「水でも陽性になる」の嘘

はじめに 

このページは「日本は諸外国よりCt値を高く設定している」の嘘の一部である。

ネット上の情報を鵜呑みにする前に 

ネット上の陰謀論等を目にして「俺は真実に覚醒した」と思っている人は、是非、新型コロナの主要なデマに掲載した高知東生氏の次の言葉に耳を傾けてほしい。 以下は特に重要。

  • 裏を読む以前に、表の仕組みすら何も知らない
  • 誰でも見れる情報「本当の真実」は裏ではない
  • 都合のいい妄想ってつなぎ合わせただけで案外辻褄があう

裏を探そうと世界中のジャーナリストが躍起になっている。 専門に情報を追っている人でさえ簡単に見つけられない情報を一般人が簡単に見つけられるわけがない。 それに気づいた高知東生氏こそが本当の覚醒者である。 それに気づかない人は、未だ、自らが覚醒者だと勘違いした妄想の中に漂っている。

真相 

デマの元になったオリジナルソースは COVID-19診断用核酸増幅検査薬一斉試験の結果報告(公開版)2021年2月26日 - 国立医薬品食品衛生研究所 である。

ダナフォーム SmartAmp (PCR検査ではない) 

ウイルスRNAを用いた核酸増幅検査薬の一斉試験において、特定の1製品が特定の測定プレートと特定の測定装置の組み合わせでのみ、0コピーのサンプルで陽性率が33%となった。

企業名(五十音順) 製品名 500コピー 200コピー 50コピー 20コピー 5コピー 0コピー
MBL(医学生物学研究所)MEBRIGHT SARS-CoV-2キット100%100%100%100%83%0%
シスメックス2019-nCoV検出蛍光リアルタイムRT-PCRキット100%100%100%92%67%0%
島津製作所2019新型コロナウイルス検出試薬キット(Ampdirect 2019-nCoV 検出キット)100%100%100%100%100%0%
タカラバイオSARS-CoV-2DirectDetection RT-qPCR Kit100%100%100%100%67%0%
ダナフォームSmartAmp 2019新型コロナウイルス検出試薬100%100%100%50%33%33%
東洋紡新型コロナウイルス検出キットSARS-CoV-2 Detection Kit(N1,N2set)100%100%100%83%75%0%
富士フイルム和光純薬SARS-CoV-2 RT-qPCR Detection Kit100%100%100%100%92%0%
プロメガGoTaq®Probe 1-Step RT-qPCR System(研究用試薬/COVID-19専用PCR検査薬ではない)100%100%100%100%67%0%
ライフテクノロジーズジャパンTaqPath 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)リアルタイムPCR検出キット100%100%100%83%0%0%

COVID-19診断用核酸増幅検査薬一斉試験の結果報告(公開版)2021年2月26日 - 国立医薬品食品衛生研究所p.11

この件は既に検証済である。

ダナフォーム社による検証の結果,今回の測定プレートと測定装置の組み合わせ〔MicroAmp Optical 96-Well Reaction Plate(#N8010560)およびABI7500〕を用いると,376回の検査のうち,47回で当該現象(以下,偽陽性と表記)が発生することが確認された. 一方,例えば,測定プレート「Multiplate PCR プレート(#MLL9651)」および測定装置 「CFX96 Touch」の組み合わせでは,352回の検査で偽陽性は一例も観察されなかった. すなわち,偽陽性が生じる組み合わせと生じない組み合わせがあることが判明した.

既に関連検査施設には「偽陽性が生じないことが確認された組み合わせ」のみを使用するよう周知されている. また,取扱説明書においても同様の説明がなされている.

偽陽性が生じる原因については同社で解析中であるが,最適化された反応温度(67°C)および反応時間(45分)が正確に設定されていることが重要であることが判明しており,この点に留意が必要である.

詳細はダナフォーム社の検証結果報告書を参照.

