人命・環境保護
中立かつ客観原則
ここでは中立的な立場で事実関係を検証する。 賛成か反対かという結論は先に立てず、現実に起きた出来事、確実に起き得ること、一定程度の期待値を示す根拠のあることを中立かつ客観的に検証する。 可能性レベルの物事を論じるためにも、無視できない可能性があることを示す根拠を重視し、根拠のない当てずっぽうや思い込みや伝聞等の不確かな情報は、それが妄想に過ぎないことを示した上で門前払いとする。 賛成論でも間違いは間違いと指摘するし、それは反対論でも同じである。 ここでは賛成論にも反対論にも与しない。
TPP総論
長期的視野では話は別だが、短期的視野で見ればTPPに参加するかしないかは大きな問題ではない。 それよりも、TPPとは全く無関係な混合診療完全解禁がもたらす患者の治療機会喪失の危険性やイレッサ訴訟の行く末によるドラッグラグ・未承認薬問題の悪化の方が、遥かに大きな問題であろう。 だから、TPPよりも重要な争点において国民に不利益をもたらす政策を党員に強要する日本維新の会は落選運動の対象とせざるを得ない。 混合診療の完全解禁を公約とする日本維新の会およびみんなの党には一切の主導権を握らせてはならない。 そのためには、これらの党に対する落選運動が必要なだけでなく、与党とこれらの党との連携も絶対に阻止しなければならない。 具体的運動の詳細は自民党への抗議方法を見てもらいたい。
人命・環境保護
例えば、WTO(GATT)では「人、動物又は植物の生命又は健康の保護のために必要な措置」を認めている。
第二十条一般的例外
この協定の規定は、締約国が次のいずれかの措置を採用すること又は実施することを妨げるものと解してはならない。 ただし、それらの措置を、同様の条件の下にある諸国の間において任意の若しくは正当と認められない差別待遇の手段となるような方法で、又は国際貿易の偽装された制限となるような方法で、適用しないことを条件とする。
(a)公徳の保護のために必要な措置
(b)人、動物又は植物の生命又は健康の保護のために必要な措置
WTO協定付属協定の衛生植物検疫措置の適用に関する協定第2条第2項では原則として「十分な科学的証拠」を必要と規定しつつも、科学的証拠が不十分な場合の例外として第5条第7項に基づく場合の措置も認めている。
加盟国は、関連する科学的証拠が不十分な場合には、関連国際機関から得られる情報及び他の加盟国が適用している衛生植物検疫措置から得られる情報を含む入手可能な適切な情報に基づき、暫定的に衛生植物検疫措置を採用することができる。そのような状況において、加盟国は、一層客観的な危険性の評価のために必要な追加の情報を得るよう努めるものとし、また、適当な期間内に当該衛生植物検疫措置を再検討する。
北米自由貿易協定(NAFTA)を含む環境省が調べた5つの協定では、次のような環境規定が設けられている。
次に、NAFTA、EU-メキシコ、EU-チリ、米-ヨルダン、日-シンガポールの5協定における環境関連規定について整理した。5協定における環境関連規定を簡単に整理すると、その要点は以下のようにまとめられる。
①目的の一つに環境保護や持続可能な開発の推進を位置付けている。 いくつかの協定において、その前文や目的規定において環境保護や持続可能な開発の推進が位置付けられている。
②一般的例外において環境措置へ言及している。 商品の自由移動、サービス貿易、政府調達などについて規定している章の例外規定として、GATT第20条と同様の規定を盛り込んだり、「環境の保全のために適当な措置を制限するものではない」といった規定が置かれたりしている。 なお、NAFTA及び米国-ヨルダン貿易自由協定では、単にGATT第20条と同様の規定を盛り込むだけでなく、GATT第20条についての解釈に関し両国間で合意する内容も含まれている。
③環境問題を取り扱う組織を設置している。 NAFTAでは、環境協力に関する補完協定(NAAEC)に基づき、環境協力に関する北米評議会(NACEC)が設置された。 また、米国-ヨルダン貿易自由協定では、環境技術協力及び選ばれた環境技術協力プログラムに関する共同宣言に基づき、環境技術協力に関する合同フォーラムが設置されている。
④国際的な環境義務との関係に言及している。 NAFTAでは、NAFTA規定と環境保全条約における貿易義務との間で不一致が生じた場合の取り扱いについて規定している。 加盟国が課せられている義務と同等で効果的、合理的な他の手段を選択できる場合は、その不一致が最も小さい代替手段をとるべきとされている。
⑤環境技術協力に関する規定がある。 EU-メキシコ貿易自由協定(ただし、EU-メキシコ経済パートナーシップ及び政治協議を確立する協定)及びEU-チリ貿易自由協定では、経済協力に関するタイトルの中で、環境協力に関する規定が置かれている。 また、NAFTA及び米国-ヨルダン貿易自由協定では、それぞれ補完協定あるいは共同宣言において、環境技術協力に関する規定が位置付けられている。
⑥環境基準・規制の緩和の抑制。 NAFTAでは、人間・動物・植物の生命や健康の保護の目的で、国際標準よりも厳しい措置を採用・維持・適用することを認める規定、及び、投資促進のためとして健康、安全及び環境に関する措置を緩和するのは不適当とする規定が置かれている。 また、NAFTAの補完協定である環境協力に関する補完協定(NAAEC)と米国-ヨルダン貿易自由協定では、高い水準の環境保護を規定し、効果的に執行する義務を確認している(貿易を奨励する手段として自国の環境法及び規制を緩和しないことの確認)。 加えて、NAAECでは、環境措置を効果的に執行する義務について、他の当事国が当該当事国に対して質す権利を確認していることが特徴的である。
