PCR陽性増は見掛け上の感染者増ではない

はじめに 

本ページは、間違った「8割おじさん」批判K値は疑似科学新型コロナ7月第2波到来!等の一部である。 以下も参考に。

検査数が増える原因 

陽性者が増えたのは検査を増やしたせいだと主張する者がいる。 果たして、本当にそうか。 一般論として、AとBに相関がある時、考えられる可能性は次の4つに分けられる。

  • Aが原因でBが結果
  • Bが原因でAが結果
  • Cが原因でAおよびBが結果
  • ただの偶然

たしかに、陽性者数と検査数には正の相関がある。 陽性者が増えたことが検査が増える原因とは考えにくいので、偶然を除けば、検査増が原因か、あるいは、共通の別の原因であると考えられる。

ここで、次のように集団を分ける。

事前確率(推定される陽性率)が高い集団
感染が疑われる症状がある者、濃厚接触者、その他、感染者との接触機会が多い者
事前確率(推定される陽性率)が低い集団
無症状で、かつ、濃厚接触者でもない者

PCR検査を拡大すべきかで解説した通り、PCR検査は、感度がそこそこ(検査部位にウィルスが一定以上増殖している患者で30〜60%)、かつ、特異度が極めて高い(99%以上)ことが知られている。

検査の感度

抗体検査・抗原検査・PCR検査 どう使い分ける? - YAHOO!JAPANニュース

とくに、発症前の感度はとくに低い。 よって、前者の集団と比べて後者の集団の事前確率はかなり低いと考えられる。 事実、感染拡大の予兆の早期探知のためのモニタリング検査 - 内閣官房によれば、4月25日まで48,620件検査して累計陽性疑い者数53件であり、 後者の集団の事前確率は0.11%以下と予想される。 一方で、日本全体の陽性率は1〜数十%で推移している。

日本のPCR陽性者数の推移

オープンデータ - 厚生労働省

これは、前者の集団の事前確率が後者の集団のそれを上回っていないと説明がつかない。 以上のことから、前者の集団と後者の集団の事前確率の関係ついては疑う余地がなかろう。

さて、検査対象が拡大される場合は、次の2つに分類できる。

  • 事前確率が高い集団の検査漏れがあり、それを是正した
  • 事前確率が低い集団の検査数を増やした

過去の経緯の項で述べるが、現在は、前者、すなわち、事前確率が高い集団の検査漏れの是正については考慮する必要はない。 後者、すなわち、事前確率が低い集団も検査するよう検査対象を拡大した場合だけを考えれば良い。

ここで、実際の新規感染者数が増えておらず、かつ、検査対象の拡大により陽性者数が増えたと仮定する。 その場合、事前確率の低い集団の比率が増えるので、全体の陽性率は下がるはずである。 逆に感染が拡大した結果として事前確率が高い集団の数が増えた場合は、事前確率が高い集団の比率が増えるので、全体の陽性率は上がるはずである。 実際のデータを見ると、感染者が拡大している時にはほぼ陽性率も増えている。

日本のPCR陽性者数の推移

オープンデータ - 厚生労働省

よって、検査の拡大によって陽性者が増えたのではなく、感染拡大によって陽性者数と検査数が増えたことが明らかである。 そもそも、検査を拡大して陽性者を増やすのであれば、先ほどのモニタリング検査の結果を元にすれば、必要な検査数は膨大な数となる。

陽性者増加数 必要最低検査増加数
10091,736
1,000917,358
10,0009,173,585

日本において1日の新規陽性者数は5千人を超えているので、1日に450万人以上の検査をしなければ、検査の拡大で感染者数を水増しすることはできない。

検査の感度 

「PCR検査陽性はほとんど偽陽性」の嘘で紹介したOXFORD ACADEMICの論文から明らかなように、カットオフ値を変更しても陽性率には大きな影響はない。 また、感度を上げて陽性率を変化させても、二つの感度の間の陽性率の比は常にほぼ一定と考えられる。 つまり、感度変化による陽性率の変化は一時的な効果しか生まない。 一方、感度変化によって、感染者の捕捉率が変化すれば、それに伴って実効再生産数も変化する。 それをグラフにすると次のようになる。

検査の感度と感染推移
  • 感度を上げると、一時的に陽性者は増えるが、時間経過とともに陽性者は減る
  • 感度を下げると、一時的に陽性者は減るが、時間経過とともに陽性者は増える

