TPPの手続

中立かつ客観原則 

ここでは中立的な立場で事実関係を検証する。 賛成か反対かという結論は先に立てず、現実に起きた出来事、確実に起き得ること、一定程度の期待値を示す根拠のあることを中立かつ客観的に検証する。 可能性レベルの物事を論じるためにも、無視できない可能性があることを示す根拠を重視し、根拠のない当てずっぽうや思い込みや伝聞等の不確かな情報は、それが妄想に過ぎないことを示した上で門前払いとする。 賛成論でも間違いは間違いと指摘するし、それは反対論でも同じである。 ここでは賛成論にも反対論にも与しない。

TPP総論 

長期的視野では話は別だが、短期的視野で見ればTPPに参加するかしないかは大きな問題ではない。 それよりも、TPPとは全く無関係な混合診療完全解禁がもたらす患者の治療機会喪失の危険性やイレッサ訴訟の行く末によるドラッグラグ・未承認薬問題の悪化の方が、遥かに大きな問題であろう。 だから、TPPよりも重要な争点において国民に不利益をもたらす政策を党員に強要する日本維新の会は落選運動の対象とせざるを得ない。 混合診療の完全解禁を公約とする日本維新の会およびみんなの党には一切の主導権を握らせてはならない。 そのためには、これらの党に対する落選運動が必要なだけでなく、与党とこれらの党との連携も絶対に阻止しなければならない。 具体的運動の詳細は自民党への抗議方法を見てもらいたい。

概要 

ここは サルでもわかるTPP@ルナ・オーガニック・インスティテュートサルでもわかるTPP@Project99% のデマを暴くページであるサルでもわかるTPP新サルでもわかるTPPの一部である。

脱退 

猿「TPPは一度交渉に参加したら脱退は相当に難しいのじゃ。」

サルでもわかるTPP第1章TPPって何?@Project99%

TPPの前身のP4協定のArticle 20.8には、 Any_Party_may_withdraw_from_this_Agreement. TRANS-PACIFIC STRATEGIC ECONOMIC PARTNERSHIP AGREEMENT ( 締約国は、この協定から脱退することができる TPP(P4協定)条文全文和訳第20章最終規定 - 慶應義塾大学渡邊頼純研究会2012 ) Such_withdrawal_shall_take_effect_upon_the_expiration_of_six_months_from_the_date_on_which_written_notice_of_withdrawal_is_received_by_the_Depositary. TRANS-PACIFIC STRATEGIC ECONOMIC PARTNERSHIP AGREEMENT ( これらの脱退は、寄託者が書面による脱退の通報を受領した日から6箇月を満了に効力を生ずる TPP(P4協定)条文全文和訳第20章最終規定 - 慶應義塾大学渡邊頼純研究会2012 ) とニュージーランド政府に書面で脱退を通報しさえすれば、半年後には自動的に脱退が認められることが明記されている。

条約法に関するウィーン条約(以下「ウィーン条約法条約」)では 「交渉国」とは、条約文の作成及び採択に参加した国をいう 「締約国」とは、条約(効力を生じているかいないかを問わない。)に拘束されることに同意した国をいう 「当事国」とは、条約に拘束されることに同意し、かつ、自国について条約の効力が生じている国をいう 条約法に関するウィーン条約 - 東京大学東洋文化研究所 と定義されているように、「交渉国」から「締約国」「当事国」となるためには、「条約に拘束されることに同意」することが必要である。 「交渉国」には「締約国」や「当事国」となる義務は課されていない。 同意方法としては 条約に拘束されることについての国の同意は、署名、条約を構成する文書の交換、批准、受諾、承認若しくは加入により又は合意がある場合には他の方法により表明することができる 条約法に関するウィーン条約 - 東京大学東洋文化研究所 と定められている。

尚、ウィーン条約法条約では いずれの国も、条約に拘束されることについての同意が条約を締結する権能に関する国内法の規定に違反して表明されたという事実を、当該同意を無効にする根拠として援用することができない。ただし、違反が明白でありかつ基本的な重要性を有する国内法の規則に係るものである場合は、この限りでない 条約法に関するウィーン条約 - 東京大学東洋文化研究所 として、「条約を締結する権能に関する国内法の規定」に反して条約に拘束されることについての同意を表明した場合は、「違反が明白でありかつ基本的な重要性を有する国内法の規則に係るものである場合」であれば、その同意は無効となる。 日本は 日本国憲法第73条第1項第3号 事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要 としているので、国会の承認がない条約への同意は「基本的な重要性を有する国内法の規則」に対する「違反が明白」であるので国際法的に無効できる。

