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日本航空907-958便ニアミス事件判決

[社会問題]

平成20(あ)920 業務上過失傷害被告事件に判決内容が書かれているが、重大な事実誤認等、あまりに内容が酷すぎる。

認定事実

(3)RAと管制官の指示との関係

本件当時,航空機の運航のため必要な情報を航空機乗組員に対し提供するものとして航空法に基づき国土交通省航空局が発行していた航空情報サーキュラーは,「RAにより管制指示高度からの逸脱を行う場合,パイロットは航空法96条1項の違反には問われない。」と規定するのみで,RAと管制指示が相反した場合の優先順位について規定していなかった。また,日本航空株式会社の運航規定であるオペレーションズ・マニュアル・サプルメントでは,「RAが発生した場合は,機長がRAに従って操作を行うことが危険と判断した場合を除き,RAに直ちに従うこと」と規定されていた。

明記されていないにしろ、これを読めば、管制指示よりRAを優先することを前提としていることは明らかである。よって、管制指示よりRAを優先するはずとする思い込みを管制官が持ったとしても、この書き方では止むを得ないだろう。

C機長は,上昇RAが発せられていることを認識したが,[1]958便を視認しており,目視による回避操作が可能と考えたこと,[2]907便は既に降下の体勢に入っていたこと,[3]958便の上を十分高い高度で回避することが必要であるところ,上昇のためには,エンジンを加速し,その加速を待って機首を上げる操作をしなければならないが,降下の操作によりエンジンをアイドルに絞っていたため,エンジンの加速に時間が掛かると思ったこと,[4]空気が薄い高々度において,不十分な推力のまま不用意に機首上げ操作を行うと,速度がどんどん減ってしまい,場合によっては失速に至ってしまうという事態が考えられたこと,[5]被告人Aによる降下指示があり,管制官は907便を下に行かせて間隔設定をしようとしていると考えたこと,[6]958便がTCASを搭載しているか否か,それが作動しているか否か分からず,958便が必ずしも降下するとは考えなかったことを根拠に降下の操作を継続した。

少なくとも、[1][3][4][6]は「C機長」の脳内にしかない情報であり、明確に言葉として伝えられない限り、管制官には知る由がない。よって、この「C機長」の判断は、その判断根拠が言葉として伝えられなければ、管制官には知る由がない。

言い間違い

(2)そこで検討すると,上記1(1)のとおり,被告人Aが航空管制官として担当空域の航空交通の安全を確保する職責を有していたことに加え,本件時,異常接近警報が発せられ上昇中の907便と巡航中の958便の管制間隔が欠如し接触,衝突するなどのおそれが生じたこと,このような場面においては,巡航中の958便に対して降下指示を直ちに行うことが最も適切な管制指示であったことを考え合わせると,被告人Aは本来意図した958便に対する降下指示を的確に出すことが特に要請されていたというべきであり,同人において958便を907便と便名を言い間違えた降下指示を出したことが航空管制官としての職務上の義務に違反する不適切な行為であったことは明らかである。そして,この時点において,上記1(2)アのとおりのTCASの機能,同(4)アのとおりの本件降下指示が出されたころの両機の航行方向及び位置関係に照らせば,958便に対し降下RAが発出される可能性が高い状況にあったということができる。このような状況の下で,被告人Aが言い間違いによって907便に降下指示を出したことは,ほぼ同じ高度から,907便が同指示に従って降下すると同時に,958便も降下RAに従って降下し,その結果両機が接触,衝突するなどの事態を引き起こす高度の危険性を有していたというべきであって,業務上過失傷害罪の観点からも結果発生の危険性を有する行為として過失行為に当たると解される。被告人Aの実地訓練の指導監督者という立場にあった被告人Bが言い間違いによる本件降下指示に気付かず是正しなかったことも,同様に結果発生の危険性を有する過失行為に当たるというべきである。

「本件降下指示が出されたころの両機の航行方向及び位置関係に照らせば,958便に対し降下RAが発出される可能性が高い状況」の間違いは後で述べる。

以上によれば,被告人Aの言い間違いによる本件降下指示は,便名を言い間違えることなく958便に対して降下指示を与えて,原判決罪となるべき事実にいう907便と958便の接触,衝突等の事故の発生を未然に防止するという航空管制官としての業務上の注意義務に違反したものであり,被告人Bが,被告人Aが958便に対し降下指示をしたものと軽信して,その不適切な管制指示に気付かず是正しなかったことも,被告人Aによる不適切な管制指示を直ちに是正して上記事故の発生を未然に防止するという,被告人Aの実地訓練の指導監督者としての業務上の注意義務に違反したものというべきである。そして,これら過失の競合により,本件ニアミスを発生させたのであって,被告人両名につき業務上過失傷害罪が成立する。これと同旨の原判断は相当である。

