サルでもわかるTPP

参考 

サルでもわかるTPP 

サルでもわかるTPP@ルナ・オーガニック・インスティテュートのデマを暴いてみる。 単にネット上のデマをまとめて、それに如何にもな陰謀論を付け足しただけなのだが、この程度の情報を検証もせずに鵜呑みにしてしまう人が多いことに驚く。 信じるなら、せめて、もっとまともなTPP反対論を信じてもらいたい。 それとも、自ら真っ当なTPP反対論のページを立ち上げるべきか。 読んだことはないが、鈴木宣弘東京大学大学院教授、木下順子コーネル大学客員研究員などは割と真っ当なTPP反対論を唱えているらしい。 TPPと日本の国益をざっと読んだところでは真っ当とは言えないような気がするが。 ただし、アレな人の主張に比べれば遥かにまともではある。

補足しておくが、次の3つは全くの別問題である。

  • TPPに賛成すべきか反対すべきか。
  • 一部の人達が完全なデマを流布していること。
  • 人々を扇動するためにデマを流布して良いかどうか。

一部の人達がデマを流布していることは、TPPに賛成すべき理由とはならない。 そして、仮に、TPPに反対すべきだったとしても、それはデマを流布して良い理由にはならない。 TPPに反対していることが問題なのではなく、反対する手段としてデマを流していることが問題なのだ。 本当にTPPに反対すべきであるならば、デマではなく、反対すべき真の理由を説明すべきである。

導入部 

国民皆保険制度がなくなってしまうかも。 盲腸の手術だけで500万円、それが払えない貧乏人は死ぬような社会がやって来る!?

サルでもわかるTPP@ルナ・オーガニック・インスティテュート

「国民皆保険制度がなくなってしまう」がまるでデタラメであることは、後のこの主張の理由部分で述べる。

近いうちに必ず世界的な食料危機が起こるから、突然食料輸入が途絶えて餓死者が出るようなことになるかも。

サルでもわかるTPP@ルナ・オーガニック・インスティテュート

世界的な食糧危機に備えるべきと主張するなら一理あるが、「近いうちに必ず世界的な食料危機が起こる」とは何を根拠に言っているのか。

牛肉の月齢制限や添加物など食の安全基準が緩くなって、健康への悪影響が心配。

サルでもわかるTPP@ルナ・オーガニック・インスティテュート

各国で基準を合わせるべきかどうかと、妥当な基準が何処にあるかは別問題である。 日本だけ基準が緩くなるわけではないから、不当に緩い規制が導入されるとは考え難い。 科学的な間違いにより基準を誤るリスクは、国際基準に合わせることによって高まるわけではない。

例えば、国際的に厳しいとされる日本の月齢制限は科学的根拠がない(統計上、規制によるBSE感染リスクは変わらない)と批判されている。 一方で、ピッシングを禁止していなかった平成21年4月までの日本の牛肉は他国の牛肉よりも危険とされていた。 このように、規制を厳しくすれば安全性が向上するわけではない。 本当に必要な規制がザルになっていれば、他がどんなに厳しくても、安全性は低下する。 科学的根拠に基づいたメリハリのある規制が必要である。

そもそも、このような意味もなく形だけ厳しい規制を導入したのは、農林水産省の対応のまずさにある。 海外でBSEが問題になっている中、農林水産省は日本には上陸していないと繰り返すばかりで、その根拠も明らかにせず、上陸を阻止する政策も実行しなかった。 当時、原因と疑われていた肉骨粉の流通も禁止していなかった。 ところが、国内でBSEの疑いがある牛が発見された。 そして、その後の農林水産省の対応もまずかった。 報道では、最初の発症例とされる牛は肉骨粉の原料として売却されたという。 そうした不手際に対する批判が高まり、農林水産省は、世界にも例を見ない月齢制限や全頭検査の導入に踏み切ったのである。 しかし、この農林水産省の対応も、全頭検査でも全てのBSE感染を検出できない、特定危険部位を除去することの方が重要として批判されている。 その後、特定危険部位に関する規制は見直された。 このように、日本の安全規制は非科学的で実効性に乏しいものである。

江田憲司衆議院議院は これには、WTO(世界貿易機構)にSPS(衛生植物検疫措置) TPPの前身たるP4(シンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリ) 現在、TPPでは、この安全基準の緩和より、その手続きの迅速化・透明化が議論されている TPPへの疑問、懸念に答える・・・⑤食品の安全が脅かされる - 日々是好日 としてTPPで安全規制が不当に緩和される恐れはないとしている。 また、 どの国も安全性が確認された遺伝子組み換え食品しか流通を認めていないが、異なるのは表示の義務付け 米国は、表示は一切不要という立場 米国は膨大なコストがかかるとしてEUの表示規制に反対した経緯がある 日本と同様の表示制度を持つ豪州やニュージーランドと共闘して阻止した TPPへの疑問、懸念に答える・・・⑤食品の安全が脅かされる - 日々是好日 として米国の規制緩和要求にも豪州やニュージーランドと共闘して対抗できるとしている。 さらに、 SPS協定には、「科学的根拠」があれば、上乗せの厳しい基準を各国が設けることができるという規定もある この規定を盛り込んだのは、より厳しい安全を求める消費者団体の強い意向を汲んだ米国 BSEや残留農薬の国内規制も、それに「科学的根拠」があれば正当化される TPPへの疑問、懸念に答える・・・⑤食品の安全が脅かされる - 日々是好日 として米国は科学的根拠に基づいた規制強化を求めているので、科学的根拠に基づいた規制は強化できるとしている。 最後に、不当な規制強化が日本に不利益を及ぼす事例として福島原発の事例を挙げ 福島をはじめ被災地の農産物が、必要以上の輸入規制を各国で受けている 日本政府は「科学的根拠」に基づき、その是正を求めていかなければならない TPPへの疑問、懸念に答える・・・⑤食品の安全が脅かされる - 日々是好日 として、このような不当に厳しい規制の是正を求めることが日本の国益に繋がるとしている。

低賃金労働者が外国から入ってくるから、日本人の給料はますます下がる。 職を奪われて失業も増えるよ。 そのうち外国まで出稼ぎに行かなきゃならなくなるかも。

デフレがますます加速するよ。 今まで日本国内で回っていたお金がどんどん海外へ流出しちゃうよ。 景気はますます悪くなり、日本はどんどん貧しくなるよ。

サルでもわかるTPP@ルナ・オーガニック・インスティテュート

これらがデタラメであることは具体的な話が出てくる後の部分で説明する。 本来は、むしろ、TPPに参加しない方が失業は増えるのだが、それも後で説明する。

そして何よりも問題なこと……国民を守るために、国民の代表が決めた法律や制度が、アメリカ企業の都合によって、いくらでも変更してしまえるようになる。 国民の主権が奪われちゃうよ。民主主義の崩壊だよ。

と、いうことはだ……もしも仮に、脱原発運動の成果として、日本で国民投票が行われ「日本はすべての原発を廃炉にし、永遠に原発の新設はしない」と決めたとしよう。 でも、もしも日本の原発で儲けてるアメリカの企業が「そんな取り決めはけしからん! わが社の利益に反するじゃないか!」と言ってきたら、そちらの言い分の方が優先されてしまう(もしくは巨額の賠償金を支払わされる)ということ。 つまり、どんなにがんばって市民運動をしたって、あるいは政治家がまともな政治をしようとしたって、なんの意味もなくなってしまうということだ。。

サルでもわかるTPP@ルナ・オーガニック・インスティテュート

「国民の主権が奪われちゃう」がまるでデタラメであることは、後のこの主張の理由部分で述べる。

輸出で稼げるもの 

「輸出業全体でもGDP比は11.5%しかない」 日本が輸出で稼げるものといえば、自動車、家電製品など(「耐久消費財」と呼ぶよ)が主。 では、耐久消費財の輸出額はどれだけかというと、GDP比1.652%しかない(2009年度)。

なんだ、農林水産業の1.5%とたいして変わらないじゃん!てことがわかる。

輸出業全体でもGDP比は11.5%しかない。 残りの98.5%が犠牲になるなんて、大ウソ。

第2章「TPPで発展!」の勘違い1.「農業のために工業を犠牲にしていいのか」のウソ - サルでもわかるTPP

ツッコミ所が多過ぎる。 まず、「日本が輸出で稼げるもの」が「GDP比1.652%しかない」のに「輸出業全体でもGDP比は11.5%」は明らかに矛盾している。 それならば、輸出業全体のうち(11.5−1.652)%は全然稼げない慈善事業だとでも言うつもりだろうか。

「輸出業全体でもGDP比は11.5%」は「農林水産業の1.5%」の7〜8倍ある。 「残りの98.5%が犠牲になる」が大げさとしても、この論理では「残りの11.5%が犠牲になる」と言えば批判できない。

この数値はTPPにより見込まれる輸出額の増減も考慮していない。

関税と輸出 

TPP推進派は、関税をなくせば、輸出先での値段が安くなり、日本の工業製品が売りやすくなる、と言っている。

でもホントにそうかな?

