TPPと輸出

中立かつ客観原則 

ここでは中立的な立場で事実関係を検証する。 賛成か反対かという結論は先に立てず、現実に起きた出来事、確実に起き得ること、一定程度の期待値を示す根拠のあることを中立かつ客観的に検証する。 可能性レベルの物事を論じるためにも、無視できない可能性があることを示す根拠を重視し、根拠のない当てずっぽうや思い込みや伝聞等の不確かな情報は、それが妄想に過ぎないことを示した上で門前払いとする。 賛成論でも間違いは間違いと指摘するし、それは反対論でも同じである。 ここでは賛成論にも反対論にも与しない。

TPP総論 

長期的視野では話は別だが、短期的視野で見ればTPPに参加するかしないかは大きな問題ではない。 それよりも、TPPとは全く無関係な混合診療完全解禁がもたらす患者の治療機会喪失の危険性やイレッサ訴訟の行く末によるドラッグラグ・未承認薬問題の悪化の方が、遥かに大きな問題であろう。 だから、TPPよりも重要な争点において国民に不利益をもたらす政策を党員に強要する日本維新の会は落選運動の対象とせざるを得ない。 混合診療の完全解禁を公約とする日本維新の会およびみんなの党には一切の主導権を握らせてはならない。 そのためには、これらの党に対する落選運動が必要なだけでなく、与党とこれらの党との連携も絶対に阻止しなければならない。 具体的運動の詳細は自民党への抗議方法を見てもらいたい。

概要 

ここは サルでもわかるTPP@ルナ・オーガニック・インスティテュートサルでもわかるTPP@Project99% のデマを暴くページであるサルでもわかるTPP新サルでもわかるTPPの一部である。

貿易全般 

輸出に特化しない貿易全般の論点はTPPと経済・貿易にて説明する。

輸出で稼げるもの 

日本が輸出で稼げるものといえば、自動車、家電製品など(「耐久消費財」と呼ぶよ)が主。 では、耐久消費財の輸出額はどれだけかというと、GDP比1.652%しかない(2009年度)。

なんだ、農林水産業の1.5%とたいして変わらないじゃん!てことがわかる。

輸出業全体でもGDP比は11.5%しかない。 残りの98.5%が犠牲になるなんて、大ウソ。

サルでもわかるTPP第2章「TPPで発展!」の勘違い@Project99%

「GDP比1.652%」の「耐久消費財」と比べて、GDP比(11.5-1.652)%=9.848%の「耐久消費財」以外の輸出業が全く稼げないとする根拠はない。 これは、根拠を示さずに、「耐久消費財」という言葉のイメージを悪用して、間違った印象を植え付けているだけである。 確かに、「耐久消費財」は儲かりそうなイメージがある。 しかし、それは、売上高が高そうというイメージであって、利益率が非「耐久消費財」より遥かに高いわけではない。

GDPは 付加価値の総額 Wikipedia:国内総生産 であるから、これは、売上額ではなく利益額と見なせる。

つまり、「日本が輸出で稼げるもの」は、「GDP比1.652%しかない」のではなく、輸出業全体のGDP比11.5%である。 よって、GDP比11.5%の輸出業全体は、GDP比1.5%の農林水産業の7〜8倍稼いでいることになる。 つまり、「日本が輸出で稼げるもの」が「農林水産業の1.5%とたいして変わらない」は大嘘である。 よって、 サルでもわかるTPP@Project99% が示した数値を利用すれば、少なくとも、「農林水産業の1.5%を守るために、輸出業の11.5%を犠牲にしていいのか」には反論できない。

また、この数値はTPPにより見込まれる輸出額の増減も考慮していない。

国内でのサービス業(GDP比20.8%)や卸売・小売業(同13.1%)の方が、日本経済で大きな比重を占めている。 日本は貿易で食べている国というよりも、内需(国内の需要)でもっている国なんだ。

サルでもわかるTPP第2章「TPPで発展!」の勘違い@Project99%

「内需(国内の需要)でもっている」ことは輸出入を増やさなくて良い根拠にはならない。 正しくは、日本において内需拡大による経済発展を図るには輸出入の拡大が絶対に欠かせない。 何故なら、日本は資源の大部分を自給できないからである。

現代社会における生産のためには、エネルギー資源や鉱物資源その他の資源が欠かせない。 しかし、日本は殆どの資源を輸入に依存しており、国内で自給できる資源は一握りに過ぎない。 国内生産を賄うためには、その量に見合った資源が必要になる。 よって、国内生産を増やせば、それに応じて資源の輸入も増やす必要がある。

