ISD仲裁事例
未だにデマに騙されている人へ
ISD条項によって主権が侵害されるとか、未だにデマに騙される人が後を絶たない。 ISD条項が危険だと言う人は、酸性雨の主成分で、海岸線を浸食し、温室効果を引き起こし、毎年多数の死者を産むDHMOも規制するよう呼び掛けるべきだろう。
| デマ | 真実 | |
|---|---|---|
| 歴史 | NAFTA(1992年12月署名)で初めて導入された。 | 1960年代に投資協定が結ばれ始めた時点から協定に備えられていた(詳細後述)。 |
| 導入目的 | 自国企業がその投資と訴訟のテクニックを駆使して儲けるため。 | 協定違反への対抗手段(詳細後述)。 |
| 国家主権 | 国家主権が犯される事態がつぎつぎと引き起こされている。 | 原理的に国家主権を犯すことはできないし、犯された事例もない(詳細後述)。 |
| 手続 | 中立性に欠け、かつ、十分な審理が為されない。 | 制度的にも極めて中立的で、審理も充分に為されている(ISD条項詳細解説)。 |
| 仲裁結果 | 常に米国に有利な結果が出る。 | 公開された仲裁結果には、とくに米国が有利とする証拠がない(詳細後述)。 |
| 米韓FTA | 韓国にだけ適用される。 | 双方に適用される(米韓FTAのデマ)。 |
ソース付きでデマを解説しているページを見ても、洗脳が解けない人がいるのは驚きである。 中野剛志准教授らの主張がデマだと分かった後も「ISDが濫用される危険性がある」と言い出す人はTPP洗脳継続の原理を読んだ方が良い。 まともな判断力がある人なら、常識的に考えてあり得そうもないことが事実だとする主張を見て、それを検証もせずに鵜呑みにはしない。 出典を確認することまでは叶わなくとも、反対意見に目を通すまでは判断を留保するのが、常識人の行動である。 その他、中野剛志准教授らの主張には自己矛盾も多々あり、少し注意深く文章を読めば、その胡散臭さにはすぐに気がつくはずである。 CIAの文書に「人々にUFOを信じさせなくする方法」(嘘に真実を少しだけ混ぜた噂を流しておいて、しばらくしてから嘘をばらすと人々は白けて関心を失う…とか)というものがあるらしいが、中野剛志准教授らの主張はその第一段階そのものにしか見えない。 どうでもいいが、調べてみたらこのCIAの文書は実在しないらしい。国防のために未確認飛行物体を調査したロバートソン委員会のまじめな報告書だったのに、何処をどう取り違えたのか「UFOを馬鹿にするように大衆を洗脳する作戦=プロジェクト・ディバンキング」として噂が広まったらしい。
補足しておくが、次の3つは全くの別問題である。
- TPPに賛成すべきか反対すべきか。
- 中野剛志・東谷暁・三橋貴明らが完全なデマを流布していること。
- 人々を扇動するためにデマを流布して良いかどうか。
中野剛志准教授らの主張がデマであることは、TPPに賛成すべき理由とはならない。 そして、仮に、TPPに反対すべきだったとしても、それはデマを流布して良い理由にはならない。 TPPに反対していることが問題なのではなく、反対する手段としてデマを流していることが問題なのだ。 本当にTPPに反対すべきであるならば、デマではなく、反対すべき真の理由を説明すべきである。
TPPに懸念事項があるのは事実だが、それは次の4つに大別される。
- ほぼ確実に起こる懸念事項
- 確実でないが警戒すべき懸念事項
- 可能性がないとは言えないが警戒するほどでない事項
- 現実的にあり得ない事項
たとえば、漁業補助金の原則禁止は1番目、例外なき関税撤廃は1〜2番目である。 しかし、それら以外の反対派の主張の多くは3〜4番目である。 中野剛志准教授らの流布するデマはほぼ4番目(現実的にあり得ない事項)である。 「ISD条項によって主権が侵害される」などというデマを信じている人は、より簡潔にISD条項を説明したISD条項詳細解説を読むことを勧める。
こちらのページは、仲裁事例を紹介しているだけに過ぎない。 簡潔明瞭に分かりやすい説明を必要とする人は、ISD条項やISD条項詳細解説を見てもらいたい。 ISD条項にも手続的には瑣細な問題がないわけではない。 しかし、中野剛志准教授らの主張するような国家主権の侵害だの治外法権だのの類いは完全なデマである。 国家主権は国際法に沿った範囲で認められるのであり、国際法に違反する国家主権など初めから存在しない。 存在しないものを侵害することなど不可能である。
NAFTA(北米自由貿易協定)
NAFTAの事例では、それほどおかしな仲裁判断は見られない。
仲裁判断事例
S.D.Meyers事件
(1)S.D.Meyers事件
この事件では、カナダのPCB廃棄物を米国で処理する形で事業を営んでいた米系廃棄事業企業が、カナダの廃棄物輸出禁止措置によって事業停止のやむなきに至ったことが、カナダで廃棄物処理を行っているカナダ企業との関係でNAFTA1102条違反に当たるかどうかが問題になった。 仲裁廷は、問題の米系企業とカナダ企業の間には、PCBの処理をめぐって競争関係にあったことを指摘して、申立人とカナダ企業は「同様の状況の下」にあると判断した(250-251項)。 また内国民待遇の判断にあたり、意図は重要であるものの、保護主義的な意図が必ずしも決定的ではなく措置の実際の影響が必要要件であるとして内国民待遇違反を認めた。
この判断の前提として、仲裁廷が次のように述べた。
The Tribunal considers that the interpretation of the phrase “like circumstances” in Article 1102 must take into account the general principles that emerge from the legal context of the NAFTA, including both its concern with the environment and the need to avoid trade distortions that are not justified by environmental concerns.(para.250) (仲裁定は、第1102条における“like circumstances”のフレーズの解釈として、環境と環境問題によって正当化されない貿易の歪みの両方の懸念を含むNAFTAの法的文脈の一般的原則を考慮する必要があるとしている。)
要は、内国民待遇規定の解釈に当たっては、NAFTAの法的文脈を考慮する必要があるということである。
また「同様の状況の下」にあることが肯定されると、国内系企業の保護目的までは不要であり、差異の効果で足りると述べたとみることができる。
