内国民待遇

中立かつ客観原則 

ここでは中立的な立場で事実関係を検証する。 賛成か反対かという結論は先に立てず、現実に起きた出来事、確実に起き得ること、一定程度の期待値を示す根拠のあることを中立かつ客観的に検証する。 可能性レベルの物事を論じるためにも、無視できない可能性があることを示す根拠を重視し、根拠のない当てずっぽうや思い込みや伝聞等の不確かな情報は、それが妄想に過ぎないことを示した上で門前払いとする。 賛成論でも間違いは間違いと指摘するし、それは反対論でも同じである。 ここでは賛成論にも反対論にも与しない。

TPP総論 

長期的視野では話は別だが、短期的視野で見ればTPPに参加するかしないかは大きな問題ではない。 それよりも、TPPとは全く無関係な混合診療完全解禁がもたらす患者の治療機会喪失の危険性やイレッサ訴訟の行く末によるドラッグラグ・未承認薬問題の悪化の方が、遥かに大きな問題であろう。 だから、TPPよりも重要な争点において国民に不利益をもたらす政策を党員に強要する日本維新の会は落選運動の対象とせざるを得ない。 混合診療の完全解禁を公約とする日本維新の会およびみんなの党には一切の主導権を握らせてはならない。 そのためには、これらの党に対する落選運動が必要なだけでなく、与党とこれらの党との連携も絶対に阻止しなければならない。 具体的運動の詳細は自民党への抗議方法を見てもらいたい。

内国民待遇 

相手国の国民や企業を自国民と対等に扱うことを内国民待遇と言う。 内国民待遇は、自由貿易協定・投資協定において柱となる条項であり、WTOにおいても基本原則となっている。 工業所有権の保護に関するパリ条約でも採用されている。

自由貿易協定・投資協定は形式的な関税を取り払うだけでは不十分である。 というのも、形式的に関税を取り払っても、関税と同等の効果をもたらす政策はいくらでも実現可能だからである。 例えば、特定の種類の商品のみを対象とした税金を徴収すれば、形式的には関税にはならない。 しかし、その特定の種類の商品が外国製品のみに該当する場合は、実質的に関税と同じ効果をもたらす。 例えば、日本独自の品種や日本の得意分野のみを課税対象にすれば、日本製品のみを狙い撃ちにして実質的な関税を掛けることもできる。 たとえば、ジャポニカ種だけを課税すればほぼ日本米だけを対象にした実質関税が可能だ(中国も巻き添えを食らうけど)。 2001年頃のスパコン産業の状況を前提にした喩え話をすると、ベクトル型だけに課税することでNEC製品にだけ実質関税をかける手口も考えられる。

そうした協定の抜け道=「隠れた貿易障壁」をなくすには、一つ一つの手口を禁止するやり方ではイタチごっこになる。 そこで、内国民待遇という基本原則を決めておくことで、抜け道を一括して禁止するのである。 内外差別をもたらすことを目的とした政策を実施してはならないのだと決めておけば、そうした政策を実施すれば協定違反を認定できる。

本稿で内国民待遇というときは、投資後の投資家や投資財産(現地子会社等)に対して与えられる待遇としての内国民待遇をさし、「投資前」の内国民待遇、すなわち投資自由化の問題は含まない。 言うまでも従来のIIAには、若干の例外を除いて「投資前」の内国民待遇は盛り込まれず、また現在まで内国民待遇について下された投資協定仲裁はすべて「投資後」のものである。 投資後の内国民待遇を規定する条項の一例は次のようなものである。

いずれの一方の締約国の投資家も、他方の締約国の領域内において、投資財産、収益及び投資に関連する事業活動に関し、同様の状況の下で当該他方の締約国の投資家に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

内国民待遇違反を決定する要因は何か - 経済産業省P.35

投資協定には、一部例外を除いて、投資後の内国民待遇のみが盛り込まれている。 内国民待遇違反は、ISD条項に基づく国際投資仲裁で賠償を求めることができる。 この場合、内国民待遇違反を認定する条件は大きく2つある。

