Apple Siliconに移行する損得

動作するアプリケーション 

Intel Macでの動作 Apple Silicon Macでの動作
Mac OS9 アプリSheepShaver等で動作
Mac PowerPCアプリRosetta(現行機種では仮想PCのみ)で動作不可
Mac x86 32bitアプリmacOS 10.14 Mojave以前(仮想PC含む)で動作仮想PCが対応すれば可
Mac x86 64bitアプリネイティブ動作Rosetta 2で動作
Mac ARMアプリ不可ネイティブ動作
Windows x86 32bitアプリBootcamp,仮想PC,Wineで動作ARM版Windowsが動作するか仮想PCが対応すれば可
Windows x86 64bitアプリBootcamp,仮想PC,Wineで動作仮想PCが対応すれば可
Windows ARMアプリ不可ARM版Windowsが動作すれば可
フリーソフトフリーソフト作者次第フリーソフト作者次第
iOSアプリCatalystで移植すれば可そのまま動作?

Apple Silicon Macでは、iOSアプリが動くが、Microsoft Windowsアプリが切り捨てられる可能性がある。 Apple Siliconで動作するParallels Desktopに書いた通り、仮想PCでIntel x86をサポートするかどうかは定かではない。 この損得はどうなのか。

まず、Microsoft Windowsアプリが切り捨てられたとしても、Macintoshの売り上げには大きく響かないことが予想される。 世界のパソコン市場におけるMacintoshのシェアは7%程度にとどまっている。 これは、次のような理由によるものだろう。

  • Microsoft Windowsの使いにくさを自覚している人が少ない
  • Macintoshの商用アプリ(とくにゲーム)が少ない
  • Macintoshはお金がかかる

現状でMicrosoft Windowsユーザーを取り込めていないのが実情である。 言い換えると、Microsoft Windowsユーザーを取り込もうとしなくても、Macintoshの売り上げには大きく響かないと予想される。

一方で、Microsoft Windowsアプリも使いたいMacintoshユーザーにとっては、Microsoft Windowsアプリが切り捨てられることはデメリットとなる。 しかし、Macintoshを使うことに利点を感じている人が、容易にMacintosh離れを起こすとは考えにくい。 また、Intel MacでMicrosoft Windowsを動かすには、最も簡単な方法でも、一定の手間がかかってしまう。 それなりのハードルが高さから、Macintoshユーザーの多くはMicrosoft Windowsアプリには手を出していないのではないだろうか。 さらに、iOSアプリが動くようになることで、アプリの少なさは解消されることが期待できる。 よって、一部のMacintoshユーザーにとっては大きなデメリットとなるかも知れないが、Macintoshの売り上げにはプラスとなろう。

iOSアプリについては、現状でもCatalystで移植すれば動くと指摘する人もいるかも知れない。 しかし、技術的な移植しやすさは、必ずしも、実際の移植を推進するとは限らない。 確かに、フリーソフト等の世界では、技術的な移植の難易度が、実際に移植されるかどうかにつながる。 事実、OSXになってからは、UNIXのツールの多くがMacintoshに移植されている。 しかし、商用ソフトの世界では、売り上げの見込みが、実際に移植されるかどうかにつながる。 移植が容易でも、売り上げが見込めなければ、移植されない。 移植が困難でも、売り上げが見込めれば、移植される。 それは、これまで移植の容易さを売りにしてきたゲーム機を見れば明らかだろう。 ゆえに、商用ソフトに限れば、移植の手間をかけずにそのまま動くことが重要である。

以上踏まえると、Apple Silicon Macはパソコンのシェアを大きく変えてしまう可能性がある。 尚、Android-x86もあるが、こちらはオープンソースであるので一般人には敷居が高い。

処理速度 

シングルスレッド性能では、ARMはIntel x86は及ばないようだ。 Arm、Skylakeの性能の90%に迫るCPUコア「Cortex-A76」 - PC Watchによれば、Cortex-A76(2017年登場)はSkylake(2015年登場)の90%とされる。 詳細な条件が不明だが、2年前のIntel x86の90%のシングルスレッド性能があるとされる。 シングルスレッド処理向上で最上級の性能を得たArm「Cortex-A77」のマイクロアーキテクチャ - PC Watchによれば、Cortex-A77(2020年登場)のシングルスレッド性能はCortex-A76から20%以上向上したらしい。 Apple Siliconでどの程度の性能があるかは分からないが、Intel x86に迫るシングルスレッド性能を達成することは決して不可能ではようだ。

マルチスレッドで動作するアプリケーションの性能を上げたければコアを増やせば良い。 iOS用のA12/A13は高性能コア2+高効率コア4という構成であるが、パソコン用ならもっとコアを増やすことが可能だろう。 同じ性能ならIntel x86よりもARMの方が圧倒的に省電力であるので、現状の消費電力と同等にすればIntel x86を大幅に上回る性能が実現できる。

最近の処理の重いアプリケーションの多くはGPUを利用する。 その場合、アプリケーションの動作速度を左右するのはCPUではなくGPUである。

以上まとめると、基本的には、性能向上が見込めるのではないかと期待できる。


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