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東北大とヤマト樹脂光学

[社会問題]

官庁会計関連記事よりページ分割。東北大の発注した病院改修工事をめぐる不正について、とりあえず備忘録。詳細は後日まとめ。(ウィキペディアのカテゴリから逸脱しているので、別カテゴリに移動)

ソース

 機材調達

予定価格と同額で落札されたのは手術顕微鏡、眼底検査装置、画像ファイリングシステムの各一式の調達。昨年8、9月に入札が行われ、いずれも「ヤマト樹脂光学」(東京都千代田区)が落札した。東北大によると、予定価格は落札額と同額で、入札には同社など2、3社が参加した。

文部科学省によると、国立大学法人は政府機関と同様、世界貿易機関(WTO)政府調達協定に基づく措置で、予定価格1600万円以上の商品の調達では、海外企業も応札できるように英文を含めた官報での入札公告などが義務づけられる。

関係者によると、昨春ごろ、大学病院側から同社に見積もり依頼があったという。機種は病院側が指定し、3件は定価が一式2000万円台後半〜4000万円台だった。

同社側は最終的に、3件とも1600万円を下回る1599万1500円[1]を提示。大学側はそのまま予定価格を設定したとみられ、同社も同額で落札したという。

同社の元幹部は「国際入札を避けるため、病院側の要望を聞いて入札価格を決めた。大幅に値引きしてでも落札したのは、病院との今後の取引を有利に進めるためだった」と話した。元幹部によると、病院側が「時間がかかるのは困る」と国際入札を避けるよう求めてきたという。

東北大学病院(同市)によると昨年6月、医療機器販売会社「ヤマト樹脂光学」(東京都千代田区)から「医療の発展に貢献するため」として超音波白内障手術装置(2300万円相当)の寄贈を受けた。また工事完了後の今年1月ごろから、新設手術室の備品約20点(計240万円相当)を同社から「治療環境整備の一助のため」と寄贈されたという。

寄贈された備品には、眼科用手術台、医療機器部品のほか、机やいす、患者用の上ばき入れ、ロッカーやオーディオ機器、DVDレコーダーなども含まれていた。

同社の元幹部は朝日新聞の取材に「備品類は工事費と同じように、大学の予算を超えた分をこちらで負担した。大学との取引を有利に進めるためだった」と話す。大学と同社との取引は昨年4月に始まり、大学は今年6月までに1億3000万円相当の医療機器や消耗品を購入している。

 改修工事

河北新報が細かく調べてくれてるおかげで事件の真相が良く分かる。

調査結果によると、契約事務担当の二つの課は、経営管理課と経理課。2課の担当者は、発注前に紹介された特定業者と契約を結び、入札の手間を省くことで、手術室を今年1月までに完成させ、年度内に収入を上げようとしていた。

問題の工事は、昨年10〜12月に外来病棟で行われたレーザー視力矯正手術室への改修。契約額は2310万円だったが、工事を〈1〉元の部屋の解体〈2〉空調などの整備〈3〉レーザー機器設置のための内装改修――に3分割し、いずれも一般競争入札が不要な1000万円以下の工事として関東の建設業者に発注していた。

工事は、有名な眼科教授のいる同病院に昨年4月、医療機器販売会社からレーザー視力矯正機器の寄付の申し出があり、計画された。工事の仕様や予算策定について、眼科教授の提案で、販売会社の特約代理店の別の医療機器販売会社に相談し、この会社が建設業者を紹介した。

2課の担当者は建設業者から参考見積もりを取るなどして打ち合わせを重ねた結果、このまま施工に移行したいとして、昨年6月に建設業者に発注の意向を伝えた。同10月に発注し、この前に建設業者らには工事を3分割することを説明していたという。

調査結果は、医療機器販売会社や建設業者と眼科教授との金銭授受や、教授が随意契約を主導した事実は確認されなかったとし、「業者との癒着はなかった」と結論付けている。

大学の規定では、1000万円を超す工事は入札で発注しなければならないが、昨年10―12月に行われた総額2310万円の工事は3分割され、同一の建設業者と随意契約していた。

手術室工事をめぐっては、実際の工事費が契約額を約2000万円上回った。超過分について医療機器販売会社と建設業者間でトラブルとなり、販売会社が約1100万円を実質的に肩代わりしているが、病院が事情を聴いた職員全員は「超過分については知らなかった」と答えたという。

調査によると、病院は眼科教授から手術室整備の要望を受け、昨年度の事業計画に工事費2000万円の予算枠を計上。最初の業者の概算見積もりが約1億円だったため、教授と既知の光学機器メーカー(東京)を通じて医療機器販売会社に再度、概算見積もりを依頼した。

医療機器販売会社は病院側に建設業者、建設業者関連の設計事務所(千葉県)を紹介。予算と見積額の差を縮めるために業者と病院の契約担当者が話し合いを繰り返し、最終的に2310万円の見積もりを院長が承認した。

この段階で医療機器販売会社と建設業者に「(随意契約で)発注せざるを得ない状況」(報告書)になったと説明している。

手術室は昨年12月に完成。病院は不適切契約の事実を隠すため、工事終了後の今年2月になって発注図面、予定価格調書、契約書などを作成した。さらに宮城県内の業者3社から見積もりを取るなど適正契約を装う工作を重ねていた。