NAFTAでは、NAFTA規定と環境保全条約における貿易義務との間で不一致が生じた場合の取り扱いについて規定している。 加盟国が課せられている義務と同等で効果的、合理的な他の手段を選択できる場合は、その不一致が最も小さい代替手段をとるべきとされている。
NAFTAでは、人間・動物・植物の生命や健康の保護の目的で、国際標準よりも厳しい措置を採用・維持・適用することを認める規定、及び、投資促進のためとして健康、安全及び環境に関する措置を緩和するのは不適当とする規定が置かれている。 また、NAFTAの補完協定である環境協力に関する補完協定(NAAEC)と米国-ヨルダン貿易自由協定では、高い水準の環境保護を規定し、効果的に執行する義務を確認している(貿易を奨励する手段として自国の環境法及び規制を緩和しないことの確認)。
第2の事例として、カナダ・S.D.Myers(EthylCorporation v. Canada)事件がある。 本事例は、アメリカに本拠を置く米国私企業(ないし同企業に対する投資家、S.D.Myers)とカナダ政府との間の収用行為の合法性に関する事件である。 メイヤーズは、カナダにて廃棄物処理の事業を行っており、廃棄物を米国国内に輸送しリサイクルする構想を立てていた。 同氏はカナダ政府と提携し、技術提携を含む出資を行いつつ事業を展開していたが、カナダ政府は対象有害廃棄物(PCBs)の環境上の理由により、米国への輸出を禁止(後に撤回)した。 メイヤーズは、カナダ政府の行為はNAFTA第11章に違反するものであるとして、仲裁裁判所に請求を行った。 判決ではメイヤーズの主張が有効であるものとされ、賠償を支払われるべきであるとされた。 NAFTA関連規定の解釈に関して、まず裁判所は、第11章が次の原則に従って解釈されるべきであるとした。 すなわち、①当事国は高い環境保護レベルを設定する権利を有していること、②そうした措置を環境の偽装された制限となるように利用してはならないこと、③環境保護と経済発展は相互補完関係にあるべきこと、の三点を示したのである。 加えて、裁判所はこれらの原則の解釈として、可能である最も最低限の規制措置(the least trade-restrictive measures possible)をとる義務を各国が負うものであるとした。
経済連携協定(EPA)/貿易自由協定(FTA)に対する環境影響評価手法に関するガイドライン - 環境省P.11,12,16
(3)S.D. Myers 事件
オハイオ州でPCB含有廃棄物の処理事業を行っている米国企業のS.D.Myers社は、カナダ国内に合弁会社を設立して、カナダで発生する含有廃棄物を米国に送って(輸出して)処理するという事業を展開していた。 ところが1998年に、カナダがPCB含有廃棄物の輸出を禁止したために、カナダでの事業を行えなくなったS.D.Myers社はNAFTA11章に基づいてカナダ政府を仲裁に訴えた。
仲裁廷は、まずNAFTA1102条の内国民待遇義務違反を検討して、本件で問題とされたカナダの規制が、カナダ国内のPCB廃棄物処理事業者の保護を目的としたものであると認定して、カナダの内国民待遇違反(1102条)を認定する。 その後に、仲裁廷は、公正待遇義務を規定するNAFTA1105条の解釈に移り、「公正かつ衡平な待遇」は、政府が差別的な態様で行動していない場合であっても、外国投資家の待遇が満たさなければならない基準をいう」(para.259)としたうえで、「公正かつ衡平な待遇」および「十分な保護と保障」は、それぞれ単独で読むべきではなく、「国際法に従った待遇」という用語とともに読むべきである。 そのうえで「投資家が国際的な観点から見て受入がたい程度にまでなった、恣意的でかつ不公正な待遇を受けていることさえ示せれば、1105条違反は発生する」と判断する。 また他の規定の義務違反との関係について、「投資先当事国が投資家を保護することをとくに意図する国際法規に違反したという事実は、1105条違反の認定を有利な推定を働かせるものだとした」(para.265)うえで、本仲裁廷の多数意見は、「本件についてはNAFTA1102条違反は必然的に1105条違反を構成する」(para.266.)と判断した。
投資協定仲裁の新たな展開とその意義 - 経済産業研究所P.12,13
S.D.Meyers事件は、他の事件と比べて最も極端に政府側に厳しい判断がなされた事例とされている。 しかし、それでも、「政府の政策が投資家にどれくらいの被害を与えたか」という点だけで判断がなされたわけではない。 経済産業省によると、仲裁廷は、NAFTAの条文の第1102条に沿って、内国民待遇違反の有無を判断すると判示している。 通常は、内国民待遇違反の有無を判断するにあたって、外国企業を排除する目的があったかどうかなどが考慮される。 しかし、S.D.Meyers事件の場合は、「意図は重要」としながらも、「保護主義的な意図が必ずしも決定的ではなく措置の実際の影響が必要要件である」という内国民待遇違反の判断基準を示した。 第1102条に「同様の状況の下(like circumstances)」とする文言があるため、「必ずしも」「国内系企業の保護目的までは不要であり、差異の効果で足りる」と解釈しているのだ。
では、「必ずしも」とは何か。 どのような場合に「保護主義的な意図」は不要なのか。 環境省の資料によれば、NAFTAには環境保護と投資促進を両立すべきとする規定がある。 これに基づいて、仲裁定は「当事国は高い環境保護レベルを設定する権利を有している」として環境保護を理由とした規制の権利も認めている。 「可能である最も最低限の規制措置(the least trade-restrictive measures possible)をとる義務を各国が負う」とし、規制を口実にした外国企業の排除を禁止しているが、本当に必要な規制は認められるという判断を示しているのである。 経済産業省の資料でも、仲裁定の「including both its concern with the environment and the need to avoid trade distortions that are not justified by environmental concerns(環境と環境問題によって正当化されない貿易の歪みの両方の懸念を含む)」という言葉を紹介している。 つまり、政府の規制が必要最小限度を超えている場合には、「保護主義的な意図」は不要で、「同様の状況の下」において外国企業だけが差別的扱いを受けた事実をもって内国民待遇違反を認定できるとしたのである。 経済産業研究所のとおり「カナダ国内のPCB廃棄物処理事業者の保護を目的」とした規制であるならば、カナダ政府の協定違反は明らかであろう。