たとえば、アメリカが日本のテレビを輸入するとき、そこにかかる税金は0~5%、自動車の場合は2.5%

仮に1ドル100円のときに日本で100万円の自動車があるとする。 100万円=1万ドル、関税の2.5%を足すと、1万250ドルになる。 それが関税をなくせば1万ドル。 なんだか、たいした違いじゃないような気もするね。 でも少しでも安くなれば多少は売りやすくなるかな。

でも、円高になったらどうなるだろう?

1ドル90円になれば、100万円=1万1111ドル。 おやおや、関税がなくなっても、円高になると、売値は高くなっちゃうぞ。

つまり現代では、関税が既に結構低いので、製品の売りやすさにはあまり関係しないんだ。

第2章「TPPで発展!」の勘違い2.「関税なくせば輸出が伸びる」のウソ - サルでもわかるTPP

「関税がなくなっても、円高になると、売値は高くなっちゃう」が大嘘であることを次表で示す。

100万円の輸出価格 関税0% 関税2.5%
1ドル100円1万ドル1万250ドル
1ドル90円1万1111ドル1万1389ドル

円高でも、円安でも、関税がない方が「売値」が安いことには変わりない。 関税0%での輸出額が0円となる状況でもなければ、「売値」の差で「製品の売りやすさ」は必ず変わる。 先程の話で輸出業全体でGDP比が11.5%であることを前提にしていたのだから、関税0%での輸出額が0円となる状況は前提とならない。 よって、この説明から「関税が既に結構低いので、製品の売りやすさにはあまり関係しない」は導けない。

江田憲司衆議院議院は「自動車の場合は2.5%」を撤廃してもメリットがないとか、円高の方が影響が大きいとかいう輩を 呑気なことを言っている この国際競争の荒波で「鉛筆一本」惜しんで使う企業のコスト感覚すら知らない 「国際大競争の荒波」への危機意識がない!・・・TPP反対論 - 今週の直言 と扱き下ろしている。 車一台について4~5万円の違いが出てくる 「国際大競争の荒波」への危機意識がない!・・・TPP反対論 - 今週の直言 のだから 150万台以上の車を米国に輸出している日本車メーカーにとっては死活的 「国際大競争の荒波」への危機意識がない!・・・TPP反対論 - 今週の直言 なのである。

そもそも、円高で輸出が伸びないとする根拠はない。 その証拠に、円高に伴って日米貿易摩擦が発生した事実がある。 1971年8月までは1ドル360円の固定レートであったが 1973年2月に変動相場制に移行し 円相場 - Wikipedia 、その後、円相場は上がったり下がったりしつつも全体的には常に円高傾向が進んでいる。 そんな中でも 1970年代以降日本車の海外輸出超過によってアメリカ合衆国の自動車産業に影響を与えたとして政治問題となった 貿易摩擦 - Wikipedia のだから、円高だから輸出が伸びないとする主張には根拠がない。

正確には、日本の経済成長を伴わない円高が輸出に悪影響があるのであって、経済成長を伴う円高であれば輸出は伸びることが期待できる。 また、円高でも関税がない方が輸出に有利であることに変わりはない。

アジアの成長 

TPPを推進したがる人たちは、「TPPに加盟することで、日本はアジアの成長を取り込める」と言っている。

でも今急成長しているアジアの国といえば、中国、韓国、インドだけど、このいずれの国もTPPに入るなんて、言ってない。

第2章「TPPで発展!」の勘違い3.「TPPでアジアの成長を取り込む」のウソ - サルでもわかるTPP

これは、全く世界経済を分かっていない人間の言い分である。 「急成長しているアジアの国」がTPPに加入するかどうかと「アジアの成長を取り込める」かは別問題である。 「急成長しているアジアの国」が自由貿易の流れから取り残されれば、これらの国の貿易は自由貿易協定締約国間の取引と比べて不利になる。 そのため、自由貿易から取り残された「急成長しているアジアの国」の貿易シェアを自由貿易協定締約国が奪える余地が出てくる。 日本がTPPに参加表明した途端、中国が慌てて日本との経済協定に前向きな姿勢を示したのは、日本に貿易シェアを奪われたくないからだ。 一方で、「急成長しているアジアの国」が自由貿易に参加してくれば、これらの国との取引も有利に進めることができる。 つまり、「急成長しているアジアの国」がTPPに加入しようとしまいと「アジアの成長を取り込める」のである。

逆に、日本が出遅れると、日本の利益が「急成長しているアジアの国」に取り込まれてしまう。 そのことは経済産業省試算(補足資料)に明記されている。 経済産業省は、日本が韓国に対してEPA/FTAで出遅れたことが、日韓の製造業の競争に多大な悪影響を与えると考えており、これ以上出遅れが続けば日本経済は回復不可能なダメージを受けると見ている。

TPP参加国の多くは小国で、モノを大量に買うような経済力は持ってないんだ。 GDP比で見ると、アメリカが7割、日本が2割、残りの8か国で1割。つまり実質的にはアメリカと日本の2国間の協定のようなものなんだ。

第2章「TPPで発展!」の勘違い3.「TPPでアジアの成長を取り込む」のウソ - サルでもわかるTPP

TPPについて論じるならGDPで比較するのは間違いであって、貿易額&海外投資額で比較するのが正しい。 それでも日米の比率が高いのは確かであるが。

輸出振興 

過去の例を見ると、日本の輸出が伸びるのは、アメリカ国内の景気がいいとき。

なんといっても、アメリカは世界一の経済大国。 人も多いし、経済力もあるから、景気がいいと、みんな金回りがよくなって、いろんなものを買う。 すると、日本のモノも売れる。 でも、景気が悪くなると、みんなお金を使わなくなる。だから、日本のモノも売れなくなる。単純な話だ。

これは、アメリカ国内の問題であって、関税とは関係ない。 日本人がどうにかしようと思っても、どうにもできない問題なんだ。

輸出を伸ばしたいなら、TPPよりも、円をもう少し安くする政策を考えた方がいい。

第2章「TPPで発展!」の勘違い4.じゃあ、どうすれば輸出が伸びるの? - サルでもわかるTPP

いろいろと間違っている。 まず、日本の輸出総額は対米輸出額だけで決まるわけではない。 日本の主要相手国別輸出入額 - 総務省統計局によれば、2009年の日本の輸出総額に占める米国の割合は16.1%である。 ちなみに、中国は約18.9%。 つまり、米国の景気が悪くても、米国以外の全ての国の景気が良ければ、物は売れる。

また、対米輸出額に限定すれば、次の2つを満足する時、日本の対米輸出額も大きい。

  • 米国の輸入総額が大きい
  • 米国の輸入総額のうち、日本のシェアが大きい。

米国の輸入総額が大きい時は、米国の景気が良い時である。 日本のシェアが大きい時は、日本製品のコストパフォーマンスが良い時である。 コストパフォーマンスが良い時は、技術力や生産力が優れている時である。 技術力や生産力が優れている時とは、景気が良い時だ。

日本の対米輸出額 日本好景気 日本不景気
米国好景気それぞれの程度による
米国不景気それぞれの程度による

さらに、TPPと「円をもう少し安くする政策」は独立した選択肢であって、一方を選択すると他方が選択できなくなるわけではない。 よって、「円をもう少し安くする政策」を実行すべきかどうかと、TPPに参加すべきかどうかは別問題である。

