WILLCOM倒産

倒産 

時間の問題と思われていたが、2010年2月、WILLCOMがついに倒産した。 「事実上の倒産であって本当の倒産ではない」という間違った情報を流布する者も居るが、これは、事実上の倒産(正式な倒産手続前だが、銀行取引停止により事業継続が事実上不可能になった状態)とは違い、正式な会社更生法による倒産手続であり、由緒正しく立派な倒産である。

2千億近い負債を抱えながら、数十億円の利益を出しているから「黒字経営」だと嘯いていた信者もいた。 しかし、その論理が通るのは右肩上がりの急成長企業だけである。 現状維持でも元本返済に20年以上、加入者数が減る一方でいつ収支がマイナスに転落してもおかしくなく、元本すら返せるかどうか疑わしいのに「黒字経営」とはチャンチャラおかしい。 これで「黒字経営」とは、加入者急増の切り札があって初めて言えることである。

旧記述 

定額データ通信サービスにおいては、イー・モバイルやUQ WiMAX等の新興会社の激しい追い上げを食らっている。 イー・モバイルは、既に人工カバー率90%を超え、200万ユーザーを獲得している。 UQ WiMAXは、KDDIがバックについており、2009年度中に全国展開する計画ととなっている。 今のままでは、遅くても2011年中に、早ければ2010年中にでも、新興会社に追い抜かれてしまうだろう。 これら新興会社に対して、速度では大幅に負けており、勝っているのはエリアとユーザー数だけである。

経営不振の原因 

顧客のWILLCOM離れが進んだ主原因は、他社と比べて通信・通信料金が割高になったことにある。 WILLCOMは、自社間定額等の格安プランをアピールする一方で、他社向け通話単価等をいつの間にか値上げしていた。

標準コース つなぎ放題 ウィルコム定額プラン 新ウィルコム定額プラン 新ウィルコム定額プランS
固定電話1分9~42円9~31.5円21円21円42円
IP電話1分9~10.5円9円21円21円42円
携帯電話1分26.25~38.18円26.25円26.25円26.25円42円
1パケット0.0525~0.105円-0.0105~0.021円0.084円0.105円

音声定額は、バックボーンをISDNからIP網に切り替え、かつ、NTT地域網をバイパスすることでNTT東西への接続料をなくしたことによって実現したと言う。 それならば、他社通話についても、無料にはならないまでも、一定のコスト削減が出来たはずである。 それなのに、何故、他社通話を値上げする必要があったのか?

ウィルコム定額プランでは、「主な通話相手が通信会社を変えることに了承してくれる」という条件に合致するコアなユーザだけしか捉まえられなかった。 しかし、大多数の携帯電話ユーザは、固定電話やDoCoMoやauに掛けることが多い人達である。 だから、固定電話やDoCoMoやauに掛ける料金が他社より格安でなければ、大多数の携帯電話ユーザにとって会社を変えてまで契約したいプランとはならない。 そうしたニーズに逆行するプラン改訂を行なってきたことがWILLCOMの最大の敗因と言えよう。 そして、他社が対抗プランを打ち出してきた後は、そうしたコアなユーザにも逃げられ、有効な対策を打ち出せなかった。

昔は、PHSは一般の携帯電話に比べ格安だった。 携帯電話の料金が下がった後も、データ定額や通話定額で差別化を図ってきた。 しかし、近年、データ定額や通話定額でもライバル企業が台頭してきた。 WILLCOMは、ライバル企業と比較して魅力的な料金を提示できなかった。 その結果として、顧客のWILLCOM離れが進んだのである。 安さが売りのPHSなのに、他社より高いのでは、顧客が増えるわけがない。

ホワイトプランとの関係 

契約数の減少は、ウィルコム定額プランの客をホワイトプランに取られたせいなのか。 これは、半分正しいが、半分間違っている。 以下は、ウィルコム定額プランとホワイトプランが登場する前後の契約数の純増である。

純増数 純増シェア

確かに、ソフトバンクは、ホワイトプラン以降、急速に契約を増やしている。 そして、ソフトバンクの純増が増えるのと連動してWILLCOMの純増数が減っている。 これを見ると、ウィルコム定額プランの客をホワイトプランに取られたように見える。 しかし、以下の点は、単純に振替では説明できない。

  • 両社の通常期の純増数の差
  • 両社の3月期の伸びしろの差

WILLCOMの純増は最大でも10万を超えていないのに対し、ソフトバンクは通常期でも20万を超えている。 これは、WILLCOMから奪った以上の契約数をソフトバンクが獲得しているからである。 つまり、ホワイトプランはウィルコム定額プランよりもずっと魅力的だったのである。 似たようなプランで客を取られたのではない。 より魅力的なプランを提示できたから、ソフトバンクは躍進したのである。

ウィルコム定額プランが好調なとき、WILLCOMの3月期の伸びしろはほとんどない。 3月期に純増が増えるのは、進学や就職のためだろう。 新たに連絡手段として購入するのであれば、これは、主に1台目需要と言える。 つまり、ウィルコム定額プランは1台目需要を全く掘り起こせなかった。 一方、ソフトバンクは、2008年3月期において大きく契約を伸ばし、純増で1位をキープしている。 よって、ホワイトプランは1台目需要を掘り起こせたのである。