Metalclad事件
(1)Metalclad事件(ICSID 2000年)
Metalclad事件(2000年裁定)では、米国法人Metalclad社がメキシコ国内で有害廃棄物処理事業を行うにあたり、廃棄物運送基地と埋立用地を取得・開発・運営するためにメキシコ法人COTERIN社と埋立用地、並びに関連認可を買収した(1993年9月10日)。 他方、94年10月、許可の欠如を理由に市当局が作業停止命令を発した。 95年3月には廃棄物処理場が完成したが、反対住民のバリケードによって操業が妨害されたため、Metalclad社はNAFTA(AF)を利用してICSIDに提訴した。
仲裁廷は、メキシコ行政府の対応に透明性が欠如していた点を根拠として、NAFTA1105条(FET)と1110条(間接収用)の違反を認定した上で、賠償判断において「現物投資財産」(actualinvestment)を算定する方法を採用した。 Metalclad社は、本件プロジェクトに総額2000万米ドルを投資したことを主張した(その内容は、1991年から1996年にかけての出費であり、COTERINの取得費用、人件費、保険費用、旅費、生活費、電話代、会計・法律家顧問料、利子等であると主張した)。 これに対して仲裁廷は、次のように述べて賠償額を限定した。 「Metalclad社がCOTERIN社を買収した年[1993年]以前に生じたコストは、損害賠償が請求されている投資財産からあまりにもかけ離れている(are too far removed)。そのため、1991年から1992年にかけての出費額を裁定額から減額する」。 このように、仲裁廷は投資前支出(COTERIN社買収以前のMetalclad社の出費)に関する損害賠償を認めなかったが、その理由は、請求対象となっている投資財産との因果関係が欠如していることであった。
投資協定仲裁における投資前支出の保護可能性 - 経済産業省P.140,141
(2)Metalclad事件
a.事件の概要
Metalclad社は、メキシコの国内企業であるCOTERIN社に出資して、メキシコ国内で廃棄物処理事業を行うとしていた。 COTERIN社は、メキシコ内のグワダルカザール(Guadalcazar)市内で廃棄物処理施設を建設するための許可を、連邦政府および州から得ていた。 しかし、グワダルカザール市住民が水質汚濁への懸念から建設反対運動を始めると、市当局は、建設許可を市から得ていないとして建設中止命令を出した。 他方、Metalclad社は、連邦政府より、市当局の建設許可の拒否は国内法上根拠がないとの説明を受けて、市当局に建設許可申請を提出すると同時に、建設工事を再開し施設を完成した。 しかし、地元住民の妨害行為のために操業はできなかった。 1995年11月にMetalclad社は、連邦政府との間に施設の運営に関する協定を締結したが、同年12月にグワダルカザール市は、施設の建設不許可の決定を下した。 さらに1997年12月に州政府は、施設建設地を含む地域を自然保護地域に指定する環境条例を発布して施設の操業を禁止した。
他方、Metalclad事件では、メキシコ政府がMetalclad社に、いわば約束したことと、その後に市や州が行ったことの間には明らかな齟齬があり、当初の約束を信じて投資を行ったMetalclad社の投資がほとんど無に帰した。 Metalclad社にはきわめて大きな不利益が発生し、それには同情すべき事情があり、その原因は明らかにメキシコ政府(州および市も含む)にあった。 つまり国が単純に新たな規制を導入して外国企業が不利益を被った事例ではなく、政府に過失ないし悪意が見て取れる事例である。
例えば、Metalclad Corp. v. United Mexican States(The Decision of the NAFTA Arbitration Panel)事件は、本事例は米国企業とメキシコ政府との事例であり、メキシコ政府による外国企業の恣意的取り扱いにより消滅した利益に対し、賠償命令($16.7million)がなされたケースである。 メキシコに設置してあった米国企業メタルクラッド社の廃棄物処理・埋立施設が地元当局によって閉鎖されたことを受けて、同社が第11章の仲裁を請求した。 メキシコのポトシでは、1990年にメキシコ政府当局の許可を受けメキシコ国民により設立、後にCOTERINという企業によって運営された廃棄物の暫定保管施設が存在した。 1993年に米国企業メルカトラッド社は、当該施設運営権を6ヶ月間購入し、埋立を計画した。 しかし当該自治体は有害物質の埋立計画の危険性を指摘し、許可を取り消した。 その後ポトシ州知事による停止命令が出された後、同社は当該計画を停止した。 メルカトラッド社は、連邦政府、州、地元政府の本行為は当該施設の認可に際して透明性の要件を欠きまたNAFTA第105条に規定される公正な扱いに違反すること、本件の閉鎖が第1110条の収用行為に該当することの点でNAFTA条約に違反すると主張した。 本件はNAFTA第11章違反の結果として海外からの投資に賠償命令が下された初の事例である。 仲裁裁判所は、本件におけるメキシコ政府に対する責任を認め、メキシコ政府の同社に対する扱いは透明性を欠き、公正かつ平等な扱いを行っていないことなどから国際法に違反していると認定した。
Metalclad bought a landfill site in Mexico's city of Guadalcázar from a Mexican company Coterin in 1993. (Metalclad社は、1993年にメキシコCoterin社から埋立地を買った。) Coterin had planned to develop a hazardous waste landfill on the site but were unable to secure the necessary permits from the local government. (Coterin社は、有害廃棄物の埋立地を開発する予定だったが、地方から必要な許可を得られなかった。) Metalclad were able to obtain land use permits from the Mexican federal government, but local governments did not respond to their application for a building permit, neither allowing nor denying the site. (Metalclad社はメキシコ政府からの土地利用の許可を得ることができたが、地方政府は建築許可に応じなかった。) The mayor of the city was opposed to the landfill because of the amount of toxic waste in it and the threat to the local water supply. (市長が埋立に反対した。)
