「PCR開発者が検査に使えないと証言」の嘘

はじめに 

このページは「日本は諸外国よりCt値を高く設定している」の嘘の一部である。 以下も参考に。

ネット上の情報を鵜呑みにする前に 

ネット上の陰謀論等を目にして「俺は真実に覚醒した」と思っている人は、是非、新型コロナの主要なデマに掲載した高知東生氏の次の言葉に耳を傾けてほしい。 以下は特に重要。

  • 裏を読む以前に、表の仕組みすら何も知らない
  • 誰でも見れる情報「本当の真実」は裏ではない
  • 都合のいい妄想ってつなぎ合わせただけで案外辻褄があう

裏を探そうと世界中のジャーナリストが躍起になっている。 専門に情報を追っている人でさえ簡単に見つけられない情報を一般人が簡単に見つけられるわけがない。 それに気づいた高知東生氏こそが本当の覚醒者である。 それに気づかない人は、未だ、自らが覚醒者だと勘違いした妄想の中に漂っている。

PCRの開発者のKary Mullis氏の証言 

Kary Mullis氏が「PCRは感染判定に使えない」と証言したとのデマは既にReutersのFact Check teamに看破されている。

Social media users have been sharing a quote attributed to the inventor of the Polymerase Chain Reaction (PCR) test, currently being used to detect COVID-19, which says “PCR tests cannot detect free infectious viruses at all”. This quote appears not to be a direct quote from the inventor, Kary Mullis, has lost some context and does not mean COVID-19 testing is fraudulent, as suggested by some social media posts.

現在COVID-19の検出に用いられているポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査の考案者によるとされる発言「PCR検査では、遊離した感染性ウイルスはまったく検出できない」がソーシャルメディアユーザーから引用されている。 この引用は、発明者であるKary Mullisからの直接の引用ではなく、一部の文脈が失われており、一部のソーシャルメディアの投稿が示唆しているように、COVID-19のテストが不正であることを意味するものではない。


The post begins with the words “COVID-19 TEST a FRAUD?”, then introduces the alleged quote from Mullis, who invented the PCR method in 1985 and was recognized for this achievement by being awarded the Nobel Prize in Chemistry in 1993.

投稿は「COVID-19 TEST a FRAUD?」という言葉で始まり、1985年にPCR法を発明し、1993年にノーベル化学賞を受賞したMullisからの引用が紹介されている。

However, the quote is actually from an article written by John Lauritsen in December 1996 about HIV and AIDS, not COVID-19.

しかし、この引用文は実際には、1996年12月にJohn Lauritsenが書いたHIVとAIDSに関する記事からのもので、COVID-19のものではない。

The context around the quote shows Lauritsen is not saying PCR tests do not work. Instead, he is clarifying that PCR identifies substances qualitatively not quantitatively, detecting the genetic sequences of viruses, but not the viruses themselves: “PCR is intended to identify substances qualitatively, but by its very nature is unsuited for estimating numbers. Although there is a common misimpression that the viral load tests actually count the number of viruses in the blood, these tests cannot detect free, infectious viruses at all; they can only detect proteins that are believed, in some cases wrongly, to be unique to HIV. The tests can detect genetic sequences of viruses, but not viruses themselves.”

引用文の前後の文脈は、LauritsenがPCR検査が機能しないと言っていないことを示している。 その代わりに、PCRは物質を定量的ではなく質的に同定し、ウイルスの遺伝子配列を検出するが、ウイルス自体は検出しないことを明らかにしている。 「PCRは物質を定性的に同定することを意図しているが、その性質上、数を推定するには不向きである。 ウイルス負荷試験は実際に血液中のウイルス数を数えるという一般的な誤解があるが、これらの試験は遊離の感染性ウイルスを全く検出できない。 HIVに特有であると誤って信じられているタンパク質しか検出できない場合もある。 ウイルスの遺伝子配列は検出できるが、ウイルス自体は検出できない。」

Even if Mullis had voiced a similar statement before his death in 2019, this quote does not mean the PCR test is unable to detect the presence of SARS-CoV-2 - the virus that causes COVID-19 - rather that it cannot determine whether the individual tested is infectious.