以下、裁判官宮川光治(裁判長)補足意見にも同様に書かれている。

本件は,そもそも,被告人両名が航空管制官として緊張感をもって,意識を集中して仕事をしていれば,起こり得なかった事態である。被告人両名は異常接近警報が作動してそれまで失念していた958便の存在に気付き動揺したこともあって言い間違いをし,かつ言い間違いをしたことに気付かなかったものと認められるが,そうした切迫した状況下では,管制官には,平時にもまして冷静沈着に,誤りなき指示を出すということが求められているというべきである。被告人Aは,訓練生であったが,過ちが許容されるわけではない。とくに,被告人Bは,訓練監督者として,被告人Aの管制指示に誤りがないかを常に注意していなければならないのに,見逃している。さらに,被告人両名は,907便からの復唱があったときにも誤りに気付かなかったというのであり,本件では,不注意が重なっている。幸いにも,両機が接触・衝突して大惨事となる事態を間一髪回避できたが,多数の乗客が負傷しており,その結果は重大であり,被告人両名の行為を看過することは相当でない。

まず、管制官のミスが次のどちらのケースであるかの言及が全くない。

  • よっぽどの不注意が無ければミスしようがない易しい作業
  • 瑣細なミスも含めて完全にノーミスで達成するのが難しい作業

前者のケースでミスをしたなら、それは過失があったと認定する根拠になりうる。しかし、後者のケースでは、全く過失が無くてもミスが起きるので、ミス=過失とは言えない。例えば、後者の実例としてIII種国家公務員試験の適正検査なるものがある[1]

そして、「職務上の義務に違反」「航空管制官としての業務上の注意義務に違反」と言うが、具体的にどんな義務に違反したかの指摘がない。指摘されていることは、言い間違えと、その間違いに気づかなかったことだけである。ようするに、ミスを冒した事実だけをもって過失と断定しているのだ。しかし、そう断定するためには、不注意が無ければミスが起き得ない易しい作業でなければならない。にもかかわらず、作業の難易度に関する言及が一切無いのだ。

一方、航空事故調査報告書(P.160)を見てみると、次のような作業を難しくする要因が挙げられている。

  • 事故機の複数に機体を相手に管制を行なっていたこと
  • 事故機とは別の注意すべき機体(アメリカン航空157便)があったこと
  • 直前に便名の類似した機体(日本航空952便)との交信があったこと
  • 隣接セクターとの調整や訓練のための説明に忙殺されていたこと
  • 3分前に作動するはずの警報が1分前になってようやく作動したこと

さらに補足すると、航空管制には次のような作業を難しくする要因がある。

  • 過密した交通量
    • 我が国は、国土が狭いのに航空需要は多い
    • 軍事空域が多数存在する(一例)ことで空域は圧迫している
    • 旅客機は亜音速で飛行している(速度が速い分だけ相対的に空域は狭くなる)
  • 時々刻々と変化する状況での即座に判断する必要性
    • 旅客機は亜音速で飛行している
    • 飛行機は空中で止まれず、失速の危険があるので急操作が出来ない
  • 限定された情報で判断しなければならない難しさ
    • 管制官はコクピットの景色や計器等を直接見ずに指示を出している(コクピットは視界が狭く、速度に比して視認限界距離が短いため、パイロットでも判断は難しい)
    • 航空路監視レーダーは10秒間隔で回転(データの更新に10秒以上必要)
  • 緊張し過ぎとリラックスし過ぎに偏りやすく、程よい緊張を維持し難い作業性
    • つきつめれば単なる交通整理でしかない繰り返し作業(緊張感が崩れやすい)
    • 一つのミスが大惨事になるという緊張感
  • 混同を起こしやすい状況
    • 社名英字と3桁数字の組み合わせだけの識別方法

