基本再生産数が2.5」である場合は、平均的には6割の接触削減で実効「再生産数が1を割」り、「流行が収まってい」く。 しかし、「どれだけ制限を求めても、介入しきれないところがある」ため、「人の行動に介入するのは、一つの数式の計算だけではカバー」できない。 そこで、「数学的には職業別の感染しやすさを並べていくようなイメージ」で「正確に積み上げた」結果として、「制御できない業界を除く接触が8割」削減という目標になっている。

尚、「8割の接触削減」は概念的な数値であって、実際の値を測定できるわけではない。 神風は吹かない、でも日本は負けないよ - 日経ビジネスによれば、分子ウイルス学、免疫学研究者の峰宗太郎氏は、8割が現実社会で意味することは明確ではないと指摘している。

  • 10回買い物していたのを2回にするのが8割なのか
  • 行った先で、10秒話していた人とは2秒だけにするのか
  • 1メートル離れて話していた人については、じゃあ、5メートル離れれば8割減なのか

「接触の8割減、どう評価?」西浦北大教授が解説 - m3.comによれば、西浦博氏は「接触の8割減」は「感受性人口(=人流)」と「接触率(=一人が何人と接触したか)」の積で評価すると説明している。 「感受性人口」とは、「10回買い物していたのを2回にするのが8割」に相当するのだろう。 「接触率」は、例えば、1回の外出で10人に合っていたところを2人までに減らせば8割減となる。 いずれにせよ、分母と分子を正確に測定しないと、計算しようがない。 とくに、対策前の「感受性人口」と「接触率」を測定することは困難だろう。

ほかの地域でも同様なことが観察されている。 例えば、スウェーデンはロックダウン(都市封鎖)などの全国的な強い行動制限を行わず、自然に集団免疫に達することを受け入れるとしているが、現在、人口の約35%が免疫を持ち、流行は下火になろうとしている。 おそらく最終的な累積罹患率は50%にも至らないだろうと言われている。

8割おじさん・西浦教授が語る「コロナ新事実」p.2 - 東洋経済


1つの研究では、われわれがクラスター対策で注目してきた、1人の感染者が生み出す2次感染者数にばらつきがあるという話に関係する。 新型コロナでは、ほとんどの感染者は誰にもうつしていないが、特定の屋内環境で「3密」の条件がそろった場所において1人がたくさんの2次感染者を生み出すということがある。

そのことを考慮すると、集団免疫率が一般的な数値より低くなることが最近示された。 具体的には従来の式に頼らずに定義を変えて、1回目の流行終了後、2回目の流行を起こさないときの閾値として集団免疫率を計算している。 すると、1人当たりが生み出す2次感染者のばらつきが大きい場合は、基本再生産数2.5では、集団免疫率は60%でなく、20~40%くらいで済むことになる。 これが4月27日付のイギリスの研究論文の内容だ。

また、年齢別の異質性を考慮した5月6日付の別の研究論文もある。 こちらも集団免疫率は40%程度(基本再生産数2.5のとき)で済むという内容だ。 こうした研究結果は、従来のように「人口の6割が感染しないと感染拡大は収まらない」と想定しなくてもよいことを意味する。 これはかなり重要なことだ。

8割おじさん・西浦教授が語る「コロナ新事実」p.3 - 東洋経済

異質性(一人ひとりの行動様式の違い)を考慮した場合は「20~40%くらい」で済むとする研究論文もある。 しかし、スウェーデンの事例で「人口の約35%が免疫を持ち、流行は下火になろうとしている」「最終的な累積罹患率は50%にも至らない」であれば、「人口の6割が感染しないと感染拡大は収まらない」との想定は大きく外れていないことになる。 というのも、感染しても免疫を得られるとは限らないため、「人口の約35%が免疫を持」っている事実は、それ以上に感染が広がっている事実を示しているからである。 また、スウェーデンも高齢者対策や緩い自粛要請を行なっていることから、全くの無対策ではスウェーデンよりも感染が広がる恐れがある。

対策しなければ42万人死亡の妥当性 

新型コロナウイルスについて、厚生労働省のクラスター対策班に参加する北海道大学の西浦博教授(理論疫学)は15日、不要不急の外出自粛などの行動制限をまったくとらなかった場合は、流行収束までに国内で約42万人が感染によって死亡するとの見方を示した。

行動制限なしなら42万人死亡 クラスター班の教授試算 - 朝日新聞


新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、厚生労働省クラスター(感染者集団)対策班の西浦博・北海道大教授(理論疫学)は15日、人と人との接触を減らすなどの対策を全く取らない場合、国内で約85万人が重篤になるとの試算を公表した。うち約42万人が死亡する恐れがあるという。

新型コロナ、42万人死亡も 対策ない場合の試算公表―重篤85万人・厚労省班 - 時事ドットコム


新型コロナウイルスの感染防止策を何も行わなかった場合、流行が終わるまでに国内で約85万人が重篤な状態となり、半数の約42万人が死亡するとの推計を、厚生労働省のクラスター対策班が15日、明らかにした。

対策とらなければ42万人死亡 47NEWS

2020年7月8日0時現在で、新型コロナの累積陽性者数は19,816人で累積死亡者数は979人である。 割り算すれば、陽性者の約5%が亡くなっている。 仮に、陽性者と同数の隠れた感染者がいる(感染者数=2×陽性者数)と仮定しても、感染者の約2.5%が亡くなる計算となる。 尚、5%でも欧米に比べて低い致死率となり(アジアでは普通)、2.5%なら世界的にも極めて低い致死率となる。

ここで宮坂昌之氏の自然免疫論を採用すると、何も対策しなければ、日本人の2割が感染すると収束する。 うち、約2.5%が亡くなると仮定すれば、日本人の約0.5%が亡くなることになる。 つまり、宮坂昌之氏の自然免疫論の仮定を採用して計算しても、何も対策しなければ50万人以上の日本人が亡くなるのである。

「人口の6割が感染しないと感染拡大は収まらない」場合は、何も対策しなければ、日本人の6割が感染すると収束する。 うち、約2.5%が亡くなると仮定すれば、日本人の約1.5%が亡くなることになる。 であれば、何も対策しなければ150万人以上の日本人が亡くなる。 比較すると、西浦博氏「何もしないと42万人死ぬ」は決して過剰な数値ではなく、むしろ、控え目な数値であろう。

7月13日現在、人口100万人あたり死亡数は多い国はイギリス、イタリアで600〜700人となっている。 これらは、一定の対策をした国である。 これを日本の人口に換算すれば6万人以上となる。 つまり、対策をしても6万人以上死ぬ可能性があったのであり、比較すると「何もしないと42万人死ぬ」は決して過剰な数値ではないことがわかる。

見当違いの批判 

池田信夫氏の主張 

ここまで読むと、おかしいと思う人が多いだろう。 いま入院患者が559人しかいないのに、第2波で1.3万人が重症になるとは、どういう計算なのか。

日経新聞があおる「第二波で入院患者9.5万人」の恐怖 - アゴラ

どうやら池田信夫氏は新規感染者数の増加と入院期間の相乗効果により入院患者が爆発的に増えることが理解できないようだ。

陽性者数と患者数のピークのズレ

オープンデータ - 厚生労働省

ようするに、「ここまで読むと、おかしいと思う」のは池田信夫氏の無知・無理解の産物である。

そもそも新型コロナの感染者は半年の累計で約1.8万人しかいないのに、なぜ9.5万人も入院患者が発生するのか?

日経新聞があおる「第二波で入院患者9.5万人」の恐怖 - アゴラ

「新型コロナの感染者は半年の累計で約1.8万人」は対策をした場合の実測値である。 「9.5万人も入院患者が発生する」は対策しなかった場合の数値であろうから差が生じるのは当然である。

「日本なんか比べものにならないぐらいの対策をやったアメリカで13万人死んだから日本はそれ以上死ぬ」という論理は逆だ。

山中伸弥氏の「コロナ10万人死亡説」は大丈夫か - アゴラ

山中伸弥氏は、「日本なんか比べものにならないぐらいの対策をやったアメリカで13万人死んだから日本はそれ以上死ぬ」などとは一言も言っていない。 確かに、引用部には「日本なんか比べものにならないぐらいの対策をやって」「アメリカは300万人近くが感染されて13万人近くが亡くなっている」と記載されている。 しかし、山中伸弥氏は、それを「日本はそれ以上死ぬ」根拠とはしていない。 正しくは、「対策をとらなければ日本でも何十万人が亡くなってしまう」である。

山中伸弥氏の主張は、対策をした時の死亡率よりも対策をしない時の死亡率が高いことであって、アメリカの対策での死亡率と日本の対策での死亡率の比較ではない。 その意味では、「日本なんか比べものにならないぐらいの対策をやった」云々に言及することは説明としてよろしくない。 しかし、口頭での発言では、そうした蛇足はよくあることであろう。

もし日本で丸腰の死者42万人を感染症対策で1000人におさえこんだとすると、対策の効果は420倍だから、それ以上の対策をとったアメリカの丸腰の死者は5500万人以上ということになる。 これは山中氏のいう「ファクタ-X」仮説とも矛盾するが、彼は本気でそう信じているのだろうか。

山中伸弥氏の「コロナ10万人死亡説」は大丈夫か - アゴラ

山中伸弥氏の言う「日本なんか比べものにならないぐらい」が、単に行動制限の量等を意味していて「対策の効果」を意味していないことは文脈から明らかであろう。 よって、「アメリカの丸腰の死者は5500万人以上」とはならない。 正しくは、「日本なんか比べものにならないぐらいの対策をやったアメリカ」の「対策の効果」は日本のそれより低かったと解釈すべきである。 当然、「山中氏のいう『ファクタ-X』仮説とも矛盾」しない。