内国民待遇については大きく2点が問題になる。

第1は、問題となる投資元国(ホーム国)の投資家又は投資財産(現地子会社等)とホスト国のどの企業群を比較対象にするかという問題である。 例えば、電気通信業を営むホーム国企業について、鉄鋼業を営むホスト国企業と同一以上に扱わなければならないかどうか。 この点は上記規定の「同様の状況の下(like situations,similarsituations,like circumstances等)」での意味をめぐって争われた。 日本の結ぶIIAにはこのような字句はないが、何と何を比べるかは当然のことながら問題になると考えられる。

第2は、ホーム国投資家・投資財産と比較するホスト国企業群を同定して両者の待遇を比べたところ、両者の扱いの間に差異がある場合、それが内国民待遇上許されない扱いとなるかどうかという問題である。 わが国憲法上、許される「区別」か禁止される「差別」かとして争われた問題と類似した問題である。 「はじめに」で挙げたように形式的な扱いには差がないが効果において差が発生すれば内国民待遇違反か、または扱いにおいて差が存在することまでは必要か、さらにホスト国企業群を保護したいという目的まで必要か。

内国民待遇違反を決定する要因は何か - 経済産業省P.36

具体的な仲裁判断は次のようになっている。

1.NAFTAに基づく仲裁判断 NAFTA1102条は、次のように内国民待遇を定める。

  1. Each Party shall accord to investors of another Party treatment no less favorable than that it accords, in like circumstances, to its own investors with respect to the establishment, acquisition, expansion, management, conduct, operation, and sale or other disposition of investments.
  2. Each Party shall accord to investments of investors of another Party treatment no less favorable than that it accords, in like circumstances, to investments of its own investors with respect to the establishment, acquisition, expansion, management, conduct, operation, and sale or other disposition of investments.

これは自由化を含む内国民待遇の規定であるが、当然投資家および投資財産について、「投資後」の内国民待遇を保証しており、紛争はこれをめぐって起こった。

(1)S.D.Meyers事件

この事件では、カナダのPCB廃棄物を米国で処理する形で事業を営んでいた米系廃棄事業企業が、カナダの廃棄物輸出禁止措置によって事業停止のやむなきに至ったことが、カナダで廃棄物処理を行っているカナダ企業との関係でNAFTA1102条違反に当たるかどうかが問題になった。 仲裁廷は、問題の米系企業とカナダ企業の間には、PCBの処理をめぐって競争関係にあったことを指摘して、申立人とカナダ企業は「同様の状況の下」にあると判断した(250-251項)。 また内国民待遇の判断にあたり、意図は重要であるものの、保護主義的な意図が必ずしも決定的ではなく措置の実際の影響が必要要件であるとして内国民待遇違反を認めた。


また「同様の状況の下」にあることが肯定されると、国内系企業の保護目的までは不要であり、差異の効果で足りると述べたとみることができる。

(2)Pope & Talbo事件

この事件では、米国・カナダ協定によって軟材の輸出許可制がとられたことによって、カナダのブリティッシュ・コロンビア(BC)州で軟材輸出を営む米系企業に輸出手数料が徴収されるようになったことが問題化した。 具体的に差別として問題にされたのは、①輸出規制の適用除外州と適用州の差別、②輸出規制適用州のうち、生産・輸出シェアの増加に起因する、ケベック州とBC州の生産者間の差別、③BC州内の生産者間の差別の3つのレベルの差異である。

仲裁廷は、①表面上も事実上も外国投資家と国内投資家を区別せず、かつ②その他の点でもNAFTAの自由化目的を損なわない合理的な政策と妥当な結びつきのある場合以外であれば、異なる取り扱いは内国民待遇違反を推定させると述べ、本件で問題とされた措置がこの条件に当たらないとして申立人の主張を退けた。

内国民待遇違反の有無の基準を提示する際に、仲裁廷は次のように述べた。

The Investor submits that the legal context of Article 1102 includes "the trade and investmewnt-liberalizing objectives of NAFTA." The Tribunal agrees.(77項)

NAFTA1102条の解釈に当たっては、目的を含むNAFTAの法的文脈を考慮しなければならないという趣旨である。

また差異の判断においては、外国系企業と国内系企業の扱いに、事実上の差異があり、ホスト国の合理的な政策に関連しない場合には、内国民待遇違反が推定され、それを覆す責任がホスト国にあるとした。 国内産業保護の目的は、S.D.Meyers事件同様に不要というのが前提である。


