ラチェット規定
未だにデマに騙されている人へ
ISD条項によって主権が侵害されるとか、未だにデマに騙される人が後を絶たない。 補足しておくが、次の3つは全くの別問題である。
- TPPに賛成すべきか反対すべきか。
- 中野剛志・東谷暁・三橋貴明らが完全なデマを流布していること。
- 人々を扇動するためにデマを流布して良いかどうか。
中野剛志准教授らの主張がデマであることは、TPPに賛成すべき理由とはならない。 そして、仮に、TPPに反対すべきだったとしても、それはデマを流布して良い理由にはならない。 TPPに反対していることが問題なのではなく、反対する手段としてデマを流していることが問題なのだ。 本当にTPPに反対すべきであるならば、デマではなく、反対すべき真の理由を説明すべきである。
ラチェット規定の真実
中野剛志准教授らが流布するデマには次のようなものがある。
さらに米韓FTAには、いくつか恐ろしい仕掛けがある。
その一つが、「ラチェット規定」だ。
ラチェットとは、一方にしか動かない爪歯車を指す。 ラチェット規定はすなわち、現状の自由化よりも後退を許さないという規定である。
締約国が、後で何らかの事情により、市場開放をし過ぎたと思っても、規制を強化することが許されない規定なのだ。
米国丸儲けの米韓FTAからなぜ日本は学ばないのか 中野剛志[京都大学大学院工学研究科准教授] - ダイヤモンド・オンラインP.4
つまり国際条約に基づいて、国内法や規制を緩和したら、いかなる理由があろうとも再度規制することができないのである。
これらは、次の2点が間違っている。
- 自由化を進める協定なのだから、逆行禁止を原則とするのは当然である。
- 逆行禁止は原則論にすぎず、例外は明確に認められている。
FTAは、保護貿易を自由貿易へと進化させる協定であるのだから、逆行を原則禁止とするのは当然である。 「市場開放をし過ぎ」なければよいのである。 既に実施済みの「市場開放」は可能だと判断だから実施されたのである。 可能であるならば逆行させる必要性はない。
WTOでも米韓FTAでも、正当な理由による逆行を認める規定がある。
農業
- 協定文主要妥結内容
- 牛肉、豚肉、高麗人参、唐辛子、ニンニク、玉ネギ等につき物量基準農産物特別セーフガード制度を導入
- 韓国側が要求した農産物セーフガードを反映して、一部核心品目は関税撤廃後も一定期間存続
- 米国は既存のFTAにおいて関税撤廃後にもセーフガード存続を認めたことはほとんどない
- 当該年度輸入量が事前に決められた発動基準物量を超過する場合、追加関税を
貿易救済
- 協定文主要内容
- アンチダンピング/相殺措置およびマルチセーフガード措置について両国が互いに発動を自制、または相互牽制できる手段を用意
- 韓米FTA締結によって輸入急増が発生する場合、一時的に関税を再度復活できる二国間セーフガード制度を導入
2.主要争点別妥結内容
- アンチダンピング/相殺措置牽制および解決手段の導入
- 調査開始前の事前通知および協議
- アンチダンピング提訴状の受付後、受付事実を相手国に書面通知し調査を開始する前に、国内法が許す範囲内で提訴内容について両国間が協議
- 価格または物量合意活性化協議の強化
- 米国はアンチダンピングや相殺関税についての価格または物量合意制度をほとんど利用していないため交渉の結果、韓国側が合意についての提案を提示すれば米側がこれを適切に(due)考慮し、韓国側に適切な(adequate)協議機会を付与するように規定
- 現在300件余りに達する米国のアンチダンピング措置のうち、価格/物量合意はわずか6件
- 貿易救済委員会設置-貿易救済委員会を設置し、(1)両国間貿易救済法令および慣行についての理解増進、(2)調査開始前の事前通知および協議条項と価格/物量合意条項の履行および遵守可否を監督、(3)貿易救済機関間協力増進、(4)両国のアンチダンピング、補助金および相殺関税、セーフガードについての情報交換、(5)貿易救済関連国際的問題(例:WTOアンチダンピング交渉)、両国調査機関の調査慣行(例:利用可能な事実*、実態調査手続き**)、産業補助金慣行などについて協議
- 利用可能な事実(factsavailable):調査機関が被提訴輸出企業に資料を要求し、これに対する答弁提出が完全でない場合、調査機関が利用可能な事実に基づいて判定を下せる慣行
- 実態調査手続き(verificationprocedure):調査機関が輸出企業の答弁書を受理した後、答弁内容の正確性を確認するために輸出企業を訪問して遂行する調査手続き
- 二国間セーフガードの導入
- 韓米FTAによる関税撤廃の影響で輸入が急増した場合、被害を救済するために関税を一時的に引上げできる制度を導入
- 農産物など腐敗しやすい商品については早期に措置がとれる『暫定措置』を許容
- 原則的に協定発効後10年間、関税撤廃期間がそれ以上である品目の場合、関税撤廃期間終了時まで存続