非関税障壁 

外国にモノを売りたい人にとって、「関税」以外の邪魔モノが、すべて「非関税障壁」になる。

第3章 TPPに入るとどうなる?1.日本の法律が日本人を守れなくなってしまう - サルでもわかるTPP

ちゃんと言葉の定義を勉強してから物を言うべきだろう。 非関税障壁とは、 関税以外の方法によって貿易を制限すること。 非関税障壁 - Wikipedia 関税以外の手段による輸入制限。 非関税障壁とは - コトバンク 関税以外の方法で国産品と外国品を差別し、貿易制限的効果をもつ選別的手段や制度。 非関税障壁 - goo辞書 であって、「『関税』以外の邪魔モノが、すべて」あてはまるわけではない。

具体例をあげよう。

例えば、「健康保険」というサービスを日本に売り込みたいアメリカの保険会社があったとする。 ところが日本には国民皆保険制度がある。 会社員やその家族は「社会保険」に、自営業の人は「国民健康保険」に入っているから、これ以上健康保険なんて必要ない。 だから、アメリカの「健康保険」なんて誰も買わない。

これは、アメリカの保険会社にとっては明らかに商売の邪魔だね。

だから、TPPに加盟すると、そのうちにアメリカの保険会社が、「国民皆保険制度を廃止せよ!」なんて言ってこないとも限らないんだ。

第3章 TPPに入るとどうなる?1.日本の法律が日本人を守れなくなってしまう - サルでもわかるTPP

日本の国民皆保険制度は、日本の民間保険会社にとっても「明らかに商売の邪魔」である。 よって、日本の国民皆保険制度は、内国民待遇原則に反しないから、非関税障壁とはならない。

国際投資紛争解決 

それでも日本政府が国民皆保険制度を廃止しない、と言い張るとどうなるか。 アメリカの保険会社は日本政府を裁判で訴えることができる。 その判定をするのは世界銀行の中に事務局がある「国際投資紛争解決裁判所」だ。 この裁判所の判断基準は、自由貿易のルールに則っているかどうかだけ。 それが日本人のためになるかどうかなんてまったく考慮してもらえない。

第3章 TPPに入るとどうなる?1.日本の法律が日本人を守れなくなってしまう - サルでもわかるTPP

これについては次のリンク先を見てもらった方が早い。

仲裁定が従うのは「自由貿易のルール」ではなく協定のルールである。 協定に批准した国がその協定のルールに従うのは当然の義務である。 協定に違反しない制度で政府が負けた判例はない。

そして、日本政府が負けたら、賠償金を支払うか制度を変えなければならないんだ。

ということは、せっかく日本政府が日本国民を守るためにつくった制度や法律、規制などが、すべてなし崩しにされかねない、ということ。

それぞれの国の法律以上に、外国企業の利益の方が優先される、そんな社会がやってくる、ということ。

国民が選挙で選んだ代表によって法律がつくられ、実行されていくという「国民主権」が崩れてしまう、ということなんだ。

第3章 TPPに入るとどうなる?1.日本の法律が日本人を守れなくなってしまう - サルでもわかるTPP

これについては次のリンク先を見てもらった方が早い。

NAFTAの場合、 人間・動物・植物の生命や健康の保護の目的で、国際標準よりも厳しい措置を採用・維持・適用することを認める規定、及び、投資促進のためとして健康、安全及び環境に関する措置を緩和するのは不適当とする規定 経済連携協定(EPA)/貿易自由協定(FTA)に対する環境影響評価手法に関するガイドライン - 環境省P.12 があり、補完協定でも 高い水準の環境保護を規定し、効果的に執行する義務を確認している(貿易を奨励する手段として自国の環境法及び規制を緩和しないことの確認)。 経済連携協定(EPA)/貿易自由協定(FTA)に対する環境影響評価手法に関するガイドライン - 環境省P.12 し、仲裁判断でも 当事国は高い環境保護レベルを設定する権利を有していること、②そうした措置を環境の偽装された制限となるように利用してはならないこと、③環境保護と経済発展は相互補完関係にあるべきこと、の三点を示した 経済連携協定(EPA)/貿易自由協定(FTA)に対する環境影響評価手法に関するガイドライン - 環境省P.16 など、必要な規制は認められている。 これは他の協定でも同様で、例えば、WTOでも、米韓FTAでも、「人、動物又は植物の生命又は健康の保護のために必要な措置」等は認めている。 以上のとおり、「日本政府が日本国民を守るためにつくった制度や法律、規制などが、すべてなし崩しにされかねない」は大嘘である。

仮に、仲裁定で負けても「制度を変えなければならない」義務はないし、制度を変えても賠償金は免除されない。 つまり、仲裁定の勝ち負けと制度改正は関係がないのだ。

そもそも、主権とは、国際法に反しない範囲で国際法によって認められるものである。 国際法に逆らう主権など、初めからない。 国際法には条約や協定も含まれるから、当然、批准した条約や協定に逆らう主権などない。 よって、国際法に従うことを強要しても、それは、主権の侵害でもないし、治外法権でもない。 初めから存在しない主権を侵害することなどできないのである。

混合診療 

つまり、この「混合診療の禁止」は、最先端の医療を売り込みたい製薬会社などにとっては、まちがいなく「非関税障壁」だ。

第3章 TPPに入るとどうなる?2.TPPで医療はどうなる? - サルでもわかるTPP

既に説明したとおり、「混合診療の禁止」は、内国民待遇原則に反しないから、非関税障壁とはならない。

日本の健康保険はただでさえ費用が膨らみすぎて問題になっているから、混合診療が解禁されれば、じゃあ保険の効く範囲を狭くしよう、というふうに話が進むのは目に見えている。

すると、保険の効く医療では最低限のことしかできない、高度な医療を受けたい人はお金はかかりますが、自由診療を受けてください、という話になる。 貧乏人と金持ちとで、受けられる医療の格差がどんどん広がっていくだろう。

そしてアメリカの医療保険会社は、自由診療のための保険を真っ先に売り込みにやって来るだろうね。

アメリカの医療事情は本当にひどい。公的な保険がなく、民間の医療保険が高いので貧乏な人は保険に入れない。 国民全体の15%が無保険だ。

入院患者に支払い能力がないとわかると、路上に捨てていく病院すらある。

ある無保険の大工さんは事故で指を切り落として病院に行くと「薬指をつなげるのには1万2千ドル。中指をつなげるのには6万ドル。どっちにしますか?」と聞かれたという。 そんな法外な額のお金が用意できなければ、つながるはずの指もあきらめざるを得ない。

そして年間4万4000人もの人が、保険に入っていないがために、医者にかかれずに死んでいく……。

第3章 TPPに入るとどうなる?2.TPPで医療はどうなる? - サルでもわかるTPP

これは事実であるがTPPとは無関係である。 確かに、混合診療原則解禁は阻止すべきである。 だからこそ、混合診療解禁の口実に利用されないよう、国民皆保険制度とTPPが無関係であることを明確にする必要がある。 TPPで混合診療が解禁されると言っているのは、TPP反対派を増やす手段としてデマを流布している人と、それを真に受けてしまった人だけである。

そのデマに加担することは、混合診療を解禁したい者達に塩を送る行為である。 混合診療を解禁したい者達は、デマに乗じて「TPPに参加したから混合診療も解禁しなくてはいけない」として解禁論を唱えて来るだろう。 それで、TPPに参加したら、混合診療が解禁されても、全て止むなしと諦めるのか。 それとも、TPPの枠組みの中で国民皆保険制度を守ろうとするのか。 本気で国民皆保険制度を守りたいなら、前者の選択はあり得ない。 後者を選択するなら、明らかなダブルスタンダードである。 TPPの枠組みの中で国民皆保険制度を守れるなら、参加すれば制度が崩壊するとしていた主張と完全に矛盾する。 つまり、TPPの枠組みの中で国民皆保険制度を守るように方針転換することは、以前の主張がTPPお化けに過ぎなかったと認めるに等しい。 当然、抵抗勢力は、そのような二枚舌を厳しく追及してくるだろう。 「この前はTPPオバケで今度は公的医療保険オバケですか?その次は何オバケですか?」と。

TPP反対派を増やす手段としてデマを流布している人は、それでも何も困らない。 彼らの目的は、TPP反対派を増やすことであって、混合診療などは眼中にはない。 マクロビオティックなどを信仰し病院の治療を拒否する彼らにとっては、混合診療がどうなろうと全く関係ないのである。 彼らは、混合診療反対派を取り込むためだけに、混合診療をネタにしているのだ。 騙されてはいけない。