In 1992, before Metalclad purchased the site, a review by Mexican environmental officials found that over twenty thousand tons of hazardous waste had been improperly dumped. (1992年、Metalclad社が用地を購入する前、メキシコ環境当局による審査により、2万トン以上の有害廃棄物が不法投棄されていたことがわかった。) The officials agreed to allow the dump to continue processing and to issue permits on the condition that Metalclad clean up the improperly dumped materials. (当局は、不法投棄された廃棄物をMetalclad社が処理することを条件に埋立の許可証の発行に合意した。)
In 1993, Metalclad purchased the landfill. (1993年、Metalclad社は埋立地を購入した。) Locals complained that they were getting sick, developing aggressive diseases, and that their water was polluted. (地元住民は、水が汚染されて病気になったと反発。) The main water well was about 60 yards from the stream flowing through the location where Metalclad was dumping its material. (main waterはMetalclad社が埋立をしている場所から約60ヤードの距離だった。) A 1994 environmental study by commissioned by the new governor found that the dump was appropriately sited (located) and could continue operations. (新しい知事の委託による1994年の環境調査で処理が適切な場所を選んで行なわれているとして事業継続ができた。)
In 1995, the Mexican Secretariat of the Environment and Natural Resources authorized the operations of the landfill with the condition that Metalclad agree to clean up the improperly disposed hazardous materials. (1995年、メキシコ環境当局は、Metalclad社が不法投棄廃棄物を処理することを条件に埋立を承認した。) Local authorities then denied the building permit. (地元当局は、建築許可を拒否。) A court case determined that the permit denial meant that Metalclad was required to cease operating the site. (訴訟により、Metalclad社は事業中止に追い込まれた。)
In 1997, Metalclad sued the Mexican Government for damages under Chapter 11 of NAFTA for $90 million and was awarded $16.7 million. (1997年には、Metalclad社は9,000万ドルの損害賠償を求めてメキシコ政府を提訴し、1670万ドルの賠償金を得た。) This award was later reduced by $1.1 million to $15.6 million, by review in the courts of British Columbia (the jurisdiction where the NAFTA hearing was held) due to a recalculation of the applicable interest period. (賠償金は、後の再計算で、$110万1560万ドル減額された。)
日本語訳はgoogle翻訳を手作業で修正したものである。 Metalclad社は許可取得済みのメキシコ企業を買収し、連邦政府からも許可を得ていた。 しかし、州や市が地元住民の反対運動だけを根拠にして、具体的な「水質汚濁への懸念」の根拠を示すことなく、Metalclad社の活動を妨害したのである。 その結果、Metalclad社の廃棄物処理事業は事業中止に追い込まれ、多額の損害が発生した。 これでは外国企業を狙い撃ちにした嫌がらせだと取られても仕方がない。 それならば、Metalclad社が訴えるのは当然であるし、メキシコ政府の責任として損害賠償が認められるのも当然だろう。
ADMS事件(コーンシロップ事件)
(6)ADMS事件
砂糖以外の甘味料についてメキシコが課税措置をとったことについて、高果糖コーンシロップ(HFCS)を製造する米系企業が、砂糖事業者への優遇措置として仲裁に申し立てた。 仲裁廷は、HFCS事業と砂糖事業が競争関係にあり、したがって「同様の状況の下」にあるとしてメキシコの内国民待遇違反を認定した。
仲裁廷が、競争関係を基準にして事業者が「同様の状況の下」にあると認定した前提は次のようなものであった。
