「1/20 WHOがCt値を下げた」の嘘

はじめに 

このページは「日本は諸外国よりCt値を高く設定している」の嘘の一部である。 以下も参考に。

ネット上の情報を鵜呑みにする前に 

ネット上の陰謀論等を目にして「俺は真実に覚醒した」と思っている人は、是非、新型コロナの主要なデマに掲載した高知東生氏の次の言葉に耳を傾けてほしい。 以下は特に重要。

  • 裏を読む以前に、表の仕組みすら何も知らない
  • 誰でも見れる情報「本当の真実」は裏ではない
  • 都合のいい妄想ってつなぎ合わせただけで案外辻褄があう

裏を探そうと世界中のジャーナリストが躍起になっている。 専門に情報を追っている人でさえ簡単に見つけられない情報を一般人が簡単に見つけられるわけがない。 それに気づいた高知東生氏こそが本当の覚醒者である。 それに気づかない人は、未だ、自らが覚醒者だと勘違いした妄想の中に漂っている。

WHOはPCR検査を否定していない 

WHOはPCR検査の結果の解釈として使用説明書(IFU)に従うように言っているだけで、PCR検査を診断に使うことは否定していない。

Purpose of this notice: clarify information previously provided by WHO. This notice supersedes WHO Information Notice for In Vitro Diagnostic Medical Device (IVD) Users 2020/05 version 1, issued 14 December 2020.

この通知の目的:以前にWHOから提供された情報を明確にする。 この通知は、2020年12月14日に発行された「体外診断用医療機器(IVD)使用者へのWHO情報通知 2020/05 version 1」の差し替えである。

Description of the problem: WHO requests users to follow the instructions for use (IFU) when interpreting results for specimens tested using PCR methodology.

問題の説明:WHOは、PCR法を用いて検査された検体の結果を解釈する際には、使用説明書(IFU)に従うようユーザーに要求する。

Users of IVDs must read and follow the IFU carefully to determine if manual adjustment of the PCR positivity threshold is recommended by the manufacturer.

IVDの使用者は、PCR陽性閾値の手動調整が製造業者によって推奨されているかどうかを判断するために、IFUをよく読み、これに従わなければならない。

WHO guidance Diagnostic testing for SARS-CoV-2 states that careful interpretation of weak positive results is needed (1). The cycle threshold (Ct) needed to detect virus is inversely proportional to the patient’s viral load. Where test results do not correspond with the clinical presentation, a new specimen should be taken and retested using the same or different NAT technology.

WHOガイダンス「SARS-CoV-2の診断検査」では、弱い陽性結果の慎重な解釈が必要とされている(1)。 ウイルスを検出するために必要なcycle threshold(Ct)は、患者のウイルス量に反比例する。 検査結果が臨床症状と一致しない場合は、新しい検体を採取し、同じまたは異なるNAT技術を用いて再検査すべきである。

WHO reminds IVD users that disease prevalence alters the predictive value of test results; as disease prevalence decreases, the risk of false positive increases (2). This means that the probability that a person who has a positive result (SARS-CoV-2 detected) is truly infected with SARS-CoV-2 decreases as prevalence decreases, irrespective of the claimed specificity.

WHOは、IVD使用者に、疾患の有病率が検査結果の予測値を変えることを注意喚起する; 疾患の有病率が低下するにつれて、偽陽性のリスクが増加する(2)。 これは、要求される特異性にかかわらず、有病率が低下するにつれて陽性結果(SARS-CoV-2検出)を示した人が真にSARS-CoV-2に感染している確率が低下することを意味する。

Most PCR assays are indicated as an aid for diagnosis, therefore, health care providers must consider any result in combination with timing of sampling, specimen type, assay specifics, clinical observations, patient history, confirmed status of any contacts, and epidemiological information.