混合診療解禁派にやり込められて困るのは、そのデマに踊らされた患者達である。 そうならないようにするためには、安易にデマに踊らされないよう慎重に行動しなければならない。 真剣に混合診療問題を考えている人達は、日本がTPPに参加してもしなくても、どちらに転んでも対応できるように行動している。 だから、真剣な患者団体は、混合診療原則解禁を阻止できなくなるような、TPPと混合診療を結びつけた物言いはしない。

失業率等の国内経済への影響 

TPPに加盟すると「労働力の移動」も自由化される。

するとTPP加盟国からの労働者が日本にどんどんやって来る。

例えば、ベトナムの労働者の最低賃金は月給で83万ドン~155万ドン(地区などの条件によって違う)。 これを日本円に換算すると3057円~5709円と、メチャクチャ安い。

まあ、ベトナム人といえども、日本で働くなら、日本でご飯食べたり、家賃払ったりしなきゃいけないわけだし、飛行機代(もしくは船賃)かけてやって来るんだから、ベトナム国内と同じ値段で働くというわけにはいかない。 日本には日本の最低賃金もあるしね。

でも、日本人にとってはサイテーの給料でも、彼らにとっては大きな魅力。 安い給料でも働いてくれる人が増えれば、企業はわざわざ高い給料なんか払わない。 こうして賃金の相場はだんだんに下がっていく。

給料の安い外国人に職を奪われて、日本人の失業はどんどん増えるだろう。

第3章 TPPに入るとどうなる?3.TPPで賃金が下がる - サルでもわかるTPP

これについてはゴチャゴチャ説明するよりもサルでもわかるTPP@ルナ・オーガニック・インスティテュート自身が挙げたNAFTAの事例を見てもらう方が早い。

ちなみに、カナダ、アメリカ、メキシコの間で自由貿易協定NAFTAが結ばれたことで、アメリカ国内では50万人もの人が失業したんだよ。

第3章 TPPに入るとどうなる?3.TPPで賃金が下がる - サルでもわかるTPP

これについては米国公的機関の失業率データを参照する。

米国失業率とGDP推移

Labor Force Statistics from the Current Population Survey - 米国労働統計局 アメリカのGDPの推移 - 世界経済のネタ帳

米国の月間失業率は、1982年末をピークにして、2007年初め頃までは、多少の波はあるものの、全体としては下がっている。 2008年から2009年頃にかけて急激に失業率が悪化しているが、これはリーマン・ショックの影響である。

NAFTAとの関連について見てみよう。 NAFTAは1992年12月署名、1994年1月発効である。 1992年をピークに2000年までは米国の失業率は下がり続けている。 米国の失業率が1994年よりも悪化するのは2009年になってからである。 そして、2009年の失業率悪化の主原因は既に述べたようにリーマン・ショックである。 以上のとおり、統計データ上は、NAFTAによって米国の失業率が悪化した事実はない。 米国の失業率がリーマン・ショックによって急激に悪化し、その後、実質GDPと逆相関した失業率の改善がみられる。 しかし、「NAFTAが結ばれたことで、アメリカ国内では50万人もの人が失業した」とする根拠はない。

雇用労働事情 - 財団法人海外職業訓練協会のデータを元に計算すると、米国における失業50万人は失業率換算で約0.3%である。 それに比べて、NAFTA発効時の米国の月間失業率は5.7%である。 全体の失業率が改善する中で、5.7%のうちの一部要因によるたった0.3%分の悪化を特定するのは極めて困難である。 それなのに、「NAFTAが結ばれたことで、アメリカ国内では50万人もの人が失業した」とは一体どこから出てきたのか。

日本人の失業の懸念についてはTPPに参加しない方が具体的である。 例えば、江田憲司衆議院議院は トヨタは、米韓FTAの発効で関税がゼロになることを見越して、米インディアナ州で生産する車を韓国へ輸出することを検討中 東レも韓国亀尾に工場を建設中 「国際大競争の荒波」への危機意識がない!・・・TPP反対論 - 今週の直言 として、FTA競争で韓国に遅れを取ることで日本の雇用がゴッソリ韓国等に持って行かれる(トヨタ車の場合、日本からの韓国への輸出が米国からの輸出に切り替わる)懸念を示している。

安い給料で働く外国人が日本にたくさん入ってくれば、給料の相場が下がる。

給料が下がると、経済的余裕がなくなって、みんなモノを買わなくなる。

高いモノは売れないから、売ろうと思ったら、値段を安くしなくちゃならない。

こうして値下げ競争でデフレがさらに進んでいく。

第3章 TPPに入るとどうなる?4.TPPでデフレが進む - サルでもわかるTPP

既に述べたとおり、「安い給料で働く外国人が日本にたくさん入ってくれば」とする前提には根拠がない。 よって、「デフレがさらに進んでいく」も根拠がない。 デフレについては、また後の部分で詳細に解説する。

アメリカとカナダは1989年に協定を結んで投資を自由化した。

その結果、10年も経たないうちに、カナダの食品加工業界はアメリカに乗っ取られてしまったといってもいい。

協定を結んでから、カナダからの農産物輸出は3倍に増えた。

でも、逆に農家の収入は24%も減ってしまったんだ。

一見産業が盛んになるように見える場合もあるけれど、もうかるのは大金持ちの投資家ばかりで、庶民はお金を搾り取られて、結局貧乏になっていくことがわかる。

投資の自由化は、大企業の利益を伸ばす反面、庶民の搾取につながっていく。

第3章 TPPに入るとどうなる?5.「投資」の国境がなくなると - サルでもわかるTPP

特定の品目において「アメリカに乗っ取られてしまった」ことや、特定の分野において「収入は24%も減ってしまった」ことを挙げても、木を見て森を見ずである。 TPPは、プラス・サムを目指すものであって、個別品目、個別分野だけに着目すれば、国によっては損したり得したりするのは当たり前である。 論じるべきことは本当にプラス・サムが達成されるかどうかであって、そのためには、後で述べられる比較優位論を考慮しなければ意味がない。

「カナダの食品加工業界はアメリカに乗っ取られてしまった」はずのカナダにおいてもGDPは上昇し、かつ、失業率は改善している。 米国については既に説明済みのとおりである。 GDPで見ても失業率で見ても、NAFTA加盟の三国は何処も損をしていない。 少なくとも、失業率が改善している米国とカナダの二国では、NAFTA後に庶民の生活が改善していると言える。 失業率が横ばいのメキシコも、GDPは上昇しており、NAFTA後に庶民の生活が悪化したとする根拠はない。 以上のとおり、「大企業の利益を伸ばす反面、庶民の搾取につながっていく」は全く根拠のないデマである。

でも、これだけは日本国内で運用しなきゃダメ! と決められていたものがある。 たとえば、「ゆうちょ」(郵便貯金)、かんぽ(郵便局の簡易保険)、農協共済。

こうした規制はやはり「非関税障壁」だ。

その決まりさえなくなれば、これらの莫大な資金がウォール街(証券会社や銀行が集中しているアメリカの街)に流れ込む。 そして、ウォール街の連中の儲けが増える。 これがアメリカの狙いだ。

第3章 TPPに入るとどうなる?6.「金融」の国境がなくなると… - サルでもわかるTPP

日本の金融機関より金利等の条件が良くなければ、日本の「莫大な資金がウォール街に流れ込む」ことはない。 金利等の条件で勝負するためには、銀行の取り分を減らす必要がある。 つまり、日本の金融機関から顧客を奪うためには、薄利多売の金融業を営む必要がある。 「莫大な資金がウォール街に流れ込む」ということは、日本人がウォール街に投資する機会が増えることである。 日本人が好条件でウォール街に投資できるということは、それは、日本人が「ウォール街の連中の儲け」をピンハネできるということである。

でもその代わりに日本国内でお金が回らなくなるから、日本経済はますます停滞しちゃうよ。

第3章 TPPに入るとどうなる?6.「金融」の国境がなくなると… - サルでもわかるTPP

日本人が好条件でウォール街に投資できるならば、その投資によって得た利益を日本経済の投資に回すことは可能である。

NAFTA仲裁定事例 

NAFTA(北米自由貿易協定)で実際に起こった例を見てみよう。

アメリカの企業クラッド社は、メキシコで産業廃棄物を処理しようとした。 環境の悪化を懸念する声が高まり、地元自治体は処理の許可を取り消した。 するとメタルクラッド社は「不利益を被った」としてメキシコ政府を訴えた。