東京では感染者が毎日50人になったと騒いでいるが、これは桁違いだ。 陽性が増えた最大の原因はPCR検査を増やしたことで、検査を増やせば感染者はいくらでも増える。

「8割おじさん」は本当は「1%おじさん」だった - アゴラ


ただ最近の東京のように無症状の人にも検査を拡大すると、感染者数が増えることは考えられる。

山中伸弥氏の「コロナ10万人死亡説」は大丈夫か - アゴラ

PCR検査の性質と現状の検査対象範囲を考慮すれば、「検査を増やせば感染者はいくらでも増える」ことなどあり得ない。

確かに、検査対象を拡大した範囲が感染の疑いの強い群に該当すれば、「検査を増やせば感染者はいくらでも増える」だろう。 しかし、検査対象を拡大した範囲が感染の疑いの弱い群であれば、「検査を増や」しても感染者はほとんど増えない。 何故なら、PCR検査は、感度が低く(検査部位にウィルスが一定以上増殖している患者で30〜60%)、かつ、特異度が極めて高い(99%以上)ことが知られているからである。 感染している疑いの弱い群に検査をしても、その群の罹患率が低く、かつ、感度も低いので、新たな感染者を見つけることは難しい。 また、PCR検査の特異度は極めて高いため、検査者数を多少増やしても偽陽性の数はほとんど増えない。 そのため、感染の疑いの弱い群に検査を拡大しても、陽性者数は殆ど増えない。

そして、現状において、感染の疑いの強い人は例外なくPCR検査の対象になっているので、「検査を増や」す対象は感染している疑いの弱い群しかない。 確かに、第1波では、厚生労働省通達のせいで、感染の疑いの強い患者の検査が抑制された可能性はある。 しかし、その通達は2020年5月8日に改正されており、それ以降は感染の疑いの強い人は例外なくPCR検査の対象になっている。

以上により、緊急事態宣言が全面解除された5月25日以降の陽性者数の増加は、検査対象の増加では説明がつかない。 それは以下のグラフを見ても明らかである。

日本のPCR陽性者数の推移

オープンデータ - 厚生労働省

PCR陽性増は見掛け上の感染者増ではないに根拠を記載した通り、陽性者数が増加傾向にある時は陽性率も増加傾向にあるため、実際の感染者が増えていることに疑いの余地はない。 以上の通り、「検査を増やせば感染者はいくらでも増える」という主張は全く成立していない。

そもそも、「検査を増やせば感染者はいくらでも増える」のであれば、検査陽性者数から推測した実効再生産数も信用できなくなり、「緊急事態宣言の前後でRtは同じ0.7程度」「感染がピークアウトしたのは3月末」などの主張も根拠を失う。 とくに信用できないのは、厚生労働省通達が改正される2020年5月8日より前の過小評価されていた可能性のある陽性者数であろう。 だから、それ以降の陽性者数が信用できないなら、それ以前の陽性者数はもっと信用できないはずである。 にも関わらず、池田信夫氏は、2020年5月8日より前の陽性者数から推測した実効再生産数に基づいて「緊急事態宣言の前後でRtは同じ0.7程度」「感染がピークアウトしたのは3月末」と主張し、2020年5月8日より後の陽性者数が信用できないと言う。 つまり、池田信夫氏は、自身の主張に都合が良い時は陽性者数を信用できる数値として扱い、都合が悪くなれば「検査を増やせば感染者はいくらでも増える」と言う。 これは完全なダブルスタンダードだろう。

緊急事態宣言を出す基準は、重症患者数が医療資源の制約内におさまるかどうかである。

山中伸弥氏の「コロナ10万人死亡説」は大丈夫か - アゴラ

この後の池田信夫氏の主張を読むと、現状の数値しか検討しておらず、このまま患者が増え続ければどうなるかに全く言及していない。 第1波では、入院を要する患者のピークは緊急事態宣言から1ヶ月弱先の5月4日だった。

陽性者数と患者数のピークのズレ

オープンデータ - 厚生労働省

だから、「重症患者数が医療資源の制約内におさま」らなくなってから緊急事態宣言を出しても手遅れなのである。 緊急事態宣言を出さなかった場合に、その後のピークにおける「重症患者数が医療資源の制約内におさまるかどうか」を「緊急事態宣言を出す基準」とする必要がある。 それなのに、池田信夫氏は、その検討を全くせずに、現状の数値だけで論じている。

無症状の若者が高齢者に感染させて重症化するのでもっと検査を増やせという意見もあるが、そんなことを言い出したら、毎年1000万人の患者が出て1000人が死ぬインフルエンザも全員検査するのか。

山中伸弥氏の「コロナ10万人死亡説」は大丈夫か - アゴラ

PCR検査を拡大すべきかにて説明した通り、際限なく検査を増やすことは池田信夫氏の主張とは全く別の理由で馬鹿げている。 しかし、「毎年1000万人の患者が出て1000人が死ぬインフルエンザ」と新型コロナを比較した池田信夫氏の主張は論外である。 というのも、対策の有無、データの蓄積期間等の違う数値を比較しているからである。

「6割といっても水商売のおねえさんは聞かないから2割水増しした」という国民をバカにした話である。

「8割おじさん」の勘違い - アゴラ


これに2割の幅をもたせて8割にした、と彼はBuzzfeedのインタビューで説明しているが、他方では「6割ではだめで8割が必要だ」と断定している。

「8割おじさん」は本当は「1%おじさん」だった - アゴラ

Buzzfeedのインタビューで西浦博氏は「6割といっても水商売のおねえさんは聞かないから2割水増しした」とも「これに2割の幅をもたせて8割にした」とも言っていない。 「水商売のおねえさんは聞かない」は、「伝播の異質性」のわかりやすい事例として持ち出された話に過ぎず、「2割水増しした」根拠だなどとは言っていない。 西浦博氏は「数学的には職業別の感染しやすさを並べていくようなイメージ」「積み上げた」と説明している。 インタビュアーも「そんな細かい計算があったのですね。大雑把に2割上乗せ、というものではなかったのですね」と言っている。 以上は、動画では詳細な説明は省かれているが、インタビューでは詳細に説明されている。 そして、「水商売のおねえさんは聞かない」という話は動画には出てこず、インタビューにのみ出てくる。

ようするに、インタビューをちゃんと読み解けば、様々な職業別に計算を積み上げた結果、介入可能な範囲で8割を達成しなければ全体平均で6割にならないと西浦博氏は言っているのである。 もちろん、積み上げ計算に用いたパラメータの多くは不確定要素を含むから、計算結果には比較的大きな誤差が生じる。 そもそも、接触削減率は正確に測定不可能な数値である。 その計算の不正確さを指摘するなら、真っ当な議論と言えよう。 しかし、「6割といっても水商売のおねえさんは聞かないから2割水増しした」「これに2割の幅をもたせて8割にした」などのような西浦博氏の発言にないことを捏造して批判する行為には正当性は全くない。

それより本質的な問題は、このRo =2.5という前提が、まったく証明されていないことだ。 西浦氏はこれを生物学的な定数と考えているようだが、これまでのWHOの実測では、Roは1.4~2.5 と大きな幅がある


残念ながら、まったくそういう兆候はない。 最近はPCR検査が増えて感染者数が増えているが、それでも日本の感染率(人口比)は、図2のように先進国の圧倒的トップ。 ロックダウンで行動制限したヨーロッパの1/30である。 この差は自粛では説明できない。

中国と韓国の感染者が少ないのをみても、東アジアに固有の原因があることは十分考えられる。 それはBCG接種による自然免疫かもしれない。 今まで中国との交流の中で新型コロナに似たウイルスの免疫ができているのかもしれない。

「8割おじさん」の勘違い - アゴラ

最悪の事態を防ぐ目的なら、「WHOの実測」(「推定」の間違いであろうと思われる)の最悪の値から目標値を計算するのは当然のことである。 そして、「WHOの実測」の範囲内の数値である以上、推定値として妥当な値であることは言うまでもない。

新型コロナの実効再生産数

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年 5 月 1 日)P.3

理論的に、基本再生産数Roは、常に、実効再生産数Rt以上である。 よって、このグラフが正しければ、日本における基本再生産数Roが2以上であることはほぼ間違いない。 また、基本再生産数Roが2.4以上である確率は50%以上あり、3以上の可能性もある。 よって、「このRo =2.5という前提が、まったく証明されていない」とは言えない。

一方、池田信夫氏が示した図2は累計感染者数の対数グラフであり、そこから実効再生産数を推定することは不可能である。 よって、池田信夫氏は、「自粛では説明できない」「この差」なるものを全く示していない。 それでは「まったく証明されていない」「東アジアに固有の原因がある」なる仮説を採用する理由が全くない。 百歩譲って、「東アジアに固有の原因がある」としても、「BCG接種による自然免疫かもしれない」とする根拠は何も示されていない。

相手に対しては「まったく証明されていない」と批判しながら、自身は「まったく証明されていない」仮説を持ち出すのでは、ダブルスタンダードも甚だしい。

これは上の式とは違うSIRモデルによる計算で、これによると最終的に約1億人が感染し、致死率1%とすると100万人が死亡する。 「42万人死ぬ」というのはそれを控えめに表現した数字だが、ここで重要なのは

集団免疫率=p=接触削減率

がつねに成り立つことである。 つまり8割削減の必要十分条件は国民の8割が免疫をもつまで感染が収束しないということなのだ。 ここで集団免疫の代わりに接触削減でRtを1にしようというのが、西浦氏の発想だった。

「8割おじさん」は本当は「1%おじさん」だった - アゴラ

「集団免疫率=p=接触削減率」が「つねに成り立つ」わけがない。 おそらく、池田信夫氏は、両者が全く同じ効果をもたらすと言いたいのであろうが、それは両者が等しいことを意味しない。 違う数値を等号で結ぶようでは数学的素養が皆無であろう。

二つ以上の感染抑制要因を考慮する場合、pは、それらによる複合的な感染削減率と解釈すべきである。 そして、集団免疫率と接触削減率のみが感染削減率に影響を及ぼすと考えるなら、(1-感染削減率)=(1-集団免疫率)×(1-接触削減率)になると考えられる。 そして、集団免疫率が0に近い場合は、感染削減率≒接触削減率となる。 西浦博氏は、その前提で計算しているが、その前提が妥当であることは後ほど池田信夫氏が明確に証明している。

西浦氏が何を勘違いしているのかわからないが、たぶん「本当は2.5のRoを自粛で1.7に抑え込んでいるだけで、油断するとRが増えて感染爆発する」と考えているのだろう。