ほとんどのPCR法は診断の補助として適応されるため、医療提供者は採取のタイミング、検体の種類、分析の特異性、臨床所見、患者の病歴、確認された接触状態および疫学的情報と組み合わせて、あらゆる結果を考慮しなければならない。

WHO Information Notice for IVD Users 2020/05 - WHO

これは既に知られた当たり前の話を書いているに過ぎない。

  • 問題点
    • 陽性判定基準の手動調整が製造業者によって推奨されているかどうか使用説明書に基づいて判断する必要がある
    • Ct値は患者のウイルス量に反比例する
    • 弱い陽性結果の慎重な解釈が必要
    • 検査結果が臨床症状と一致しない場合は再検査すべき
    • 有病率(検査対象集団の罹患率)と陽性率は相関する
    • 検体採取時期、検体の種類、分析の特異性、臨床観察、臨床所、接触の確認された状態、および疫学的情報を組み合わせて結果を考慮すべき
  • 検査機関がとるべき行動
    • 使用説明書全体をよく読むこと
    • 使用説明書に不明な点がある場合は、最寄りの代理店に問い合わせること
    • 使用説明書の改訂を適宜チェックすること
    • 要求している医療機関への報告でCt値を提供すること

2020年12月7日版の体外診断用医療機器(IVD)使用者へのWHO情報通知 2020/05 version 1と内容は大差がない。

  • とるべき行動のアドバイス
    • 使用説明書全体をよく読むこと
    • 使用説明書に不明な点がある場合は、最寄りの代理店に問い合わせること
    • 使用説明書の改訂を適宜チェックすること
    • 陽性または陰性の判定は、検体の種類、臨床観察、病歴、および疫学情報と組み合わせて検討すること
    • 要求している医療機関への報告でCt値を提供すること

まとめ部分は「Advice on action to be taken by users」から「Actions to be taken by IVD users」に変更された(Adviceが取れて確定版になり、IVDが追加されて検査機関向けであることが明記された)ほか、陽性または陰性の判定への言及が削除されている。 これは、検査機関向けであることが明記されたためであろう。 使用説明書に記載されることなので、医療機関向けにも敢えて書く必要はなかろう。 それ以外内容に大差はない。

「偽陽性(false positive)のリスク」の解釈 

「疾患の有病率が低下するにつれて、偽陽性のリスクが増加する」と記載されているが、これは定性的な説明であって定量的には何ら言及していない。 例えば、有病率100%で偽陽性0%、有病率0%で偽陽性0.01%でも「疾患の有病率が低下するにつれて、偽陽性のリスクが増加」している。 有病率0%のときに偽陽性率が誤差として無視できない程度を超えない限り、偽陽性を殊更に問題視する必要はない。

偽陽性(false positive)の言葉の定義にも注意が必要である。 偽陽性とは、存在しない遺伝子配列を検出することである。 Ct値が高い場合は、培養陰性となる率が上がるが、培養陰性は必ずしも偽陽性とは限らない。 不活性化された遺伝子配列を検出したために培養陰性となる場合は偽陽性ではない。 これは、不活陽性とでも表現すべきであって、本来の意味の偽陽性とは全く違う。

PCRでの偽陽性はプライマーダイマーやミスプライミングによって生じる。 これでもう失敗しない!リアルタイムPCRに失敗する4つの問題点と解決策をご紹介 - Thermo Fisher ScientificPCRのセットアップで考慮すべき6つの要素 - Thermo Fisher Scientificによれば、プライマーダイマーやミスプライミングは、プライマーの設計不備や温度・時間等が最適値でない場合に生じるものである。 初心者でも安心!リアルタイムPCR用プライマーデザインのコツ - Thermo Fisher Scientificによれば、プライマーダイマーはゲル電気泳動や解離曲線によって検証できる。 どちらも製造承認時には検証されており、添付文書に従う限りは製造承認を受けたキットでは生じないものと考えて良い。 言い換えると、添付文書に指定された合計サイクル数やカットオフ値の範囲を超えるとプライマーダイマーやミスプライミングによる偽陽性が発生する可能性がある。 そして、適切な合計サイクル数やカットオフ値は検査キット毎に違う。 だから、WHO通達では「使用説明書(IFU)に従うようユーザーに要求」しているのである。 ちなみに、遺伝子検査の基礎知識 - タカラバイオ株式会社p.34-36によれば、こうした「プライマー由来の非特異的増幅 」は増幅曲線と融解曲線を陰性コントロールと比較することで検証できるので、現場での確認も可能である。

よって、このWHO通達の記載を「高Ct値が偽陽性を量産する」根拠とする主張は明らかなデマである。 「PCR検査陽性はほとんど偽陽性」の嘘に示すデータでも分かるとおり、実際の検査では有病率が低い場合にも偽陽性はほぼ発生していない。

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