ゲーム理論による戦争と平和
前書き
ゲーム理論をゲームに関する理論と誤解している人からは、このタイトルを見て不謹慎だと言われるかもしれない。 もちろん、ゲーム理論は、ゲームに関する理論ではない。 ゲーム理論は、数学的モデルをゲーム的手法を利用して分析する手法である。
交戦に着目
交戦するか否かの行動にのみ着目して結果を表にすると次のようになる。
攻撃 | 静観 | |
---|---|---|
攻撃 | 双方に比較的深刻な被害 | 片方に深刻な被害 |
静観 | 片方に深刻な被害 | 被害なし |
この表の特徴を箇条書きすると次のようになる。
- 双方が交戦を避けた場合、どちらにも被害は発生しない
- 一方が他方を攻撃し、他方は攻撃をしない場合、片方に深刻な被害が発生する
- 双方とも攻撃した場合、双方に被害が発生する。
尚、双方とも攻撃した場合は、単純に被害量は倍にはならない。 なぜなら、武力にも被害が生じ、かつ、攻撃だけでなく防衛にも戦力を割かなければならないからである。 双方の被害の平均は、双方攻撃が最大で、片方攻撃は双方攻撃よりやや小さく、双方静観が最小となる。 これは、まさしく、 囚人のジレンマ - Wikipedia が想定している状況と等しい。
では、自国の被害を最小にするにはどうすれば良いか。 相手国の行動が自国の行動に無関係に決まっている条件でなら、常に攻撃を選ぶことが最適戦術となる。 相手国が自国と全く同じ選択をする条件でなら、最適戦術はパレート最適と一致し、この場合は双方静観となる。
現代においては、攻撃を選ぶことは必ずしも特にはならないという認識を多くの国や人が持っている。 だから、現代では、大国間での戦争は滅多に起きないが、次のような条件下での戦争は起きている。
- 戦力差が極端に大きい
- 戦争被害よりも譲れないものがある
- 決死の覚悟が必要な状況となっている
- 冷静な判断力を欠いている
武装に着目
大国間の関係を想定し、双方の武装状況に着目して結果を表にすると次のようになる。
非武装 | 防衛目的武装(相手からの信用あり) | 防衛目的武装(相手からの信用無し) | 攻撃目的武装 | |
---|---|---|---|---|
非武装 | 絶対的平和 | 軍が暴走しなければ平和 | 片方に深刻な緊張状態 | 片方に深刻な被害 |
防衛目的武装(相手からの信用あり) | 軍が暴走しなければ平和 | 軍が暴走しなければ平和 | 緊張状態 | 一触即発 |
防衛目的武装(相手からの信用無し) | 片方に深刻な緊張状態 | 緊張状態 | 緊張状態 | 一触即発 |
攻撃目的武装 | 片方に深刻な被害 | 一触即発 | 一触即発 | 一触即発 |
尚、この表では、防衛目的としては、攻撃してきた相手に後手で反撃するケースと、攻撃してくる可能性の高い相手に先手をとって攻撃するケース(相手を信用していないケース)を区別していない。 また、攻撃してくる可能性としては、その時点で直接的な軍事的脅威であることと、将来的に軍事的脅威となる恐れがあることも区別していない。
絶対的平和のみを唯一の価値とし、その他はすべて無価値と考えるなら、最適戦術は双方武力放棄しかあり得ない。 そして、双方武装放棄を実現するためには、少なくとも、自国側は武力放棄しなければならない。 これは夢物語と言うしかないが、そのような極端な平和主義であれば武力放棄でしか平和は実現できないこととなる。
現実主義者なら、片方に深刻な被害が出る状況が、この中で最悪で、かつ、唯一他より突出した悪い結果であろう。 それに比べれば、他は大差がない。 強いて言えば、片方に深刻な緊張状態が生じることが、他よりかなり悪いと言えるが、それでも、片方に深刻な被害が出る状況よりは遥かにマシであろう。
もしも、相手国が武装し、かつ、攻撃の意思があることが分かっている条件なら、最適戦術は自国も武装する以外にあり得ない。 相手国が自国と全く同じ選択をする条件でなら、最適戦術はパレート最適と一致し、この場合は双方武力放棄となる。
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