マリスが2019年に亡くなる前に同様の声明を発表したとしても、この引用は、PCRテストがSARS-CoV-2(COVID-19を引き起こすウイルス)の存在を検出できないことを意味するのではなく、検査を受けた個人が感染性であるかどうかを判断できないという意味である。


A spokesperson for Public Health England told Reuters why PCR tests are being used widely in England: “Molecular diagnostic tests, such as real-time PCR, are the gold standard methods for identifying individuals with an active viral infection, such as SARS-CoV-2 (the cause of COVID-19 disease), in their respiratory tract. These tests are rapid and produce results in real-time.

Public Health Englandの広報担当者はロイターに、PCR検査が英国で広く使用されている理由について次のように語った。 「リアルタイムPCRなどの分子診断検査は、気道にSARS-CoV-2(COVID-19症状の原因)などの活動性ウイルス感染者を特定するためのゴールドスタンダードの方法である。 これらのテストは迅速で、リアルタイムで結果を生成する。」

“It is important to note that detecting viral material by PCR does not indicate that the virus is fully intact and infectious, i.e. able to cause infection in other people. The isolation of infectious virus from positive individuals requires virus culture methods. These methods can only be conducted in laboratories with specialist containment facilities and are time consuming and complex.”

「PCRによるウイルス物質の検出は、ウイルスが完全に無傷で感染性があること、つまり他の人に感染を引き起こす可能性があることを示すものではないことに注意することが重要ある。 陽性者から感染性ウイルスを分離するには、ウイルス培養法が必要である。 これらの方法は、専門の封じ込め施設を備えた実験室でのみ実施でき、時間がかかり、複雑である。」

Fact check: Inventor of method used to test for COVID-19 didn’t say it can’t be used in virus detection - Reuters

ポイントは以下の3点。

  • Kary Mullis氏の発言は1990年代のもの
  • Kary Mullis氏は定性PCRの発明者であって、感染症の診断に使われる定量PCRを開発していない
  • Kary Mullis氏は主流学説に逆張りするエキセントリックな発言が多い
    • HIVエイズ原因説否定(本件発言はその根拠として発言されたもの)
    • 地球温暖化否定
    • フロンガスによるオゾン層破壊否定

実は、Kary Mullis氏は自著の中で「感染症の診断にも利用できる」と明言している。

PCRに高額の装置は必要ない。 PCRによって超微量のDNAを検出できる。 そして、それを何十億倍にも増幅できる。 しかもごく短時間のうちに。

この方法は遺伝子疾患の診断にも有用だ。 これで個人の遺伝子の中の病気を見つけることができる。 培養して調べることが難しい病原体の遺伝子を検出できるので、感染症の診断にも利用できる。 PCRは犯罪捜査でも力を発揮する。 微量の証拠品、たとえば精液、血痕、毛髪から犯人が誰かを言い当てることができる。 PCRはまったく新しい分野も開拓しうる。

「マリス博士の奇想天外な人生」(ISBN-10:4150502900;,ISBN-13:978-4150502904,著:Kary Mullis,訳:福岡伸一)p.162

巻末には「本書は、二〇〇〇年二月に早川書房より単行本として刊行された作品を文庫化したものです」と書かれているので、「PCRは感染判定に使えない」と証言したとされる時期より後のものである。 Kary Mullis氏の証言は、HIVエイズ原因説と絡めたものである。 そこで、その辺りのKary Mullis氏の見解を本書から抽出してみよう。

HIVはある日突然、熱帯雨林やハイチから出現したものではない。 HIVはまさにある日突然、ロバート・ギャロの手中に現われたのである。 それは、彼が新しい経歴を必要とした時と一致している。 HIVは昔からこの地球上に存在していたのだ。 大都市のエイズ患者だけを対象にHIVを捜すから、HIVが都市に限局してるいるように見えるのである。 一度それをやめてみれば、HIVがどこにでも存在する普遍的で無害なウィルスであることに気づくだろう。

