人は何故デマを拡散するのか

デマを拡散する人々 

悪意でデマを流している人よりも、善意でそのデマを拡散している人の方が圧倒的に多いと思われる。 では、何故、善意でデマを拡散するのか。 それは、その人の姿勢に次のような問題点があるからである。

  • 中途半端な善意
  • 社会に対する責任感の欠如
  • 情報検証能力の欠如
  • それら全てに無自覚

本気の善意であるなら、自らの行為が社会の役に立つよう、かつ、自らの行為が社会の害にならないよう気をつけなければならない。 だから、拡散する前に情報の真偽の裏付けを取ることが重要である。 デマを拡散するなんて以ての外である。

しかし、中途半端な善意で行動する人は、決して、社会に対する責任と向き合わない。 いい加減なことを言っても、友達同士の会話なら許されるが、不特定多数への情報発信では許されない。 それを理解しない人は、友達同士の会話の延長線の感覚で、安易に不特定多数へ情報発信して、名誉毀損で訴えられたりするのである。 不特定多数への情報発信に伴う社会的責任を理解していないから、情報の真偽の裏付けも取らずに安易にデマを拡散する。 そして、そうした迂闊な行為を反省することもない。

情報の真偽の裏付けも取る必要性を理解していない人ほど、情報検証能力が低い。 情報検証能力が高い人は、真偽の裏付けを取ってから判断する。 一方で、情報検証能力が低い人は、信じたいことは安易に信じるが、信じたくないことは頑なに信じない。 そして、信じたいと思うためには、そこに金銭等の明確な利益が生じる必要はなく、その人の感情を満足するだけで事足りる。 安っぽい個人の正義感を振りかざして集団で悪を糾弾する機会を待ち望んでいる人は、分かりやすい悪の話を安易に信じる。 待ち望んだ機会が現れたのだから、その機会が嘘であるとは信じたくない。 だから、安易にその話を信じるのである。 しかし、本当に善意のある人なら、誰も被害に合わないことを望むはずである。 本当に善意のある人なら、この話が嘘であることを願うだろう。 全く逆のことを願うなら、その人の善意は真っ赤な偽物である。

ダニング=クルーガー効果により、能力の低い人ほど、自己を過大評価する。 だから、善意でデマを拡散する人たちは、自分の姿勢に問題があることを一切自覚しない。

有名な事例 

「50人分の料理を用意したら、ドタキャンされた。 国際信州学院大学の教職員の皆さん、二度と来ないでください」――「うどん屋」を自称するアカウントによるこんなTwitter投稿が5月13日夜から話題になり、「気の毒」などと同情が集まった。

実はこのうどん屋も大学も実在せず、巨大掲示板「5ちゃんねる」のユーザーたちによる創作。 架空の店舗のドタキャン問題が拡散・炎上したこの騒動について、「秀逸な釣りネタ」などと評価する声がある一方、「実際にドタキャンに苦しんでいる飲食店のことを思うと笑えない」「フェイクニュースで人をだますことは簡単だと証明する事例だ」などと批判したり心配したりする声も出ている。

うどん屋「ドタキャン受けた」とTwitter投稿 「気の毒」と拡散したが、店も加害者も架空 - ITmedia

このドタキャンが架空の話であることは今更言うまでもない。 しかし、真偽の裏付けも取らずに多数の人がこのドタキャンを真実として拡散した。 それは、何故か?

このドタキャンが本当であれば、「国際信州学院大学」という大きな組織が、小さな飲食店に被害を与えた事例となる。 これは、安っぽい個人の正義感を振りかざして集団で悪を糾弾したいと思う人からすれば、待ち望んでいた集団糾弾の機会である。 だから、その待ち望んだ機会が本当だと信じたい、言い換えれば、嘘だとは信じたくないから、疑うことなく安易に鵜呑みにしたのである。

そして、デマに加担して拡散した人は、自分が悪いことをしたという自覚が全くない。 それは、この情報がデマだと分かった後でも変わりない。 彼らからすれば、最初にデマを流した者が悪人であり、自分たちは騙された被害者だとしか考えない。 しかし、デマに加担して拡散した人は、その拡散情報の受け手に対しては立派な加害者である。 自分がデマに加担した責任と向き合い、デマに加担した原因と再発防止策を真剣に考えるべきである。

このドタキャンが架空の話であることは容易に見抜ける。 まず、飲食店なのに「蛞蝓(なめくじ)亭」などという名前があり得ない。 客の立場で考えたら、そんな名前の飲食店には入りたくないだろう。 国際信州学院大学についても調べてみれば、すぐに、フェイクだとわかる。 アクセス - 国際信州学院大学の所在地をGoogleマップ等などで確認すると、そこには何もない。 本学の歴史 - 国際信州学院大学なんて完全に笑わせに来ている。 以上の通り、普通の情報検証能力があれば、このドタキャンが嘘ネタであることが直ぐにわかる。

慎重な人なら、以上のことは説明するまでもなく当然のこととして理解している。 真偽を検証する能力がない人ほどやたらと情報を拡散したがるのである。 そして、そういう人に限って、自分は絶対に間違えないと信じている。

デマの実害 

以上のことは、次のような事例にも言える。

デマを拡散することの最大の実害は、真偽の判断に必要な情報が埋もれてしまうことにある。 ある物事のデマが拡散されると、その物事を示すキーワードで検索しても、拡散されたデマしか見つからなくなる。 拡散されたデマが検索の上位を埋め尽くしてしまい、証拠となる事実関係を示している情報を見つけることが困難となる。 真偽の検証結果を発信しようとする人たち、および、その情報を求める人たちにとって、これ以上の迷惑な行為はない。


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