Roが2.5だとすれば日本人の60%が感染するまで集団免疫はできないが、何らかの原因で日本人に免疫ができてRoが1.7になっているとすれば、上の式は

(1-p)Ro=(1-p)×1.7<1

となるのでp>0.41、つまり人口の41%が感染すると集団免疫が実現する。 全体状況を知るには(西浦氏も認めたように)、日本人に免疫がどれぐらいできているか調べる抗体検査が必要である。 自然免疫は抗体検査で検出できないかもしれないが、それなしに「8割削減」で私権を制限をするのは順序が違う。

「8割おじさん」の勘違い - アゴラ


その前提はRo=2.5だが、彼も認めたように東京のRtはたかだか1.7だった。 上の式でRo=1.7とすると、p>0.41で集団免疫が成立するので「4割削減」で十分だ。

それでも絶対数でみると過剰である。 p=0.41だと5200万人が感染するまで流行は収束しないはずだが、抗体陽性率は0.5%(60万人)程度でほぼ収束した。 今後まだ感染が増えるとしても、陽性率1%程度で流行は終わるだろう。

「8割おじさん」は本当は「1%おじさん」だった - アゴラ

池田信夫氏は、基本再生産数Roと実効再生産数Rtを混同している。 先ほども説明した通り、専門家会議のグラフが正しいなら、日本における基本再生産数Roが2以上であることはほぼ間違いなく、「Ro=1.7」は到底あり得ない。

新型コロナの実効再生産数

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年 5 月 1 日)P.3

基本再生産数Roが2.5で、かつ、実効再生産数Rtが1.7であり、集団免疫率によってのみ感染を防いでいると仮定すると、この場合の集団免疫率は32%となる。 その状況で、実効再生産数Rtを1にするためには、接触削減率を約41.18%にすればよい。

集団免疫率と抗体陽性率が全く違う数値なら、「抗体陽性率は0.5%(60万人)程度でほぼ収束」という事実は何の根拠にもならないし、「日本人に免疫がどれぐらいできているか調べる抗体検査が必要」ともならない。 逆に、集団免疫率と抗体陽性率がほぼ同義であるなら、「抗体陽性率は0.5%(60万人)程度」では、「東京のRt」は約2.49にしかならないはずであり、「たかだか1.7だった」事実を全く説明できない。 よって、「東京のRtはたかだか1.7だった」原因は、接触削減率しか考えられらず、「自粛で1.7に抑え込んでいる」推定は極めて妥当である。 どう計算しても、集団免疫率が0.5%以下なら「『4割削減』で十分」という結論には達しない。

以上の通り、集団免疫率はほぼ0に近かったと推定されるのであり、その前提で計算した西浦博氏の手法は間違っていない。

これは「緊急事態宣言でRtは下がらなかった」という批判に対する反論だが、この説明はおかしい。 感染がピークアウトしたのは3月末であり、4月7日の緊急事態宣言より10日以上前だ。 上の図からもわかるように、緊急事態宣言の前後でRtは同じ0.7程度である。

つまり西浦氏があれほど力説した緊急事態宣言も8割削減も効果がなかったのだ。 これは彼にとっては困ったことになる。 あれだけ大騒ぎして国民を巻き込んだ緊急事態宣言は何だったのか。

その言い訳を彼は思いついた。 効果があったのは緊急事態宣言ではなく3月25日の東京都の記者会見だったというのだ。 小池知事のおかげで57%もRtが下がったのだという。

これはピークに合わせて対策のタイミングをさかのぼるご都合主義である。 安倍首相が記者会見し、全国で飲食店などの休業が始まった緊急事態宣言より、東京都知事の記者会見の影響のほうが大きいということがあるだろうか?

3月25日の会見はネットに全文が出ているが、「感染爆発重大局面」と繰り返しただけで、具体的に条例などを施行したわけではない。 そもそも全国のほとんどの人は、そんな記者会見が行われたことさえ知らなかった。 これは西浦氏が「接触削減で感染が劇的に減らせる」という彼の説が反証されたことをごまかすトリックである。

3月後半に感染が増えた原因は、押谷仁氏も認めたように1000~2000人の輸入感染であり、それが3月末の入国拒否で止まったのがピークアウトの原因である。 これは検疫でチェックできなかった厚労省の失敗だが、彼らはそれに口をぬぐって「都道府県のアラート」でRtが激減するというインチキな「推計モデル」を出している。

厚労省と共謀して失敗をごまかす8割おじさん - アゴラ

「感染がピークアウトしたのは3月末」については、まとめ部分でその誤りを指摘した。

西浦博氏は「全国で飲食店などの休業が始まった緊急事態宣言より、東京都知事の記者会見の影響のほうが大きい」などとは言っていない。 また、池田信夫氏は「全国のほとんどの人は、そんな記者会見が行われたことさえ知らなかった」根拠を示していない。

3月に入国制限を強化したことが感染抑制に一定の効果があったことは確かだろうが、それがどの程度の効果があったのか定量的に論じることは難しい。 そして、そのことは「緊急事態宣言も8割削減も効果がなかった」ことを意味しない。

接触削減などの「非薬物的介入」で感染が止まるというエビデンスは、世界のどこにもない。 日本より強硬なロックダウンをした国でも、Rtはほとんど下がっていない。 介入で感染が止められるというのは神話なのだ。

厚労省と共謀して失敗をごまかす8割おじさん - アゴラ

「ロックダウンをした国」の中で「Rtはほとんど下がっていない」事例だけしか取り上げない。 新型コロナ、各国で異なる「出口戦略」 4つの方向性 - 日本経済新聞によれば、ニュージーランドはロックダウンや入国規制を早期に導入して、感染者数を抑制している。 タイやベトナムも早期のロックダウンで感染者数を抑制している。 逆に、感染制御ができなかった国として、イタリア・スペインに代表される西欧各国やインドネシア等、感染者が急増してから後手に対応でロックダウンをした国々を挙げている。 また、オーストラリアは日本同等の対応で感染拡大を抑制した例として挙げている。 逆に、緩い規制で感染を拡大させた例としてスウェーデンやブラジルを挙げている。 また、テキサス大学MDアンダーソンがんセンター・乳腺腫瘍内科部門教授の上野直人氏は、ロックダウンと感染者数の推移を示すCNNからのデータを紹介している。

新型コロナのロックダウンと感染者数

2020年7月3日午後10:33(上野直人) - Twitter

これらグラフの目盛りの上限値(上3つはいずれも数万、下3つはいずれも数百)にも着目してもらいたい。 アメリカ 経済活動を早期再開した州中心にコロナ感染者急増 - NHKによれば、アメリカでは経済活動を早期再開した州を中心に感染者が急増している。 まとめると、感染が少ないうちに早めにしっかりした対策を行い、かつ、解除を慎重に行った国々では感染者数を抑制できている。 それに比べて、感染が爆発してから後手に対応でロックダウンをした国々では感染者数を抑制できておらず、解除が早すぎる地域では感染が再度急増している。 これらのデータは、「日本より強硬なロックダウンをした国でも、Rtはほとんど下がっていない」ことを示すのではなく、適切な対策を取らなければその効果が得られないことである。

また、ロックダウンが必ずしも「日本より強硬」とは限らない。 実は公園も買い物も行けるイギリス「ロックダウン生活」の中身 - PRESIDENTによれば、イギリスのロックダウンは強制的な法律による行動制限命令は伴っていないとのことである。 小売店やスーパーなどは営業時間を短縮しながら営業していた等、内容的には日本と大差は見られない。 都市間の行き来は制限されるものの、それ以外は「強硬」とは言い難いので、日本と同様、ロックダウンで急激に実効再生産数が減るのではなく、ロックダウン前後で徐々に実効再生産数が下がっていた可能性がある。 そして、都市間の行き来を制限しても、既に、各都市にウィルスが拡散していれば、大した効果は見込めない。

よって、「接触削減などの『非薬物的介入』で感染が止まる」ことを否定する根拠にはなり得ない。

新型コロナが人の密集するクラスターで感染拡大していることは既に確実視されている事実であり、「エビデンスは、世界のどこにもない」とは言えない。 池田信夫氏は、コロナウィルスが障害物を通り抜けて拡散するとでも言いたいのだろうか。 それとも、コロナウィルスは空間を超越してワープするとでも言いたのだろうか。 ならば、感染が「入国拒否で止ま」るわけがなかろう。 そのような主張をするのでもなければ、「接触削減などの『非薬物的介入』」が、感染を完全になくすことはできないまでも、感染を抑制する効果があることには疑いの余地がない。 マスク等は、感染を完全にゼロにできないまでも、感染を抑制する効果があるのである。

既に説明した通り、緊急事態宣言が全面解除された5月25日以降は新規感染者数は増加傾向にあるが、緊急事態宣言を解除すれば自粛が一斉に解除されて感染者数が急増する可能性が高いことが分かる。 池田信夫氏はそれを否定する根拠を何ら示していない。 よって、緊急事態宣言単体での効果は評価し難いが、それまでの自粛要請を含めた一連の措置は一定の効果があったと推定できるし、緊急事態宣言の解除が一定の危険性を孕んでいたことも明らかである。 にも関わらず、日経新聞があおる「第二波で入院患者9.5万人」の恐怖 - アゴラ によれば、池田信夫氏は、6月30日の段階でも「8割おじさんの誇大妄想」「緊急事態宣言でRtは下がらなかった」との主張を繰り返している。 まさか、池田信夫氏は、緊急事態宣言が解除された途端に集団免疫率が継続的に低下し始めたとでも言うつもりだろうか。

尚、「BCG接種による自然免疫かもしれない」なる池田信夫氏の仮説は、「まったく証明されていない」し、「エビデンスは、世界のどこにもない」。 相手に対しては「エビデンスは、世界のどこにもない」と批判しながら、自身は「エビデンスは、世界のどこにもない」仮説を持ち出すのでは、ダブルスタンダードも甚だしい。 ちなみに、2020年6月26日午後0:46(EARLの医学ツイート) - Twitter2020年6月28日午前3:27(手を洗う救急医Taka) - Twitterでは、BCG日本株接種国のサウジアラビア、フィリピン、パキスタン、バングラディシュにおいて感染者が急増していることから、BCG仮説やアジア人免疫説は破綻していると指摘されている。

