WILLCOM再建案

前置き 

倒産して再出発したWILLCOMだが、だれとでも定額なる馬鹿げたプランを発表するなど、未だ、迷走を続けている。 そこで、以前にまとめた再建策を、その後の携帯業界の動向等を踏まえて修正し、再度、整理して提案することとする。

料金プラン 

原則、次の条件を満足するよう料金を設定する。

  • AMPUを低下させないこと
  • 追加の設備投資や経費負担なしに実現可能であること
  • 他社のあらゆるプランとの競争に勝てる料金設定であること
  • 他社の追従が困難と予想されること
  • 公平かつ偏りのない価格設定とすること
  • 端末代を除いた純粋な通話・通信料金は、現状維持か値下げとなること
  • 端末代を含めた総支払額についても、通話時間次第で現状維持か値下げとなること(待ち受け専用が実質値上げとなるのは止むを得ない)

AMPUを減らさず、かつ、値上げもしないのは難しいと思うかもしれないが、次の条件を満足すれば、十分に可能である。

  • 待ち受け専用の場合の端末代を含めた総支払額が増える
  • 従来プランで殆ど通話がなかった他社通話が増える(値下げ=売上減少ではない)

後者について具体的な例を挙げて説明しよう。 新ウィルコム定額プランSでは、料金が高いので、他社通話を月10分しかしなかったとする。 この場合、月420円の通話料が発生する。 そして、接続料のみ徴収するプランにすると、他社通話が月100分に増えたとする。 この場合、月1000円の通話料が発生する。 同じ時間だけ新ウィルコム定額プランSで通話したと仮定すると、月4200円の通話料が発生する。 よって、新プランでは、月3200円の値下げとなる。 一方、AMPUの低下は約320円(420円から接続料を引いた値)である。 仮に、基本料金を320円上げたとすると、AMPUの低下なしに2880円の値下げが実施できる。 仮に、基本料金を1320円上げたとすると、AMPUが1000円増加しながら、かつ、1880円の値下げが実施できる。 このように、トラフィックに十分な余裕がある前提でなら、原理的に、高AMPUと値下げの両立は十分に可能である。

尚、新プラン導入に伴い従来プランは全て新規受付停止する。

音声向けプラン 

以下のとおり提案する。

  • 基本料金:月額3200円(長期契約約束割引適用で1800円)
  • 通話単価:ほぼ接続料のみ(WILLCOM同士無料、固定電話およびIP電話3分8.4円程度、携帯電話1分8.4円程度)
  • データ通信:最大月額2400円
  • パケット単価0.0105円

新ウィルコム定額プランGS以外の全てのプランと比べて割安な料金設定とした。 可能であれば、新ウィルコム定額プランGSと同様にパケット代を無料にしたい。

実現性 

提案内容と新ウィルコム定額プランGS+W-VALUE SELECTとを比較してみる。 以下の項目については、提案の方が現行よりAMPUが大きくなる方向である。

  • 基本料金収入:新ウィルコム定額プランGS+WVS割引額=1450-1430=20円
  • データ通信収入:0円

また、新ウィルコム定額プランGSでは、WILLCOM同士無料であり、かつ、ほとんどの通話がWILLCOM同士となるはずである。 WILLCOM同士でガンガン通話されても通話単価を徴収する必要がないなら、他社通話についても接続料分だけ徴収すれば済むはずである。 ユーザの立場から見れば、他社通話の方が通話相手は増えるだろうが、接続料分の負担が必要なら、無料のWILLCOM同士ほど通話をしないだろう。 また、ガンガン通話する相手とは同時にWILLCOMに加入するだろうから、他社通話となる相手は、それほど長話をする相手でもないと思われる。 WILLCOMはトラフィックに余力があるから24時間定額制を導入したはずなので、WILLCOM同士より少ない通話の増加に現行設備だけで対応できないとは考え難い。 さらに、他社とも格安に話せるプランなら、十分に1台目需要を狙えるので、他社からの接続料収入が見込める。 現行の料金では、高額となる他社への通話が少ないと予想されるので、他社通話を接続料のみとしても、それによるAMPUの低下は少ないと考えられる。 むしろ、他社からの接続収入の増加の方が大きいのではないか。 よって、他社通話をほぼ接続料のみとしても、トラフィック的に可能で、かつ、AMPUへの悪影響はないと考えられる。

仮に、キャリアが端末販売で利益を得ていると仮定して、その分も含めて計算してみる。 端末を2割で仕入れて端末販売で8割の利益を得たと仮定すると、その利益は1月当たり約2410円となるfn (72320*0.8)/24=2410.6…円。 端末利益を現行料金に加算すると、約7.3MB以上のデータ通信を行なえば、提案の方が現行よりAMPUは大きくなる。

データ通信向けプラン 

速度および価格から、現状でライバル視すべきは、日本通信(b-mobile)のb-mobileSIM U300である。 他は、全て、料金が高いので、安さを売りにする限りは、ライバル視する必要がない。 スペック上の速度は、b-mobileが300kbps、WILLCOMが256~512kbpsであり、ドッコイドッコイだろう(ただし、実効速度はWILLCOMの方が良いと予想される)。

