新型コロナ自然収束説の致命的矛盾

はじめに 

以下も参考に。

概要 

東洋経済が新型コロナ「実効再生産数」を公開 - 東洋経済ONLINEで採用されている簡易計算式を元に計算すると、実効再生産数概算値は次のとおり。

実効再生産数概算値

オープンデータ - 厚生労働省

自然要因ではグラフの①〜⑥の全てを説明することはできない。

BCG仮説
3月初旬の実効再生産数を見ると殆ど免疫がない。
獲得免疫説
実効再生産数の減少が急すぎる。国民の1%も感染していない状況ではあり得ない。
変異株説
③⑤の説明に持ち出される仮説だが、④⑥で獲得免疫説と同じ問題がある。
気象原因説
季節との相関がない。

人為的要因否定派の池田信夫氏は次のように言っている。

これまでのWHOの実測では、Roは1.4~2.5と大きな幅がある

「8割おじさん」の勘違い - アゴラ

基本再生産数「Ro」を最大の2.5と仮定して計算してもBCG仮説等では接触削減率にして1〜2割程度相当にしかならない。 その程度では感染抑制の主要因たり得ず、全く別の要因が必要になる。

獲得免疫説だが、基本再生産数を2としても、国民の約半数が感染しないと実効再生産数は1を下回らない。 それに対して、「https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html 国内の発生状況など - 厚生労働省」によると、累積感染者数は令和3年2月26日0:00現在で429,472人である。 これは日本の人口のわずか0.35%に過ぎない。 ②は、感染者数に対して実効再生産数の減少が急すぎるのである。 間違った「8割おじさん」批判で紹介した宮坂昌之氏の説を採用しても、人口のわずか0.35%では累積感染者数が全く足りていない。

また、この手の免疫説では③⑤のような実効再生産数の増加を説明できない。 その矛盾への反論として変異株説が導入されるが、それでは④⑥で獲得免疫説と同じ問題が解決できない。

気象原因説として「冬場は気温や湿度が低下するから感染が増加するのは当然だ」との主張を見かける。 しかし、秋口から冬にかけて実効再生産数の顕著な増加は認められない。 むしろ、11月は実効再生産数が減少している。 秋口から冬にかけての感染者の増加は⑤を見れば8月から始まっており、冬場の気温低下や湿度低下が原因とは言い難い。 最初の緊急事態宣言の解除前後の③における実効再生産数の増加は、5月〜6月初旬であり冬場ではない。

このように自然要因では実効再生産数の推移を説明することは困難である。 一方で、COVID-19:コミュニティ モビリティ レポート - Googleと実効再生産数概算値の中長期的傾向は非常によく相関する。

中長期的相関(日本)

COVID-19:コミュニティ モビリティ レポート - Google オープンデータ - 厚生労働省

よって、人為的要因説には何の矛盾も見られない。

  • 自然要因では実効再生産数の推移を説明できない
  • 実効再生産数の推移は人為的要因で説明できる

以上から、どちらが正しいかは言うまでもない。

獲得免疫説 

荒唐無稽な自然収束説 

まず、第1波が自然収束によるもので自粛等は全く効果がなかったと仮定する。

実際の新規陽性者数ピーク時の累積陽性者数は6847人(4月11日前後)であり、これは2020年1月1日現在の日本の人口のうちの僅か0.0055%である。 これを東洋経済が新型コロナ「実効再生産数」を公開 - 東洋経済ONLINEで採用されている簡易計算式を元に実効再生産数に換算する。 ピーク時は実効再生産数Rt=1となり、一度感染した人は再感染しないものと仮定するとR0×(1-0.000055)=Rt=1であるので、基本再生産数R0≒1.000055となる。 その前提でシミュレーションすると、陽性者数が1人発生した日からピークに達するまで6679日(18年以上)かかり、ピーク時の新規陽性者数は1.038人にしかならない。 これはあまりにも第1波の実態とかけ離れてしまう。 そこで、検査で捕捉できていない感染者が多数居たと仮定し、同様の条件で、かつ、感染者数と陽性者数の比に応じてシミュレーションを実施する。

感染者数 R0
陽性者数×11.000055
陽性者数×101.00055
陽性者数×1001.0055
陽性者数×10001.058
陽性者数×100002.227
自然収束説(ピーク時陽性累計6847人)

感染者数=陽性者数×1000としても、ピークに達するまで1年を要するので、第1波と全く合わない。 感染者数=陽性者数×9300とすると、ピーク値や増加速度が実値とほぼ一致する。