そもそも、締約後も脱退できるのに交渉中に離脱できないなんてことはあり得ないし、途中離脱できない国際慣例などもあるわけがない。 不当な理由で離脱すれば国際的信用失墜もあり得るだろうが、正当な理由に基づいて離脱するなら国際的信用失墜はあり得ない。 離脱によって国際的信用失墜が発生するならば、言い替えると、国際的信用問題で離脱できないならば、それは、その離脱理由が不当だからである。 だから、ネット上で展開されている「途中で離脱できないから、交渉に参加してしまったら、○○の問題は回避できない」という主張は成立しない。 何故なら、その問題が反対理由として正当であるなら、当然、離脱は認められるからである。 離脱が認められないなら、それは、その問題が反対理由として不当だからであり、その理由によるTPP反対論が成り立っていないのである。

デマを流す人は「○○(TPP賛成派または交渉国)だって離脱できないって言ってるじゃないか」と良く言うのだが、それは話の前提が全く違うからである。 TPP賛成派または交渉国の離脱不能論は、日本の一部の人間が特定分野での交渉を拒絶している姿勢に対する牽制である。 国際交渉はお互いにとって利益になるように行なうものであるという前提に立ち、何処かの国が一方的に搾取される内容では交渉が決裂するに決まっているのだから、少なくともそうはならない程度の譲歩は必要だという前提である。 実際には適切な譲歩ができなくて決裂にまで至るケースもシバシバあるが、その場合も、初めから離脱を前提として交渉しているわけではない。 だから、お互いに納得できる譲歩を引き出すまで最期まで粘り強く交渉する前提では離脱不可能論になる(=交渉開始時の姿勢論)。

一方で、離脱可能論は、デマと同じ「日本が一方的に搾取される」前提において論じている。 最期まで交渉して譲歩を引き出す余地がなくなり、かつ、自国に一方的に不利な内容となった場合を想定すれば、離脱可能論になるのだ(=交渉決裂時の結果論)。 このように、前提が180°違うのだから、結論も180°違うのは当然なのだ。 「日本が一方的に搾取される」前提においても離脱不可能だと言っているのはデマを流している人だけである。 つまり、デマを流す人は、交渉決裂時の前提に、交渉開始時の結論をくっつけて、インチキな文章をこじつけているだけなのだ。

前提 結論
交渉開始時お互いに粘り強く譲歩を引き出す初めから離脱を前提とすべきではない
交渉決裂時自国に一方的に不利に終わった交渉の余地がないなら離脱できる

TPP交渉においては、どのような要求も認められるが、特定の“聖域”死守を参加の絶対条件にすることは認められていない。 こうしたTPPの基本原則は、それがプラス・サムだからであり、全ての参加国の共通の利益になるからである。 だから、そのTPPの基本原則を批判することは見当違いである。 “聖域”死守を絶対条件とすることは、その“聖域”については自国の要求を丸呑みしろと言っているのであり、それは交渉すること自体を一切認めないと言うに等しい。 他の交渉参加国が全分野を交渉対象にすることに合意しているのだから、日本だけが交渉除外項目を要求することはできない。 どうしても“聖域”を死守したいならば、交渉によって譲歩を引き出して“聖域”を認めさせるべきであり、交渉除外項目とすべきではないのである。 国際交渉においては、自国の押す所と引く所、相手国の押す所と引く所、それら全体のバランスが問われるのである。 自国の押す所と相手国の引く所ばかりを要求して、自国の引く所や相手国の押す所を認めないのは我が侭である。 言い替えると、参加絶対条件としての“聖域”は認められないが、交渉相手国に見返りを与えることによって死守する“聖域”は認められる。 しかし、“聖域”死守を最優先とすれば、当然、それは弱味になり、他の国は際限のない見返りを要求してくるだろう。 “聖域”のために際限のない見返りを与えれば、結果として、国益を損なうことになる。 国益を損なうのでは加入する意味はないから、“聖域”は国益を損なわない範囲で死守する必要がある。 それ故に、どうしても“聖域”を死守したければ、「守れなくても止むなし」という姿勢を見せて交渉に挑まなければならない。 以上をまとめると、“聖域”を死守すると宣言することは、それは参加絶対条件を示すこと以外にはあり得ない。 参加絶対条件を示すことは、交渉除外項目を要求することであり、それはTPPにおいては認められていない。