この免疫力の大きな差の原因(ファクターX)が何かというのは専門家が今後、研究する重要なテーマだが、いずれにしても集団免疫率80%という前提が否定された以上、それと同値の8割削減も否定された。 「8割おじさん」は本当は「1%おじさん」でよかったのだ。

「8割おじさん」は本当は「1%おじさん」だった - アゴラ

以上に説明した通り、「集団免疫率80%という前提が否定された」のは事実だが、「8割削減」は「それと同値」ではないし否定もされていない。

緊急事態宣言の「8割削減」の提唱者である西浦博氏は、きのう宮坂昌之氏の批判に答えて、

「42万人死ぬ」シミュレーションはどこが間違っていたのか - アゴラ

確かに、宮坂昌之氏は「『このウイルスは何も対策を立てないと人口の6割が感染して何十万もの人が死ぬかもしれない』という前提は間違っている」と明言している。 一方で、「西浦教授の理論自体は正しい」と計算方法については肯定している。 否定されていることは「一般的には『免疫』とは抗体ができることを指していて、『獲得免疫』のことであるという」「暗黙の了解」である。 宮坂昌之氏の主張は、要約すれば、自然免疫を考慮しなければ6割の人が獲得免疫を得なければ自然収束しないが、自然免疫を考慮すれば獲得免疫は2割で良いということである。

尚、宮坂昌之氏の主張内容については、まとめ部分でその誤りを指摘した。

緊急事態宣言の「8割削減」の提唱者である西浦博氏は、きのう宮坂昌之氏の批判に答えて、彼の予測が間違っていたことを認めた。

「基本再生産数Ro=2.5で感染爆発する」という彼の予測の根拠は、もともとはっきりしなかったが、きのうは明確にRo=2.5で人口の60%が免疫を獲得するまで感染が拡大するという集団免疫理論が「架空のもの」だと認めた。

「42万人死ぬ」シミュレーションはどこが間違っていたのか - アゴラ

素人一般人twiiter に貼り付けられた画像がソースでは事実関係が確認できず、全く信憑性に欠ける。 西浦博氏は本当にそのような投稿をしたかどうかすら確認しようがない。 このような真偽が定かでない情報を根拠にしている時点で論外である。

その文面を読んでも、一言足りとも「彼の予測が間違っていたことを認め」てなどいない。 その文面で「まったくもって御意」としていることは、最終的な累積罹患率は基本再生産数から単純予測した値とは必ずしも一致しないこと、すなわち、正確な結果を求めるには複雑な計算が必要なことである。 そして、西浦博氏は、はじめから、最終的な累積罹患率が基本再生産数から単純予測した値と必ず一致するとは言っていない。 また、その文面では、年齢、社会構造、接触ネットワーク、感染のバラツキ、遺伝的異質性については言及しているが、自然免疫については一言も言及していない。

西浦氏の「何もしないと42万人死ぬ」というシミュレーションは、ファーガソンの理論とほぼ同じものだ。 いまだにその計算式は公開されていないが、Ro=2.5で集団免疫が成立する閾値は1-1/Ro=0.6だから、日本人の60%(7500万人)が感染する。 次の図はそういうシミュレーションの一例である。

重症化率を1%とすると75万人が重症になり、人工呼吸器の能力を超える40万人ぐらいが死ぬ。 これは簡単な計算で、集団免疫理論を認めるとこういう結論しか出ない。

「42万人死ぬ」シミュレーションはどこが間違っていたのか - アゴラ

「いまだにその計算式は公開されていない」なら、どうして、「重症化率を1%とすると75万人が重症になり、人工呼吸器の能力を超える40万人ぐらいが死ぬ」と計算したとわかるのか?

2020年7月8日0時現在で、新型コロナの累積陽性者数は19,816人で累積死亡者数は979人である。 割り算すれば、陽性者の約5%が亡くなっている。 池田信夫氏は「75万人が重症」となった場合に「40万人」が「人工呼吸器の能力を超える」としている。 それならば、累積陽性者数は19,816人の段階では、「人工呼吸器の能力を超える」事態にはなっていないはずである。 であれば、この979人の死亡は「人工呼吸器の能力を超え」たせいではないはずである。 つまり、「人工呼吸器の能力を超える」事態が発生しなくても陽性者の約5%が亡くなるのである。 以上踏まえて、宮坂昌之の自然免疫論に基づいて、何も対策しなければ50万人以上の日本人が亡くなる。 その詳細な計算は、まとめ部分で示した通りである。

しかしきょう現在の死者は累計で744人。 彼の理論が正しいとすれば、8割削減どころか自粛だけで死者が1/500以下になったわけだが、そんなことを信じる人はいないだろう。

「42万人死ぬ」シミュレーションはどこが間違っていたのか - アゴラ

「8割削減どころか自粛だけ」は全く意味不明である。 池田信夫氏は、自粛が「8割削減」に達していない根拠を何も示していない。 よって、池田信夫氏の主張こそ、「そんなことを信じる人はいないだろう」。

彼も認めたように、この計算には致命的な誤りがあったのだ。

「42万人死ぬ」シミュレーションはどこが間違っていたのか - アゴラ

既に説明した通り「この計算には致命的な誤りがあった」と「彼も認めた」という事実は存在しない。

今はほぼヨーロッパ全域でRt<1だが、域内の60%が免疫を獲得したわけではない。 抗体陽性率は10%程度である。 日本に至っては、抗体陽性率1%以下で収束に向かっている。 ファーガソンや西浦氏の理論は反証されたのだ。 それはなぜだろうか。

宮坂氏も指摘するように、最大の原因は自然免疫だろう。 世界中のすべての人がコロナウイルスに対して同じ「感度」(susceptibility)をもっているわけではなく、予防接種や結核で人々の非特異的な免疫機能が活性化されている国では、ヨーロッパのように大流行しないのだ。

「42万人死ぬ」シミュレーションはどこが間違っていたのか - アゴラ

まず、収束に「域内の60%が免疫を獲得」が必要となる場合は、何も対策しない場合に限られる。 よって、何らかの対策をして低い抗体陽性率で収束した事実では「ファーガソンや西浦氏の理論は反証され」ない。

そして、池田信夫氏は自然免疫論の都合の良い部分のみ摘み食いして、都合の悪い部分を無視する。 宮坂昌之氏の自然免疫論でも対策なしには約2割の獲得免疫が必要である。 そして、宮坂昌之氏によれば、獲得免疫率は抗体陽性率より低い。 よって、10%や1%の抗体陽性率では自然免疫論で収束を説明できない。 とくに、「日本に至っては、抗体陽性率1%以下で収束に向かっている」ことは自然免疫論では絶対に説明できない。 当の宮坂昌之氏も、「武漢市」や「ダイヤモンド・プリンセス」の事例では自然免疫が原因で感染が2割止まりだとは言っているが、10%や1%の抗体陽性率で収束した原因が自然免疫だなどとは一言も言っていない。 だから、日本での収束を説明するには収束以外の何か別の要因が必要となる。 そして、それは自粛以外に考えられない。 つまり、宮坂昌之氏の自然免疫論は、主に自粛によって収束したことを裏付けているのである。 池田信夫氏の理論こそ宮坂昌之氏の自然免疫論によって反証されたのである。

西浦氏のシミュレーションは自然免疫をまったく考慮しないものだったが、彼も年齢などの異質性が大きいと集団免疫理論は成り立たないと認めた。

「42万人死ぬ」シミュレーションはどこが間違っていたのか - アゴラ

もう、いいかげんに、池田信夫氏は、他人の主張を捏造するのはやめたらどうか。 西浦博氏本人のものかどうか不明な例の文面は、「年齢などの異質性が大きい」場合には、詳細に計算した結果が単純計算と一致しないと言ってるだけで、「集団免疫理論は成り立たない」とは言っていない。

そういう異質性を入れたシミュレーションができるようになったのは最近だという。

こういう学問的な議論をするのは結構だが、そういう不備があることを知りながら42万人死ぬという荒唐無稽な話をマスコミに売り込み、8割削減などという根拠のない数字を政府に採用させて全国民を混乱に陥れたのは、研究者の倫理に反する。

「42万人死ぬ」シミュレーションはどこが間違っていたのか - アゴラ

これが「不備」に該当するかどうかはさておき、「できるようになったのは最近」なら「知りながら」は有り得ない。 「根拠のない数字」も池田信夫氏が勝手にそう主張しているだけである。 このように、池田信夫氏は「研究者の倫理に反する」ことまで捏造している。

西浦氏が誤りを認めたのはいいが、それを文書や記者会見で公式に説明する責任がある。そしてなぜこんな誤った数字を(専門家会議を飛び超えて)政府に売り込んだのか、政府の誰がそれを採用したのかという責任の所在を明らかにすべきだ。

「42万人死ぬ」シミュレーションはどこが間違っていたのか - アゴラ

既に説明した通り、「西浦氏が誤りを認めた」という事実はないし、間違っているのは池田信夫氏の方である。 よって、西浦博氏には「責任の所在を明らかにすべき」責任などない。 池田信夫氏は、言い掛かりで他人を非難する前に、自身の責任と向き合うべきだろう。

BCG接種がコロナに効果があるかどうかはまだ証明されていないが、免疫機能において自然免疫が重要なことは確立された理論である。 宮坂氏も指摘するように、それをみないで獲得免疫だけを考える感染症対策が誤っていたのだ。

学問的には、おおむね決着がついた。

「42万人死ぬ」シミュレーションはどこが間違っていたのか - アゴラ

「学問的には、おおむね決着がついた」ことは、少なからず自然免疫なるものが存在する事実だけである。 医学的には、新型コロナに自然免疫がどれだけ有効かも、獲得免疫と比べてどちらの効果が高いかもわかっていない。 よって、「それをみないで獲得免疫だけを考える感染症対策が誤っていた」なんてことは「学問的には、おおむね決着がついた」わけがない。