輸入には、それとほぼ同規模の輸出が必要になる。 何故なら、何かを売らなければ、買うための金も手に入らないからである。 それっぽい言い方をすると、輸入のために輸出で国際通貨を稼ぐ必要がある。 尚、「日本円で買えば良い」という屁理屈は通じない。 何故なら、ここで言う国際通貨とは、外貨であるか、それとも、日本円であるかを問う必要が全くないからである。 外貨に関してはそのままであるから説明する必要はあるまい。 ここで、日本が何も輸出しない仮定で考えてみる。 その場合、外国では日本円で買える物は何も存在しない。 つまり、その場合は、外国における日本円の実質的価値はゼロである。 何億円分、何兆円分あろうとも、日本の輸出がゼロである限り、外国における日本円の実質的価値はゼロなのだ。 百億円分の日本円が外国で百億円分の実質的価値を持つためには、日本から百億円分の商品を輸出する必要がある。 言い替えると、日本円が国際通貨として通用するためには、国際通貨として使用される日本円に見合った日本からの輸出が絶対に必要なのである。 まとめると、輸入のための国際通貨を稼ぐためには、輸入額と同額以上の輸出が絶対に必要となる。 ただし、これは原理的な説明であるので、実際の市場においては短期的かつ多少の逆転は許容範囲となる。 たとえば、海外で日本円が貯蓄に回されれば、その分の輸出がなくても、日本円を額面通りの国際通貨として使用することができる。 ただし、それは、日本円で額面に見合った商品が何時でも買えるという一定の信用の元に成り立つ現象なので、極端な輸入超過が長期に渡って続く場合は成立しない。

  • 国内生産を増やせば、それに応じて資源の輸入も増やす必要がある。
  • 輸入のための国際通貨を稼ぐためには、輸出額と同額以上の輸出が絶対に必要となる。

この2つから、国内生産を増やすためには輸出入の拡大が絶対に欠かせないことが容易に導ける。 ただし、江戸時代の生活に逆戻りでも構わないなら輸出入を増やす必要は全くない。 しかし、現代社会の生活における経済発展を望むのであれば、輸出入の拡大は不可欠である。

また、内需と外需を分離して別物として考えるのではなく、両者の相乗効果も考慮しなければならない。

  • 輸出品の増産による量産効果
  • 輸出品増産のための雇用の拡大

以上により、輸出が増えることによって、国内市場にも好影響を与える。 データを見ても、内需と輸出入の相関がきれいに見て取れる。

GDP国内分と輸出入の関係

統計表一覧 - 内閣府

そもそも、 こうして値下げ競争でデフレがさらに進んでいく。 日本ではもう10年以上もデフレが続いている。 サルでもわかるTPP第3章TPPに入るとどうなる?@Project99% だけど、今は、モノが余っていて、そのせいでデフレ(モノの値段が下がっていく)になって困っている状態。 サルでもわかるTPP第9章自由貿易について考えよう@Project99%日本は貿易で食べている国というよりも、内需(国内の需要)でもっている国 サルでもわかるTPP第2章「TPPで発展!」の勘違い@Project99% は明らかに矛盾している。 常識で考えれば分かるが、デフレで国内需要が伸び難い状況では「内需(国内の需要)でもっている国」にはなり難い。 輸出入と国内市場の相乗効果を考慮して「デフレ期だからこそ、輸出・輸入を増やして、伸び難い国内需要を下支えする必要がある」と主張するなら間違いではないが、デフレ期を強調しながら「内需(国内の需要)でもっている国」として輸出・輸入を疎かにして良いと主張することは明らかに自己矛盾している。

関税と輸出 

TPP推進派は、関税をなくせば、輸出先での値段が安くなり、日本の工業製品が売りやすくなる、と言っている。

でもホントにそうかな?

たとえば、アメリカが日本のテレビを輸入するとき、そこにかかる税金は0~5%、自動車の場合は2.5%

仮に1ドル100円のときに日本で100万円の自動車があるとする。100万円=1万ドル、関税の2.5%を足すと、1万250ドルになる。 それが関税をなくせば1万ドル。 なんだか、たいした違いじゃないような気もするね。 でも少しでも安くなれば多少は売りやすくなるかな。

でも、円高になったらどうなるだろう?

1ドル90円になれば、100万円=1万1111ドル。 おやおや、関税がなくなっても、円高になると、売値は高くなっちゃうぞ。

つまり現代では、関税が既に結構低いので、製品の売りやすさにはあまり関係しないんだ。

サルでもわかるTPP第2章「TPPで発展!」の勘違い@Project99%

でもホントにそうかな?