新規陽性者シミュレーション

オープンデータ - 厚生労働省

残念ながら減少速度が、シミュレーションよりも第1波の実態の方が遅いが、それはここでは棚上げする。

さて、緊急事態宣言解除後に死者数が初めて0になったのは、2020年6月7日であり、このときの累積陽性者数は17271人、累積死者数は916人であり、致死率は5.3%である。 ここで、もしも、感染者数=陽性者数×9300(R0≒2.051)であったなら、真の累積感染者数ほぼ全人口となり、真の致死率は約0.00074%となる。 最も致死率の低い国でも1〜2%の値である。 人口当たりの死者数が最も多い国では人口100万人当たり約600が死亡しているが、仮に、これらの国で全国民が感染していると仮定しても致死率は0.06%までしか下がらない。 仮に、日本人にだけ新型コロナに対する驚異的な抵抗力があったとしても、それならば、致死率だけでなく基本再生産数も大きく下がるはずである。 しかし、第1波の実態と合わせると、自然収束説では基本再生産数は約2.051となり、他国と比べてそれほど大きく変わらない。

つまり、第1波が自然収束によるもので自粛等は全く効果がなかったと仮定すると次のような「ファクターX」が存在することになる。

  • 感染予防効果はほぼない(基本再生産数は大差ない)
  • 感染した場合の発症率を大きく下げる(でなければ、感染者数=陽性者数×9300にはならない)
  • 致死率を大きく下げる

しかし、そのような「ファクターX」の説明は困難である。 感染予防効果がほぼないにもかかわらず、かつ、致死率を大きく下げるとすれば、それは特異的免疫でなければ辻褄が合わない。 非特異的免疫は、万能防壁であるから、病原体が体内に侵入した比較的早い段階から機能するため、何らかの効果があるなら感染予防効果がないわけがない。 そして、感染を予防できなかった場合は、非特異的免疫では病原体に対抗できなかったのだから、致死率を下げることはあまり期待できない。 一方で、特異的免疫であれば、すぐには機能しないため、感染予防効果なしに致死率を大きく下げることはあり得る。 しかし、感染前に抗体ができていれば、感染予防効果がないわけがない。 つまり、感染予防効果がほぼないにもかかわらず、かつ、致死率を大きく下げるとすれば、抗体なし、すなわち、抗原に暴露することなく、特異的免疫を強化しなければならない。 だが、抗原に暴露することなしに特異的免疫を強化するとは、一体、どのような作用であろうか。 また、抗体なしでの特異的免疫の強化では、発症率の低さも説明が困難である。 というのも、風邪の諸症状は免疫反応によって生じるものであるからである。 既に抗体ができているなら、少量の病原体をあっと言う間に駆逐するから、発症率が低いことは容易に説明できる。 しかし、抗体ができていないなら、特異的免疫が反応を開始して以降、その後、抗体ができて、最終的に病原体の数を大きく減らすまでの間は症状が出ないとおかしい。 であれば、発症率の低さが説明できない。

新型コロナとBCGに記載した通り、BCGの効果を国別に比較した論文では、再生産数の差がやや大きく、致死率は大きく変わらない。

BCG接種非強制国 BCG接種強制国
再生産数約2.48約1.54
致死率3.66%3.22%

以上まとめると、BCG論文では次のような効果となっている。

  • 感染予防効果はそれなりにある
  • おそらく、発症率も大差ない
  • 致死率は大差ない

つまり、BCGのような感染症一般に対する免疫を増強する場合は、その効果は感染予防効果として現れ、発症率や致死率にはほとんど影響しない。 対して、第1波が自然収束によるもので自粛等は全く効果がなかったと仮定すると、感染予防効果がほとんどない一方で、発症率や致死率が激減する。 感染予防効果がほぼないにも関わらず、発症率や致死率を激減させる「ファクターX」とは一体何なのか、その説明は困難である。

以上まとめると、自然収束説では次のような非現実的な仮定が必要となる。

  • 陽性者累計6847人を遥かに超える6千万人以上の圧倒的なピーク時感染者累計
  • 基本再生産数は大差ないのに、真の致死率は約0.00074%という世界的にも圧倒的な低さ

また、現実の陽性者の減少速度が自然収束説のシミュレーションよりも明らかに遅い。 さらに、自然収束説は、緊急事態宣言解除後に陽性者数が継続して増加した事実とも一致しない。

日本のPCR陽性者数の推移 実効再生産数概算値

オープンデータ - 厚生労働省

さて、仮に、感染者数と陽性者数に大きな隔たりがあったと仮定した場合に、日本における真の致死率の推定値は何処まで下げられるだろうか。 ここで、仮に、先ほど計算した0.06%を人口当たりの死者数が最も多い国の真の致死率であると仮定する。 これは分母を全国民として計算した値であるので、これ以上小さくなることはない。 すなわち、死者数が最も多い国の真の致死率の最低推定値は0.06%となる。 では、日本における真の致死率の最低推定値もこれと同じで良いか、もっと下げる余地がないか。 第1波の致死率は、高い国で15%程度、日本では約5%であった。 ここで、見かけ上の致死率の比が、真の致死率の比と等しいと仮定すると、日本における第1波の真の致死率の最低推定値を下げることが可能になり、約0.02%となる。