自然免疫がどう機能しているのかは未知だが、獲得免疫だけで日本の驚異的に低い死亡率を説明できないことは明らかだ。

「42万人死ぬ」シミュレーションはどこが間違っていたのか - アゴラ

既に説明した通り、「日本の驚異的に低い死亡率」を対策の効果を含めない免疫(自然免疫も獲得免疫も含む)だけで説明できないことは明らかだ。

政府は理論的にも実証的にも根拠がないことを提唱者が認めた緊急事態宣言を全面的に解除し、8割削減を撤回すべきである。

「42万人死ぬ」シミュレーションはどこが間違っていたのか - アゴラ

既に説明した通り、「理論的にも実証的にも根拠がないことを提唱者が認めた」という事実はない。

よくあるのは「何もしなかったら42万人死ぬ」という予測は何かした場合のデータで否定できないという話だ。

これは論理的には正しい。 「何も介入しなかったら42万人死ぬ」という命題は仮定が偽なので、どんな結論も真になる。 たとえば「何も介入しなかったら1億人死ぬ」という命題も真である。 この対偶は「1億人死ななかった場合は何か介入したはずだ」という無意味な命題である。

このように素人だけでなく専門家にとっても、理論は事実で変えられない。 実証主義というのは、人々が思っているほど自明の原理ではないのだ。

理論は事実で変えられない - 池田信夫blog

「『何も介入しなかったら42万人死ぬ』という命題は仮定が偽」の根拠が何もないことは置いておいて、だからと言って「どんな結論も真になる」とは全く意味不明である。 もちろん、「『何もしなかったら42万人死ぬ』という予測は何かした場合のデータで否定できないという話」は、理論の真偽を現実の現象で検証するためには同じ条件で比較しなければならないということであって、「理論は事実で変えられない」ことを意味しない。 これは、理論と事実のどちらが優先するかという話ではなく、条件の違う比較では全く意味をなさないという話である。

藤井聡氏の主張 

藤井聡氏は環太平洋戦略的経済連携協定においてもトンデモ論を唱え、中野剛志氏らにISD(Investor State Dispute Settlement)危険論を唱えるよう唆していた人である。 尚、これが掲載された「新」経世済民新聞は、トンデモ経済評論家で有名な三橋貴明氏が主宰する自称新聞である。

つまり、この西浦氏作成データは、日本の(実効)再生産数が3月下旬以降「1を下回る」状況になっており、したがって3月下旬以降は、特に何の取り組みをしなくても、必然的にゼロに収束する状況になっていた事を意味しているのです。

【藤井聡】【正式の回答を要請します】わたしは、西浦・尾身氏らによる「GW空けの緊急事態延長」支持は「大罪」であると考えます。 - 「新」経世済民新聞

「日本の(実効)再生産数が3月下旬以降『1を下回る』状況」については、まとめ部分でその誤りを指摘した。

藤井聡氏は、基本再生産数と実効再生産数を混同させている。 確かに、基本再生産数が1を下回れば「特に何の取り組みをしなくても、必然的にゼロに収束する状況」と言える。 しかし、実効再生産数が1を下回れば、現状を維持することで「必然的にゼロに収束する」とは言えるが、「特に何の取り組みをしなくても」=現状の取り組みを止めても「必然的にゼロに収束する」とは言えない。 「特に何の取り組みをしな」かった場合は、基本再生産数が実効再生産数と等しくなると考えられるから、基本再生産数が1を上回る限り実効再生産数も1を上回る可能性が高い。 そして、藤井聡氏が示したグラフは、基本再生産数が1を上回っている可能性が高いことを示している。 よって、「特に何の取り組みをしなくても、必然的にゼロに収束する状況」とは到底言えない。

これはつまり、緊急事態宣言を行っても行わなくても、感染者数の推移は、現状とほとんど変わらなかった可能性を示唆しています(仮に変わったとしても、極めて僅少な差異に止まる可能性を強く示しています)

(詳しい分析に関心無い方はここは読み飛ばして下さい→) なぜなら、ここに示されている実効再生産数は、4月7日前後で変化しているとは読み取れないからです。

【藤井聡】【正式の回答を要請します】わたしは、西浦・尾身氏らによる「GW空けの緊急事態延長」支持は「大罪」であると考えます。 - 「新」経世済民新聞

「ここに示されている実効再生産数は、4月7日前後で変化しているとは読み取れない」については、まとめ部分でその誤りを指摘した。

確かに、「緊急事態宣言を行っても行わなくても、感染者数の推移は、現状とほとんど変わらなかった可能性」はあろう。 しかし、「仮に変わったとしても、極めて僅少な差異に止まる可能性を強く示して」いるとまでは言えない。

緊急事態宣言がなかった場合、それが安全宣言と解釈されれば、それまでに自発的に行われていた自粛が一斉に解除される恐れがある。 そうなった場合に、感染者数が急増する可能性があり、藤井聡氏はそれを否定する根拠を何ら示していない。

(4)4月7日の「緊急事態宣言/8割自粛」の政府判断は「間違いだった」

とは言えもちろん、これが分かったのは4月中旬以降のことですから、この4月7日時点での「緊急事態宣言/8割自粛」の「政治判断」が間違っていたと切って捨てることは必ずしも出来ません。 あのとき、多くの国民が感染爆発を危惧していたわけですから、念のために「8割自粛すべし」と言いたくなることも分からなくもありません。 だから「結果論」に基づいて「後出しじゃんけん」の様に、あのときの政府判断を一方的に批難するのはフェアーではないとも言えるでしょう。


そして、実効再生産数が1を十分に下回り、一定期間が経過しているという推計結果を出していた西浦氏らが、それにも拘わらず緊急事態延長を主張するという振る舞いは、科学者として当然求められる「誠実性」を著しく欠いた、極めて不誠実な態度である疑義が極めて濃厚であると筆者は考えます。

【藤井聡】【正式の回答を要請します】わたしは、西浦・尾身氏らによる「GW空けの緊急事態延長」支持は「大罪」であると考えます。 - 「新」経世済民新聞

「4月7日の『緊急事態宣言/8割自粛』の政府判断は『間違いだった』」については、まとめ部分でその誤りを指摘した。 藤井聡氏はそれを否定する根拠を何ら示していない。

西日本新聞 

視野を広げてくれるデータがある。 2019年の人口動態統計月報年計(概数)。 全国で1年間に死亡した人を死因ごとに分類している。 例えば、インフルエンザでは年間3571人が亡くなっている。 交通事故死は4295人に上る。

一方、新型コロナウイルス感染症でなくなった人は今月2日時点で977人。 今のところ、コロナで死亡する可能性よりも、インフルエンザや交通事故で死亡する確率の方がはるかに高いことが分かる。

それでも私たちの社会は、そのリスクを許容している。 インフルエンザで学級閉鎖はしても、地域の飲食店が休業することはない。 交通事故死もゼロを目指すなら自動車を禁止すればいいが、そこまでの議論にはならない。

【緊急事態宣言は「伝家の宝刀、一回だけ」 政府のシナリオは危うく - 西日本新聞

「そこまでの議論にはならない」と主張するなら、新型コロナについても対策を取らなかった場合の値を比較する必要がある。 しかも、インフルエンザや交通事故は1年間のデータであるが、「新型コロナウイルス感染症でなくなった人は今月2日時点で977人」とやらは1年間のデータではない。 期間の違う死亡者数を単純に比較することはできない。

オープンデータ - 厚生労働省毎日の死亡者数の累計によれば、3月〜6月の4ヶ月で968名が死亡している。 これに単純に3をかける年間相当死亡者数は2,904名となる。 それでも、インフルエンザや交通事故よりは少ないが、それは、死亡者数が少ない時期も計算に入れているからである。 何も対策を取らずに感染が拡大すれば、もっと死亡者数は増える。

同データによれば、死亡者が最も多い日は4月22日であり91名が死亡している。 これに単純に365日をかけると年間相当死亡者数は33,215名となる。 ただし、日によるばらつきが多いので最多の日の死亡者数に365日をかけると実態に合わないかも知れない。 死亡者が最も多い1週間は4月18日〜4月24日であり169名が死亡している。 これに単純に52週をかけると年間相当死亡者数は8,788名となる。 死亡者が最も多い月は5月であり、477名が死亡している。 これに単純に12ヶ月をかけると年間相当死亡者数は5,724名となる。 何も対策を取らなかったら、感染者数は増加し続けた可能性があり、その場合は、今計算した以上に死亡者数が増えていた可能性がある。

そして、7月初旬の陽性者数は緊急事態宣言直前の状態に近づいている。

日本のPCR陽性者数の推移

オープンデータ - 厚生労働省

PCR陽性増は見掛け上の感染者増ではないに根拠を記載した通り、陽性者数が増加傾向にある時は陽性率も増加傾向にあるため、実際の感染者が増えていることに疑いの余地はない。 だから、7月初旬段階で緊急事態宣言を見送れば、単位期間あたりの死亡者数は緊急事態宣言下での値を上回る恐れが大いにある。 そのことを考慮した年間の死亡者数を推計したうえで、インフルエンザや交通事故と比較するなら妥当な議論だ。 しかし、緊急事態宣言で感染を押さえ込んでいて、かつ、期間の短い死亡者数を持ち出して、「そこまでの議論にはならない」1年間のインフルエンザや交通事故の死亡者数と比較するのはインチキである。

K値 

紛れもなくK値は疑似科学である。

現在までのところ、非常事態宣言下に施された様々な施策の効果がKの傾きの変化として見えないのも全国の場合と同様である。

K値で読み解くCOVID-19の感染状況と今後の推移 - 大阪大学p.5

原理的に「非常事態宣言下に施された様々な施策の効果がKの傾きの変化として見えない」ことは当然のことである。 それは、中野貴志氏らの論文と同じ条件で日本の感染者数とK値をグラフ化してみれば一目瞭然である。

日本の感染者数とK値

オープンデータ - 厚生労働省

このように、感染者が増加から減少へと目に見える明らかな変化をしていても、「Kの傾きの変化として見えない」のである。 だから、「Kの傾きの変化」では「非常事態宣言下に施された様々な施策の効果」を読み取ることは原理的に不可能である。 詳細はK値は疑似科学の通りである。