よって、この事故のケースは、瑣細なミスも含めて完全にノーミスで達成するのが難しい作業であることは明らかであろう。このケースでは、ミスをした事実だけからは「緊張感をもって,意識を集中して仕事をしていれば,起こり得なかった」とは言えないのである。間違えない努力を怠ったのならば確かに「職務上の義務に違反」だろうが、ミスした事実だけで「職務上の義務に違反」と言うのはおかしい。そうした事情を無視して、「そうした切迫した状況下では,管制官には,平時にもまして冷静沈着に,誤りなき指示を出すということが求められているというべきである」と言うのは時代錯誤の根性論でしかない。時代錯誤の根性論でミスが防げるなら、Safety Management(安全管理)は必要がない。確かに、最低高度より低い高度を管制指示した例のようなミスであれば、通常果たすべき義務を果たしていれば起こり得ないミスであろう。しかし、この事故のケースでは、頭がこんがらがって、言い間違いくらいはあっても全然おかしくはない。

「動揺したこともあって言い間違いをし,かつ言い間違いをしたことに気付かなかった」についても全く理解が足りてない。「切迫した状況下」で人が動揺するのは当たり前である。一つ間違えれば大惨事になるのだから、動揺しない方がおかしい。動揺して間違えれば「職務上の義務に違反」と言うのも、時代遅れのスポ根的発想であろう。この事故と同じ頃、全日空の訓練教官から聞いた話は、もっとまともだった。人間の精神状態には、(a)ゆるみすぎた状態、(b)適度なリラックス状態、(c)程よい緊張状態、(d)極度の緊張状態があるそうである。確実に仕事がこなせる状態は(c)であるが、この状態は続いても30分である。そこで、常時、(b)と(c)の間を保つようにするのが良いとされる。そのためには、(a)や(d)に陥った時に、そこからどうやって(b)や(c)に復帰するかが重要である。全日空では、職場ぐるみで必要な情報を共有し訓練に活かしているという。つまり、全日空では、個人の資質の問題として片付けずに、職場全体の問題と捉えて改善に努めているのである。全日空方式に比べれば、最高裁のスポ根論が如何に時代遅れか良くわかるだろう。

事実関係には、一つ疑問が残る。管制官に限った話ではない一般論で言えば、通常、「訓練監督者」は後ろに一歩引いて客観的に観察する立場に立つべきだろう。一歩引いた立場でいれば、本人が気づき難いミスにも、簡単に気づけることが多い。それでも気づけなかったのは何故か、という所がこの事故を検証する上で重要なポイントだろう。しかるに、そこを、安易に、根性論で片付けているのが、この判決文の大いなる問題点である。

機長判断

また,因果関係の点についてみると,907便のC機長が上昇RAに従うことなく降下操作を継続したという事情が介在したことは認められるものの,上記1(3)のとおりの管制指示とRAが相反した場合に関する規定内容や同(4)エのとおりの降下操作継続の理由にかんがみると,同機長が上昇RAに従わなかったことが異常な操作などとはいえず,むしろ同機長が降下操作を継続したのは,被告人Aから本件降下指示を受けたことに大きく影響されたものであったといえるから,同機長が上昇RAに従うことなく907便の降下を継続したことが本件降下指示と本件ニアミスとの間の因果関係を否定する事情になるとは解されない。そうすると,本件ニアミスは,言い間違いによる本件降下指示の危険性が現実化したものであり,同指示と本件ニアミスとの間には因果関係があるというべきである。

この説明文は「C機長」に過失がないことを述べているに過ぎない。しかし、ここで問うべきは「C機長」の過失ではない。ここで論点となるべき「異常な操作」とは、機長の過失操作ではなく、管制官の予想を超える操作のことである。よって、どんなに機長に過失がなくとも、その操作が管制官の予想を超えているならば、ここでの論点としては「異常な操作」であるはずである。しかし、「C機長」の操作およびその元となる判断を管制官が知り得たかどうかについては、一切触れられていない。これでは、「異常な操作などとはいえず」などという判断が出来るはずがない。

前提事項で述べた通り、少なくとも、[1][3][4][6]は「C機長」の脳内にしかない情報であり、明確に言葉として伝えられない限り、管制官には知る由がない。そして、「RAにより管制指示高度からの逸脱を行う場合」、パイロットには管制官と交信する義務が免除される。常識で考えて、そのような場合、悠長に交信している余裕はないからである。事実、この場合、「C機長」は管制官に[1][3][4][6]を伝えていない。「C機長」が何を考えていたか分からないのに、「C機長」の行動を予測しろとは、とうてい無理な相談である。不可能を実現しなかったから管制官に責任がある、という主張は、とても最高裁の「職権判断」とは思えない暴論である。