100万円の輸出価格 関税0% 関税2.5%
1ドル100円1万ドル1万250ドル
1ドル90円1万1111ドル1万1389ドル

おやおや、円高になっても、関税がなくなると、売値は安くなっちゃうぞ(笑)。 円高でも、円安でも、関税がない方が「売値」が安いことには変わりない。 関税0%での輸出額が0円となる状況でもなければ、「売値」の差で「製品の売りやすさ」は必ず変わる。 先程の話で輸出業全体でGDP比が11.5%であることを前提にしていたのだから、関税0%での輸出額が0円となる状況は前提とならない。 よって、この説明から「関税が既に結構低いので、製品の売りやすさにはあまり関係しない」は導けない。

そもそも、円高で輸出が伸びないとする根拠はない。 その証拠に、円高に伴って日米貿易摩擦が発生した事実がある。 1971年8月までは1ドル360円の固定レートであったが 1973年2月に変動相場制に移行し 円相場 - Wikipedia 、その後、円相場は上がったり下がったりしつつも全体的には常に円高傾向が進んでいる。 そんな中でも 1970年代以降日本車の海外輸出超過によってアメリカ合衆国の自動車産業に影響を与えたとして政治問題となった 貿易摩擦 - Wikipedia のだから、円高だから輸出が伸びないとする主張には根拠がない。

正確には、日本の経済成長を伴わない円高が輸出に悪影響があるのであって、経済成長を伴う円高であれば輸出は伸びることが期待できる。 また、円高でも関税がない方が輸出に有利であることに変わりはない。

まとめると、「関税がなくなっても、円高になると、売値は高くなっちゃう」は完全な嘘である。 円高でも、円安でも、必ず、関税がない方が「売値」は安くなるのであり、関税撤廃で売値が高くなることはあり得ない。 そして、「少しでも安くなれば多少は売りやすくなる」のであり、現実の商業の世界ではその僅かな差が明暗を分けることもある。 その僅かな差が明暗を分けるケースも、確率的には小さいかも知れないが、金額ベースでは決して小さくはないことを江田憲司衆議院議員は指摘している。 大きな取引なのに極僅かな差でライバルに競り負けた…というケースが減らせるだけでも、関税撤廃には意味があるのである。 定量的な試算結果を示して経済効果が低過ぎると文句を言うなら議論の余地もあろうが、「売値は高くなっちゃう」などの大嘘では話にもならない。

今韓国製品の売れ行きがいいのは、韓国の通貨ウォンが下落しているから。 2008年9月以降、ウォンが40%も下落したため、いつも4割引セールをやっているようなものなんだ。

サルでもわかるTPP第2章「TPPで発展!」の勘違い@Project99%

「いつも4割引セールをやっているようなもの」で「韓国製品の売れ行き」が良くなっていたとしても、関税をなくせば少しは競争の足しになる。 例えば、価格だけで勝負するとした場合、「関税の2.5%」の差を埋めるには、約41.5%引でなければ勝負にならない。 200万円の車であれば1台あたり約2.9万円の損失になり、100万台輸出すれば約290億円の損失になる。 つまり、「関税の2.5%」の差が約290億円の損失を生むのだ。 もちろん、日韓の競争は価格だけでなく品質の勝負もある。 日本製品の方が品質で優れるなら、割引率は下げられるが、その場合は損失額はもっと膨れるのだ。 関税がない場合に割引せずに対等な勝負が出来ると仮定すると、関税がある場合は関税の差の分だけ割り引かなければならない。 この場合、200万円の車であれば1台あたり約5万円の損失になり、100万台輸出すれば約500億円の損失になる。 よって、たった「関税の2.5%」の差で、200万円の車を100万台輸出すれば数百億円の損失は避けられないのだ。

江田憲司衆議院議員は「自動車の場合は2.5%」を撤廃してもメリットがないとか、円高の方が影響が大きいとかいう輩を 呑気なことを言っている この国際競争の荒波で「鉛筆一本」惜しんで使う企業のコスト感覚すら知らない 「国際大競争の荒波」への危機意識がない!・・・TPP反対論 - 今週の直言 と扱き下ろしている。 車一台について4~5万円の違いが出てくる 「国際大競争の荒波」への危機意識がない!・・・TPP反対論 - 今週の直言 のだから 150万台以上の車を米国に輸出している日本車メーカーにとっては死活的 「国際大競争の荒波」への危機意識がない!・・・TPP反対論 - 今週の直言 なのである。