Basic function of this provision is to protect foreign investors vis-a-vis internal regulation affordingmorefavorabletreatmenttodomesticinvestors(193項)Inordertodeterminethe meaning of the expression "in like circumstances" in Article 1102, paragraphs 1 and 2, we examine these words in their ordinary meaning, in their context and in light of the object and purpose of Article 1102 (Article 31.1 of the Vienna Convention on Law of Treaties).(197項)
仲裁廷は、この解釈が明示的に条約法に関するウィーン条約31条に照らして解釈した結果だというのである。
以上の判断の後、仲裁廷は、Methanex事件との違いについて、①HFCS生産に従事するメキシコ系企業が存在しないこと、②メタノールそれ自体がガソリン添加剤として使用されるものでないことを挙げて説明した。 また差別的な取り扱いを内国民待遇違反と解した点については、メキシコの砂糖産業を保護する意図があり、そのような効果があったことが根拠とされた。 「同様の状況の下」にあるかどうかが、内国民待遇違反認定の最重要ポイントであった事件である。
ADMS事件では、次の全てが満足されることを内国民待遇違反が推定される条件としている。
- 国内企業と外国企業が競争関係にある(次の2つを両立する必要あり)
- 同種の製品・サービス等を扱っている
- 取引相手の候補先が重複している
- 政府の規制によって外国企業が不利益を受ける
- 政府の規制によって外国企業と同様に損害を受ける国内企業がない
- 政府の規制が対象企業の扱う製品・サービスを直接的に対象としたものである(二次的製品の規制は問題なし)
さらに、国内産業を保護する意図を認定して、内国民待遇違反と判断した。 「メキシコの砂糖産業を保護する意図」と「そのような効果」を認定しているのだから、これは実質的関税=協定逃れと認定された事例である。 協定逃れを行なったのであれば、メキシコ政府が敗訴するのも当然である。 この事例で訴えが認められないなら、簡単に協定を骨抜きにできてしまう。 日本独自の品種や日本の得意分野のみを課税対象にすれば、日本製品のみを狙い撃ちにして実質的な関税を掛けることもできる。 たとえば、ジャポニカ種だけを課税すればほぼ日本米だけを対象にした実質関税が可能だ。 2001年頃のスパコン産業の状況を前提にした喩え話をすると、ベクトル型だけに課税することでNEC製品にだけ実質関税をかける手口も考えられる。 こうした協定逃れへの対抗手段としてISD条項がなければ日本企業は大打撃を受けるだろう。
尚、この事例を
自国の産業を保護する事が許されない事例
反対派の主張は杞憂か - おばちゃんの経済自習室
と読むのは誤りである。
NAFTAでは「同様の状況の下」において差別的取り扱いをすることを禁じているのであって、国内産業の保護を禁じている訳ではない。
例えば、自国で農業を営む農家と他国で農家を営む農家は「同様の状況の下」にないから、差別的取り扱いをしても内国民待遇違反にはならない。
つまり、他国で農業を営む農家に交付しない補助金を自国農家に交付しても、自国内で農業を営む外国人にも同様に補助金を交付すれば、内国民待遇違反にはならない。
Feldmann事件
(3)Feldmann事件
メキシコでタバコの輸出業を営む米系企業(CEMSA)が、従来は消費税還付を受けていたが、制度変更によって生産業者から直接タバコを仕入れた輸出業者のみが消費税の還付が受けられることになったために、小売り業者から仕入れていたCEMSAへの消費税還付は認められなくなり、この点が問題化した。
仲裁廷は、「同様の状況の下」にある会社の母集団は、タバコの再販売/輸出事業を営むメキシコおよび外国系企業であるとし、そのうえでメキシコ系企業を優遇したと判断し内国民待遇待遇違反を結論した。
この事件でタバコの再販売/輸出事業を営むメキシコおよび外国系企業を「同一の状況の下」にあると解釈したのは、メキシコ政府がこの主張に同意したためである。 本件は、「同一の状況の下」にあることが肯定されれば、内国民待遇違反は当然に認定されるケースであった。
この事例では、メキシコ政府が「同一の状況の下」であると認めたのであるから、政府側が負けるのは当然と言える。
Pope & Talbo事件
(2)Pope & Talbo事件
この事件では、米国・カナダ協定によって軟材の輸出許可制がとられたことによって、カナダのブリティッシュ・コロンビア(BC)州で軟材輸出を営む米系企業に輸出手数料が徴収されるようになったことが問題化した。 具体的に差別として問題にされたのは、①輸出規制の適用除外州と適用州の差別、②輸出規制適用州のうち、生産・輸出シェアの増加に起因する、ケベック州とBC州の生産者間の差別、③BC州内の生産者間の差別の3つのレベルの差異である。
仲裁廷は、①表面上も事実上も外国投資家と国内投資家を区別せず、かつ②その他の点でもNAFTAの自由化目的を損なわない合理的な政策と妥当な結びつきのある場合以外であれば、異なる取り扱いは内国民待遇違反を推定させると述べ、本件で問題とされた措置がこの条件に当たらないとして申立人の主張を退けた。
内国民待遇違反の有無の基準を提示する際に、仲裁廷は次のように述べた。
The Investor submits that the legal context of Article 1102 includes "the trade and investmewnt-liberalizing objectives of NAFTA." The Tribunal agrees.(77項)
NAFTA1102条の解釈に当たっては、目的を含むNAFTAの法的文脈を考慮しなければならないという趣旨である。
また差異の判断においては、外国系企業と国内系企業の扱いに、事実上の差異があり、ホスト国の合理的な政策に関連しない場合には、内国民待遇違反が推定され、それを覆す責任がホスト国にあるとした。 国内産業保護の目的は、S.D.Meyers事件同様に不要というのが前提である。
内国民待遇違反を決定する要因は何か - 経済産業省P.37,38
この事件の仲裁廷は「合理的な政策と妥当な結びつきのある場合」は内国民待遇違反とならないとしている。
UPS事件
(5)UPS事件
米国系の宅配業者(UPS)が、カナダ関税法改正によってカナダ・ポストのみが優遇されるとして仲裁に訴えた事件である。 仲裁廷は、両者のシステムの差、また諸国における郵便事業と宅配業の認識の差を根拠に両者が「同様の状況の下」にないと判断した。
