日本語版Wikipediaの利用価値

Wikipediaの信憑性 

日本語版Wikipediaは次のようなときの調べ物には重宝する。

  • 何が正しいか自分は知っていたけど度忘れしてしまった
  • 何が正しいか自分は知っているけど他人に上手に説明できない
  • 何が正しいか多くの人が知っているけど自分は知らない

しかし、日本語版Wikipediaは、自分や多くの人が、何が正しいか知らないことを調べるには適さない。 encyclopaedia(百科事典)を自称しているが、その信憑性は本物の百科事典には遠く及ばない。

どうしてそうなるのか。 それは、私がWikipediaを辞めたわけにも書いたように、管理の不備が原因である。 結果、必要な出典と過剰な出典要求に書いたとおり、他人には厳しい出典を要求しながら、自分は出典を出さないようなことがまかり通っている。 そして、ブロック依頼等を悪用して、気に食わない執筆者を追い出すこともまかり通っている。 結果、信頼できる情報源があるかどうかではなく、執筆者が上手に立ち回れるかどうかで、記事の内容が決まってしまう。

執筆者の少なさも信憑性が低い原因の一つとなっている。 多くの人が知っていることの記事であれば、比較的執筆者は多い。 しかし、そうでないことの記事は、執筆者が極端に少なくなる。 執筆者が極端に少ないと、独自研究を書いても修正されにくくなる。 結果、日本語版Wikipediaは、百科事典的な用途が求められる記事については、トンデモのオンパレードとなる。

具体的な事例 

Wikipediaでは、偽情報のページが何年も放置されたまま掲載されていることが珍しくない。 例えば、英語版Wikipediaでは、ガイウス・フラウィウス・アントニヌスなる偽情報ページが8年にも渡って掲載され、ビコリム戦争ページなる偽情報が5年に渡って掲載されていた。 日本語版Wikipediaでは、13年間に渡って「嘘の嘘の新年」ページなる偽情報が掲載されていた。 これらについて、日本語版Wikipediaには次のような意味不明の言い訳が掲載されている。

これらの事例をもって「ウィキペディアは信用できない」と言うのは簡単である。 しかし実のところ、この種の悪ふざけはインターネット上の情報全般につきまとう問題であり、ウィキペディアに対する取り組み方について企業などを対象にコンサルタントをつとめるWilliamBeutlerは、この「ビコリム戦争」についてYahoo!Newsのインタビューでこう述べている。

それらしい情報源をでっち上げる位賢くて、もっともらしい記事を作るだけの時間と手間を惜しまないような人なら誰にでも、インターネット全体を欺くことは可能ですよ……少なくともしばらくの間は

全言語を合わせるとウィキペディアには1000万以上の記事があり、それらから「上手く書かれた嘘」を見つけるのは至難の業と言える。 そして、たとえ見つけてウィキペディア上から除去しても、コピーサイトによってそれらの嘘は長くネット上に残り続けてしまう。

Wikipedia:ビコリム戦争 - WikipediaP.1

Wikipediaは百科事典(encyclopaedia)を自称しているのだから、本件で比較すべき対象は「インターネット上の情報全般」ではなく他の百科事典だろう。 査読のある他の百科事典では、「それらから『上手く書かれた嘘』を見つけるのは至難の業」なる「インターネット上の情報全般につきまとう問題」とは全く無縁である。 Wikipediaが、「インターネット上の情報全般につきまとう問題」と同様に「それらから『上手く書かれた嘘』を見つけるのは至難の業」であるなら、それは、百科事典としての信頼性を全く備えておらず、「インターネット上の情報全般」と同程度の信頼性しかないことを意味する。

リテラシーの低さを示す調査結果 

アイシェアは7日、同社の運営するメールサービス「CLUB BBQ」のPC利用会員765名(男性56.3%、女性:43.7%)を対象に、オンライン百科事典「Wikipedia(ウィキペディア)」の利用状況に対する意識調査結果を公表した。 調査結果によると、Wikipediaの認知度は9割を越えるも、約6割が信頼性に懸念を抱いていることが明らかになった。

6割のユーザーがウィキペディアの信頼性に疑問…… - マイナビニュース

「『CLUB BBQ』のPC利用会員765名」が日本のネット民の代表として妥当かどうかはここでは問わない。 この文章を読むと、あたかも、「『CLUB BBQ』のPC利用会員765名」の「約6割」が高い検証能力をもっているように見える。 しかし、よく読むとそうではない。

その検索結果の信頼性については、39.4%が「信用している」と回答するも、「基本的に信用していない」(5.0%)と「疑わしいと思うことがある」(55.6%)を合せた60.6%が疑惑を抱いていることがわかったという。

6割のユーザーがウィキペディアの信頼性に疑問…… - マイナビニュース

「疑わしいと思うことがある」ということは、「疑わしいと思」わない機会の方が多いということであろう。 これは、基本的には信用しているが、たまに変に思うことがあるという程度の意味と考えられる。 よって、「『CLUB BBQ』のPC利用会員765名」のうち、「39.4%」+「55.6%」=95.0%は、Wikipediaを基本的に信用しているのである。 「基本的に信用していない」は、「約6割」どころか、たったの「5.0%」に過ぎない。 無条件で信用する人が4割で、無条件ではないが信用している人が95.0%という事実は、「『CLUB BBQ』のPC利用会員765名」のリテラシーが極めて低いことを示唆している。


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