裁定は、メキシコ政府がクラッド社の「内国民待遇を犯した」ことを認め、1670万ドルもの賠償金の支払いを命じた……。

何かあったら、なんでも「外資系企業への差別だ!」「内国民待遇を犯している!」と言ってゴネて、ゴリ押しできるようになる、ってことかな。

第4章 なぜ日本は加盟したい?1.企業の海外進出が有利に - サルでもわかるTPP

これについては次のリンク先を見てもらった方が早い。

隠された事実を箇条書きにしてみる。

  • Metalclad社は許可取得済みのメキシコ企業を買収し、連邦政府からも許可を得ていた。
  • 「環境の悪化を懸念」は住民運動にのみ基づいていて、具体的根拠が何もない風評であった。
  • その結果、Metalclad社の廃棄物処理事業は事業中止に追い込まれ、多額の損害が発生した。

これでは外国企業を狙い撃ちにした嫌がらせだと取られても仕方がない。 つまり、Metalclad事件は、メキシコ政府に一方的に非があった事例であり、企業側の損害賠償請求は正当であった。 つまり、この事例は、ISD条項が建前通りに適切に機能した事例であり、ISD条項の有用性を示す事例である。 その他の仲裁事例も似たり寄ったりで、明らかに政府側に非があることが多い。 国内裁判よりは多少企業側に有利に勧められた事例であっても、企業が勝った事例は全て企業側が一方的な被害者であり、不当な損害賠償要求が認められた事例は一例もない。

協定違反が認定されたら賠償金の支払いが認められるのは当然である。 この仲裁定結果を「ゴリ押し」と表現する方が協定違反のゴリ押しである。

ついでに言っとくけど、外資系企業を差別するのはおかしい! とか、商売は対等な条件でさせろ! とか、そんなの、フェアじゃない! とか主張する人もいるんだけど、それはチャンチャラおかしい。 繰り返すけど、国が自国民や自国の企業の利益を守るのは当然のこと。 それこそが国の役目じゃないか。

大企業は自分たちに都合のいい考え方を人々に吹き込むために、「差別はよくないこと」「フェアであることが大事」「自由であることはよいこと」といった基本的な価値観を利用してうまく言葉を選んでくる。 それにだまされちゃいけないよ。

第4章 なぜ日本は加盟したい?1.企業の海外進出が有利に - サルでもわかるTPP

内国民待遇を採用するのは、その方が経済的利益が大きいと政治的に判断するからであって、「差別はよくないこと」「フェアであることが大事」だからではない。 そして、内国民待遇の協定に加盟したなら、その協定に従うのは当然の義務である。 内外を対等に扱わなければならないのは、自らの意思で批准した協定でそう決まっているからであって、「差別はよくないこと」「フェアであることが大事」だからではない。

格差 

一般市民には何の得にもならないけれど、大企業だけは得をする、という構図は、アメリカでも日本でも同じなんだ。

第4章 なぜ日本は加盟したい?2.日本の金融機関ももうかる - サルでもわかるTPP

大企業が得をすれば経済発展が見込めるから、一般市民にも一定の恩恵がある。 おこぼれが少な過ぎると文句を言うなら分かるが、「一般市民には何の得にもならない」は間違い。

そもそも、格差を問題視することが根本的に間違っているのだ。 問うべきことは格差の大小ではなく、底辺層の生活レベルの底上げである。 経済発展と引き換えに格差が発生するなら、格差を是正する国内政策を実施すれば良い。 そうした国内政策を実行するかどうかは、TPPとは全く無関係である。 よって、格差はTPPに参加しない理由にならない。

さらに彼らにとってオイシイ話がある。 それは商社にとって有利な「原産地表示」ができるようになるということだ。

TPPでは、いくつかの国の部品や材料をあわせてモノをつくる場合、モノの値段の45%以上の部品や材料がTPP加盟国でつくられている場合は、TPP加盟国で生産されたものとみなすことになっている。

たとえば化粧品をつくるとき、日本の材料が商品の値段の45%以上を占めていれば、中国でそれを混ぜ合わせて加工しても、「メイド・イン・ジャパン」と表示できる。

「メイド・イン・ジャパン」の化粧品は高級なイメージがあって、アジアでは庶民の憧れの的といったところだ。 対する「メイド・イン・チャイナ」は……。この違いは決定的といってもいい。

第4章 なぜ日本は加盟したい?3.商社は表示の“自由”度が広がる - サルでもわかるTPP

個別の項目がどうなるかは交渉次第である。 そして、情報が入ってこないのであれば、このような断定的なことを言えるはずがない。 そもそも、参加していない国の要求が通る余地はないのだから、TPPに参加していない中国を例に出すのはおかしい。

自由貿易は失業の輸出でもある(→第9章参照)。

実際に貿易、投資等を自由化したNAFTA(北米自由貿易協定)では、大量の失業者が生まれた。

NAFTAが成立するとアメリカ企業は人件費の安いメキシコにどんどん移転した。 そのおかげでメキシコ国内では工場での雇用が増えた。 けれども工場が減ってしまったアメリカでは、当然ながら失業者が増えた。

それにアメリカが補助金つきの安い農産物を大量にメキシコに輸出するもんだから、メキシコの農民は価格競争に負けて、大勢の農民が農業をあきらめざるを得なくなった。 農家をやめて新しい職を探しても見つからない。 そんな人の一部は移民となってアメリカへ渡った。 そして、さらにアメリカ国内での失業は増えた……。

こうして、メキシコでは約200万人、アメリカでも約50万人が失業したといわれている。

つまりNAFTAやTPPなどの自由貿易協定、経済協定を結んでも、利益を得るのは大企業のトップだけ。 一般庶民は豊かになるどころか、逆に失業や賃金の低下で苦しめられることになる。社会全体にとってはちっともプラスにならないんだ。

第5章 TPPでは幸せになれない - サルでもわかるTPP

米国の失業率推移を再掲する。

米国失業率とGDP推移

Labor Force Statistics from the Current Population Survey - 米国労働統計局 アメリカのGDPの推移 - 世界経済のネタ帳

大きな変動を見れば、米国の失業率は1983年から2007年にかけて改善傾向である。 小さな変動で見ても、NAFTA署名の1992年から2000年までは改善傾向である。 よって、「アメリカでも約50万人が失業した」は大嘘である。 NAFTA署名・発効後、米国の失業率は改善しており、NAFTA署名・発効時点よりも悪化したのはリーマン・ショック以降だけである。

メキシコの失業率データによれば、メキシコの失業率はNAFTA署名時と比べて3.4%、NAFTA発効時と比べて2.53%、それぞれ悪化している。 メキシコの雇用者数の推移のデータが見つからないのでメキシコの人口から推論するが、「メキシコでは約200万人」が失業したとすると、メキシコの全人口に占める労働力人口比率はそれぞれ68%、88%とかなり高率になる。 米国の例があるので「約200万人」がデタラメである疑いは残るが、最も大きな問題はそこではない。 NAFTA後にメキシコの失業率のピークを迎えるのは1996年であるが、1997年にはNAFTA発効時の水準、1999年にはNAFTA署名時の水準に戻っている。 また、1980年から2011年のメキシコの失業率推移は全体としてほぼ横ばい状態であり、全体傾向へのNAFTAの影響は見られない。 以上のことから、メキシコの失業率の悪化がNAFTAの影響によるとは言い難い。 また、仮にNAFTAの影響だとしても、その影響は極一時的に留まり、数年後には失業率が改善している。 以上のとおり、あたかもNAFTAの影響で「メキシコでは約200万人」が路頭に迷ったかのような話は正しくない。

あと、軽く突っ込んでおくと、「メキシコ国内では工場での雇用が増えた」のに「新しい職を探しても見つからない」のはおかしい。

今アメリカの失業率は白人で8%、黒人では16%にものぼる。 貧しさゆえに政府から食費の補助を受けている人(フードスタンプ受給者)は、2000年以降どんどん増えて、今では4700万人もいる。 これはアメリカの人口の15%だ。