仲裁廷は宅配事業と郵便事業が比較対象にならないとしたが、その根拠は両者に対する諸国の認識の相違であった。 なお、本事件におけるCass仲裁人個別意見は、1102条の解釈はNAFTA全体の中で行わなければならず、そのように解釈すれば「同様の状況の下」にあるかどうかの判断は、競争関係にあるかどうかがポイントだとした。 したがって、Cassによれば、競争関係にある者について異なる扱いをすれば1102条違反の推定が成り立ち、カナダはその推定を覆す主張を述べることはできなかったと結論した。 NAFTAを条約の目的等を踏まえて解釈するか、文言のみによって解釈するかによって結論が変わることが理解できる。
仲裁廷は、宅配事業と郵便事業は「同様の状況の下」にないとして訴えを却下している。
Methanex事件
(4)Methanex事件
カリフォルニア州がガソリン添加剤MTBEの使用を禁止したために、MTBEの原料であるメタノールを生産していたカナダ系企業が、使用が許されるガソリン添加剤ETBEの原料であるエタノールの生産事業者との差別を内国民待遇違反と主張した事件である。
仲裁廷は、「同様の状況の下」について、競争関係にあるモノを対象にして内国民待遇を考えるのではなく、同じ商品の製造者を対象にして考えなければならないとして内国民待遇違反の主張を退けた。
この議論の前堤として仲裁廷は次のように述べた。
Given the object of Article 1102 and the flexibility which the provision provides in its adoption of "like circumstances," it would be as perverse to ignore identical comparators if they were available and to use comparators that were less "like,"as it would be perverse to refuse to find and to apply less "like" comparators when no identical comparators existed. (Part IV, Chapter B, para.17)
NAFTA1102 条の解釈において、その目的を考慮すべきことが説かれたのである。
内国民待遇違反を決定する要因は何か - 経済産業省P.37,38
この事件では競争関係であっても「同じ商品」でなければ「同様の状況の下」にないとしている。 直接の規制対象の物質ではない、その原料には内国民待遇違反が及ばないとした事例である。
和解事例
Etyl事件
TPP反対派が、ISD条項が治外法権に他ならないものであることを示すためによく例に挙げているのが、カナダ連邦政府を米国化学企業の現地子会社が訴えた事案です。 この子会社はメチルマンガン化合物(MMT)を製造していました。 1997年加連邦政府がMMTの流通を禁ずる新法を作ったところ、米企業がそれにより甚大な被害をこうむったとして2億5100万ドルの支払いを求めて加連邦政府を訴えました。
この件は、同時並行でカナダ・アルバータ州が、新法が国内通商協定(AIT)に違反するとして専門委員会に提訴し、委員会での検討の結果、新法は国内通商協定に違反すると認定されました。 また、MMT自体については流通を完全に禁止する必要のあるような危険な化学物質ではないことも明らかになりました。 この専門委員会の判断をカナダ連邦政府は受け入れ、翌年法律を廃止することになりました。 それに伴い連邦政府は米社に仲裁費用と遺失利益として和解金1300万ドルを支払いました。
これで明らかなように、カナダが連邦制という特殊な政体を採っていることから生じた政府の失策により、禁止すべきでない化学物質の流通を十分な検討もなしに誤って禁止したことが原因であり、ここから化学物質に対して十分な検討をせず規制を課すべきではないという教訓を引き出すなら分かりますが、TPP反対派の主張しているような「カナダ国内で禁止されている有害な化学物質を強制的に輸入させられ、かつ法外な和解金をむしり取られた」という表現はミスリーディングであることはいうまでもありません。 この例は、むしろ逆に投資先国の失政からわが国の企業を守る上でISD条項が大変有効であるということを示しているわけです。
IIA仲裁をめぐる状況が劇的に変わるのが1998年前後である。 一つは、NAFTA投資章を根拠にしたエチル(Etyl)事件が起こったことである。 これは、カナダで事業活動を行っていた米国企業(エチル社)がカナダの環境規制の強化によって操業の停止に追い込まれたために、NAFTAに基づいてカナダ政府に損害賠償を求めた事件である。 仲裁の途中でカナダ政府が和解金を支払って仲裁が取り下げられたために実体問題に関する仲裁判断は出されなかった。
(4)カナダ―国内貿易協定における政府調達関連規定
カナダ各州は、米国のそれと同様に、様々なカナダ産品・自州産品優遇政策を維持していた。 例えば、ある一定の水準(例えば3〜15%等)までの価格差であればカナダ産品を優先的に調達する等がそれである。 これに対し、1995年6月1日に連邦政府は、全10州(2003年には3準州も参加)との間で国内貿易協定(AIT:Agreement on Internal Trade)を締結した。 同協定は政府調達分野における他州産品及び他州の供給者との差別の禁止を規定。 これにより他州産品、他州の供給者との関係では州政府が価格優遇政策や差別的な技術仕様を設けることはできなくなったが、外国系企業、外国産品には同協定は適用されず、依然として差別的な取扱が維持され得る。 また、同協定は、各州が特定のサービスや調達機関を協定の適用から除外することも例外的に認めている。
無鉛ガソリンのアンチノック剤である有機マンガン化合物MMT(methylcyclopentadienyl manganese tricarbonyl メチルシクロペンタジエニルマンガントリカルボニル)の生産は、まずメチルシクロペンタジエンに溶融ナトリウム金属を加え、メチルシクロペンタジエニルナトリウムを生成させる。 次に無水二塩化マンガンを加えてメチルシクロペンタジエニルマンガンを生成、続いてこれを一酸化炭素と反応させてMMTを得る(NAS,1973;US EPA,1984;Sax & Lewis,1987;HSDB,1998;Kirk & Othmer,2001)。 MMTは、アルゼンチン、オーストラリア、ブルガリア、米国、フランス、ロシア連邦で使用が認められ、ニュージーランドでは条件付で認められている(Zayedetal.,1999;Zayed,2001)。 最近、大手生産業者であるEthyl Corp.は、MMTが25カ国で販売されていることを認めた(Kaiser,2003)。