緊急事態宣言が出る以前から市民が自発的に行動を抑制したため、施策の効果が見えにくくなったという可能性も大いにある。

K値で読み解くCOVID-19の感染状況と今後の推移 - 大阪大学p.10

「施策の効果が見えにくくなった」原因は「緊急事態宣言が出る以前から市民が自発的に行動を抑制したため」ではない。

日本の感染者数とK値

オープンデータ - 厚生労働省

このように、感染者が増加から減少へと目に見える明らかな変化をしていても、「Kの傾きの変化として見えない」のである。 「Kの傾きの変化」が指標として全く役に立たないから、「施策の効果が見えにく」いだけである。

ところが、大阪府の吉村洋文知事は6月12日、「第2回大阪府新型コロナウイルス対策本部専門家会議」終了後の囲み会見で、次のように語った。 これは3月半ばに初回が開かれ、今回、第2波に備え、国に先がけこれまでを検証すべく、再招集されたものだ。

「西浦モデルだけを信じて突き進むのは違うんじゃないか。 大阪と兵庫の往来自粛をしたときも、西浦先生の数字で、兵庫と大阪は2週間後に感染者が3千人になる、とありましたが、事実としてそうはならなかったです。 緊急事態宣言が出されたときも、8割の接触削減をしないと感染者が右肩上がりになるということでしたが、事実と適合してないわけですよね」

「吉村知事」が「8割おじさんに騙された」 西浦モデルを阪大教授が全否定した「K値」とは - Yahoo!ニュース(デイリー新潮)

「西浦先生の数字で、兵庫と大阪は2週間後に感染者が3千人になる」とは対策を取らない場合の数値であるから、対策によって「事実としてそうはならなかった」ことは「西浦モデルだけを信じて突き進むのは違うんじゃないか」とする根拠にならない。

また、「8割の接触削減」を達成したかどうかは測定困難であることは、まとめ部分で指摘した。 「8割の接触削減」を達成したかどうかが測定できない以上、「事実と適合してない」と結論づけることはできない。

西浦教授の試算は基本再生産数、すなわち1人の感染者が生み出した2次感染者数の平均値を2・5として計算していた。 だが、これはドイツにおける数値なので、日本でも欧米並みに感染が拡大する、という前提ありきの試算ということになる。

吉村知事語る「なぜ西浦モデルを誰も批判しないのか」 “42万人死亡”検証の必要性問う(p.1) - Yahoo!ニュース(デイリー新潮)

既に説明した通り、専門家会議のグラフが正しいなら、日本における基本再生産数Roが2以上であることはほぼ間違いない。

新型コロナの実効再生産数

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年 5 月 1 日)P.3

理論的に、基本再生産数Roは、常に、実効再生産数Rt以上である。 よって、このグラフが正しければ、日本における基本再生産数Roが2以上であることはほぼ間違いない。 また、基本再生産数Roが2.4以上である確率は50%以上あり、3以上の可能性もある。

それに42万人云々も、「対策をまったくとらなければ」という、ありえない前提に立っていた。

吉村知事語る「なぜ西浦モデルを誰も批判しないのか」 “42万人死亡”検証の必要性問う(p.1) - Yahoo!ニュース(デイリー新潮)

「対策をまったくとらなければ」という前提があり得るかあり得ないかを問うことの意味が不明である。

「ただ、それを振り返って事後的に冷静に検証するのは、別の議論だと思っています。 というのも、きちんと事後検証しておかないと、第2波がきたとき、また同じことをすることになってしまう。 しかし、それが本当に正しいのか、よく検証しなければいけません」

吉村知事語る「なぜ西浦モデルを誰も批判しないのか」 “42万人死亡”検証の必要性問う(p.1) - Yahoo!ニュース(デイリー新潮)

検証すべきことは言うまでもない。 しかし、検証しても西浦博氏の主張の誤りは見つからないだろう。 というのも、まず、計算の仕方についての間違いの指摘は、トンデモ論を除くと皆無だからである。 そして、計算結果についても、間違いであることを示すデータは皆無である。

むろん、西浦モデルにもとづく政策によるダメージが大きすぎたからである。

吉村知事語る「なぜ西浦モデルを誰も批判しないのか」 “42万人死亡”検証の必要性問う(p.1) - Yahoo!ニュース(デイリー新潮)

「ダメージが大きすぎた」原因が「西浦モデルにもとづく政策」によるものかどうかが全く検証されていない。

「第1波を必死に抑え込もうとした大本は、やはり西浦モデルです。 人と人との接触を8割削減しなければ感染者は指数関数的に増え、取り返しがつかなくなると言われ、緊急事態宣言を出して抑え込むことになった。 いま振り返ると、感染のピークは3月28日だったとわかります。でも、すでにピークアウトしていた4月15日、8割削減しなければ42万人が死ぬ、という試算が出された。 当時、まだ新規感染者数が増えていたので、42万人死ぬと言われたら当然、抑え込もうという話になります。 5月1日の専門家会議でも“8割削減が十分でない、6割削減では感染者はこのくらいしか減らない”という西浦モデルが登場し、緊急事態宣言を1カ月延長しよう、ということになりました。 それは違うのではないかと僕は感じて、出口戦略を示すために“大阪モデル”を作り、国にもいろいろ働きかけた。 その結果、宣言が5月末まで漫然と延びることは避けられました」

吉村知事語る「なぜ西浦モデルを誰も批判しないのか」 “42万人死亡”検証の必要性問う(p.2) - Yahoo!ニュース(デイリー新潮)

「感染のピークは3月28日だった」については、まとめ部分でその誤りを指摘した。 そのことが緊急事態宣言を批判する根拠とならないことは既に指摘した通りである。

「僕がK値に注目したのは、数字がすごく合っていたからです。

吉村知事語る「なぜ西浦モデルを誰も批判しないのか」 “42万人死亡”検証の必要性問う(p.2) - Yahoo!ニュース(デイリー新潮)

K値については「数字がすごく合っていた」などと言える根拠が何もない。 それは、中野貴志氏らの論文と同じ条件で日本の感染者数とK値をグラフ化してみれば一目瞭然である。

日本の感染者数とK値

オープンデータ - 厚生労働省

K値では、感染者数の増減傾向の変化ですら非常に読みにくい。 接触削減率と感染者数や死者数の関係性については、K値では論じることも不可能である。 それなのに、何を根拠に、吉村洋文知事は「数字がすごく合っていた」などと主張しているのか。

西浦モデルはそうなっていません。 “42万人死ぬ”とおっしゃいましたが、実際には900人です。 現実に8割削減できたのかどうか僕らにもわかりませんが、 緊急事態宣言が延長されたということは、8割に届いていなかったのだと思う。 でも42万人、亡くなっていません。

吉村知事語る「なぜ西浦モデルを誰も批判しないのか」 “42万人死亡”検証の必要性問う(p.2) - Yahoo!ニュース(デイリー新潮)

西浦博氏が「8割削減でき」なければ「42万人死ぬ」と言ったかどうかは知らない。 しかし、仮に、そう聞こえたとしても、それが言い間違いか聞き間違いであることは疑う余地がない。 何故なら、接触削減率が0割以上8割未満なら常に「42万人死ぬ」、ということは常識で考えてあり得ないからである。 だから、「42万人死ぬ」が接触削減率が0割の場合の数値であることは誰の目にも明らかだろう。 ということは、「42万人、亡くなっていません」が接触削減率が0割でないことによるものか、あるいは、「西浦モデルはそうなっていません」ことによるかは、死者数だけでは判断できない。

「緊急事態宣言が延長されたということは、8割に届いていなかった」も全く意味不明である。 「8割に届いて」いても、それを維持する必要があると判断すれば、当然、「緊急事態宣言が延長」される。 よって、「緊急事態宣言が延長された」という事実は「8割に届いていなかった」根拠たり得ない。

吉村洋文知事が「現実に8割削減できたのかどうか僕らにもわかりません」と言っていることから、接触削減率の根拠を何も持っていないことがわかる。

それなのに、西浦モデルがどのように計算されたのか、専門家がだれも批判しません」

吉村知事語る「なぜ西浦モデルを誰も批判しないのか」 “42万人死亡”検証の必要性問う(p.2) - Yahoo!ニュース(デイリー新潮)

「専門家がだれも批判しません」のは、「西浦モデル」の計算方法や実測値との比較で批判できる根拠がないからである。 文句があるなら、「西浦モデル」を批判できる根拠を示すべきだろう。

以上の通り、大阪府の吉村洋文知事は、緊急事態宣言や自粛を避けたいという結論に縛られて、K値等のそれに都合の良い話を支持しているのであって、客観的に物事を見ることができていない。 大阪府知事の立場にある者が安易に疑似科学論を流布することは大問題であろう。

印象操作による暴論 

極論を言うと、ウイルスで42万人死ぬのは「災害(自然)」ですが、マスク付けさせられて42人死ぬのは「殺人」です。 子供は行動を自分の意思で選べない存在です。 子供に対する殺人の上で守る、大人の命なんて、ありはしないのです。

子供に対する殺人の上で、

守る、大人の命なんて、無ねぇんだ

2020年8月6日午前11:17(ベーコン研究所) - Twitter

この主張には次のような印象操作が見られる。

  • 「ウイルスで42万人死ぬ」のは大人の「災害(自然)」死
  • 「マスク付けさせられて42人死ぬ」のは子供に対する「殺人」
  • 「マスク付けさせられて42人死ぬ」ことは防げない

しかし、その根拠は全く示されていない。 正しくは次のとおりである。

  • 「災害(自然)」死と「殺人」を分けるのは、死因ではなく、故意や過失が存在するかどうかで決まる
  • どちらの死にも、大人と子供が含まれる
  • 「マスク付けさせられて42人死ぬ」かどうかは対応次第

もしも、一方が「災害(自然)」死で、他方が「殺人」なら、両者を天秤にかけることは不可能である。 何故なら、純粋な「災害(自然)」死であれば、どうやっても救うことができないのだから、他方を犠牲にする意味はない。 天秤にかける余地があるということは、どちらにも救う余地があるということである。 一方を救うことで他方を見殺しにすることになるなら、どちらの死も「殺人」である。 よって、「災害(自然)」死か「殺人」かという区別は成り立たない。