TCASの指示

また,上記1(2)イのとおりのTCASに関する被告人両名の知識を前提にすれば,958便に対して降下RAが発出されることは被告人両名において十分予見可能であり,ひいては907便と958便が共に降下を続けて異常接近し,両機の機長が接触,衝突を回避するため急降下を含む何らかの措置を採ることを余儀なくされ,その結果,乗客らに負傷の結果が生じることも予見できたと認められる。

以下、裁判官宮川光治(裁判長)補足意見にも同様に書かれている。

しかしながら,被告人両名は,本件両旅客機を含む一定以上の規格の航空機にTCASが装備されていることについての知識を有し,RAに関する知見もあったと認められるところ,TCASは衝突を回避するための合理的操作を指示するのであるから,被告人Aが管制指示を出した前後には,両機にRAが発出されること,及び958便には降下RAが,907便には上昇RAが発出されることは容易に予見できたというべきである。958便の機長が降下RAに従い降下操作をすることは当然予見でき,漫然と巡航操作を維持し続けるということは,現実的には考え難い事態である。所論は,失当である。

しかし、これは、明らかな事実誤認である。TCASのアルゴリズムを正確に理解している電子技術者でさえ、どちらにどのような指示が出るかを短時間で予測するのは困難だろう。単独アルゴリズムでも、TCASがどんな指示を出すか予測するのは困難である。通信リンクで、指示内容が被らないように調整する仕組みを考えると、もっとアルゴリズムは複雑となり、予想は困難となる。

航空路監視レーダーは10秒間隔で回転しているから、航空機の位置は10秒単位でしか分からない。旅客機は亜音速で飛んでいるから10秒あれば、2kmくらいは軽く移動してしまう。加えて、RDPシステムでは、複数のレーダーサイトのデータで補完するため、レーダーサイト間の誤差が結構ある。RDPの画面では、真っ直ぐ飛んでいるはずの航空機の航跡が画面上でジグザグに見えることも良くある現象である。つまり、レーダー画面を見ても、航空機の位置関係は、大まかにしか分からないのである。そして、管制卓には機上計器の情報は表示されない。それでは、どんな優れた電子技術者でもTCASの指示を予想するのは不可能だろう。よって、裁判官櫻井龍子の反対意見のとおり、「TCASの機能の概要等を知っていたにすぎない被告人両名において,両機へのRAの発出時期及びその内容を具体的に予見することができたと認めることはできない」のである。

裁判官櫻井龍子が反対意見として「TCASが作動しRAが発出されたか否かについて,管制卓レーダー画面などを通じて管制官が即座に確実に把握できるシステムは構築されておらず(本件後,管制卓レーダー画面にRA作動の情報を表示することが,航空・鉄道事故調査委員会により勧告されている。)」と述べていることから、管制官がTCASの指示内容を知り得ないことを、他の裁判官も知っていたはずである。にもかかわらず、このような事実を歪曲する作文が行なわれるとは、最高裁も地に落ちたものである。

全運輸労働組合の声明によれば、「一審、二審においても、飛行中の航空機に搭載されているTCASが表示するRA(回避指示)の内容を、地上にいる管制官が予見できるかどうかが争点の一つとなったが、公判ではどの証人も予見できないと証言し、検察側の論理はことごとく破綻した。」という。それが事実であるならば、「にもかかわらず、東京高裁は、TCASの運用方式の不備には全くふれないばかりか、証言や証拠を無視して、裁判官自らがTCASのRAの内容は予見可能とするストーリーを無理矢理作り出すなど、有罪ありきの判決を導き出した。最高裁決定はこの判決をそのまま踏襲したものであり、なんら具体的な根拠も示さず、非科学性極まりない。」とする指摘は当然のことだろう。