よって、検査の感度を操作することで感染者数を水増しすることも不可能である。

過去の経緯 

2020年2月17日の厚生労働省通達では「風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く方」が相談・受診の目安となっていた。

○ 以下のいずれかに該当する方は、帰国者・接触者相談センターに御相談ください。

・ 風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く方 (解熱剤を飲み続けなければならない方も同様です。)

・ 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある方

○ なお、以下のような方は重症化しやすいため、この状態が2日程度続く場合には、帰国者・接触者相談センターに御相談ください。

・ 高齢者

・ 糖尿病、心不全、呼吸器疾患(COPD等)の基礎疾患がある方や透析を受けている方

・ 免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている方

(妊婦の方へ)

妊婦の方については、念のため、重症化しやすい方と同様に、早めに帰国者・接触者相談センターに御相談ください。 (お子様をお持ちの方へ)

小児については、現時点で重症化しやすいとの報告はなく、新型コロナウイルス感染症については、目安どおりの対応をお願いします。

新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安について(令和2年2月17日) - 厚生労働省

これは、相談・受診の目安であって、検査の基準ではない。 しかし、事実上、検査の基準として扱われている事例が多々あった。

目安は「三七・五度以上の発熱が四日以上続く方」などとなり、「必要な検査や診察を受けにくい」と問題視された。厚労省は取材に、重い症状でも四日以上待たなければならないという「誤解」を招いたと認める。


厚労省は、状況に応じて目安を柔軟に判断するよう自治体に通知した。 それでも、検査能力や病床が限られる中、目安を事実上の基準として運用する保健所もあった。

「4日を待たずに」はなぜ削られたのか <新型コロナ検証> - 東京新聞

検査が不当に抑制される問題を受けて、2020年5月8日、この通達は次のように改正された。

○ 少なくとも以下のいずれかに該当する場合には、すぐに御相談ください。(これらに該当しない場合の相談も可能です。)

☆ 息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状のいずれかがある場合

☆ 重症化しやすい方(※)で、発熱や咳などの比較的軽い風邪の症状がある場合

(※)高齢者、糖尿病、心不全、呼吸器疾患(COPD 等)等の基礎疾患がある方や透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている方

☆ 上記以外の方で発熱や咳など比較的軽い風邪の症状が続く場合

(症状が4日以上続く場合は必ずご相談ください。症状には個人差がありますので、強い症状と思う 場合にはすぐに相談してください。解熱剤などを飲み続けなければならない方も同様です。)

○ 相談は、帰国者・接触者相談センター(地域により名称が異なることがあります。)の他、地域によっては、医師会や診療所等で相談を受け付けている場合もあるので、ご活用ください。

(妊婦の方へ)

妊婦の方については、念のため、重症化しやすい方と同様に、早めに帰国者・接触者相談センター等に御相談ください。

(お子様をお持ちの方へ)

小児については、小児科医による診察が望ましく、帰国者・接触者相談センター やかかりつけ小児医療機関に電話などで御相談ください。

※なお、この目安は、国民のみなさまが、相談・受診する目安です。これまで通り、検査については医師が個別に判断します。

新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安(令和2年5月8日)別添 - 厚生労働省

自治体・医療機関向けの情報一覧(新型コロナウイルス感染症) - 厚生労働省

これにより、2020年5月8日以降は、感染している可能性の高い集団は漏れなく検査を受けられるようになった。 報道でも、軽症者や無症状者に検査を拡大したと報じられることはあっても、感染している確率の高い集団の検査漏れの是正が報じられることはない。

勘違いしている人 

「数個有れば陽性」の嘘 

PCR検査はウイルスの【遺伝子の一部が有るか無いか】しか見てないのです。 数個有れば陽性(死んでても陽性)。 しかし数個のウイルスでは人間の自然免疫は突破出来ない。 検査陽性というだけでは【感染】ではない。 【感染】してないならウイルスはその人の中で増えない。 つまり感染拡大させる事も無い。 感染爆発というのは錯覚なのです。