第5章 TPPでは幸せになれない - サルでもわかるTPP

「今アメリカの失業率」が急増したのはリーマン・ショックの影響であり、NAFTA(自由貿易協定)とは関係がない。 フードスタンプ受給者が4,000万人を超えたのは2010年である。 これも時期的に明らかにリーマン・ショックの影響であり、NAFTA(自由貿易協定)とは関係がない。

経済の指標となるGDP(国内総生産)は上がっていくけれど、国民は豊かになっていかない。 逆に貧しい人が増えていく。

第5章 TPPでは幸せになれない - サルでもわかるTPP

既に指摘したとおり、米国において「国民は豊かになっていかない」のは、リーマン・ショックの影響である。 サルでもわかるTPP@ルナ・オーガニック・インスティテュートが引用したグラフにもリーマン・ショックの影響によるGDPの低下が明確に描かれている(ただし、低下幅は小さい)。 その後、米国のGDPは回復しており、実質GDPと失業率には明らかな逆相関がみられる。

米国失業率とGDP推移

Labor Force Statistics from the Current Population Survey - 米国労働統計局 アメリカのGDPの推移 - 世界経済のネタ帳

これは、リーマン・ショック後の雇用対策の問題であって、NAFTA(自由貿易協定)とは関係がない。 GDPが増えたなら、社会が失業者を支える余力も増えているはずである。 それならば、適切な失業対策・雇用対策を行なえば、失業率は改善可能である。 事実、少しずつではあるが米国の失業率は回復傾向にある。 リーマン・ショック前の水準まで回復するにはあと2〜3年を要するかもしれない。 しかし、この事実からは「経済の指標となるGDP(国内総生産)は上がっていくけれど、国民は豊かになっていかない」とは言えない。

これはアメリカも日本も同じだ。

日本のGDP推移

国全体の経済と一般庶民の給料とが比例して伸びて行った時代は終わった。

日本でもGDPはじわじわと上がり続けているけれど、日本人の平均年収は1997年(平成9年)からほぼ下がる一方になっている。

日本人の平均サラリーマン年収

これは大企業だけが利益をむさぼって、庶民は搾取されているということだ。 だから日本でこんなにワーキングプアが増えてしまったんだ。

第5章 TPPでは幸せになれない - サルでもわかるTPP

これには次のようなトリックが使われている。

  • 物価変動で補正した値(実質GDP)と補正しない値(平均給与)を比較している。
  • グラフの縦軸をずらしている(平均年収のグラフは1995年からなのに、GDPのグラフは1980年から。実質GDPの上昇の大きい時の平均年収グラフはない。)
  • グラフの横軸をずらしている(実質GDPのグラフの起点が0円になっているのに対して、平均年収グラフの起点はピーク値の80%強)。

この際、「日本人の平均年収」と言いながらサラリーマンだけのグラフだったりなどの、細かい部分の突っ込み所には目を瞑ろう。 同じデータを元にして、物価変動で補正しない名目GDPを平均年収のグラフの縦軸と横軸に合わせて表示してみる。

GDPと平均給与の推移

日本のGDPの推移 - 世界経済のネタ帳

グラフを見れば一目瞭然であるように、名目GDPと日本人サラリーマンの平均給与には明確な正の相関関係が見て取れる。 2004年(平成16年)以降の名目GDPを一律30兆円くらい減らせば、気持ち悪いくらいにほぼ完璧に一致する。 このグラフからは、2004年(平成16年)以降の日本人サラリーマンの平均給与が不当に安く抑えられているとは言えるが、GDPと平均年収の間の正の相関を否定することはできない。 『庶民の暮らしを改善するにはGDPを上げただけでは不十分』だとは言えるかも知れない。 しかし、『庶民の暮らしを改善するのにGDPを上げる意味はない』とまでは言えない。 つまり、「GDP(国内総生産)は上がっていくけれど、国民は豊かになっていかない」「大企業だけが利益をむさぼって、庶民は搾取されている」は根拠のない妄想である。

遺伝子組換 

1998年、イギリスのローウェット研究所のパズタイ博士は、ネズミに遺伝子組換えじゃがいもを食べさせる実験を行った。

その結果、ネズミには、免疫力の低下や内臓の障害(膵臓の重量低下、内臓細胞の増殖、肝臓の重量低下、胃の粘膜が厚くなる)がはっきりと認められた。

博士は早速テレビ会見でこのことを発表した。 「遺伝子組換え研究に携わる科学者として、イギリス国民をモルモット代わりに使うのはきわめて不当だといわざるを得ません」とまで言ったんだ。 なぜなら、その2年前から遺伝子組換え作物は既に市場に出回っていたからね。

第7章 TPPと遺伝子組換え2.遺伝子組換え作物は安全なの? - サルでもわかるTPP

サルでもわかるTPP@ルナ・オーガニック・インスティテュートは物事の真偽を検証するために必要な情報を隠蔽している。 この真相は遺伝子組換え食品Q&A - 厚生労働省が詳しく解説している。 それによると、次の6種類の餌をラットに与えたときの影響を比較しているらしい。

  • 生の遺伝子組換えジャガイモ
  • 茹でた遺伝子組換えジャガイモ
  • 生の非組換えジャガイモ
  • 茹でた非組換えジャガイモ
  • 生の非組換えジャガイモにレクチン(挿入遺伝子が産生するもの)添加
  • 茹でた非組換えジャガイモにレクチン(挿入遺伝子が産生するもの)添加

パズタイ博士の発表に対して、2日後のローウェット研究所のプレスリリースでは、 本研究発表は研究途中の段階で行われたものであり、データ全体の評価が終了していない 遺伝子組換え食品Q&A - 厚生労働省 と発表され、ローウェット研究所のAudit committee(監査委員会)は ラットに発育不良が見られ、又免疫系の抑制がみられたとしているが、この結論は不正確な論拠に基づく 遺伝子組換え食品Q&A - 厚生労働省 と指摘している。 具体的には次のような問題である。

  • 実験に用いられたジャガイモの組成が親種ジャガイモとかなり異なる。
  • 臓器重量の変化については、ラットの体重あたりの臓器重量の変化を示していない(比較方法の問題点)。
  • レクチン遺伝子組込ジャガイモとレクチン添加非組換ジャガイモでは有意差がない(「免疫力の低下や内臓の障害」の原因は遺伝子組換ではなくレクチンであると疑われる)。
  • 免疫系の検査が十分でははい。

この結果からは、レクチン(タチナタマメやマツユキソウに含まれる天然成分)の摂取を控えた方が良いとは言えるかも知れない。 しかし、組換ジャガイモとレクチン添加非組換ジャガイモに有意差がないのだから、遺伝子組換の危険性を示唆するデータにはなっていない。 もしも、「免疫力の低下や内臓の障害」の原因が遺伝子組換であるならば、組換ジャガイモとレクチン添加非組換ジャガイモに有意差が生じるはずである。 しかし、両者に有意差がなく、レクチンを含む群と含まない群の間に有意差があるのだから、遺伝子組換を「免疫力の低下や内臓の障害」の原因と疑う根拠は何もない。 この結果から、「免疫力の低下や内臓の障害」の原因としてレクチンを疑うのは間違いではないが、遺伝子組換を疑うのは明らかな科学的間違いである。 さらに拡大解釈すると有害物質を産生する遺伝子の組込の危険性を示唆したとは言えなくはないが、有害物質を産生しない遺伝子組換については何ら危険性を示唆していない。 この結果が示唆することは、産生物質の危険性であって、遺伝子組換の危険性ではないのだ。 産生物質が同じ物質であるなら、天然植物でも遺伝子組換植物でも危険性は変わらない。 よって、産生物質の危険性は、遺伝子組換の是非とは全く関係がない。 産生物質の危険性を回避したいなら、危険物質を産生する遺伝子を使わず、危険物質を産生しない遺伝子だけを使えば良い。

約一年後、権威ある学術誌であるランセットは、 実験の設計や分析について不十分な点が多いという前提で掲載 遺伝子組換え食品Q&A - 厚生労働省 して、 組換えジャガイモの餌によりラットの一部の臓器や免疫系への影響が指摘されていますが、この影響が蛋白不足の餌によるストレスや、ジャガイモの品種や餌の低消化性によるとも考えられ、このような結論は出せない 遺伝子組換え食品Q&A - 厚生労働省 とコメントしている。 以上のとおり、パズタイ博士の発表はとても科学的とは言えないお粗末なものである。 これで「イギリス国民をモルモット代わりに使う」と言うのは言い掛かりに過ぎない。

世界中のテレビ局から研究所に問い合わせが殺到した。 ところが、研究所では博士のコンピュータにロックをかけ、データを没収、2日後には博士はクビにされてしまった。

この「パズタイ事件」は遺伝子組換えの闇を象徴する有名な事件だ。

なんでそんなことになったんだろう?