これが事実であれば、刑事訴訟法違反第二十条違反であろう。

第二十条 裁判官は、次に掲げる場合には、職務の執行から除斥される。

一 裁判官が被害者であるとき。

二 裁判官が被告人又は被害者の親族であるとき、又はあつたとき。

三 裁判官が被告人又は被害者の法定代理人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人であるとき。

四 裁判官が事件について証人又は鑑定人となつたとき

五 裁判官が事件について被告人の代理人、弁護人又は補佐人となつたとき。

六 裁判官が事件について検察官又は司法警察員の職務を行つたとき。

七 裁判官が事件について第二百六十六条第二号の決定、略式命令、前審の裁判、第三百九十八条乃至第四百条、第四百十二条若しくは第四百十三条の規定により差し戻し、若しくは移送された場合における原判決又はこれらの裁判の基礎となつた取調べに関与したとき。ただし、受託裁判官として関与した場合は、この限りでない。

専門的知識を持った「証人又は鑑定人」でなければ判断できない事項について、誰も「証人又は鑑定人」として証言していない事項を採用するなら、それは、裁判官が「証人又は鑑定人」としての判断を下したことになる。つまり、裁判官が事件について証人又は鑑定人となったわけであるから、その裁判官は職務の執行から除斥されなければならないはずである。しかるに、職務の執行から除斥されるべき裁判官が除斥されず、その裁判官が判決を下しているなら、それは、刑事訴訟法第二十条に明らかに違反する。

反対意見

多数裁判官の「職権判断」に比べれば、「裁判官櫻井龍子の反対意見」はかなりまともである。管制官のミスについてのスポ根論は解消されていないが、それ以外は、いたってまともである。是非とも、判決内容を読んで内容を比べてもらいたい。

報道

このような判決への反対意見として、安全に逆行ということばかりがクローズアップされるが、それは、刑事裁判に関する本質とは違う。それでは、刑事罰を逃れるための言い訳にしか聞こえない。また、検察の言い分も、被害者がいるから誰か罰さないといけないなどと、被害者感情を満足させるための時代錯誤な生け贄でしかない。

論じるべきことは、処罰するべきほど悪いこと誰かが行なったか、である。該当者が居ないなら罰するのはおかしい、該当者が居るなら罰すべき、ということなのだ。そして、管制官の刑事罰については、考慮すべきことは次の2点である。

  • ミスは不可抗力でも起こるものであって過失とは違う=過失を問うなら明らかな注意義務違反を挙げるべき
  • 管制官と機長とTCASがそれぞれ独自の判断をして、その判断が適切にリンクされてない

今回の事故については、多数の人が少しずつ悪い。しかし、いずれも刑罰を課すには過失度合いが全然足りない。処罰するべきほど悪いことをした人は誰もいないのだ。それなのに、時代錯誤な生け贄論で誰かを罰しようとするからおかしなことになるのである。

今後の展開

前述したように、この裁判の手続が刑事訴訟法第二十条違反であるのは明らかなので、検事総長は、刑事訴訟法第四百五十四条に基づいて非常上告を行なうべきだろう。

第四百五十四条 検事総長は、判決が確定した後その事件の審判が法令に違反したことを発見したときは、最高裁判所に非常上告をすることができる。

そもそも、刑事訴訟法に定められた手続に違反した場合、その判決は有効と言えるのだろうか。刑事訴訟法において、手続違反により効力が失われないことが明言されているのは、以下の二つの条文だけである。

第十三条 訴訟手続は、管轄違の理由によつては、その効力を失わない。

第三百十六条 地方裁判所において一人の裁判官のした訴訟手続は、被告事件が合議体で審判すべきものであつた場合にも、その効力を失わない。

ということは、それ以外の訴訟手続違反は、それまでの訴訟手続が効力を失うと解釈すべきなのではないか。よって、本件は、高裁判決が無効となって、高裁判決からやり直さなければならないのではないか。

最終更新時間:2010年11月03日 02時11分19秒

社会問題

  • [1]この適性検査、時間内にひたすら単純作業を繰り返すものである。そして、結構、配点割合が大きく、合否を分ける大きなポイントになっている。ミスがないように注意しすぎると、解答速度が落ちてしまい、正答数が減ってしまう。かと言って、解答速度を上げすぎると、ミスが増え過ぎて、やはり、正答数が減ってしまう。私は、練習を積み、かなり正答数を増やせるようになってから本番に挑んだが、2割くらいは手つかずで残ってしまった。正答率も、良く見積もって95%くらいだろう。それでも合格はした(採用は断ったが)のだから、III種合格レベルでもその程度だと言えるだろう。この手の作業で100%間違えないのは不可能なのである。

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