「マリス博士の奇想天外な人生」(ISBN-10:4150502900;,ISBN-13:978-4150502904,著:Kary Mullis,訳:福岡伸一)p.265

彼は「HIVがどこにでも存在する普遍的で無害なウィルス」の可能性を指摘している。 仮に、全ての患者から特定のウィルスが検出されたとしても、感度を上げれば無関係な「どこにでも存在する普遍的で無害なウィルス」は検出されてしまう。 1990年代に主流であった定性PCRが定量的な測定には向かないこともあって、少量の「どこにでも存在する普遍的で無害なウィルス」を検出しただけかもしれない。

彼は、感度を上げるとバックグランドノイズを拾ってしまうとも言ったようである。 しかし、ここで言うバックグランドノイズとは、この著書における「どこにでも存在する普遍的で無害なウィルス」のことである。 それは、HIV否定論においては、HIV以外のウィルスではなく、HIVそのものなのである。 確かに、PCR検査ではAIDS患者からHIVを検出しており、それはHIV以外のウィルスを誤検出したわけではない。 しかし、そのHIVがAIDS患者から検出された理由は、AIDSの原因病原体だからだとは限らず、「どこにでも存在する普遍的で無害なウィルス」だったのかもしれない。 感度を上げ過ぎれば少量の、すなわち、バックグランドノイズに過ぎない「どこにでも存在する普遍的で無害なウィルス」を検出している可能性がある。 だから、彼は、HIVを検出した事実をもってそれがAIDSの原因病原体と断定するのは間違いだと言っているのである。 まとめると、彼は、HIVを対象としたPCR検査でHIV以外のウィルスを検出したと言っているのではなく、間違いなくHIVを検出した前提でそれがAIDSの原因病原体ではないと主張しているのである。

つまり、彼は、未知の感染症の病原体の特定に(定性)PCRは使えないと言ったのである。 既に病原体が特定されている感染症の診断に使えないと言ったのではない。 彼は、PCR検査が対象外のウィルスを誤検出する可能性について言及したわけではないのだ。 対象のウィルスを正しく検出しても、それが病原体である根拠にはならないと言っているだけである。 先ほど紹介した通り、既に病原体が特定されている感染症については、彼は「感染症の診断にも利用できる」と明言しているのである。

HIV懐疑論に染まったKary Mullis氏は、積極的に講演でHIV懐疑論を主張するようになる。

調べれば調べるほど、私は遠慮せずに発言するようになった。 人々が無用な薬を投与されて死んでいくのに、責任ある科学者がこれを是としている。 私は黙っていられなくなった。

仲間からかえってきた反応は、君の言うことにも一理ある、というものから、完全に悪意に満ちたものまで、さまざまだった。 私はスペインのトレドで行われるヨーロッパ臨床研究連合で、PCRについて講演するように求められた。 私はPCRについてではなく、かわりにHIVとエイズについて話したいと申し入れた。


だから、私は無責任とは思わない、と答えた。 座長はそれで十分だと言って、講演を突然終了した。

「マリス博士の奇想天外な人生」(ISBN-10:4150502900;,ISBN-13:978-4150502904,著:Kary Mullis,訳:福岡伸一)p.268,269

Kary Mullis氏が「PCRは感染判定に使えない」と証言したとの主張は、その一部を切り取ったものである。 しかし、先ほど紹介した通り、彼は、既に病原体が特定されている感染症の診断に使えないと言ったのではない。 既に病原体が特定されている感染症については、それより後に「感染症の診断にも利用できる」と明言しているのである。

尚、「人々が無用な薬を投与されて死んでいく」は事実無根であり、現在はHAART療法でAIDSによる死亡をほぼ抑制できている。 HIVが原因病原体であることを前提にAIDSの治療法が格段に進歩した現在、HIVがAIDSの原因病原体であるかどうかに疑義をつけることは完全な周回遅れであろう。

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