にわかN2nd【反自粛、反マスク強制、反9月入学、とっとと大学も再開しろ】 - Twitter

「数個のウィルス付着で陽性」の嘘に記載している通り、反応系に持ち込まれる量は採取した検体の極一部にすぎない。 よって、検出量は検体全体のウィルス量の極一部にすぎない。 また、採取対象部位のウィルスの全てを検体に取り込めるわけではないので、検体全体の量も採取対象部位のウィルス量の極一部にすぎない。 ゆえに、採取対象部位総量でみれば「数個有れば陽性」にはならない。 反応系に持ち込まれる量が最も少ないキットで、かつ、検体採取量が2mlの場合、検出量が「数個」における検体内総量推定値は「数百〜数千個」となる。 採取対象部位のウィルスを全て検体に取り込むことは不可能なので、採取対象部位総量推定値はもっと多い。

「重症者は増えてない」 

陽性者数と重症者数の推移

感染拡大ダガーとマスコミや小池百合子は騒いでおりますが、グラフのようにいくらPCR陽性が増えても重症者は増えません。

PCR陽性が爆増しているのにどうして重症者が全く増えないのか、その謎があっさり解けた!! - 永江一石のITマーケティング日記

グラフを見れば明らかな通り、重症者数のピークは陽性者数のピークより遅い。 よって、現状で重症者数が少ないという事実は、感染が拡大していない証拠とならないし、対策を不要とする根拠にもならない。 感染拡大した後の重症者数を予測して、事前に対策を取る必要があるのである。 新型コロナ死者数では第2波の兆候はつかめないにも書いた通り、死者数についても同様である。

陽性者数と患者数のピークのズレ

オープンデータ - 厚生労働省

だから、今現在の重症者や死者の数ではなく、現在のペースで患者数が推移した場合の今後の重症者や死者の予測人数で考える必要がある。

「ホストばかり検査したら当然陽性率は上がる」 

陽性率で感染拡大を判断するなら特定のターゲットだけの検査では意味がなくランダム対象にしないと、そもそも目安にもならない。 ホストの感染率は30%だから、ホストばかり検査したら当然陽性率は上がるがそれと市中の陽性率はイコールではない。

なぜ陽性者数が爆増しているのに死者が全然増えてこないのか、母数から逆算すると実は感染は広がっていない永江理論行きます - 永江一石のITマーケティング日記

「ホストの感染率は30%」は複数のメディアで報じられている内容であるから、その数値についての疑義はない。 問題は「それと市中の陽性率はイコールではない」とする根拠が全くないことである。

本当に「ホストの感染率は30%」であるならば、罹患率の高い集団であるから、当然、検査の対象とすべきである。 検査の対象とすべき集団に検査をしたなら、当然、過剰検査ではない。 「ホストばかり検査した」から陽性者が増えたのではなく、ホストの間で感染拡大していることが分かったから検査対象に加えたのである。 そのことは「ホストの感染率は30%」であることが裏付けている。

ホストを「市中の陽性率」から取り除くべくとする主張にも根拠はない。 ホストは客商売であるから、当然、客に二次感染させる恐れがあるし、その客から別の人物に三次感染させる恐れもある。 また、ホストであっても、治療のために病床等の医療資源を消費することには変わりがない。 よって、ホストも「市中の陽性率」にカウントすべきことは言うまでもない。 そもそも、特定の職業の感染を「市中の陽性率」から取り除けという主張が成立すれば、口実を用意すれば、いくらでも「市中の陽性率」を下げることができてしまう。 それは恣意的に感染を過小評価させているだけである。

以上の通り、ホストの検査を増やしたことは感染拡大を否定する根拠にはならない。

「新型コロナの暴露率は30~45%」の嘘 

インフルエンザの無症状率は37.6%という調査データがあります。 無症状というのはコロナだけではなくて普通なんです。 子供が良くかかるパレコウイルスA3に至っては小児33%、成人75%が無症状なんですよ。

PCR陽性が爆増しているのにどうして重症者が全く増えないのか、その謎があっさり解けた!! - 永江一石のITマーケティング日記

他の疾病の話が新型コロナにもそのまま当てはまるとする根拠はない。

そして高橋先生の緻密なシミュレーションでは

PCR陽性が爆増しているのにどうして重症者が全く増えないのか、その謎があっさり解けた!! - 永江一石のITマーケティング日記

感染7段階モデルも疑似科学にも記載したが、「高橋先生の緻密なシミュレーション」とやらは、仮定が正しい前提では仮定が正しいとの結論を導いた循環論証に過ぎず、疑似科学の一種に過ぎない。

総合案内

科学一般

疑似科学等

医学

地震

電子工学

相対性理論

量子力学

基本

標準理論

解釈等

実験・思考実験

外部リンク