だれとでも定額

総評 

何故、“だれとでも定額”が実現できたのか。 その唯一にして最大のカラクリは、“だれとでも定額”が定額プランでは無いことに尽きる。 使い方によっては少しお得なプランではあるが、これを“定額”と呼称するのは詐欺だろう。 嘘と言うか、誇大広告と言うか、インチキと言うか、こんなことをやるようになっては企業として先が見えている。 定額プランとは、どれだけ通話しても一定額以上の支払いが生じない安心感があるプランを言う。 一方、このプランは、“定額”と呼称しただけの青天井プランであり、定額プランとは真逆のプランである。 ただし、スマートフォンで利用する場合には、フリーソフトをインストールすれば、実質的に定額プランとして利用可能である。 関係者の証言によれば、WILLCOMはこのプランが定額と真逆のプランであることを認識しているようだ。

では、月額980円の定額料金で1回10分までの他社あて通話を月500回も無料にして、ウィルコムは損をしないのか。

ウィルコム関係者はこう語る。 「沖縄のデータを見ると、これまでは無料となるウィルコム同士の通話が圧倒的に多かった。 しかし、だれとでも定額に加入した人は、他社に電話をかけるようになる。 かければ電話番号が相手に通知され、着信も増える。 この他社からの着信による接続料収入でもうかる。 さらに実際は無料の10分間を超過するユーザーも多く、そこで収入が得られる。 この2つが大きい」

新生ウィルコム、再起かける「他社あて定額」の舞台裏 - 日本経済新聞

真の定額プランであるならば、「無料の10分間を超過するユーザーも多く、そこで収入が得られる」ということはあり得ない。 また、真の定額プランであるならば、「他社からの着信」が知人からの電話であれば、定額プランの方から掛け直すだろう。 よって、「他社からの着信による接続料収入でもうかる」ということもあり得ない。 知っていて詐欺プランを売りにしているのなら、極めて悪質である。

真っ当な商売を行う前提で言えば、「誰得?」と言いたくなるプランである。 誰にとっても、このような似非定額プランよりは、接続料のみ徴収するプランの方が良いに決まっている。 それが嫌なら“無料”通話分を300~500分に設定するプランでも良いだろう。 どちらにしろ、10分以内×500回の制限に比べれば、ユーザにとっても通信会社にとっても遥かに魅力的なプランとなろう。 “定額”という詐欺の宣伝文句は使えなくなるが、中身で勝負できるプランにできるはずである。

1ユーザとしても、限度を超えた途端に料金が跳ね上がるプランよりも、緩やかに上昇する方が有り難い。 しかも、この似非定額プランでは、“定額”限度を超えていないかどうかユーザが把握しにくいため、かなり余裕を持った使い方を余儀なくされる。 結果として、細かく通話時間を管理しない限り、良く見積もってもややお得な従来プランにしかならず、定額プランの意味を成さない。 “定額”という詐欺の宣伝文句で釣ろうとしても、元々、PHSの印象が悪いために、ほとんどの人は釣られることはない。 敢えて定番以外の物を選ぶ人は、印象に振り回されずに、中身を良く精査している。 だから、詐欺文句では大した宣伝効果は期待できない。

通信会社としても、ユーザの使い方次第で赤字になる危険性を背負うよりは、赤字になる心配がない方が良いだろう。 スマートフォンでならば、実質的な定額プランとしての使い方が可能だが、そのような使い方をされると、通信会社が赤字を被る。 定額プランとして最大限利用された場合、ユーザから徴収した料金の20倍もの接続料を支払う羽目になる。 そうした使い方を狙って、スマートフォンの新規加入が殺到すれば、通信会社が倒産しかねない。 実際に、そうした使い方をするためのツールも配布されている。

そのような大赤字を防ぐために、W-SIM対応通信機器でのプラン加入を、2010年11月30日以前の契約者に限定したのだろう。

料金比較 

通話のみの料金を比較したのが以下のグラフである。 1回あたりの通話時間を30秒単位で通話時間を切り上げて計算している。

通話料金比較(通話のみ)

ほとんどの場合で“だれとでも定額”より050 plusの方が安い。 “だれとでも定額”を050 plusより安く使いのはかなり難しい。 “だれとでも定額”の使い方が難しいのは、1回あたりの長過ぎても短過ぎても割高になるからである。 加えて、“だれとでも定額”には、使い方によって料金がかなり高額になる不安感があり、マメな人以外にはお勧めできない。

要件だけ伝えてすぐに切るような使い方では、限度回数内で通話可能な時間が短くなるので、単位時間あたりの通話料は安くならない。 かと言って、長話をしてしまうと、10分の限度を超えてしまって、通話料が跳ね上がってしまう。 手動でタイマーをセットして10分以内の通話で済ませる試みもあるが、タイマーをセットし忘れると料金が高くなる。 自動切断タイマーが使えるのはスマートフォンだけだが、現在、WILLCOMで使えるスマートフォンは販売されていない。 かなりマメな人であるならば、ドコモのプランMバリューと比べて、基本料金が大差なく(195円安い)、“無料”通話分が多いプランとして活用できるだろう。 しかし、安心感を得たいなら、ソフトバンクのシンプルオレンジLを選んだ方がまだマシだろう。

次にデータ通信を毎月10MB強行なう場合の料金を以下のグラフに示す。

通話料金比較(データ通信最大)

注目に値するのはIP電話である。 とくに、050 plusの安さが突出している。 毎月データ通信を上限まで使うようならば、“だれとでも定額”はほぼ確実に他社のIP電話よりも割高になる。

スマートフォン 

スマートフォンで使う場合に限り、以下のような自動切断タイマーをインストールすれば、実質的な定額プランとして利用可能となる。

電話機能で、マイクロソフト標準のcprog.exeを使う機種(HYBRID W-ZERO3)とシャープ製のdenwa.exeを使う機種(WILLCOM 03以前)では、対応アプリが違う。 また、denwa.exeに対応したアプリでも動作対象機種の制限があるので要注意。

W-SIM対応通信機器でのプラン加入は、2010年11月30日以前の契約者、および、2011年2月28日までにHYBRID W-ZERO3を新規または機種変更する場合に限られる。