では、真の致死率の最低推定値を基に、自粛等の効果が全くなかったと仮定した場合の計算をしてみよう。 緊急事態宣言解除後に死者数が初めて0になった2020年6月7日の累積死者数は916人であるから、真の致死率が約0.02%であれば、真の感染者数は約458万人と推定される。 感染者数=陽性者数×265となり、その時の基本再生産数R0は約1.0148であり、陽性者数がピークに達するには1213日(3年以上)要し、ピーク時の陽性者数は11.1にしかならない。 これでは実態に全く合わない。 真の致死率が最低推定値の0.02%よりも大きければ、感染者数は陽性者数により近い値となり、結果、陽性者数がピークに達する日数はもっと長くなり、ピーク時の陽性者数はもっと減る。 つまり、真の致死率が最低推定値ではなかった場合は、もっと実態に合わない結果となる。

以上の通り、自粛等の効果を想定しない限り、現実の実測値とはどうやっても一致しない。

自粛効果 

間違った「8割おじさん」批判に記載している通り、行動変容と実効再生産数概算値は非常に良く相関している。

中長期的相関(日本)

COVID-19:コミュニティ モビリティ レポート - Google オープンデータ - 厚生労働省

相関係数(第1波) 相関係数(全体)
職場0.8120.747
住宅-0.832-0.593
乗換駅0.8690.582
小売、娯楽0.8720.486
食料品店、薬局0.7050.322
公園0.580-0.331

これらのデータから、感染の収束が主に行動変容による接触削減効果によってもたらされたことは明らかであろう。

先ほど、真の致死率の最低推定値を基に、自粛等の効果が全くなかったと仮定した場合を計算すると、実態と全く合わなかった。 そこで、自粛等と自然要因の複合要因を想定して再計算してみよう。 自粛等と自然要因の複合要因であれば、自粛等によって実効再生産数Rtを基本再生産数R0より低くしていることになる。 よって、基本再生産数R0は自粛等の効果がない場合の計算よりも高い値で良いことになる。 流行の初期に無対策だったと仮定すると、実測値と合う基本再生産数R0は約2.5となる。 (無対策時よりも実際の感染拡大が緩やかになることはあっても、その逆はあり得ない。)

複合要因想定(真の致死率=0.02%)

オープンデータ - 厚生労働省

ただし、ここでは、実測とぎりぎりフィットする程度まで自然要因を見込むため、基本再生産数R0は、感染者数=陽性者数×9300の時と同じ約2.051を採用する。 すると、無対策の場合のピーク時の陽性者数は約19,967人となる。 その時の累計感染者数は約6854万人で、真の致死率を0.02%とすれば約13,709人が死亡し、医療崩壊により真の致死率が人口当たりの死者数が最も多い国と同等の0.06%になれば約41,126人が死亡する。 そして、実態に合わせるためには、累計感染者数を約175万人にまで、累積死者数を約351人にまで、それぞれ低減する必要がある。 その場合、行動変容によって実効再生産数Rtが順次下がって行った結果として、感染者数を約39分の1に低減し、死者数を約39〜117分の1に低減したことになる。 つまり、自然要因と行動変容の複合要因と仮定しても、行動変容の効果はかなり大きくなる。

もしも、本当に自然要因で収束したなら、日本において第1波や第2波や存在しない。 主に自然要因で収束したと仮定すると、国内蔓延期の概算実効再生産数の最大値が高すぎるのである。

第1波立ち上がり時の感染推移 第1波立ち上がり時のGoogle人流データ

オープンデータ - 厚生労働省 COVID-19:コミュニティ モビリティ レポート - Google

概算実効再生産数の最大値と辻褄を合わせるとすると、何らかの自然要因があったとしても、それは接触削減率にして10%あるかないかであろう。

まとめ 

自然要因説は次のような傾向が見られる。

  • 空想だけで根拠が示されていないものも多い(K値感染7段階モデル等)
  • 国別比較をしていても交絡要因は考慮されていない(BCG仮説等)
  • 時系列分析と矛盾する
    • 日本の3月前半の実効再生産数の高さ
    • 2度の緊急事態宣言から一定日数経過後の実効再生産数の上昇
    • その他
  • 無作為比較試験による裏付けがない

とくに、時系列分析との矛盾と向き合った仮説は皆無である。

  • 蔓延初期の実効再生産数の高さ
  • 何故、感染拡大と縮小を繰り返すのか?

間違った「8割おじさん」批判に記載している通り、これらは人為的要因なら何の矛盾も生じない。 自然要因説は都合の悪い事実を闇に葬らなければ成立しない。

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