(4)Methanex事件

カリフォルニア州がガソリン添加剤MTBEの使用を禁止したために、MTBEの原料であるメタノールを生産していたカナダ系企業が、使用が許されるガソリン添加剤ETBEの原料であるエタノールの生産事業者との差別を内国民待遇違反と主張した事件である。

仲裁廷は、「同様の状況の下」について、競争関係にあるモノを対象にして内国民待遇を考えるのではなく、同じ商品の製造者を対象にして考えなければならないとして内国民待遇違反の主張を退けた。

この議論の前堤として仲裁廷は次のように述べた。

Given the object of Article 1102 and the flexibility which the provision provides in its adoption of "like circumstances," it would be as perverse to ignore identical comparators if they were available and to use comparators that were less "like,"as it would be perverse to refuse to find and to apply less "like" comparators when no identical comparators existed. (Part IV, Chapter B, para.17)

NAFTA1102 条の解釈において、その目的を考慮すべきことが説かれたのである。

(5)UPS事件

米国系の宅配業者(UPS)が、カナダ関税法改正によってカナダ・ポストのみが優遇されるとして仲裁に訴えた事件である。 仲裁廷は、両者のシステムの差、また諸国における郵便事業と宅配業の認識の差を根拠に両者が「同様の状況の下」にないと判断した。

仲裁廷は宅配事業と郵便事業が比較対象にならないとしたが、その根拠は両者に対する諸国の認識の相違であった。 なお、本事件におけるCass仲裁人個別意見は、1102条の解釈はNAFTA全体の中で行わなければならず、そのように解釈すれば「同様の状況の下」にあるかどうかの判断は、競争関係にあるかどうかがポイントだとした。 したがって、Cassによれば、競争関係にある者について異なる扱いをすれば1102条違反の推定が成り立ち、カナダはその推定を覆す主張を述べることはできなかったと結論した。 NAFTAを条約の目的等を踏まえて解釈するか、文言のみによって解釈するかによって結論が変わることが理解できる。

(6)ADMS事件

砂糖以外の甘味料についてメキシコが課税措置をとったことについて、高果糖コーンシロップ(HFCS)を製造する米系企業が、砂糖事業者への優遇措置として仲裁に申し立てた。 仲裁廷は、HFCS事業と砂糖事業が競争関係にあり、したがって「同様の状況の下」にあるとしてメキシコの内国民待遇違反を認定した。

仲裁廷が、競争関係を基準にして事業者が「同様の状況の下」にあると認定した前提は次のようなものであった。

Basic function of this provision is to protect foreign investors vis-a-vis internal regulation affordingmorefavorabletreatmenttodomesticinvestors(193項)Inordertodeterminethe meaning of the expression "in like circumstances" in Article 1102, paragraphs 1 and 2, we examine these words in their ordinary meaning, in their context and in light of the object and purpose of Article 1102 (Article 31.1 of the Vienna Convention on Law of Treaties).(197項)

仲裁廷は、この解釈が明示的に条約法に関するウィーン条約31条に照らして解釈した結果だというのである。

以上の判断の後、仲裁廷は、Methanex事件との違いについて、①HFCS生産に従事するメキシコ系企業が存在しないこと、②メタノールそれ自体がガソリン添加剤として使用されるものでないことを挙げて説明した。 また差別的な取り扱いを内国民待遇違反と解した点については、メキシコの砂糖産業を保護する意図があり、そのような効果があったことが根拠とされた。 「同様の状況の下」にあるかどうかが、内国民待遇違反認定の最重要ポイントであった事件である。

2.NAFTA以外のBIT(二国間投資協定)に基づく仲裁判断

NAFTA以外のIIAに基づく仲裁判断で、内国民待遇に関するものもいくつか存在する。 これらの根拠となったIIA規定についても文言上大きな差はなく、すべて「同様の状況の下」云々という文言を含んでいる。

(1)Occidental事件

石油輸出に際して付加価値税が還付されないが、生花等の輸出については付加価値税が還付されることを、米系の石油開発企業が問題にした。 この扱いは、石油輸出業を営むエクアドル企業にも及んでいた。 この事件で仲裁の根拠となった米国・エクアドル二国間投資協定(BIT)に規定される内国民待遇には、「同様の状況の下(inlikesituations)」にという文言があり、この点が問題になった。