誰が手を回したんだろう?

遺伝子組換え作物が安全でない、とされ、売れなくなったときに困るのは誰か?

そう考えればすぐにわかる。

それは遺伝子組換え種子のトップ企業、モンサント社だ。

「遺伝子組換え作物は安全性に疑問がある」と発表する学者がいると、モンサント社はかたっぱしから裏から手を回して失脚させる。 その手口によって、世界中で何人もの良心的な学者が失脚させられているよ。

第7章 TPPと遺伝子組換え2.遺伝子組換え作物は安全なの? - サルでもわかるTPP

パズタイ博士が 停職を命ぜられました 遺伝子組換え食品Q&A - 厚生労働省 のは、「遺伝子組換え作物は安全性に疑問がある」と発表したからでも、「モンサント社はかたっぱしから裏から手を回して失脚させる」でもない。 本当の処分理由は、研究途中の不正確な情報を独断でテレビ番組上で公表したからである。

  • 新しい学説等は査読のある学術誌の論文として寄稿するのが良識ある科学者の行動である。(参考:Wikipedia:常温核融合
    • 権威ある学術誌の査読を担当する専門家を欺くのは容易でないし、欺けたとしても嘘の研究では他の研究者の追試には耐えられない。
    • 一方で、テレビ番組で新説を発表すれば、何も知らない素人は簡単に騙される。
  • 研究途中であること、テレビ番組という異例の手段を用いていることから見て、パズタイ博士の発表は無許可である疑いがある。
  • 研究途中の不正確な情報で社会を混乱させたパズタイ博士の一連の行動は研究所の信用を失墜させかねない。

以上を考慮すれば処分を受けるのは当然と言える。 パズタイ博士は「良心的な学者」どころか、とんでもない不良学者だったのだ。 「研究所では博士のコンピュータにロックをかけ、データを没収、2日後には博士はクビにされてしまった」も事実とは違う。 パズタイ博士がテレビ番組で発表したのは1998年8月10日であり、ローウェット研究所の要請を受けてパズタイ博士が報告書を提出したのは1998年10月22日である。 「博士のコンピュータにロックをかけ、データを没収」されたのでは報告書を書きようがないし、そもそも、クビになったのなら報告書を真面目に出しても意味がない。 よって、少なくとも報告書をまとめるまでは、クビにはなっていないだろうし、データへのアクセスは許可されていたのだろう(許可は限定的かも知れないが)。

常識で考えても、このような無限大の陰謀論は荒唐無稽である。 特定の会社や個人に圧力をかけることはできるだろう。 しかし、会員の総意で運営される学会に対しては、このような圧力は通用しない。 世界中の学会の構成員の大多数に圧力をかけることは物理的に不可能で、大企業に不利益な論文の発表を阻止することはできない。 事実、権威ある学術誌であるランセットも、事実を黙殺したりせずに、1年後にこの論文を掲載している。 よって、会社をクビになったとしても、それが不当解雇であれば、復権することが可能である。 復権できないとすれば、パズタイ博士のように何かマズイことをやらかしている可能性が高い。

そもそも、陰謀論を唱えるなら、科学者として誠意ある態度かつ正規の手続で論文を発表したにも関わらずに不遇な扱いを受けた人を挙げるべきである。 パズタイ博士のような不良学者が処分された事例を持ち出して陰謀論を唱えるのは言い掛かりである。

経済の基礎 

でも、昔と今とでは時代の状況が違っている。 モノが不足していて、モノの値段が高かった時代には、「以前よりも安くモノが買えるようになる」というのは確かにメリットだったかもしれない。

だけど、今は、モノが余っていて、そのせいでデフレ(モノの値段が下がっていく)になって困っている状態。 これ以上安くモノが手に入るようになっても、景気はますます悪化するだけなんだ。

第9章 自由貿易について考えよう1.貿易は自由なほうがいい? - サルでもわかるTPP

デフレと物価安の違い、そして、デフレの何が問題なのかが分かっていないようだ。

デフレとは 物価が持続的に下落していく経済現象 デフレーション - Wikipedia であって、単に物価が安くなることではない。 つまり、安い輸入品への切り替えによる一時的な価格低下はデフレではない。

景気が悪くなると消費者の購買力が低下し物が売れにくくなる。 物が売れにくくなると商品の販売利益は目減りする。 利益が目減りすれば、労働者の賃金も下げざるを得ない。 労働者=消費者であるので、労働者の賃金が下がれば、結果として消費者の購買力は低下する。 景気が悪い時はこのような悪循環で消費者の購買力が持続的に低下する。 利益が最大になる価格は消費者の購買力に左右される。 消費者の購買力が下がれば、利益が最大になる価格も下がるため、販売価格を下げざるを得ない。 そのため、消費者の購買力が持続的に低下し続ければ、販売価格も持続的に低下し続ける。 これが景気悪化に伴う典型的なデフレのパターンである。

まず、デフレの問題点の一つとして、物価変動時における支出と収入の時期のずれによる損得が挙げられる。 物価の増減と利益の増減に差が生じれば、経済的な損得が発生する。 たとえば、仕入価格+経費が50、販売価格が100、利益が50としよう。 ここで、デフレが発生したとする。 そして、仕入や経費の支出額確定が販売額確定より前だったとする。 その結果、仕入価格+経費が50、販売価格が90となると、利益は40に目減りする。 この場合、物価が10%減なのに対して、利益は20%減となる。 物価よりも利益の方が大きく減るために、結果として損をしてしまう。 通常の商売では、仕入や経費の支出額確定は販売額確定より早い。 だから、デフレでは、どうしても損を避けられない。 とくに、一定の在庫を常時必要とする場合、製造業において製品完成までに時間が掛かる場合等は、影響が大きい。 また、薄利多売商法でも影響が大きい。 この要因については、持続的な価格下落が悪影響となるのであって、単発的な価格変動は大した影響を及ぼさない。 単発的な価格変動もタイミングによっては一定の影響があるが、その影響はその時限りのものであって、不況の悪循環までには至らない。

また、保有資産の目減りも悪影響を及ぼす。 とくに、不動産価格の目減りは、借金の担保割れなどの原因となる。 担保割れになると、貸し渋りや貸し剥がしにより中小企業だ大打撃を受ける。 保有資産として価値を持つ商品は限られており、安い輸入品の導入による価格低下の影響は少ない。 とくに、不動産価格は、輸入対象商品の価格低下とは関係ない。 よって、安い輸入品の導入による価格低下は、貸し渋りや貸し剥がしの原因とならない。

さらに、デフレ化では、価格が下がってから買う方が得なので、不要不急の製品の買い控えが起きやすい。 ただし、金融緩和により名目金利を下げれば貯蓄意欲が下がって、需要低下に一定の歯止めは掛けられる。 しかし、名目金利は0%以下には下げられないから、強いデフレ化では金融緩和が限界に達することもある。 金融緩和が限界に達すれば、需要低下に歯止めを掛けることができない。 一方で、名目金利が下がり、かつ、投資先の破綻リスクが上がると、投資がハイリスク・ローリターン化するため、タンス預金が増えやすい。 投資が鈍れば、その分だけ経済活動は停滞する。

「関税を段階的に下げれば持続的に価格が下落するじゃないか」と言う意見があるかも知れないが、それは次のような理由でデフレとは区別すべき現象である。

  • 段階的に関税を下げるならば、支出と収入の時期のずれによる損得はその区切り時期でしか発生しない。年単位での関税切り下げならば、殆どの取引には影響しない。
  • 貿易自由化による安い輸入品への切り替えによる価格低下は、国内消費者の購買力とは連動しない。
  • 国内消費者の購買力低下を伴わない限り、価格低下があっても不動産価格は低下しないので、保有資産の目減りはない。
  • 国内消費者の購買力低下を伴わない限り、投資先の破綻リスクが上がらない。