そして、“聖域”を死守できたかどうかと、交渉結果全体が国益に叶うかどうかは別問題である。 さらに言えば、平和的国際交渉において、いずれの参加国においても、国益に反する交渉結果はあり得ない。 何故ならば、交渉結果が国益に反するなら、当然、正当な離脱理由になるからである。 そして、プラス・サムになる前提であれば、正当な離脱をしようとする国に対しては、多少の国益を与えてでも引き止めた方が、全ての参加国にとって得になる。 ゼロ・サムかマイナス・サムでは、どのようにしても正当な離脱が発生することは避けようがなく、多少の国益を与えてまで引き止める意味はないため、最終合意を形成することは不可能となる。 だから、平和的国際交渉において、ゼロ・サムかマイナス・サムはあり得ない。 よって、平和的国際交渉においては、当然、全ての参加国にとって国益に叶うような交渉結果となるように、交渉を行なうのである。 常識として、平和的国際交渉において特定の国が一方的に搾取される交渉結果となることはあり得ないのである。 つまり、国益を無視した“聖域”問題だけで離脱することを前提とした交渉をするなと言っているのであって、一方的に搾取されることを理由とした離脱をするなと言っているわけではないのだ。

わが国が未批准の国際条約一覧 - 国立国会図書館調査及び立法考査局によれば、2009年1月現在で日本が未批准の条約は271ある。 うち、次の条約について日本は署名しながら批准していない。

  • 障害者の権利に関する条約
  • 国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約
  • 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する銃器並びにその部品及び構成部分並びに弾薬の不正な製造及び取引の防止に関する議定書
  • 偽造通貨防止のための国際条約及び議定書及び選択議定書
  • クラスター弾に関する条約

江田憲司衆議院議員は 気候変動枠組条約では、米国が「京都議定書」を離脱したことが記憶に新しい 豪州も当初、離脱していたが、政権交代後方針を変更し参加した この他、90カ国前後が未だ、この議定書に署名していない 国際条約や協定の世界では、それぞれの国が、大国でも小国でも、先進国でも発展途上国でも、その国益に照らし、参加、署名、批准、合意せず、離脱等の判断を行っている 交渉をはじめた時から最後の合意案がわかっている交渉などない その途中で、どうしても国益に沿わない結末がみえてきた時には、そこでやむをえない「決裂」か、「離脱」か、政治が決断せざるを得ない それが国際交渉というものだ TPPへの疑問、懸念に答える・・・③一旦TPP交渉に入ると離脱できない - 日々是好日 と具体的な例を挙げて、交渉中の途中離脱が国際的な日常茶飯事であるとしている。

猿「しかし最悪の場合交渉に参加し、政府が話を決めてしまっても、国会の批准がなければTPPは発効しないのじゃ。」

サルでもわかるTPP第1章TPPって何?@Project99%

あれっ、「脱退は相当に難しい」と言ってなかったっけ? ウィーン条約法条約、もしくは、加入対象の協定の規定に沿って、締約国となるために「批准」を必要とするなら、「批准」しなければいつでも事実上の離脱できるということである。 これでは、言っていることが支離滅裂であろう。

秘匿 

昨年末になって、

  • 交渉内容を公表しない合意がある
  • 交渉文書は協定発効後4年間は秘匿される

ということが、ニュージーランドのTPP首席交渉官マーク・シンクレア氏によって明らかになった。でも、これって、おかしくないかい? そんなに秘密にしなくちゃいけないことって、一体どんなことだろう?

よっぽどひどい内容で、公開したら参加国の国民がみんな反対するから隠している、としか思えないよね?

サルでもわかるTPP第1章TPPって何?@Project99%

でも、これって、おかしくないかい? 「TPP首席交渉官マーク・シンクレア氏」は「交渉内容を公表しない合意がある」ことを公表したことになるよ。 このカラクリを暴くと、4年間秘匿されるのは交渉中のテキストであって、合意内容ではない。