仲裁廷は、付加価値税の還付に関して、税法等の諸規定に石油産業のみを例外とする規定がないこと(133項)、エクアドル法上法的拘束力を有するアンデス共同体法の目的である間接税の調和(ハーモニゼーション)、付加価値税還付の経済的根拠がすべての輸出に共通であること、また内国民待遇は、国内事業者と比較して外国投資家を保護することを目的としていること等を指摘し、「同様の状況の下」にあるか否かの判断は、事業活動が行われている特定分野のみを比較するだけでは十分でなく、「状況」はすべての輸出事業者が享有する「状況」と解釈しうると述べて内国民待遇違反を認めた。

仲裁廷は、「競争関係」ではなく「輸出」に即して比較したが、その前提は次のようなものであった。

(T)he purpose of national treatment is to protect investors as compared to local producers, and this cannot be done by addressing exclusively the sector in which that particular activity is undertaken.(173項)

要は、WTOのように競争関係の保護がBITの目的ではないという、条約目的に即した認識が以上の判断の前提にあった。 本件も、「同様の状況の下」にあると判断されれば、内国民待遇違反がほぼ自動的に認定される事件であった。

(2)Champion Trading Company事件

エジプトでは、国営綿企業に対しては補償金が支払われるが、外国企業には支払われないという制度が導入されたために、綿事業に従事する米系企業がホスト国を仲裁に訴え、この扱いが内国民待遇違反かどうかが争われた。

仲裁廷は、補償金を得るためには、市場からではなく政府の「収集センター」から、政府指定価格で綿を購入することが条件であったことを指摘し、市場で購入した企業と収集センターから固定価格で購入した企業の間には大きな差があるとしたうえで、両者は補償金の支払いに関して、「同様の状況の下」にはないとして内国民待遇(エジプト・米国BIT2条2項a号)違反を否定した。

仲裁廷は、本件でも競争関係だけが「同様の状況の下」にあるかどうかの決定要因ではないとしたが、その前提として下記のように述べた。

The purpose of Art. II (2)(a) is to promote foreign investment and to guarantee the foreign investor that his investment will not because of his foreign nationality be accorded a treatment less favourable than that accorded to others in like situations. (126 項)

仲裁廷が競争関係を「同様の状況の下」において決定的でないとしたのは、BITの目的ゆえである。 本件でも「同様の状況の下」にあることが肯定されれば、内国民待遇違反はほぼ自動的に認定される事案であった。

II.検討1.「同様の状況の下」の解釈

(1)解釈方法

上記の諸判断の根拠になったIIAにはすべて「同様の状況の下」の文言があったが、それを解釈するアプローチは異なる。 大きく分ければ、①規定ないし条約の目的を踏まえて、「同様の状況の下」の語を解釈するものと、②社会一般の認識等を根拠に解釈するものである(UBS事件等)。


(2)競争関係の考慮の有無

「同様の状況の下」の解釈において、比較対象が競争関係にあるものに限定されるかどうかがしばしば議論された。


さきに挙げたNAFTA1102条は、投資後の投資家・投資財産に対する待遇とともに、投資前の内国民待遇、すなわち投資自由化を定めている。 他方、NAFTA以外のIIAでは、もっぱら投資後の投資家・投資財産の待遇確保が目的とされており、投資自由化の目的は存在しない。 したがって、競争関係がない業態の企業群であるにもかかわらず、それとの関係でホーム国投資家・投資財産の内国民待遇が検討されることになる。

以上の検討が示唆することは、そもそも内国民待遇の有無の引証基準となるホスト国企業群の選定は、IIAや内国民待遇を規定する条項の目的によって大きく左右されることである。 内国民待遇についても、IIAの目的をどのように書き込むかが重要なことが分かる。