国際化学物質簡潔評価文書 - 国立医薬品衛生研究所P.12,13
これによれば、「MMTの流通を禁ずる新法」はカナダ国内通商協定(カナダの国内法)に違反する法律で、かつ、カナダ国内の州からも提訴されるような代物だったのである。 しかも、国内通商協定違反を正当化するほど危険性を示す証拠は何もなかった。 つまり、「MMTの流通を禁ずる新法」は言い訳のしようがないくらいの大失策だったのである。 そうした政府の大失策によって不利益を被った企業は、政府の不当行為による一方的な被害者である。 そうした被害が賠償されないのでは、政府判断でいくらでも協定を骨抜きにできることになり、協定違反し放題になってしまう。 だから、カナダ政府は自らの非を認めて和解に応じたのである。
この事例では仲裁判断が為されていないので、カナダ政府が非を認めなかった場合にどのような結果になったかは不明である。 しかし、カナダ国内の州からも提訴されるような代物であったならば、カナダ国内の企業にも不利益を及ぼしているはずである。 もし、そうであるならば、他の仲裁判断の事例を照らせば、内国民待遇違反は認定されない可能性が高い。 つまり、この事例は、企業にとってはICSID仲裁よりも国内裁判を選んだ方が訴えが認められる可能性が高い事例かも知れない。
係争中事例
水資源
年 州 概要 1998 ブリティッシュコロンビア(カナダ) カリフォルニアの企業サンベルトウォーター(Sun Belt Water)がNAFTA(北米自由貿易協定)11条に基づいてカナダ政府を訴えた。これは、同社がブリティッシュコロンビア州政府と1991年に契約した数億万ガロンの水輸出契約を停止させたためである。サンベルトウォーターは、105億ドルの損害賠償を請求中である。
1993年1月、スノーキャップ社とサンベルト社はBC州政府に損害賠償を求めて提訴。 1996年までに、スノーキャップ社との金銭補償の和解が成立、一方でサンベルト社とは和解に到らず、この際、平等な扱いを受けなかった、として争っているのが、サンベルト社の大きな争点の一つである。
1998年12月9日、サンベルト社は、1)カナダ政府(BC州政府)が自国の企業と他国の企業とを差別的に取り扱ったことが内国民待遇原則違反である、2)水輸出に関する貿易制限措置措置はモノおよび投資の自由化の条項違反である、ことが NAFTA(北米自由貿易協定)違反であるとして、カナダ政府を訴えた。
93年に米・加・墨3カ国は、「NAFTAは協定のいずれの締約国の天然水資源への権利を生じるものではない。どのような形態の水も、商業の域内に入り、モノまたは製品とならない限り、NAFTAも含むあらゆる貿易協定の規定の管轄にはない。そして、NAFTAの締約国に、商業利用もしくは水の輸出を始めるように義務を負わせるものはNAFTAの中に何もない。湖、川、帯水層…(中略)…などの天然の状態にある水は、モノでもなければ製品でもなく、貿易されず、したがって貿易協定に従属するものではない」とする、NAFTA締約国間での共同の宣言を出した。 カナダ政府は、ここに天然の水資源の保護がNAFTAに反するものではないとの根拠があるとしている。
NAFTAの第1102条は、「他の締約国の投資家を、自国の投資家を同様の状況で扱うより不利に扱ってはならない」とする内国民待遇の原則を明確にうたっている。つまり、それが輸出と関係しようがしまいが、何らかの理由で自国のあらゆる企業が水を汲み上げる権利を得てきたように、他国の企業にもまた同じように水を汲み上げる権利を与えなければならない、という解釈になる、ということである。サンベルト社側の訴えの根拠のひとつはここにある。
2010年09月段階では未だ係争中であったようだ。 残念ながら決着がついたかどうかの資料を見つけることができなかった。
BIT
BIT(投資協定)では、FTA(自由貿易協定)とは違う判断基準が用いられている。
(1)Occidental事件
石油輸出に際して付加価値税が還付されないが、生花等の輸出については付加価値税が還付されることを、米系の石油開発企業が問題にした。 この扱いは、石油輸出業を営むエクアドル企業にも及んでいた。 この事件で仲裁の根拠となった米国・エクアドル二国間投資協定(BIT)に規定される内国民待遇には、「同様の状況の下(inlikesituations)」にという文言があり、この点が問題になった。
仲裁廷は、付加価値税の還付に関して、税法等の諸規定に石油産業のみを例外とする規定がないこと(133項)、エクアドル法上法的拘束力を有するアンデス共同体法の目的である間接税の調和(ハーモニゼーション)、付加価値税還付の経済的根拠がすべての輸出に共通であること、また内国民待遇は、国内事業者と比較して外国投資家を保護することを目的としていること等を指摘し、「同様の状況の下」にあるか否かの判断は、事業活動が行われている特定分野のみを比較するだけでは十分でなく、「状況」はすべての輸出事業者が享有する「状況」と解釈しうると述べて内国民待遇違反を認めた。
仲裁廷は、「競争関係」ではなく「輸出」に即して比較したが、その前提は次のようなものであった。
(T)he purpose of national treatment is to protect investors as compared to local producers, and this cannot be done by addressing exclusively the sector in which that particular activity is undertaken.(173項)
要は、WTOのように競争関係の保護がBITの目的ではないという、条約目的に即した認識が以上の判断の前提にあった。 本件も、「同様の状況の下」にあると判断されれば、内国民待遇違反がほぼ自動的に認定される事件であった。
(2)Champion Trading Company事件
エジプトでは、国営綿企業に対しては補償金が支払われるが、外国企業には支払われないという制度が導入されたために、綿事業に従事する米系企業がホスト国を仲裁に訴え、この扱いが内国民待遇違反かどうかが争われた。
仲裁廷は、補償金を得るためには、市場からではなく政府の「収集センター」から、政府指定価格で綿を購入することが条件であったことを指摘し、市場で購入した企業と収集センターから固定価格で購入した企業の間には大きな差があるとしたうえで、両者は補償金の支払いに関して、「同様の状況の下」にはないとして内国民待遇(エジプト・米国BIT2条2項a号)違反を否定した。