関係者によると、工事の打ち合わせは両社と病院眼科の教授らによって数回行われた。教授からは「白内障の手術ができるようにしたい」「スペースを広くする必要がある」などと追加の要請があった。その結果、最終的な工事費は4280万円に膨らんだ。

大学が支払ったのは契約書に基づく予算額通りの2310万円。差額は医療機器会社が負担することで、同社の担当者が建設業者と確認し、上司も知っていたという。

しかし、支払いをめぐって食い違いが生じ、建設業者は3月、不払い金の支払いを求めて東京地裁に提訴。医療機器会社が和解金1100万円を支払うことで、7月に和解が成立した。

備忘録

これだけ詳細に書いてくれていると、何があったのか分かりやすい。大手新聞社には、河北新報の爪の垢を煎じて飲んでもらいたい。それでも、一点だけ不明なのが、予算枠が2000万円しかないのは、計画が杜撰だったせいなのか、それとも、お金がなかったからなのかという点。それ以外は、手に取るように事実関係が分かります。

ようするに、契約前どころか決裁前の段階から、金も払わずに建設業者に無理難題を押しつけた結果、そこと契約せざるを得なくなって、分割発注の形にして、かつ、やってもいない見積合わせをやったかのように偽装した。ということですね。国の会計制度の問題が良く分かる典型的な事例。

本格解説

後日で。

参考意見

英文で公告というハードルが病院の事務の連中には、大変高く、面倒くさかった。

それが真相なのでは。

想像の斜め上を逝く。それが彼らだ。

正確には「英文で公告」だけではなく、さまざまな制約が「面倒くさかった」のでしょう。以下、コメント欄より。

当院でも、今、ある装置が超旧式であるため近いうちに何が何でも更新しなければいけないということになったのですが、通常に導入したのでは2000万円以上の予算が必要であるため、メーカーに何とか1600万円以下にならないものかと泣き付いた結果1600少し切る金額の提示をしてもらいました。おそらく今回の東北大は同じようなもので、当然他メーカーの提示金額は予定価格を大幅に超えていたため当該の会社が落札した。とういうことで何のことはない、別段珍しくもないよくあることなのだと思いますが。。

問題は「泣き付いた」後の見返りがどうなったかです。他の契約で泣かせた分以上に儲けさせているなら問題アリです。

機器というものはやはり使い勝手などいろいろな要素がありますから,本来は使う人間にとっていちばん使いやすいものを購入するべきなんですね.もちろんお財布の中身と相談ですが.みなさんも家電製品などを買う時には,機能をしっかり見極めた上で価格を考慮して機種を選定しますよね?

高額のものを購入するのに入札によって価格を抑制するのは財政上確かに適切ですが,場合によっては「安かろう,悪かろう」というものを購入する嵌めに陥る危険性もあります.これは「仕様要求」を仔細に検討して作成することである程度までそれを防止することはできますが...

山形大学だったかの麻酔器の購入なんかもそうですが,価格だけが優先されて「使う人間の意思がほとんど無視される」システムにも問題がないわけではないでしょうね.自分たちで購入した機器を使用しない事務方からみれば「価格」のみしか頭にないのは当然なんでしょうけど...

いや、実際、現場の人間からすれば入札なんていかにもお役所なシステムですよ。

私の稼業でも、どこのメーカーの機械を買うかは死活問題ですから、それこそ仕様書作成に命をかけてメッセージを盛り込みます。

そこの空気を読んで、業者は応札するのですが、ときどき空気をまったく読まないメーカーが落札して、ショボーン。お呼びじゃないのに・・・。

言ってみれば、兵器の選定みたいなもんです。現場からすりゃ、値段で決めるなー!!って言いたくなる。

国の金で契約する以上、透明性は確保しなければなりません。そのために、民間企業に無い制約を受けなければならないのは止むを得ないことです。本末転倒な制約や回避可能な制約は避けるべき[2]だけれど、必要な制約に不服を言うのは公務員として自覚が足りない。

業者に自発的に空気を読むことを期待するのが間違い。空気を読まない業者であろうとも、「使う人間の意思」どおりの応札となるよう、キッチリと仕様書を書くべきです。落札結果が気に入らないなら、それは、仕様書に不備があるのです。

いまいちよく分からないところがあるのですが、国際入札を免れるために予定価格を下げたのですから、基本的に損はしていない様な気がします。予定価格を上げたわけではないですからね。

国際入札にすればもっと安くなるのなら問題でしょうが、そうでないなら、騒ぐほどの事件ではないとも見えます。

それよりも1600万円の国際入札の壁があるのなら、これからはその価格を越えるものの購入制限が横行しそうです。

その契約単体を見れば、病院側が損をしていないのは確かです。しかし、業者と癒着が疑われるのであれば、特定の契約単体だけではなく、他の契約も含めて総合的に判断する必要があります。取引額からは、少なくとも「今年6月まで」の間、業者が元を取っていないと推測できます。

最終更新時間:2007年09月19日 22時36分00秒

社会問題

  • [1]消費税抜き価格1523万円
  • [2]実際の所、そうした無意味な制約が多々ある

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