わかりやすい例え話をしよう。 例えば、あなたの実子が感染症で死にかけているとする。 そして、ある医者に命を救ってくれと懇願した。 しかし、その医者はあなたの実子に何も処置をせずに見殺しにした。 それをあなたは「災害(自然)」死だから仕方ないと思うか。 いや、いや。当然、見殺しにした医者による「殺人」だと恨むだろう。 救うことができた命を怠慢で見殺しにすれば、それも立派な「殺人」なのである。

確かに、新型コロナは、若年層ほど致死率が低いとされる。 しかし、「42万人死ぬ」のであれば、その中に多数の子供も含まれる。 そして、マスクによって死ぬリスクは子供にだけあるわけではない。 呼吸器疾患、心肺機能低下、熱中症、運動等による死亡のリスクは大人にもある。 つまり、「ウイルスで42万人死ぬ」方にも、「マスク付けさせられて42人死ぬ」方にも、どちらにも、大人も子供も含まれるのである。 よって、大人か子供かという区別も成り立たない。

さらに、リスクの高い人にはマスク着用を免除すれば、マスクによる死は防げる。 リスクの高い人にマスク着用を強制しなければ、「ウイルスで42万人死ぬ」ことを救う代わりに、「マスク付けさせられて42人死ぬ」必要はない。

ようするに、この人は、「ウイルスで42万人死ぬ」を救わずに見殺しにすることを正当化するために詭弁を弄しているだけである。 中間や両立の可能性を無視して二択を迫るのが極論である。 特定の結論を正当化するために、詭弁を弄するのは、ただの暴論である。

その他 

最後に、「新型コロナにかかっても、若年層はほとんど重症化・死亡しないから平気」という説について。 これは「なぜ高齢者を守るために若者である自分たちが自粛を強いられなければならないのか」といった、インターネット上で見られる高齢者バッシングに伴って主張されることが多いようだ。

たしかに、新型コロナによって重症化・死亡する若年層は多くない。厚生労働省の集計による年齢層別の状況を見ると、死亡者の95%、重症者の84%を60代以上が占めている。

「コロナはただの風邪」と言う人が知らない事実 「検査増加で陽性者が増えた」はデータの誤読 - 東洋経済ONLINE

この後の「若年層の死亡もゼロではなく、20代でも1名、30代では4名の死亡者が出ている」は説明のピントがボケている。 実は、入院治療等を要する者は、若年層にも少なくはない。

新型コロナの年齢階級別データ

新型コロナウイルス感染症の国内発生動向(令和2年6月17日18時時点) - 厚生労働省p.2

「入院治療等を要する者」である以上、治療を何もしなかったとは考えにくい。 であれば、うち、重症者にならなかった者が殆どだが、何もせずとも回復したのか、治療の甲斐あって回復したのかはわからない。 もしも、治療の甲斐あって回復したのであれば、医療崩壊が起きれば若年層の重症者数や死者数が跳ね上がる可能性がある。 だから、医療崩壊の危険性を考慮すれば、「新型コロナにかかっても、若年層はほとんど重症化・死亡しないから平気」とは断定できないのである。

尚、入院治療等を要する者を【重症者(死者含む)÷重傷者割合は陽性者数】で計算すると、80代以上で陽性者数を超えるので、【死者+重症者(死者除く)÷重傷者割合】で計算した。 また、残念ながら30代以下は逆算するために必要なデータが不足してるため不明である。 陽性者数は累計と明記されており、死者数も累計であることは明らかであるが、重症者数(死者除く)は累計なのか、現在数なのか定かではない。 重症者数(死者除く)が累計であるならば、そこから逆算した入院治療等を要する者の合計数が累計値と合わないように思われる。 もしかすると、重症者数(死者除く)だけが現在数で記載されてるのかもしれない。

ど素人 

肺炎球菌はワクチンも抗生物質もあるのに年間10万人亡くなる肺炎の原因の1/3とされ、高齢者の致死率15%という怖い病気です。 しかし1歳児の30-50%が肺炎球菌を鼻腔に保菌しており、保育施設に入園後1-2か月で保菌率は80%以上に上昇。 成人の保菌率は3-5%程度。 そして飛沫感染です。 こちらも保菌していてもほとんどは発症しません。 コロナのように「無症状が高齢者にうつすと危ないから家にいろ」だと、国民全員もっと危険な肺炎球菌のために永遠に家から出られませんし、孫には一生会えません。 PCR陽性が爆増しているのにどうして重症者が全く増えないのか、その謎があっさり解けた!! - 永江一石のITマーケティング日記

「1歳児の30-50%が肺炎球菌を鼻腔に保菌」「保育施設に入園後1-2か月で保菌率は80%以上」であれば、保菌者を隔離治療することは、家族のコンセンサス的にも医療リソース的にも現実的とは言い難い。 また、菌を撲滅させるには抗生物質の投与が必要だが、それだけの大量の人数に抗生物質を投与すれば、耐性菌の大量発生を招く危険性もある。 「成人の保菌率は3-5%程度」であれば、抗生物質を投与せずに隔離治療すれば、「3-5%程度」は成人になっても、それ以外の人も長期の隔離が必要になり、それはとても現実的ではない。 結果、この場合は、ワクチンによる予防や発症者への抗生物質投与で対応するしかないのである。

これは新型コロナとは全く状況が違うので、参考にはならない。

正論 

元東京大学大学院理学系研究科特任助教で復旦大学生命科学学院プロフェッサーの服部素之氏は、「タイムリープ物の主人公感がパない」ほど西浦博氏の予測の的中精度が高いこと、にも関わらず、「それによりみんなが対応し」た努力で感染を押さえ込めば「狼少年呼ばわり」されることを指摘している。

西浦教授の予想的中が話題になってるけど、「このままだと7月に東京の新規感染者は1日100越えなんだよ!」と警告して、それによりみんなが対応して予想が実現しないと狼少年呼ばわりだし、予想が的中した時には手遅れだしで、タイムリープ物の主人公感がパない。 8割おじさん時間跳躍者説。

2020年7月2日午後5:40(HattoriM) -Twitter

東京海洋大学 産学・地域連携推進機構 准教授の勝川俊雄氏は、「みなが望む結果を提示しているかどうか」で評価されるため、8割おじさんは「予測が当たっても非難される」、K値は「占いが外れても持て囃される」と指摘している。

予測が当たっても非難される8割おじさんと、占いが外れても持て囃されるK値の違いは、みなが望む結果を提示しているかどうかなんだろうな。

2020年7月11日午前8:01(勝川俊雄) -Twitter

作家の山本一郎氏の次の指摘は至極もっともである。

にもかかわらず、感染症数理モデルも理解できず、西浦博さんの論文(エッセイ)の中身も分かっていなさそうな門外漢である池田信夫さんが「日本人には集団免疫がある」「(結核に対するワクチンである)BCGワクチンがコロナウイルスに効いていたようだ」などと現段階ではエビデンスのない俗説を流し、新型コロナウイルスに対する過剰反応は望ましくないなどとする主張を繰り返しています。

検証の結果、実はBCGワクチンが効いていた、という可能性は残されています。 しかし、現段階で何の根拠もなく池田信夫さんが「BCGワクチンは効く」と主張している内容が当たっていたとしても、それは何の検証も行わず、発言の責任も取らない占いような外野の意見がたまたま当たったに過ぎません。

もちろん、検証不能でも議論自体は必要なことです。 経済をきちんと回しながら感染症対策も可能なニューノーマル、アフターコロナの社会を作っていくために必要な議論も含まれています。 しかしながら、だからと言って、結果論や後講釈だけでなく、確証などどこにもない集団免疫やBCGワクチンの効果を強調してコロナに対する専門家や医療クラスタの血のにじむような努力を軽視する議論をするのは無闇な社会の分断を生み、無価値なだけでなく有害だとすら思います。

根拠なく「緊急事態宣言は要らんかったんや」と言い出す知識人が増えている問題 - 文春オンライン

正確なことがわからない段階で対策を立てなければならない状況で、専門家から得られる情報が必ずしも正確ではないことは事実である。 しかし、そのことは、「結果論や後講釈」に基づいて「エビデンスのない俗説を流し、新型コロナウイルスに対する過剰反応は望ましくないなどとする主張を繰り返」すことを正当化しない。 正確なことがわからない段階で素人が素人考えでシャシャリ出ても余計に社会を混乱させるだけである。

次の指摘も至極もっともである。

藤井聡氏は「3月末が感染のピークで4/8開始の緊急事態宣言は意味がなかった」と批判している。 では、3月末に感染者が減り始めた理由は何だろうか? もちろん免疫だのといった静的な属性に帰着するのは難しいだろう(それが再生産数を動的に変えるのは人口の数割が感染してからである)。

再生産数が短期間に劇的に減少していることからも免疫獲得等ではなく何らかの政策的介入の効果と考えるのが妥当だが、帰国者は4月頭まで数は多く、自衛隊が帰国者検疫の補助に出たのは4/4のことである。

「3月末」にぴたりとあてはまるのは、小池知事が西浦氏をはじめとする専門家会議の提言をもとに「夜の街」の自粛に踏み切ったタイミングである(3/27がピークになっているが、この日が金曜で土日からstayhomeと夜の街を控えることが推奨された)。 あくまで疑似相関が出やすい時系列相関なので因果を断言できるとは言えないが、これが一番可能性が高いであろう。

つまり当時の状況としては、夜の街が怪しい →3月末から都道府県が自粛要請、帰国者の持ち込みが多い →4/4にやっと国が対策、それでも保健所の追跡能力の限界で様子が分からないので安全側に倒して4/8に緊急事態宣言という状況であり(当時の資料もそうである)、「夜の街が怪しい」が的確だったからこそ藤井氏の言う「緊急事態宣言は実は不要だったのでは」という状況を作ることができた、と推測できる。

いまさら西浦批判って、よくわからない - note

このように、緊急事態宣言以前に出されていた情報や自粛要請は多々あった。

藤井先生は「3月下旬以降は、特に何の取り組みをしなくても収束する状況だった」と言いますけれど、3月下旬までに日本ではいろんなことが起きています。 「4月7日に緊急事態宣言を出しました」といっても、緊急事態宣言以前と以後で世の中がドーンと変わったわけではありません。