COVID-19診断用核酸増幅検査薬一斉試験の結果報告(公開版)2021年2月26日 - 国立医薬品食品衛生研究所p.12

尚、本製品のダナフォーム SmartAmpは等温増幅であってPCRではない。

企業名 (五十音順) 製品名 添付文書または説明書で指定あるいは例示された測定機器 (2020年8月時点) 反応原理 反応時間 増幅領域 プライマー
MBL(医学生物学研究所)MEBRIGHT SARS-CoV-2 キットなしPCR通常N2
シスメックス2019-nCoV検出蛍光リアルタイムRT-PCRキット7500 Fast DXPCR通常ORF1ab1
島津製作所2019 新型コロナウイルス検出試薬キット (Ampdirect 2019-nCoV 検出キット)QuantStudio 5, CFX-96DeepWellPCR通常N2
タカラバイオSARS-CoV-2 Direct Detection RT- qPCR KitCy5が検出可能な リアルタイムPCR装置PCR迅速N2
ダナフォームSmartAmp 2019 新型コロナウイルス検出試薬LightCycler480,ABI7500,Mx3000など等温増幅迅速ORF1ab (NSP15)1
東洋紡新型コロナウイルス検出キット SARS-CoV-2 Detection Kit (N1, N2 set)LightCycler480, 7500 Fast, QuantStudio 5 などPCR通常N2
富士フイルム 和光純薬SARS-CoV-2 RT-qPCR Detection KitなしPCR迅速N2
プロメガGoTaq® Probe 1-Step RT-qPCR System (研究用試薬/COVID-19専用PCR検査薬ではない)なしPCR通常N2
ライフテクノロジーズジャパンTaqPath 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2) リアルタイム PCR 検出キット7500 Fast DX, QuantStudio 5 DxPCR通常ORF1ab, S, N3

COVID-19診断用核酸増幅検査薬一斉試験の結果報告(公開版)2021年2月26日 - 国立医薬品食品衛生研究所p.9

「COVID-19診断用核酸増幅検査薬一斉試験」に関する検証結果報告書 - 株式会社ダナフォームによれば、キット製造会社が27通りの組み合わせを検証して9通りの組み合わせで偽陽性が発生している。 全ての機器の試行回数が等しい前提で平均すると偽陽性率は1.09%となる。 以下も踏まえれば偽陽性の実質リスクはかなり小さいものと推定される。

  • 本製品は等温増幅であって、主流のPCR検査ではない
  • 等温増幅の製品は他社の製品もある

また、顧客に対して使用実績の確認を行ったとのこと。

上記試験と並行して、これまでの販売先には実際に使用されている機種およびプレートの確認を行った結果、偽陽性が発生するリスクのある機器とプレートとの組み合わせで使用されていた機関は一切ないことを確認した(表2-1および表2-2)。

「COVID-19診断用核酸増幅検査薬一斉試験」に関する検証結果報告書 - 株式会社ダナフォーム

使用実績がなかったので、結果として、実際の検査での本件問題による偽陽性は1件も発生していない。 また、推定される原因は次のとおり。

①反応温度:

Smart Amp™️ 2019新型コロナウイルス検出試薬の反応温度は67°Cに至適化されている。 低温領域(<65°C)で反応させた場合、蛍光物質Eprimerを含むプライマー同士で生じるプライマーダイマーが増幅されてしまい、偽陽性となる可能性がある。 また、至適化温度よりも高温領域(>70°C)で反応させた場合は、プライマー同士の配列選択性がまったくなくなってしまい、増幅反応が起こらなくなってしまう。 これらの現象は、PCR反応でも実際に発生する。


②PCRウェルプレートの材質:

設定時間(40分)内においては、指定の機種および指定の不透明なホワイトプレートを用いる限り、Smart Amp™️ 2019新型コロナウイルス検出試薬においても、偽陽性は確認されていない。 一方で、設定時間を超越して長時間反応を行った場合、ホワイトプレートと比較すると、クリアプレートにおいては、偽陽性が発生してしまう頻度が高いことが確認された。 これは、プレートの材質の違いによるプレート内反応溶液の温度の差が原因となっている可能性が考えられたため、各メーカーにプレートの材質の確認を進めているが、詳細情報を提供されない製品が多く、引き続き詳細は検証中である。


③リアルタイムPCR装置の機種間差:

温度、時間、サイクル数等、PCR反応を実施する際の設定は、PCR反応に至適化されたプログラムとなっている装置が多い。 このため、等温増幅反応の制御に必要不可欠な蛍光シグナル取得にかかる時間を考慮していない装置もある。 この場合、等温増幅反応においては、装置が示す反応時間よりも実際の反応時間の方が長くなってしまっている機種もある。 これらの機種を用いると、スマートアンプの本来の検出時間を超越して反応させることになり、結果として過剰反応による非特異的な増幅産物が偽陽性として検出されうる。 つまり、蛍光取得時間も含めた機器間における反応時間を正規化する必要がある。