  • 基本料金:月額3800円(長期契約約束割引適用で2400円)
  • データ通信:0円
  • 通話オプション:月額1800円
  • 通話単価:ほぼ接続料のみ(WILLCOM同士無料、固定電話およびIP電話3分8.4円程度、携帯電話1分8.4円程度)

料金はb-mobileSIM U300を24ヶ月契約した時よりも安く設定した。 通話オプションをつけた場合は、音声向けプランより不利となるが、その分、8倍対応で速度面でのメリットがある。 NS001Uの新規購入と比べれば、通信料は割高となる。 しかし、これは、端末額の約4.6倍の割引額となるNS001Uの異常な販売形態がもたらしている例外現象であって、提案したプランに問題があるわけではない。 端末販売が適正価格に是正されれば、現状の全てのプランより割安となるはずである。

実現性 

提案内容と新つなぎ放題+W-VALUE SELECT(NS001U)とを比較してみる。 以下の項目については、提案の方が現行よりキャリアの取り分は大きい。

  • 基本料金収入:月額3880-3700=180円
  • 話し放題収入:980円

通話単価については音声向けプランと同じである。

仮に、キャリアが端末販売で利益を得ていると仮定して、その分も含めて計算してみる。 端末を2割で仕入れて端末販売で8割の利益を得たと仮定すると、その利益は1月当たり640円となる( (19200*0.8)/24=640円)。 端末利益を現行料金に加算しても、提案の方が現行よりAMPUは大きい。

割引 

W-VALUE SELECT新規受付停止 

端末の割賦販売は行なうが、端末販売に伴う割引は一切しない。 W-VALUE SELECTは端末購入とは無関係な割引制度に移行し、端末の開発促進については別途方策を考える。

長期契約約束割引 

W-VALUE-SELECTの代わりになる割引制度として、いつでも、誰でも、端末の購入とは無関係に加入できる、契約約束期間に比例した新割引制度を提案する。 ただし、旧W-VALUE SELECTとの併用は不可。

  • 割引月額=700×(約束月数÷12)
    • ただし、約束月数=1の場合は、割引月額=0円。約束月数>24の場合は、割引月額=1400円。
  • 解約の申し出がない場合は自動更新
  • 約束月数以内で解約する時の手数料=(約束月数での割引月額-実契約月数で再計算後の割引月額)×実際に割引を受けた月数=(700×((約束月数-実契約月数)÷12)×実契約月数
理想の割引オプション解約料

この割引制度には次のようなメリットがある。

  • 新規加入および端末更新時に利用すれば、W-VALUE-SELECTに似た割引が受けられる
  • ユーザー間の不公平が是正される(釣った魚に餌代を払わせることはなくなる)
  • 端末を購入しない人にとっては、実質的な基本料の値下げになる(W-VALUE-SELECTは端末代を相殺するだけで実質的な基本料の値下げにならない)
  • 割引月額を月数に応じて調整できるので、中途解約者から適正な解約料を徴収できる
  • 実質的な解約時期の縛りが生じない(何時解約してもユーザーは損をしない)

現在のPHSのシェアは5%以下なので、既存顧客の足止めよりも新規顧客の獲得に力を入れざるを得ないのは止むを得ない。 そのため、釣った魚に餌をやれないのは仕方がないとしても、釣った魚に餌代を払わせるW-VALUE-SELECTは是正すべきと考える。 PHSに期待されているのは、公平かつ設備の効率的運用による安価な料金制度であろう。 携帯各社と同様のシガラミに囚われるようでは、PHSの存在意義はない。

新しい割引制度では、従来から端末を長く使い続けていた顧客に対するコストは増える。 しかし、定期的に端末を買い替えていた顧客に対するコストは増えない。 W-VALUE-SELECTが端末購入促進に功を奏してきたのであれば、前者は少数派のはずであり、全体的なコスト増は少ないだろう。 これまで定期的に端末を買い替えていた顧客にとって、端末を買い替えずに割引だけを受ける選択肢が増えることになる。 顧客は、欲しい端末があれば多少高くても購入するが、欲しい端末がなければ手持ちの端末を継続利用する。 本来あるべき端末選択の自由度が担保されることは、顧客にとって魅力が大きい。

純粋に通話料金収益のみを考えるなら、端末購入者だけを特別扱いする意味はない。 端末購入者だけを特別扱いするのは、端末製造業者に利益誘導することで、活発な端末の開発を促すためである。 よって、別途、端末の開発を促す方策があれば、端末購入者だけを特別扱いする必要はなくなる。 それが実現できるなら、端末購入者だけに絞った割引制度は必要ない。

ソフトバンクへの回線貸出 

ソフトバンク・グループの子会社になったので、ソフトバンク・モバイルとの協力関係を強めることで、業績を伸ばすことが出来るはずである。 既に、ソフトバンク系の店舗でWILLCOM端末を販売することは既に行なわれているようだが、もっと出来ることはあるだろう。

