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波動関数の収縮の変更点

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!!!定義
フォン・ノイマンらが確立した量子力学の数学的基礎では、観測前後の波動関数の変化を導入しており、これを[[射影仮説]]と呼ぶ。
そして、この波動関数の変化を、波動関数の収縮と呼ぶ。

射影仮説と等価な仮説は、理論と実験を整合させるためには必須の仮説とされる。
[[コペンハーゲン解釈]]では、射影仮説を変に加工せずにそのまま採用している。
!!!純粋状態と混合状態
波動関数がどのように収縮するかは、確率論でしか分からない。
波動関数の収縮後の状態は、既に観測済みの現象であれば、観測結果に忠実に従って記述すれば良い。
しかし、未観測の現象であれば、未知の観測結果は様々な可能性の集合体、すなわち、統計集団でしか表せない。
こうした統計集団で表される状態を混合状態と呼ぶ。
それに対して、統計集団ではない状態を純粋状態と呼ぶ。

:混合状態:様々な可能性のうちの1つだけが確率的に選択される現象について、それを確率的集合体として記述した状態。[[シュレーディンガーの猫]]においては、生か死かのいずれかに確定しており、生死が特定できなくても、どちらかであることが確実である状態。
:純粋状態:全体が一体不可分であり、確率論では論じられない(確率的集合体であるかどうかは定かでない)状態。シュレーディンガーの猫においては、観測後の生死の確率値は示せるが、その時の生死は確率論で論じられない。

,,純粋状態,混合状態
,異なる状態ベクトル間の干渉性,あり,なし
,異なる状態ベクトルの並存性,並存,いずれか1つのみ
,確率規則,不要,必要

波動関数は、通常の時間的変化では、決して、純粋状態が混合状態になることはないとされる。
純粋状態を混合状態にするためには、特殊な例外変換を手作業で施す必要がある。

尚、純粋状態や混合状態の概念は、波動関数が示す波としての性質に適用するものであって、粒子としての性質に同様の区別が必要かどうかは定かではない。
[[隠れた変数理論]]では、粒子としての性質には同様の区別は必要がなく、純粋状態も粒子的には確率的集合体となる。
一方で、「[[非因果的量子力学|量子力学の用語]]」では、粒子としての性質にも同様の区別が生じ、純粋状態は粒子的にも確率的集合体ではない。
!!非一意性
実は、ここで説明したような混合状態の説明は正しくないと、東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻相関基礎科学系&東京大学大学院理学系研究科物理学専攻の清水明教授は、[混合状態の純粋状態への分解の非一意性|http://as2.c.u-tokyo.ac.jp/~shmz/zakkifiles/01-12-25.html]で、次のように説明している。

""どうして誤りであるかと言うと、逆に密度演算子ρ=w(a)|a><a|+w(b)|b><b|が与えられた時に、これを、「確率w(a)で状態|a>にあり、確率w(b)で状態|b>にある」と一意的に解釈することができないからである。つまり、|a>と|b>の線形結合で書ける、別の状態の組|a'>と|b'>を用いて、「確率w(a')で状態|a'>にあり、確率w(b')で状態|b'>にある」とも解釈できてしまうのである。しかも、このような分解の仕方は、無限種類ある。

とはいえ、「普通の量子論や統計力学の本」に書いてあるような説明の間違いにまで言及すると、素人には全くお手上げだろう。
よって、ここでは、参考情報程度に留めておく。
!!!現実に起きている現象
波動関数の収縮に相当する現実の現象は何か。
これは、実は、良く分かっていない。
小さすぎて現象を直接目にすることはできないし、正確な測定をしようとしても[[不確定性原理]]に阻まれる。
例えば、光子を当てて位置を検出したとしても、その地点で光子が弾き飛ばされたという事実が分かるだけで、そこに粒子状の物質があるとまでは断定できない。
[[二重スリット実験]]の着弾を見ても、その地点で輝点を発生させる何らかの化学反応が起きたことが分かるだけで、そこに粒子状の物質が激突したとまでは断定できない。
波に至っては、「粒子」の振る舞いから間接的に推測することしか出来ない。
どんな可能性を考慮しようとも、未知の何かを避けて通ることはできない。
結局のところ、分からないものは分からないとしか言い様がない。

一方で、[[量子デコヒーレンス理論]]や重力による収縮理論などは、いずれも決め手に欠ける理論だが、初期の量子力学における早とちりの可能性を示唆している。
その早とちりとは、次の内容である。

*ミクロ現象だけでは波動関数の収縮は起きない
*何故か、ミクロ現象がマクロと相互作用した時にだけ、波動関数の収縮が起きる

量子デコヒーレンス理論でも、重力による収縮理論でも、ミクロ現象だけで波動関数の収縮は起きるとされている。
そして、どちらの理論でも、物体が大きいほど収縮速度が速くなる。
これらの理論が正しいなら、ミクロ現象だけで波動関数の収縮が起きないように見えたのは、あまりに収縮の速度が遅過ぎて観測できなかっただけに過ぎない。

このような可能性を見落としていたことが、新たな理論によって分かったのである。
そして、これらの理論の方が、極めて自然な物理法則を構築しやすい。
何故なら、ミクロとマクロの明確な境界を必要としなくなるからである。
とはいえ、これらの理論も、物理学の世界で完全に受け入れられるほどの完成度には達していない。
ただ、見落としていた可能性を発見したことは大きい。
これにより、ミクロとマクロの明確な境界といった、無理のある理論に固執する必要はなくなった。

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