それから、何度も こうして値下げ競争でデフレがさらに進んでいく。 日本ではもう10年以上もデフレが続いている。 サルでもわかるTPP第3章TPPに入るとどうなる?@Project99% だけど、今は、モノが余っていて、そのせいでデフレ(モノの値段が下がっていく)になって困っている状態。 サルでもわかるTPP第9章自由貿易について考えよう@Project99% とデフレを強調しながら、貿易時だけデフレの影響を考慮しないのはダブルスタンダードである。

  • 円高で1ドル100円が1ドル90円になった
  • デフレで100円の商品が90円になった

この状況だと、輸出は次のようになる。

  1. 以前100円で売っていた商品は当時輸出すると1ドル。
  2. この商品がデフレで90円になる。
  3. 今は円高なので90円の商品を輸出すると1ドル。

このように、輸出時は円高の影響がデフレで相殺されている。 では、輸入はどうか。

  1. 以前は1ドルの商品を輸入すると100円。
  2. 円高になってから輸入すると90円。
  3. 国内産品も100円が90円になるように、輸入品も100円が90円になる。

やはり、輸入時も円高の影響がデフレで相殺される。 このように、円高の度合いとデフレの度合いが同程度なら、円高は輸出に不利な要因にはならない。

物価指数と円相場

日本のGDPの推移 - 世界経済のネタ帳

米国が変動相場制に移行した1971年以後に相場が落ち着くまでの過渡期を除けば、このデータを見る限り、円相場はGDPデフレーター(GDPの補正に用いられる物価指数)と連動して動いている。 円相場の方が動きが激しいが、細かい変動を均せば、GDPデフレーターとほぼ同じ動きをしている。 よって、長期的に見れば、円高でも輸出に不利にはならない。

もちろん、円相場の細かい変動は決して無視できない動きである。 しかし、その細かい変動は予想不可能であり、予想不可能なもので未来を論じるのは無意味である。 また、その影響は一時的なものに過ぎない。 それに対して、関税は、税率を下げない限り、永久についてまわる。 長期的な視野で見て、どちらの影響が大きいかは言うまでもない。 ウォン安も円高も一過性の現象に過ぎず、永久に効果の続く関税撤廃と同列に語るのは明らかな間違いである。

輸出振興 

過去の例を見ると、日本の輸出が伸びるのは、アメリカ国内の景気がいいとき。

なんといっても、アメリカは世界一の経済大国。 人も多いし、経済力もあるから、景気がいいと、みんな金回りがよくなって、いろんなものを買う。 すると、日本のモノも売れる。

でも、景気が悪くなると、みんなお金を使わなくなる。だから、日本のモノも売れなくなる。

サルでもわかるTPP第2章「TPPで発展!」の勘違い@Project99%

日本の輸出総額は対米輸出額だけで決まるわけではない。 日本の主要相手国別輸出入額 - 総務省統計局によれば、2009年の日本の輸出総額に占める米国の割合は16.1%である。 ちなみに、中国は約18.9%。 つまり、米国の景気が悪くても、米国以外の全ての国の景気が良ければ、物は売れる。

また、対米輸出額に限定すれば、次の2つを満足する時、日本の対米輸出額も大きい。

  • 米国の輸入総額が大きい
  • 米国の輸入総額のうち、日本のシェアが大きい。

米国の輸入総額が大きい時は、米国の景気が良い時である。 日本のシェアが大きい時は、日本製品のコストパフォーマンスが良い時である。 コストパフォーマンスが良い時は、技術力や生産力が優れている時である。 技術力や生産力が優れている時とは、景気が良い時だ。

日本の対米輸出額 日本好景気 日本不景気
米国好景気それぞれの程度による
米国不景気それぞれの程度による

これは、アメリカ国内の問題であって、関税とは関係ない。 日本人がどうにかしようと思っても、どうにもできない問題なんだ。

サルでもわかるTPP第2章「TPPで発展!」の勘違い@Project99%

これは大嘘であり、「アメリカ国内の景気」がどうであろうと、関税がない方が物は売れる。 景気が良いときは、関税があっても物は売れるが、関税を無くせばもっと売れるようになる。 景気が悪いときは、関税を無くせば、関税がある時よりは、少しはマシになる。 いずれにせよ、関税がない方が物は売れるのであり、程度の差はあれど、全く「どうにもできない問題」ではない。

輸出を伸ばしたいなら、TPPよりも、円をもう少し安くする政策を考えた方がいい。

サルでもわかるTPP第2章「TPPで発展!」の勘違い@Project99%

TPPと「円をもう少し安くする政策」は独立した選択肢であって、一方を選択すると他方が選択できなくなるわけではない。 よって、「円をもう少し安くする政策」を実行すべきかどうかと、TPPに参加すべきかどうかは別問題である。

参考 

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中立的TPP論

外部リンク