- 措置が発動される場合最長2年まで維持が可能、必要時は1年延長が可能
- マルチセーフガード裁量的免除
- マルチセーフガード発動時、相手国の輸出品が及ぼす被害が大きくない場合、発動対象として相手国を裁量的に免除することができる根拠規定を用意
- 当初米側は米国市場で韓国の輸出の割合が大きいため韓国に対しての免除条項の導入に反対
総則
- 協定文主要内容
韓・米FTA分野別最終合意結果仮訳 - 日本貿易振興機構(P.6,18,19,82)
第二十条 一般的例外
この協定の規定は、締約国が次のいずれかの措置を採用すること又は実施することを妨げるものと解してはならない。 ただし、それらの措置を、同様の条件の下にある諸国の間において任意の若しくは正当と認められない差別待遇の手段となるような方法で、又は国際貿易の偽装された制限となるような方法で、適用しないことを条件とする。
(a)公徳の保護のために必要な措置
(b)人、動物又は植物の生命又は健康の保護のために必要な措置
(c)金又は銀の輸入又は輸出に関する措置
(d)この協定の規定に反しない法令(税関行政に関する法令、第二条4及び第十七条の規定に基いて運営される独占の実施に関する法令、特許権、商標権及び著作権の保護に関する法令並びに詐欺的慣行の防止に関する法令を含む。)の遵守を確保するために必要な措置
(e)刑務所労働の産品に関する措置
(f)美術的、歴史的又は考古学的価値のある国宝の保護のために執られる措置
(g)有限天然資源の保存に関する措置。 ただし、この措置が国内の生産又は消費に対する制限と関連して実施される場合に限る。
(h)締約国団に提出されて否認されなかつた基準に合致する政府間商品協定又は締約国団に提出されて否認されなかつた政府間商品協定のいずれかに基く義務に従つて執られる措置
(i)国内原料の価格が政府の安定計画の一部として国際価格より低位に保たれている期間中、国内の加工業に対してその原料の不可欠の数量を確保するために必要な国内原料の輸出に制限を課する措置。 ただし、この制限は、国内産業の産品の輸出を増加するように、又は国内産業に与えられる保護を増大するように運用してはならず、また、無差別待遇に関するこの協定の規定から逸脱してはならない。
(j)一般的に又は地方的に供給が不足している産品の獲得又は分配のために不可欠の措置。 ただし、このような措置は、すべての締約国が当該産品の国際的供給について衡平な取分を受ける権利を有するという原則に合致するものでなければならず、また、この協定の他の規定に反するこのような措置は、それを生ぜしめた条件が存在しなくなつたときは、直ちに終止しなければならない。 締約国団は、千九百六十年六月三十日以前に、この(j)の規定の必要性について検討しなければならない。
第十四条 無差別待遇の原則の例外
1.第十二条又は第十八条Bの規定に基く制限を課する締約国は、その制限を課するに当り、国際通貨基金協定第八条若しくは第十四条の規定に基き又はこの協定の第十五条6の規定により締結した特別為替取極の類似の規定に基き当該時にその締約国が経常的国際取引のための支払及び資金移動について課することができる制限と等しい効果を有するような方法で、第十三条の規定から逸脱することができる。
2.第十二条又は第十八条Bの規定に基く輸入制限を課している締約国は、自国の対外貿易の一小部分に関し、関係締約国の受ける利益が他の締約国の貿易に与える損害より実質的に大きいときは、締約国団の同意を得て、一時的に第十三条の規定から逸脱することができる。
3.第十三条の規定は、国際通貨基金において共同の割当額をもつ一群の地域が、相互間の輸入にではなく他国からの輸入に対し、第十二条又は第十八条Bの規定に従つて制限を課することを妨げるものではない。 ただし、その制限は、他のすべての点で第十三条の規定に合致するものでなければならない。
4.第十二条又は第十八条Bの規定に基く輸入制限を課している締約国は、第十三条の規定から逸脱しないで使用しうる通貨の獲得を増加するように自国の輸出を導く措置を実施することを、この協定の第十一条から第十五条までの規定又は第十八条Bの規定によつて、妨げられることはない。
5.締約国は、次のいずれかの数量制限を課することを、この協定の第十一条から第十五条までの規定又は第十八条Bの規定によつて、妨げられることはない。
(a)国際通貨基金協定第七条第三項(b)の規定に基づいて許可された為替制限と等しい効果を有する数量制限
(b)この協定の附属書Aに定める交渉が成立するまでの間、同附属書に定める特恵取極に基く数量制限
輸入の急増による関税引き上げや「人、動物又は植物の生命又は健康の保護のために必要な措置」「有限天然資源の保存に関する措置」等による規制は認められている。
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