「COVID-19診断用核酸増幅検査薬一斉試験」に関する検証結果報告書 - 株式会社ダナフォーム

いろいろ言い訳臭いが、ようするに、この会社が十分な検証のないまま組み合わせ例を紹介したことが主たる原因だろう。 つまり、発売前にちゃんと検証した組み合わせ例のみを紹介すれば問題ない。 現在は取扱説明書が改訂されているので、今後は同様の偽陽性は発生しないだろう。

MBL(医学生物学研究所) MEBRIGHT 

MBL(医学生物学研究所)のMEBRIGHT SARS-CoV-2 キットにおいても、模擬ウイルスを用いた核酸増幅検査薬の一斉試験で0コピー/mLで17%(6回中1回のみ)が陽性となったが、これは追加検証の結果、「操作上のミス(コンタミネーション)による検出」とされている。

MBL社「MEBRIGHT SARS-CoV-2キット」では,模擬ウイルスを入れていない陰性コントロー ル(0コピー/mL)について,17%(1/6)が「陽性」と判定された(表中*ピンクで表示). MBL社における追加検証の結果,同一の陰性検体を合計279回検査しても同じ現象は再現されず,「操作上のミス(コンタミネーション)による検出」と考察された. 詳細はMBL社の検証結果報告書を参照.

COVID-19診断用核酸増幅検査薬一斉試験の結果報告(公開版)2021年2月26日 - 国立医薬品食品衛生研究所p.16

試験結果 

この試験結果を検査の信頼性を揺るがすものとした報道は正しくない。 実際は逆である。

その結果、試験をおこなった核酸増幅検査薬はいずれも 4300コピー/mLのウイルス検体を検出できることが明らかとなりました。 今回の一斉試験により、本試験の対象となったCOVID-19診断用核酸増幅検査薬について、一定の信頼性があることが確認されました。

「COVID-19 診断用核酸増幅検査薬一斉試験の結果報告」を公開しました - 国立医薬品食品衛生研究所

偽陽性はごく稀にしか発生せず、ごく稀な事例についても検証によって改善されていることから、検査の信頼性は極めて高い。

「水道水でも陽性」の真相 

Twitter等で拡散されているが、これは、「ビール(コーラ)でも陽性になる」の嘘と同様、Abbott製「Panbio™️ COVID-19 Antigen Rapid Test Device」である。 これは抗原検査キットであってPCR検査ではない。

一定の化学反応を利用した検査法であるので、想定外の化学反応を引き起こす物質を投入すれば、想定外の反応が起きるのは当たり前である。 SARSコロナウイルス抗原キットPanbio COVID−19 Antigen ラピッド テスト - 独立行政法人医薬品医療機器総合機構によれば、妨害物質・妨害薬剤の可能性については42種の物質についてテストして「表示した濃度まで影響しなかった」としている。 しかし、炭酸、クエン酸(果汁等に含まれる)、塩素(水道水に含まれる)、フッ素(一部の国の水道水に含まれる)については一覧に含まれていない。 一般的な食品や水道水に含まれる化学反応を引き起こしうる物質については、妨害物質・妨害薬剤の可能性が全くテストされていないのである。 尚、検査時間についても注意が必要である。

8)15分後にテストデバイスの判定領域を観察し、ラインの有無により判定する。

注意:反応から20分以上経過したテストデバイスは判定に使用しない。

SARSコロナウイルス抗原キットPanbio COVID−19 Antigen ラピッド テスト - 独立行政法人医薬品医療機器総合機構

つまり、このキットは15分以上20分未満で表示を確認しなければならない。 一方、たった2分程度の動画で結果が出ているため、早回し撮影である可能性が高い。 そして、コントロールラインが出現した時にはテストラインが見られず、後から、薄らとテストラインが現れている。 以上踏まえると、「反応から20分以上経過した」後にテストラインが現れた可能性も十分に疑われる。 であれば、これは陽性ではなく陰性であろう。 いずれにせよ、水道水に含まれる塩素等の影響は全く検証されておらず、これが妨害物質・妨害薬剤となる可能性があり、適切な検査条件が保証されない。 尚、蒸留水では陰性だったとのTweetも見かける。 どちらにしろ、ソースの定かではないTwitter等による情報なので話半分に聞いておくべきだろう。

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