改造は違法?
個人利用は合法
改造を違法とする主張は、著作者人格権の一種である同一性保持権に基づいて、それの侵害に該当すると言っています。
著作権法第二十条では、同一性保持権を次のように定義しています。
著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。
2 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する改変については、適用しない。
一 第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第一項又は第三十四条第一項の規定により著作物を利用する場合における用字又は用語の変更その他の改変で、学校教育の目的上やむを得ないと認められるもの
二 建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変
三 特定の電子計算機においては利用し得ないプログラムの著作物を当該電子計算機において利用し得るようにするため、又はプログラムの著作物を電子計算機においてより効果的に利用し得るようにするために必要な改変
四 前三号に掲げるもののほか、著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変
また、同法第百十三条第六項には、次のような規定もあります。
著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなす。
JASRACによる解説では次のようになっています。
著作権法では、著作者人格権として「公表権」、「氏名表示権」、「同一性保持権」という3つの権利を定めているほか、著作者の名誉・声望を害するような著作物の利用は著作者人格権を侵害する行為とみなしています。例えば自分の意に沿わない商品のCMに勝手に音楽が利用されるようなケースがこれにあたります。
Wikipediaの説明では次のようになっています。
著作者人格権(ちょさくしゃじんかくけん)とは、著作者がその著作物に対して有する人格的利益の保護を目的とする権利の総称である。
以上を見れば、著作者人格権が著作者の人格的利益の保護を目的としていることは明らかです。よって、個人利用の改造を違法とするのは、杓子定規な法律の拡大解釈です。また、著作者人格権の趣旨や、個人の財産権を前提とするなら、例外規定の「プログラムの著作物を電子計算機においてより効果的に利用し得るようにするために必要な改変」や「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」が適用可能であり、杓子定規に解釈したとしても、改造は合法と考えることができます。
他の法律においても、自分の所持するパソコンやゲーム機のデータを書き換えてもクラッキング行為には該当しません。使用許諾契約にリバースエンジニアリングを禁じる条項があった場合、その契約に反するとする主張もありますが、それについても契約の有効性に関して諸所の議論があります。
以上のように、個人利用に限れば、改造を違法とするのはかなり無理があります。
他者への影響
他者とデータ交換する等、他者に改造の影響を及ぼす可能性がある場合は、改造している事実を告げないのはフェアではありません。いや、改造している事実を告げずに、他者のプレイに影響を与えた場合は、著作者人格権侵害に該当する疑いが強い。とくに、オンラインゲームで改造プレイを行なった場合は、著作者人格権侵害に該当することは疑いの余地がないでしょう。
というのも、そうした行為には、著作者の人格的利益を毀損する危険性があるからです。個人利用の範囲内であれば、何をしたとしても、著作者の人格的利益を侵害する危険性はありません。何故なら、個人で改造する場合、ユーザーは、著作者が作ったプログラムと自分が改変した部分を明確に区別することができるからです。しかし、改造に巻き込まれた他者にとっては、著作者が作ったプログラムと他者が改変した部分を明確に区別することはできません。であるならば、著作者の人格的利益を侵害する危険性があります。
各種裁判判決
違法判決は著しく不当
このページに書いてあることが「改造が違法である」根拠であるかのように使われているようなので、補足します。ここで述べていることは、改造を違法とするのは法律の趣旨を曲解した不当判決であるということです。そして、裁判は当事者主義にて行なわれるため、ユーザー不在の場で出される判決にはユーザーの利害が考慮されないことが問題です。例えば、ユーザーの行為が違法である前提で訴えを起こした場合、訴えられた側がそれに反論しなければ、ユーザーの行為が違法である前提で判決が出されるのです。そして、それに対して、ユーザーが反論される場は与えられていません。だからこそ、ユーザーが自分たちの権利を守るためには、ユーザー自身が声を上げる必要があるのです。ユーザーがしっかり監視していないと不当判決が日常的に行なわれるのです。
状況
ときメモのセーブデーター販売をめぐって、最高裁は、スペックコンピュータの同一性保持権侵害を認め、その販売を差し止める判決を下しました。その後、デッド オア アライブ 2(DOA2)の裁判でWESTSIDEも敗訴しています。どちらも、ユーザー不在の場で、ユーザーの権利に言及することもなく、著しくユーザーの権利を侵害する不当判決です。ACCSは、この判決が私的改変を違法とした判例だと主張しています。もちろん、これは勝手な拡大解釈ですが、ユーザーがこのまま黙っていれば、ユーザー不在の場でユーザーの当然の権利が奪われることになるでしょう。
以上のような現状を打破するために、当協議会事務局設立準備室を立ち上げました。法解釈について意見を述べるのは憲法に保証された言論の自由ですから、誰も自由な意思表明を制限することはできません。ユーザーに何が出来るのかを見極めて行きましょう。
これらの判決を軽く考えている人が多いようですが、甘く見ては痛い目を見ます。今、まさに、改造コード&セーブデーター界は始まって以来の危機を迎えています。
判決はすべての改造が違法という前提に立っている
最高裁判決は、物語が変らない改造は違法としていないと解釈している人もいるようですがそれは違います。最高裁判決でストーリー云々の話が出てくるのは「セーブデータを改変しても著作物を改変するわけではない」という主張に対する反証です。よって、ここで言うところのストーリーとは、物語的な部分に限らないゲームの進行・展開すべてを指すと考えるべきで、すべての改造が違法だということを前提にした判決が出たのです。もちろん、これは法律を曲解した不当判決です。何故なら、改造の主体が改造データ提供者にあるという、実態を無視した無茶苦茶な論理に基づいているからです。
著作者侵害は刑事罰の対象
著作権法には、賠償規定だけでなく罰則規定もあり、著作者人格権侵害は、親告罪であることが明記されています。(ただし、故人の著作者人格権を侵害した場合は親告ナシに公訴できます。)つまり、ソフトメーカーから訴えがあれば、警察機関が著作者人格権を侵害した者を逮捕することもあり得るということです。改造コードページの主催者が、明日にでも、逮捕されてもおかしくはないのです。
改造コードやセーブデーターがなくなる?
この判決を受け、一般的法解釈では合法とされる利用者による私的改変等も著作者人格権侵害に当たる、と一部のメーカー団体等が公式に見解を示しました。本件については、個人ユーザーを標的にした訴訟が懸念されます。多くの個人ユーザーは、金銭的にも時間的にも、著作権法の正しい運用を求めて裁判を戦うだけの体力を持ち合わせていません。一部メーカーの一方的主張に不服を申し立てるすべもなく、著作物の公正利用が妨げられてはユーザーの権利は守れません。このように非常に深刻な状況なので、改造コードやセーブデーターの公開を取り止める人もいるでしょう。下手をすると、改造コードやセーブデーターの歴史がここで終わってしまうかもしれません。誰かが行動を起こさない限り、いずれ、改造コードやセーブデーターがなくなるでしょう。
最終更新時間:2007年11月08日 18時02分41秒
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