仲裁廷は、本件でも競争関係だけが「同様の状況の下」にあるかどうかの決定要因ではないとしたが、その前提として下記のように述べた。
The purpose of Art. II (2)(a) is to promote foreign investment and to guarantee the foreign investor that his investment will not because of his foreign nationality be accorded a treatment less favourable than that accorded to others in like situations. (126 項)
仲裁廷が競争関係を「同様の状況の下」において決定的でないとしたのは、BITの目的ゆえである。 本件でも「同様の状況の下」にあることが肯定されれば、内国民待遇違反はほぼ自動的に認定される事案であった。
内国民待遇違反を決定する要因は何か - 経済産業省P.40,41
企業側の勝ちと負けが各1件づつ示されているが、いずれも、競争関係に無い場合でも「同様の状況の下(inlikesituations)」であると認定している。 これは、BIT(投資協定)では、FTA(自由貿易協定)の性質の違いによるものである。
勝率
ところで、このページの下のほうの、「3.個別交渉分野に関する資料」の最下段にある「投資仲裁の事例(平成23年10月25日)」を見たら、実に興味深い内容だった。 簡単に言えば、TPP反対三馬鹿トリオ(中野・東谷・三橋)や、その尻馬にのった自民党尊農攘夷派(笑)が大合唱している文言、
「ISDSに基づく国際仲裁のうち、NAFTAでアメリカの関わる訴訟では、アメリカが有利な方に可決されたものしかない。」
(参照: http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/2507017/allcmt/#C2355071 など)
が誇張、あるいは間違いであることを示す内容なのであった。
たった6ページの資料なので、実物を見てもらったほうが早いとは思うが、簡単にまとめておこう。 NAFTA(北米自由貿易協定)は、米国・カナダ・メキシコの3カ国が締結国である。 よってISD条項を行使するのは、この3カ国の企業である。また、提訴されるのはこの3カ国の政府である。 その組み合わせは、以下の6パターンとなる。
- (1)米国企業vsカナダ政府
- (2)米国企業vsメキシコ政府
- (3)カナダ企業vs米国政府
- (4)カナダ企業vsメキシコ政府
- (5)メキシコ企業vs米国政府
- (6)メキシコ企業vsカナダ政府
このうち、米国が関わっているのは、(1)(2)(3)(5)の4パターンだが、それぞれの勝敗状況はといえば‥‥
- (1)米国企業vsカナダ政府
米国企業5勝、カナダ政府1勝、不明1件、係属中(未結審)9件、計16件- (2)米国企業vsメキシコ政府
米国企業3勝、メキシコ政府6勝、不明2件、係属中(未結審)3件、計14件- (3)カナダ企業vs米国政府
カナダ企業0勝、米国政府6勝、係属中(未結審)8件、計14件- (5)メキシコ企業vs米国政府
係属中(未結審)1件、計1件つまり、カナダ政府やメキシコ政府が勝った例もあるし、全体の46%(45件のうち21件)は、まだ係属中で結果が出ていない。 たしかに、いまのところ企業が勝った事例はアメリカ企業のものしかなく、カナダ企業とメキシコ企業が勝った例はない。 しかし、
「アメリカが有利な方に可決された物しかない。」
というのは、誇張、そしてデマゴキーであることは明白だろう。 せいぜい、「これまで、企業が勝った事例は、アメリカ企業しかない」あるいは「アメリカ政府が負けた事例はない」にしとけ、って気がする。
既にデマを見抜いている人には「ああ、やっぱりね」という内容だろう。 デマに騙されて人は「米国政府が負けなしなら、やっぱり陰謀じゃないか」と言い出すのだろう。
仲裁判断で企業が勝って政府が負けるのは、政府側に協定違反があったと認定されたからである。 また、仲裁判断で企業が負けて政府が勝つのは、政府側に協定違反がなかった、あるいは、協定違反の影響がなかったと認定されたからである。 つまり、政府の勝率の妥当性を論じるには、それぞれの政府が協定違反を行なったのかどうかを調べなければならない。
仲裁判断でカナダ政府やメキシコ政府が負けているということは、それらの事例では協定違反が認定されたことを意味している。 仲裁判断が信用ならんと言うなら、各国が自分で違反を認めた事例を見ればいい。 (1)の「米国企業5勝」に和解事例3件が含まれている(「TPP反対三馬鹿トリオ」に有利にカウントしている)。 和解事例のうち2件は賠償金を支払っている。 残り1件は和解内容が不明だが、賠償金を全く払わずに和解が成立するとは思えない。 賠償金を支払うということは、政府側が自らの非を認めたわけである。 つまり、カナダ政府が自ら協定違反を認めた事例が存在する。 経済産業省の資料には、メキシコ政府が自ら協定違反を認めた事例が記載されている。
(3)Feldmann事件
メキシコでタバコの輸出業を営む米系企業(CEMSA)が、従来は消費税還付を受けていたが、制度変更によって生産業者から直接タバコを仕入れた輸出業者のみが消費税の還付が受けられることになったために、小売り業者から仕入れていたCEMSAへの消費税還付は認められなくなり、この点が問題化した。
仲裁廷は、「同様の状況の下」にある会社の母集団は、タバコの再販売/輸出事業を営むメキシコおよび外国系企業であるとし、そのうえでメキシコ系企業を優遇したと判断し内国民待遇待遇違反を結論した。
この事件でタバコの再販売/輸出事業を営むメキシコおよび外国系企業を「同一の状況の下」にあると解釈したのは、メキシコ政府がこの主張に同意したためである。本件は、「同一の状況の下」にあることが肯定されれば、内国民待遇違反は当然に認定されるケースであった。
以上のとおり、カナダ政府やメキシコ政府が協定違反をした事例があることは明らかだろう。 だから、カナダ政府やメキシコ政府は負けることがある。 では、米国政府はどうか。 これについては資料が見当たらなかったので何とも言えない。 ただ、米国政府がこれまで一度も協定違反を犯していないなら、無敗のままであっても、何ら不自然なことではない。 つまり、米国政府の6勝0敗という勝敗数だけから、米国政府に有利な仕組みがあると結論づけることはできない。
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