仮に、輸入自由化に伴って、競合する国内産品の価格と販売量が低下したとすると、価格低下以上に国内消費者の購買力は低下する。 一方で、輸出自由化に伴って、輸出品の販売数量が増えれば、国内消費者の購買力は向上する。 輸出のプラスが輸入のマイナスを上回れば、国内消費者の購買力は上昇するので、国内景気への影響はプラスである。 また、適切な棲み分け戦略を取れば、輸入自由化品目だけを見ても国内景気への影響はプラスになることもある。 例えば、桜桃(さくらんぼ)は輸入自由化に伴い 国産、外国産が競合することなく、ともに消費量を伸ばした 過去に行われた輸入自由化等の影響評価 - 農林水産省 とあり、価格についても 自由化及び輸入解禁の影響が回避された 過去に行われた輸入自由化等の影響評価 - 農林水産省 ので輸入自由化後の国内総生産は増えている。 このケースでは、輸入自由化品目だけを見ても国内消費者の購買力は上昇しているので、国内景気への影響はプラスである。

以上のとおり、デフレは経済に様々な悪影響を及ぼすが、安い輸入品の導入による価格低下は、ここで挙げたような悪影響は及ぼさない。 つまり、経済への悪影響の違いから見ても、デフレと安い輸入品の導入による価格低下は全く違う現象である。

ポルトガルの労働者が以前は170人必要だったのに、160人しか必要なくなった、同様にイギリスでは220人だったのに、200人になった、ということは、残りの人たちは失業してしまった、ということなんだ。

第9章 自由貿易について考えよう1.貿易は自由なほうがいい? - サルでもわかるTPP

早稲田大学政治経済学術院の若田部昌澄教授によれば、 比較優位説のポイントは、思い切り絞り込んでしまうと、「多様性を生かすこと」である よりよく生きるための経済学入門第13講比較優位説と、それにまつわる誤解あれこれP.1 - 筑摩書房 から、比較優位によって失業が発生するという話は根本的におかしい。 若田部昌澄教授は次のページでウィリアム・バーンスタイン『華麗なる交易』(鬼澤忍訳、日本経済新聞社、2010年)の説明を挙げている。 大工仕事の得意な弁護士が自分で家の修理をするより金を払って大工に修理を頼んだ方が、節約できる修理費よりも弁護士業務で稼げる報酬の方が大きい。 当然、弁護士が自分で家の修理しなかったために仕事を請け負うことができた大工も儲かる。 この例では、弁護士が家の修理を大工に任せたために、大工は失業せずに済んだのである。 これが、 もっと言い換えるなら、この世に無駄な人間も、無駄な国もないということ よりよく生きるための経済学入門第13講比較優位説と、それにまつわる誤解あれこれP.1 - 筑摩書房 である。

この例のポルトガルの10人とイギリスの20人は生産余力であって失業者ではない。 生産余力を適切に雇用できないことが失業を発生させるのであって、生産余力の存在が失業を発生させるわけではない。 生産体制の変化に応じた人員の再配置が遅れることにより一時的に失業者が増加する可能性はあるが、適切な雇用対策を行うことで最終的な理想型へソフトランディングさせられる。

事実、既に説明した通り、NAFTAの事例では、加盟三国の何れの国でも失業率は悪化していない。 以上のとおり、比較優位で失業が増えるなどとは、理論とも現実とも一致しない戯言である。 日本大学大学院総合科学研究科の安藤至大准教授に言わせれば、むしろ、逆であり、 失業が発生している時には、得意分野に特化して交換するといった取引が成立しない 誰にでも出番がある社会を実現するために - SYNODOS JOURNAL 、すなわち、比較優位が成り立つ前提状態が崩れたときに失業が発生するのである。 安藤至大准教授によれば、比較優位は次の前提を全て満足する時にのみ成り立つ。

  1. 仕事の絶対量が足りている(景気が良い)
  2. 仕事を切り分けることが可能
  3. 最終的な消費量のみが関心事

このうち、TPPに関係するのは1番だけであろう。 つまり、失業を減らすには、景気を良くすること、すなわち、GDPを上げることが重要なのである。

これが貿易というものの本質だ。 貿易によって、富は貿易商の出身国に一方的に流れ込む。 貿易商は先進国の人間である場合がほとんどだ。 だから、貿易によって、先進国は一方的に儲かり、発展途上国は一方的に収奪され、さらに貧しくなっていく。

第9章 自由貿易について考えよう2.貿易によるお金の流れ - サルでもわかるTPP

早稲田大学政治経済学術院の若田部昌澄教授によれば、 加入国のGDPが小さいとか技術力が低いとか外需依存的だとかいったことは、比較優位説が成立することとは関係がない よりよく生きるための経済学入門第13講比較優位説と、それにまつわる誤解あれこれP.2 - 筑摩書房 そうだ。

仮に、「先進国は一方的に儲か」ることが事実なら、少なくとも、先進国である日本には自由貿易に反対する理由はない。 「国が自国民や自国の企業の利益を守るのは当然のこと」で「それこそが国の役目」であるなら、日本政府は積極的に自由貿易を進めるべきとなる。 それとも、日本が発展途上国だとでも言うつもりだろうか。

発信者について 

ちなみに、サルでもわかるTPP@ルナ・オーガニック・インスティテュートを書いている人の正体を暴いてみると面白い。

あるいは、病院で使われる抗がん剤。 「ガン治療は地獄行きの超特急。ガン検診はその改札口」 という評論家もいるほど、患者はその副作用に苦しみます。 患者は高いお金を払って、自らの体を蝕む「治療」を受け、副作用に死ぬほど苦しみ、 そして結局ガンも治らずに、死んでゆく……。 そして儲かるのは医者と製薬会社ばかり。 医者と製薬会社にとっては、ガン検診は搾取対象を着実にハントできる手段なのです。

ルナ・オーガニック・インスティテュートが原発問題に取り組む理由

「患者はその副作用に苦しみます」なんて何時の時代の話をしているのだろうか。 今日では抗がん剤の副作用対策は進んでおり、余程の藪医者でもなければ、患者が副作用に苦しむことは考えられない。 また、生存期間の延長や生活の質の改善 「船瀬俊介に殺される~「抗ガン剤で殺される!」批判~ - NATROMの日記 を無視して「自らの体を蝕む」とは根拠のない医学批判である。

本当は食事だけでガンを治した人もたくさんいるのですが、 大手のマスコミはそうした真実を決して報道しようとはしません。 そんな真実が人々に知れ渡ったら、医者や製薬会社の商売が成り立たなくなってしまうからです。

もともとマクロビオティックを創始した桜沢如一は、食事によって人の心を平和にし、 それによって世界平和を実現することを最終的な目標としていました。

ルナ・オーガニック・インスティテュートが原発問題に取り組む理由

「食事だけでガンを治した人もたくさんいる」は、「食事だけでガンを治した」とする嘘や勘違いの体験談の集大成でしかない。 玄米菜食につとめ早期ガンを退縮させた 食事療法を中心に体質改善に努め、再発なし 「助かる確率は3万人に1人?「いずみの会」の体験談 - NATROMの日記 とする体験談が、実は、 玄米菜食につとめ早期ガンを3年後に進行胃ガンまで育て、摘出手術を受け 「助かる確率は3万人に1人?「いずみの会」の体験談 - NATROMの日記 た事例もある。 この事例では K先生にあやうく殺されかけ 「助かる確率は3万人に1人?「いずみの会」の体験談 - NATROMの日記 たにも関わらず、K先生に勧められた玄米菜食を信じたまま疑っていない。

マクロビオティックの科学的評価は 有効性については、きちんとした根拠はない。けれども、安全性については、重大な危険はない。だから、がん患者がその利用を望むのであれば、あえて否定せずに容認する。 代替療法(健康食品やサプリメント) - がん情報サービス である。 「食事だけでガンを治した人もたくさんいる」などという事実は世界的に全く認められていない。

このように陰謀論を妄想し、根拠もなく主流を批判し、インチキ療法を勧める人にまともな判断力など期待できない。 がん患者の治療機会を奪うデマを平然と流布するなど、品性下劣にもほどがある。 この人物に比べれば、中野剛志准教授らなどのデマは、他人の命を奪わない分だけ、まだ可愛いほうである。 他人の命を弄んでも何とも思わないような人だからこそ、TPPに関するデマも平然と流布できるのだろう。


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