2.差異の扱い


外国系企業の待遇について差異がある場合に、きちんとした説明をホスト国政府がしたかどうか、説明をした場合には正当化事由があるかどうかが検討される。 国内産業保護の目的までは必要とされないのが一般的であり、実際上の効果があれば一応内国民待遇違反が推定されると考えられてきたが、これも規定の文言、ひいては条約目的によって左右されることは言うまでもない。 現在までのところは、「はじめに」において危惧として挙げたような事態は起こっておらず、実際にホスト国政府の社会政策等によって正当化される場合は内国民待遇違反とは認定されていない。 これは今まで仲裁で解釈を求められたIIA規定からは、ホスト国の合理的な政策に基づいて採られた措置まで内国民待遇違反とする目的を読み取れないからである。

内国民待遇違反を決定する要因は何か - 経済産業省P.37-43


(a) SD Myers Inc v Canada (2000)

カナダからPCB廃棄物を輸入し米国内で処理事業を行なっていたSDMyers社は、カナダ政府によるPCB輸出禁止措置によって事業の継続が出来なかった。 SDMyers社は、この措置をカナダ内のPCBの処理事業者を保護する目的と効果を持つものであるとして内国民待遇違反を申し立てた。

この申立てに対して、本件仲裁廷は、PCBの処理事業をめぐってSDMyers社とカナダ企業が競争関係にあるとして、両者が「同様の状況にある」と判断した。


(b)ADM事件(2007年)

メキシコ政府による砂糖以外の甘味料を含むソフトドリンク及びシロップの取引に対する課税措置に対して、課税対象となる高果糖コーンシロップ(HFCS)をメキシコで生産するアメリカ企業は内国民待遇違反の申立てを行なった。

この申立てに対して、仲裁廷は、まず、HFCS製造業者とメキシコの砂糖産業が「同様の状況下」にあるか否かを検討した。 NAFTAの先例を参照して、同じセクターの一部でありソフトドリンク及び加工食品のマーケットに甘味料を供給する上で両者が競争関係にあることを根拠に「同様の状況の下」にあるとした。

その上で、同様の状況にある企業間の取り扱いについては、①HFCS課税が国内産品よりも高かったこと、②メキシコの砂糖産業を保護する意図及び効果を有していたことを指摘し、メキシコの措置が差別的であると認定した。

平成22年度投資協定仲裁研究会報告書V環境保護と投資協定の関係 - 経済産業省


(3)S.D. Myers 事件

オハイオ州でPCB含有廃棄物の処理事業を行っている米国企業のS.D.Myers社は、カナダ国内に合弁会社を設立して、カナダで発生する含有廃棄物を米国に送って(輸出して)処理するという事業を展開していた。 ところが1998年に、カナダがPCB含有廃棄物の輸出を禁止したために、カナダでの事業を行えなくなったS.D.Myers社はNAFTA11章に基づいてカナダ政府を仲裁に訴えた。

仲裁廷は、まずNAFTA1102条の内国民待遇義務違反を検討して、本件で問題とされたカナダの規制が、カナダ国内のPCB廃棄物処理事業者の保護を目的としたものであると認定して、カナダの内国民待遇違反(1102条)を認定する。

投資協定仲裁の新たな展開とその意義 - 経済産業研究所P.12,13


事件の発端

  • 米国企業(A社)は、カナダに子会社を設立して、カナダで取得した廃棄物を米国で処理する事業を進めていた。 しかし、カナダ政府の輸出禁止措置により、事業を継続できなくなった。
  • カナダ政府は、自国内で廃棄物を処理することは認めていた。 ただし、カナダ国内には関連事業を営むカナダ企業は1社しか存在せず、同社はA社の米国工場(オハイオ州)より顧客から遠くに立地(アルバータ州)しているためコストが高く、また、A社のような豊富な事業経験や顧客からの信頼を有していなかった。

仲裁廷の判断

仲裁廷は、カナダが高い水準の環境保護を確立する権利を有していることを認めたものの、輸出禁止は環境政策に根拠を置く措置でなく、カナダ国民を他国民より有利に扱う保護主義を意図したものと認定した。 その上で、内国民待遇等の違反を認定し、損害賠償として約386万ドル+利子の支払いをカナダ政府に命じた。

国家と投資家の間の紛争解決(ISDS)手続の概要 - 外務省

尚、「実際にホスト国政府の社会政策等によって正当化される場合は内国民待遇違反とは認定されていない」とされているとおり、環境保護等の規制を無差別に行なうウ場合は内国民待遇違反とは認定されない。

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