たとえば、新ウィルコム定額プランGSとは逆に、ソフトバンク・モバイルがWILLCOM回線を借り受けてMVNOすることが考えられる。 ホワイトプランはソフトバンクのトラフィックに余裕がないから21時~翌1時は有料となっている。 そこで、ソフトバンク3GとWILLCOMの両対応の端末を作り、音声通話を積極的にWILLCOM側に逃がすようにすれば、ソフトバンク回線にも余裕ができる。 そうすれば、21時~翌1時も無料とすることが出来るだろうし、通話単価ももっと下げられるだろう。 定額を無理なく実現できるのはWILLCOMならではの強みである。 だから、WILLCOM回線を独占してしまえば、他社に真似の出来ない通話サービスを提供できるようになる。 データ通信も、高額で高速なソフトバンク回線と、低額で低速なWILLCOM回線の2本立てで販売すれば、ユーザの選択肢が広がる。

ハードウェア 

端末については、原則、端末製造業者に自社専用端末を作らせる従来のやり方を転換し、汎用端末を自社端末として流用する方策を考えるべきであろう。

モバイルルータ 

最低限必要な自社専用端末は、次の機能を持った低価格端末である。

  • 電話機能
  • テザリング
  • 長時間バッテリ駆動

IDEOS(Pocket WiFi S)のような、通話可能なモバイルルータとして使える端末を低価格で提供すればいい。 そして、テザリング先から電話機能も遠隔操作&通話できるようにすると良い。 そうすれば、モバイルルータは常に胸ポケット等に入れておいて、通話もデータ通信もテザリング先から行える。 これさえあれば、無線LAN機能を持った全ての端末が疑似WILLCOM端末として利用可能になる。 この端末を3万円弱で販売できるなら、端末割引は必要あるまい。

通話可能なUSB通信モジュール 

これについては、汎用端末を自社端末として流用する方策となる。

端末の自由 

各社が発売しているUSB通信モジュールは、データ通信機能しか搭載しておらず、通話機能はない。 そこで、USB通信モジュールに通話機能を設ければ、他社との差別化とともに、活発な端末の開発を促すことができる。 何故なら、USB通信モジュールで通話機能が付加できるなら、PDAだろうが、MIDだろうが、ネットブックだろうが、CULVノートだろうが、大型ノートだろうが、USBポートさえ装備していれば、機種もメーカーも問わず、全ての端末が自社サービス対応の端末になるからである。 通信事業者が用意すべきはUSB通信モジュールとソフト(ドライバ)だけであり、専用端末の開発を促す必要はなくなる。 ただし、大きさと技術的な制約から、現状では、データ通信兼用端末のみに限った話となり、音声専用端末で同様の対応は難しいと思われる。

現状では、特定の通信事業者のサービスを受けるためだけに、新規に端末を購入しなければならない。 同等の端末を持っていない人にとっては大した問題ではないが、既に同じ機能を有する端末を持っている人にとっての強制的買替は大いなる無駄であろう。 端末を強制的に買い替えさせ、その購入代金を割り引くというやり方は、本末転倒である。 そんなことをしなくても、手持ちを端末を流用可能にして、買替不要とすれば良い。 自分の好みの端末を自由に選べる、それが、本来あるべき姿だろう。

端末の機能で差別化を図るため、端末を囲い込んでも、長い目で見れば、何の利益も生み出さない。 一時的に差別化に成功しても、各端末製造業者は、他の通信事業者とも提携しているのだから、優位は長く続かない。 囲い込みによって自由な発展を阻害すれば、業界全体を萎縮するから、かえって損だろう。 そもそも、PHSは通信事業者としてのサービスを売りにしているのだから、端末の機能で差別化を図るやり方にはなじまない。

USB採用の理由 

W-SIMスロットは国内メーカーでも極めて限られた端末しか採用していない。 W-ZERO3やD4を開発したシャープだって、WILLCOM用の端末以外にはW-SIMスロットを設けていない。 WILLCOMの今の状態では、搭載機種を拡大してもらえる見込みは殆どない。 国内メーカーですら、一部メーカーの一部機種にしか搭載されていないのだから、海外メーカーに採用を期待するのは無理がある。 しかし、USBなら、搭載していない機種を探す方が難しい。 W-SIMが業界標準となっていない現状においては、USBを採用するのが最も確実である。

技術的には容易に実現可能だろう。 現状のW-SIMをベースに、音声とデータ通信を時分割でシリアル伝送するように改造すれば良いだけである。 現行PHSの帯域ならば、USB1.0でも十分足りる。 XGPでもUSB2.0で十分足りる。 技術的な問題点は何もない。

現在、XGPのW-SIMについては、何らアナウンスがない。 それは、XGPをW-SIMのスペースに収めるのが技術的に難しいからではないのか。 それならば、何時までもW-SIMに固執する必要はないのではないか。

物理的スペース 

問題があるとすれば、物理的なスペースの問題である。 USB機器は、端末内部に収納するようになっていない。 だから、USB通信モジュールをつけたままでは持ち運ぶ時に邪魔になる。 可搬性を考えた場合、USBよりはSDIOの方が現実的かもしれない。

W-SIM 

W-SIMについても、汎用端末を自社端末として流用する方策への転換が必要である。 詳細は別ページに記載。