確かに、TPP Talk - NA Ministry of Foreign Affairs and TradeContent of confidentiality letters(2011.11.29)には、facilitate candid and productive negotiations(率直かつ生産的な交渉を促進する)ために、normal negotiating practice(通常の交渉慣行)として、the negotiating texts(交渉テキスト)、proposals of each Government(各国の提案)、accompanying explanatory material(添付資料)、emails related to the substance of the negotiations(交渉の内容に関連した電子メール)、other information exchanged in the context of the negotiations(交渉場面で交換される他の情報)について4年間の守秘義務を課すthe model version of that letterの内容に合意したと書かれている。 それは、第180回国会衆議院本会議第3号 - 衆議院第180回国会衆議院農林水産委員会第11号 - 衆議院で野田総理(当時)等も認めた事実である。 しかし、合意済事項についての守秘義務が課されたとは一言も書かれていない。 それに先立って、同じTPP Talk - NA Ministry of Foreign Affairs and TradeDialogue with UN Special Rapporteur(2011.10.3)Our responseには、final TPP textは批准前の議会審議の時には公表できるとも書かれている。 この合意の原案はオリジナルのP4協定の時にニュージーランドに寄託されたものとされているので、2011年10月以降になって唐突に出て来たものではない。 よって、初めから、合意事項は守秘義務の対象外なのである。 また、 Trans-Pacific Partnership Papers Remain Secret for Four Years after Deal - New Zealand Not For Sale によれば、“except the final text”としてfinal textは秘匿対象外とされている。 この部分はマーク・シンクレア氏の口頭発言内容らしいが確実な裏は取れていない。 いずれにせよ、New Zealand Not For SaleはTPPに反対する団体なので、反対論に不利になる嘘をつく理由はないから、final textが秘匿対象外とする話を疑う理由はないだろう。

もしも、秘匿対象に合意事項まで含むなら、「TPP首席交渉官マーク・シンクレア氏」は、協定の内容も固まらないうちに早々に合意違反を犯したことになる。 しかも、インタビューでポロッと漏らしてしまっただけでなく、「ニュージーランド外務貿易省のホームページ」に堂々と掲載しているのだ。 もしも、合意事項まで公表してはならないと言うなら、これは重大な合意違反のはずであり、大きな国際問題になるはずである。 しかし、ニュージーランドがTPP交渉の合意事項を発表したことが国際問題となった事実は存在しない。 それは、“final TPP text”が事前に公表されると明記してあるように、合意事項を公表するなという合意など存在しないからだ。 つまり、締結の前に、国民は事前に合意事項の内容を知ることができるのである。 だからこそ、ニュージーランドはTPP Talk - NA Ministry of Foreign Affairs and Tradeで交渉の経過を国民に説明できるのである。

条約交渉の過程での情報の有無は、実は、あまり大した問題ではない。 というのも、条約交渉は白紙委任とは違うからである。 条約締結は国会承認が条件であるので、承認される余地のない最終議定書はまず出て来ない。 「まず」としたのは、とんでもない馬鹿が交渉した場合に限れば、可能性として否定できないからである。 承認される余地のない最終議定書を提示しても、それは、交渉に掛けた時間と手間を無駄にするだけの無意味な行動である。 理性的な判断ができる人間ならば、そうした無駄なことは避けようとする。 一方で、それが無駄だと理解できない馬鹿ならば、現実と空想の区別のつかない馬鹿ならば、無駄なことも平気でする。 しかし、現実には、そこまで酷い馬鹿が国の交渉役に選ばれることはないので、そうした無意味な行動は取られない。 だから、承認の見込みがない最終議定書が出てくる余地はないのである。 見込み違いは起こる可能性があるが、国民の総スカンを食らうことが分かり切った最終議定書はあり得ない。

これに対して、「与党は党議拘束」を掛ければ何でもできるから国益に反する条約も通すことができる」と主張する者もいる。 しかし、政治家は自分の議席の維持を最優先するのであり、党の方針に従うのは従った方が自分の議席を守れると判断した時だけである。 何故ならば、議員の議席が国民の一票で支えられている以上、政治家は有権者の意志を無視することはできないからである。 だから、党の方針よりも、有権者の意志が強い場合は、政治家は、有権者の意志を優先する。 有権者の意志が強い場合には、党議拘束など掛けても全く意味がない。 その好例として郵政国会が挙げられる。 衆議院では、自民党から51人(反対37、棄権・欠席14)の造反が出て、わずか5票差で郵政民営化法案を可決した。 一方、参議院では、自民党から30人(反対22、棄権・欠席8)の造反が出て、郵政民営化法案が否決された。 その後の郵政解散による第44回衆議院議員総選挙では、郵政民営化問題が主要な争点となり、与野党の得票はほぼ半々であった。 このように国民の半数程度が反対する法案であっても、党議拘束は簡単に破られる。 よって、国民の関心が高く、かつ、国益を損なうような最終議定書であれば、当然、党議拘束などは簡単に破られよう。 その結果、国会承認前に最終議定書が提示されさえすれば、国益に反することは起こり得ない。 また、最終議定書が提示されないままの国会承認もあり得ない。

参考 

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