でも今回の新型コロナウイルス対策の場合は、緊急事態宣言というのでどんと何かが変わったわけではなくて、その前後でいろんなことが起きましたね。

東京オリンピックが延期になったのが3月24日でした。

小池東京都知事が「不要不急の外出を自粛しましょう」と言ったのが3月25日です。

志村けんさんがお亡くなりになったのは3月29日です。

西浦先生が「対策がゼロだったら40万人死亡するかもしれない」と発表されたのは4月15日です。 ぼくも4月3日に「少なくとも東京都ではロックダウンしたほうがいい」と主張しています。

つまり、緊急事態宣言の前後でいろんなことが五月雨式に起きていたわけです。 また、今回の緊急事態宣言には罰則規定がありませんので、その効果も即座に表れるわけではありませんでした。

岩田健太郎医師「日本で感染爆発が押さえられた要因とはなんだったのか」【緊急連載②】(p.6) - exciteニュース

皆さんも実感されているでしょうし、ぼくも兵庫県で観察してて思ったんですが、緊急事態宣言が出てから2週間くらいは、街の雰囲気はそんなに変わってなかったですよね。 外に出る人も多かったし、みんなわりと通勤していたし、罰則規定がないですからお店も開いてた。

その前後で、たとえば西浦先生が「40万人死ぬかもしれない」と言ってみたり、いろいろな人が「STAY HOME」というメッセージを出してみたり、また志村けんさんや岡江久美子さんがお亡くなりになったりといろいろなことが起こって、緊急事態宣言から2週間くらい経った時には、気が付くと外を歩いている人がほとんどいない状態、電車に乗ってもガラガラな状態が徐々につくられていったわけです。

ですから、緊急事態宣言を出した4月7日以前と以後を直接比較して、例えば時系列解析をして、新規感染者のトレンドや切片に変化がないことを議論するのはふさわしくありません。

緊急事態宣言の前後でもいろいろなことがなされていて、それの総体として増加率が減少したんです。

岩田健太郎医師「日本で感染爆発が押さえられた要因とはなんだったのか」【緊急連載②】(p.6) - exciteニュース

岩田健太郎氏は、緊急事態宣言以前に出されていた情報や自粛要請だけでなく、緊急事態宣言以降についても言及している。 以下の話は非常にためになるのでぜひ読んでもらいたい。

まずはじめに確認したいのですが、西浦博先生が日本の感染対策にもたらした貢献はものすごく大きいと、ぼくは思っています。 今回の日本におけるコロナの第一波が、少なくとも先進国のなかでは相当よく押さえつけられていた理由は複数あると思っていますが、少なくともその一因が西浦先生にあるのは、まず間違いないと思います。

ただしその「貢献」というのは(ここでよく話がすり替わるのですが)「西浦先生の意見が正しい、間違っている」とか「議論・データ・推論が正確だ、不正確だ」とか、そういう意味での貢献度の話ではありません。

そもそも科学の世界においては、誰かが「100%正しい」「100%間違っている」というのはまずありえないことです。 どんな科学者だって、正しかったり、正しくなかったりする。 カッティングエッジな未知の領域を切り開いていく科学領域においては、特に今回のような新興感染症については当然のことです。 その中で「全く間違えない」人がいたとしたら、その人は科学領域という観点からは「何もやっていない」のです。

ですから、提唱する仮説が事後的に正しかったか、間違っていたかという側面において人物を評価することはナンセンスだとぼくは思っています。 「貢献度が非常に大きい」というのと、データや分析が逐一正しかったか間違っていたかは分けて考えなければいけません。

今回のコロナ対策における西浦先生の貢献は、反実仮想によって、「西浦先生がいらっしゃらなかった日本だったら、どうなっていたか」という視点で考えるべきなんです。

岩田健太郎医師「感染爆発を押さえた西浦博先生の『本当の貢献』とは」【緊急連載①】(p.3) - exciteニュース


当時は、現実・データ・ファクト・サイエンスといったものを基に政策を決めることがなく、むしろ観念や手続き、形式が優先されていたわけです(今でも、多分にそうです)。 蓋を開けてみたら死亡率2%でもなんでもなかったのですが、そのせいで方向転換も遅くなって現場も大変でした。 軽症、あるいはすでに治癒したインフル患者を重症扱いで対応しなければならなかったからです。

そこから考えると今回の新型コロナウイルスの対策では、データやモデルを活用し、それを基にした推論を根拠にして、いわばevidence-based health policy(エビデンスに基づいた医療政策)でいきましょう、という流れができたわけです。 これは大きな前進です。

岩田健太郎医師「感染爆発を押さえた西浦博先生の『本当の貢献』とは」【緊急連載①】(p.4) - exciteニュース

今回、専門家会議が招集される前は、政府の人たちは「コロナ対策として〇〇をします」とは言うんですが、「なぜ〇〇するのか」を説明しないし、「〇〇をすることで、△△というアウトカムを出す」という目標や狙いを一切言いませんでした。 典型的にはダイヤモンド・プリンセスの感染対策がそうでした。 理由や目標を言わないので、どんな結果がでてきても、感染者が増えたり、DMATや厚労省、検疫所の感染者がでても「失敗した」「間違っている」という結果にはならない。 「適切だった」「問題はなかった」と言い抜けることもできました。

しかし専門家会議の招集後は、安倍首相も記者会見で「〇〇というデータに基づいて、△△の目標を目指しましょう」と明言するようになりました。 例えば「8割の人の外出を減らす」などの見通しが、きちんと立つようになりました。

今までだったら目標がないんだから、現実にはどんなに失敗していてもアナウンスの上では百戦百勝なわけですが、今回は「この目標を目指します」と明言したからこそ、「うまくいった、いかなかった」という議論ができるわけです。

このように議論の土台を作り、「評価が可能になった」こと自体が、日本の感染症対策においては巨大な前進なんです。

それなのに「西浦先生が言っていた数字、違ってたじゃない」みたいなことをあげつらって袋叩きにしていたら、「じゃあ数字なんて出すな」って話になり、また元に戻ってしまう。

検証可能な数字で議論をせず、「一生懸命やります」「頑張ります」「最善を尽くします」とだけ言っていれば、なにが起きても「失敗した」という結果にはならない。 そっちに戻ったほうがいいのかって話ですよ。 そんなわけないでしょう。

岩田健太郎医師「感染爆発を押さえた西浦博先生の『本当の貢献』とは」【緊急連載①】(p.5) - exciteニュース

だから、「西浦先生がいらっしゃらない世界」と「いらっしゃる世界」のどっちがまともな世界かというと、当然いらっしゃったほうがいいに決まってるんです。

我々感染症の専門家は、それ以前の暗黒時代をよく知っているので、「そっちに戻すのは論外だ」と申し上げたいんです。

今回の第一波に関して、「うまく乗り切った」と言っていいかは様々な意見があるでしょうが、少なくとも「最悪の事態は免れた」と言ってもいいでしょう。 想定できるいくつかのシナリオの中で一番悪いシナリオにならなかったことは間違いない。 ニューヨーク市やイタリアのような悲劇は日本では起きなかったのですから。 そして、その悲劇は「最悪のシナリオの可能性」として関係諸氏の頭には常にあったはずです。

そこにはもちろんいろいろな人の貢献があります。 西浦先生の貢献だけがすべてだと申し上げるつもりはまったくないのですけど、ここまで挙げてきた理由で、「西浦先生がいらっしゃらなかったらこうはならなかった、もっと悪い話になっていた可能性が高い」というのは間違いない。 これが議論の前提です。

岩田健太郎医師「感染爆発を押さえた西浦博先生の『本当の貢献』とは」【緊急連載①】(p.6) - exciteニュース


前提条件の正確さには当然限界がありますし、数理モデルは現実に起きていることを完全に表現することはできません。 ただし、仮説として何かを代入しなければ話が全然できないので、まず話の俎上に「こういう条件下ではこうなりますよ」というものを置くわけです。

だから「条件を変えてやれば当然違う結果が起きますよ」ということを、モデルと条件と結果を、提示された我々一人ひとりが議論すればいい。 前提をまったく見ないで、その結果だけを見て「NO」というのは乱暴な議論です。 西浦先生は前提条件をちゃんと開示しているわけですから、少なくとも西浦先生の問題ではない。 それは読み手の問題、解釈者の問題だと言うべきでしょう。

岩田健太郎医師「感染爆発を押さえた西浦博先生の『本当の貢献』とは」【緊急連載①】(p.7) - exciteニュース


さらに言えば、普通は未来の予測をする場合は、最悪のシナリオを想定して、「そうならないようにしましょう」と警告を立てるのが定石です。 だから「いいほうの数字で計算すればもっといい話になっていたはずだ」みたいなのはまったく間違った考え方で、プロっていうのは普通は、「悪いほうのシナリオ」で想定を立てて対策を打ち、「そうならなくてよかったね」という状況に持っていくわけです。

岩田健太郎医師「感染爆発を押さえた西浦博先生の『本当の貢献』とは」【緊急連載①】(p.8) - exciteニュース

以下にポイントを書き出す。

  • 科学の世界においては、誰かが「100%正しい」「100%間違っている」というのはまずありえない
  • 事後的な結果論で評価することはナンセンス
  • 目標を明確に示さないと後から検証できない
  • 今回の第一波に関して、少なくとも「最悪の事態は免れた」
  • 「西浦先生がいらっしゃらなかったらこうはならなかった、もっと悪い話になっていた可能性が高い」というのは間違いない
  • 前提条件の正確さには当然限界がありますし、数理モデルは現実に起きていることを完全に表現することはできません
  • 仮説として何かを代入しなければ話が全然できないので、まず話の俎上に「こういう条件下ではこうなりますよ」というものを置く
  • 前提をまったく見ないで、その結果だけを見て「NO」というのは乱暴な議論
  • 未来の予測をする場合は、最悪のシナリオを想定して、「そうならないようにしましょう」と警告を立てるのが定石

総合案内

科学一般

疑似科学等

医学

地震

電磁気学

相対性理論

量子力学

基本

標準理論

解釈等

実験・思考実験

外部リンク