経済連携協定(EPA)/貿易自由協定(FTA)に対する環境影響評価手法に関するガイドライン - 環境省P.10,11,12
ISD条項に基づく国際投資仲裁の判断でも、人命・環境保護規制は正当な規制と認めている。
(1)S.D.Meyers事件
この事件では、カナダのPCB廃棄物を米国で処理する形で事業を営んでいた米系廃棄事業企業が、カナダの廃棄物輸出禁止措置によって事業停止のやむなきに至ったことが、カナダで廃棄物処理を行っているカナダ企業との関係でNAFTA1102条違反に当たるかどうかが問題になった。
この判断の前提として、仲裁廷が次のように述べた。
The Tribunal considers that the interpretation of the phrase “like circumstances” in Article 1102 must take into account the general principles that emerge from the legal context of the NAFTA, including both its concern with the environment and the need to avoid trade distortions that are not justified by environmental concerns.(para.250) (仲裁定は、第1102条における“like circumstances”のフレーズの解釈として、環境と環境問題によって正当化されない貿易の歪みの両方の懸念を含むNAFTAの法的文脈の一般的原則を考慮する必要があるとしている。)
要は、内国民待遇規定の解釈に当たっては、NAFTAの法的文脈を考慮する必要があるということである。
(a) SD Myers Inc v Canada (2000)
カナダからPCB廃棄物を輸入し米国内で処理事業を行なっていたSDMyers社は、カナダ政府によるPCB輸出禁止措置によって事業の継続が出来なかった。 SDMyers社は、この措置をカナダ内のPCBの処理事業者を保護する目的と効果を持つものであるとして内国民待遇違反を申し立てた。
この申立てに対して、本件仲裁廷は、PCBの処理事業をめぐってSDMyers社とカナダ企業が競争関係にあるとして、両者が「同様の状況にある」と判断した。 但し、本件仲裁廷は、1112条に基づく「同様の状況にある」企業/投資家の導出に際しては、環境への配慮や貿易歪曲的な効果の回避といったNAFTAの法的文脈を考慮する必要があるとも述べている。
特に、考慮すべき環境への配慮については、以下のように、NAFTA環境補助協定に確認された①国家はより高水準の環境保護を設定する権限を有する、②国家は貿易歪曲的を避けるべきである、③環境保護と経済発展の両立性を図る、を挙げており、環境措置の自体の正当性は否定されておらず、他の考慮すべき要素である貿易歪曲的な効果の考慮の不足から内国民待遇の違反が認定されたものであった。
NAFTAでは、NAFTA規定と環境保全条約における貿易義務との間で不一致が生じた場合の取り扱いについて規定している。 加盟国が課せられている義務と同等で効果的、合理的な他の手段を選択できる場合は、その不一致が最も小さい代替手段をとるべきとされている。
NAFTAでは、人間・動物・植物の生命や健康の保護の目的で、国際標準よりも厳しい措置を採用・維持・適用することを認める規定、及び、投資促進のためとして健康、安全及び環境に関する措置を緩和するのは不適当とする規定が置かれている。 また、NAFTAの補完協定である環境協力に関する補完協定(NAAEC)と米国-ヨルダン貿易自由協定では、高い水準の環境保護を規定し、効果的に執行する義務を確認している(貿易を奨励する手段として自国の環境法及び規制を緩和しないことの確認)。
第2の事例として、カナダ・S.D.Myers(EthylCorporation v. Canada)事件がある。 本事例は、アメリカに本拠を置く米国私企業(ないし同企業に対する投資家、S.D.Myers)とカナダ政府との間の収用行為の合法性に関する事件である。 メイヤーズは、カナダにて廃棄物処理の事業を行っており、廃棄物を米国国内に輸送しリサイクルする構想を立てていた。 同氏はカナダ政府と提携し、技術提携を含む出資を行いつつ事業を展開していたが、カナダ政府は対象有害廃棄物(PCBs)の環境上の理由により、米国への輸出を禁止(後に撤回)した。 メイヤーズは、カナダ政府の行為はNAFTA第11章に違反するものであるとして、仲裁裁判所に請求を行った。 判決ではメイヤーズの主張が有効であるものとされ、賠償を支払われるべきであるとされた。 NAFTA関連規定の解釈に関して、まず裁判所は、第11章が次の原則に従って解釈されるべきであるとした。 すなわち、①当事国は高い環境保護レベルを設定する権利を有していること、②そうした措置を環境の偽装された制限となるように利用してはならないこと、③環境保護と経済発展は相互補完関係にあるべきこと、の三点を示したのである。 加えて、裁判所はこれらの原則の解釈として、可能である最も最低限の規制措置(the least trade-restrictive measures possible)をとる義務を各国が負うものであるとした。
経済連携協定(EPA)/貿易自由協定(FTA)に対する環境影響評価手法に関するガイドライン - 環境省P.11,12,16
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