この差は何かと言えば、やはり、基本料金の差だろう。 他社通話をあまりしないならば、基本料金が安い方が良い。 そして、当時、ホワイトプランは基本料金が最も安いプランだった。 それゆえ、ホワイトプランは、待ち受け専用の1台目需要としても人気が出たのだろう。 また、2台目では、通話相手が決まっているのだから、他社向けの通話単価は全く関係ない。 よって、2台目需要でも基本料金が安い方が良い。 そのため、ホワイトプランは2台目需要としても人気が出たのだろう。 それに比べて、ウィルコム定額プランは全く良い所がなかった。 だから、ウィルコム定額プランは全く売れなくなり、ホワイトプランはウィルコム定額プラン以上に売れたのである。

経営判断の甘さ 

WILLCOMは、21時~翌1時が有料であることを理由に、ホワイトプランを法人専用と決め付けた。 そして、法人ならば、Wホワイトもつけるはずだとして、法人限定のWホワイト対抗プラン(ビジネスタイム定額トリプルプラン)を始めた。 その内容は、基本料金が60円安いことと、パケット単価が10分の1であることを除けば、Wホワイトとほぼ同じである。 しかし、それでも、WILLCOMの純増は増えなかった。 何故か?

まず、WILLCOMは競争相手を舐め過ぎである。 ホワイトプランが法人専用という認識は完全に間違っている。 21時~翌1時が無料とならなくても、多くの個人ユーザにとっては大した問題ではない。 何故なら、21時~翌1時は、ほとんどの人が在宅している時間であり、ブロードバンドを利用したIP電話やインターネット電話で代用できるからである。 多くの人にとって携帯電話で話す必要があるのは、外出中だからである。 家の中でも、携帯電話を必要とするのは少数派であろう。 その証拠に、ブロードバンドやIP電話番号の普及状況を示す。

IP電話の普及

ホワイトプランが大躍進を始めた頃、既に、ブロードバンドの世帯普及率は50%を超えていた。 IP電話番号の数は、ソフトバンクの契約数より少なかったが、これにはIP電話番号のないインターネット電話は含まれない。 SkypeなどでIP電話番号なしにインターネット電話を楽しむ人を含めれば、IP電話やインターネット電話の利用者はもっと多いだろう。 よって、少なくとも50%以上の世帯にとっては、21時~翌1時が無料である必要はないのである。 中には、ブロードバンドも加入者電話も引かず、携帯しか持たない人もいただろう。 しかし、どうしても無料で長電話したいのであれば、ブロードバンドを新たに引く選択肢もある。 電話だけでなくインターネットも使い放題になるのだから、多くの人にとって新たにブロードバンドを引くだけの動機は十分にある。 シェア5%のWILLCOMにとっては、日本の50%の家庭は顧客候補として非常に大きな数字であろう。 これを無視してホワイトプランが個人向けでないと決め付けたのは大きな誤りである。

また、WILLCOMは都合の良いダブルスタンダードに陥っていた。 本当にホワイトプランが法人専用であるなら、対抗プランを法人限定とする理由がない。 本当にWILLCOMの想定が正しいなら、個人での対抗プラン加入はほとんどないはずであり、個人を無理に締め出す必要は全くない。 個人を締め出すのは、個人の加入希望者が多数予想されるからである。 ということは、WILLCOMは、対抗プランが個人にとって魅力的であることを知っていたことになる。 対抗プランが個人にとって魅力があるのにホワイトプランが法人専用というのでは、明らかに矛盾している。

当時、WILLCOM信者達も、こぞって、ホワイトプランが個人向けには使い物にならないと叩いていた。 私は「夜間はIP電話やインターネット電話で補完できる」と思っていたが、そう指摘した信者は皆無だった。 しかし、蓋を開けてみれば、ソフトバンクには個人の加入者も殺到する一方、WILLCOMは加入者をどんどん減らして行った。 もしも、あのとき、ホワイトプランを法人専用と決め付けず、適切な対応を取っていれば、どうなっていただろうか。 対抗プランを個人で加入できるようにするだけで、かなり違いがあったのではないか。

尚、対抗プランと言っても、ホワイトプランやWホワイトの真似をする必要は全くない。 後追いの猿真似では、サービスの差別化は難しい。 WILLCOMの強みを活かすなら、通話単価を下げたプランを始めれば良かったのである。 それならば、ソフトバンクに追従されることもないし、サービスの差別化も図れる。

  • 基本料を安くしたい人はソフトバンクに、通話単価を下げたい人はWILLCOMに
  • 2台目需要はソフトバンクに、1台目需要はWILLCOMに
  • 特定の相手としか話さない人はソフトバンクに、他社通話も必要な人はWILLCOMに

何故この判断が出来なかったのか不思議でならない。

再建案(現行PHS) 

次の全ての条件を満たす再建策を提案する。

  • 実現可能であること
    • 新規の技術開発や設備投資を必要としないこと
    • 採算が取れること
  • ユーザーにとって魅力的であること
  • 他社の追従を受けにくいこと

このページ作成後に各社が新たな低価格プランを導入してきたので、一部修正し、詳細はWILLCOM再建案にまとめた。

XGP戦略案 

料金体系 

1つ料金プランで現行PHSもXGPも両方利用できるようにする。

現行PHSによる補完(通話機能およびエリア) 

  • 追加料金なしで

通話可能なUSB通信モジュール 

  • USBなので端末は再利用可能
  • 通話機能必須