オクラホマの人工地震

はじめに 

このページは科学的人工地震研究の一部である。 また、CCS地震原因説にて、この理論を2004年の新潟県中越地震(M7.2)や2018年の北海道胆振東部地震(M6.7)に当てはめた検証を行う。

他の人工地震と同様、本件も、近距離で中規模以下の地震を誘発しているが、遠距離や大規模の地震は引き起こしていない。

Oklahoma Geological Surveyによる報告 

オクラホマ地震の回数と注水量

The Oklahoma Geological Survey Statewide Seismic Network - University of Oklahoma

見ての通り、注水量を増やすと地震回数が増え、注水量を減らすと地震回数が減ることから、明らかに注水量と地震の発生回数には相関関係が見て取れる。 とくに50(million bbl/month)辺りを境に急激に地震回数が変化している。 尚、2011年11月の地震回数が注水量に比して突出して多いが、これは2011年11月5日〜6日に発生したM5クラスの地震が二次的に誘発した地震と考えれば辻褄が合う。

Austin Holland, Amberlee Darold, G.Randy Kellerによる報告 

オクラホマ地震の震源と注水井

  • 99% of all earthquakes 2010-7/2013 occur within 15 km of a well (2010年7月〜2013年の全地震の99%は井戸から15 km以内で発生)
  • 85% of Oklahoma’s area is within 15 km of a well (オクラホマ州の領域の85%は井戸から15 km以内)
  • Have to move beyond simple spatial correlations (単純な空間相関以遠に移動する場合がある)

Recent Earthquakes:Town Hall Meeting, June 26, 2014 - University of Oklahoma

見ての通り、全震源の99%は注水井から15 km以内であり、注水井と震源の空間的相関関係が見て取れる。 面白いことに、震源の分布よりも注水井の分布の方が広範囲である。

オクラホマ地震の増加は検知能力の向上によるものではない 

オクラホマの地震活動 - 最近の地震(ときどき火山も)の解説(石川有三)の情報を元にオクラホマの地震の増加の主原因が検知能力の向上のせいであるとする明らかに誤った分析をしている人がいるので、その誤りを丁寧に解説する。 尚、ひととくりに検知能力の向上と言ってしまうと分かりにくいが、以下の二つを明確に区別する必要がある。

  • 検知可能な規模の閾値の変化
  • 検知しにくい空白地帯の解消

また、わかりやすいように、引用元の図に補助線を引いてみた。

カリフォルニアの規模別地震の推移

まず、カリフォルニアの規模別地震の推移を見ると、2008年頃からM2〜M3の件数が増え、2013年頃からM0〜M2の地震が増えているが、M3以上の地震の件数に大きな変動は見られない。 規模の閾値が大きく変わった点では「全域で検知能力が格段と良くなっています」と言えるが、この図からは、検知しにくい空白地帯の存在は窺えない。 とくに、M3以上の検知の空白地帯が存在し、かつ、「全域で検知能力が格段と良くなっています」なら、M3以上の検知件数が急増していなければおかしい。 実際には、M3以上の検知件数が急増していないことから、「全域で検知能力が格段と良くなっています」以前も以後も、M3以上の検知の空白地帯は存在しないと考えるべきであろう。

カリフォルニア地震の分布 カリフォルニア地震の時空間図

また、カリフォルニア地震の時空間図からも、2013年頃から件数が急増していることが読み取れる。 2013年以降の件数の多い所(色の濃い所)はそれ以前にもそれなりの件数があり、2013年以降の件数が少ない所(色の少ない所)はそれ以前の件数も比較的少ない。 以上のことから、カリフォルニア全域での地震をムラなく検知できるように満遍なく「全域で検知能力が格段と良くなっています」ことが伺える。

オクラホマの規模別地震の推移

一方で、オクラホマの規模別地震の推移を見ると、2008年頃から徐々に件数が増加する傾向が見られるが、カリフォルニアのような特定の時期を境にした急激な件数の増加は認められない。 これは、もちろん、オクラホマで「全域で検知能力が格段と良くなっています」がなかったことを意味しない。 同じ米国の国立機関がセンサーを整備しているのであれば、カリフォルニアでの整備をオクラホマで実施しないとは考えにくい。 よって、整備前後での地震発生件数が少ないために目に見える変化が乏しい可能性を考慮しなければならない。 いずれにしても、M3以上の検知の空白地帯の存在を読み取ることはできない。 また、地震件数は徐々に増加しているが、2015年〜2016年を境に減少に転じている。 もしも、仮に、検知能力の向上が検知件数増加の主原因であるならば、このような検知件数の減少は説明がつかない。 尚、最初の方で紹介した注水量と地震件数のグラフにおいて、オクラホマの地震件数には2015年と2016年にピークが見られる。 ちょうど、同時期と思われる時期に、このグラフでも規模の小さい地震の件数の増加が見て取れる。 これも、検知能力の向上では説明がつかない。

オクラホマ地震の分布 オクラホマ地震の時空間図

また、オクラホマの地震の時空間図を見ると、半分よりB地点に近い側で顕著な件数の増加が見られる。 A地点に近い側も件数が増えているが、増加はそれほど顕著ではない。 そして、顕著な増加が見られる側の過去の地震は少なく、顕著な増加が見られない側の方が過去の地震は多い。 過去のB地点に近い側の検知に空白地帯があったと考えると、楕円で囲んだ部分の地震を検知できた理由の説明が困難である。 以上ふまえると、オクラホマでの地震の急増は、センサーの検知能力によるものではなく、実際に地震が増えているせいだと推測できる。 とくに、M3以上については、検知の空白地帯があったと考える理由はないばかりか、測定データからも空白地帯がないことが窺われる。

どちらのセンサーも、同じ米国の国立機関が整備しているのであれば、仕様に差は無いはずであるから、カリフォルニアのデータからの類推も可能であろう。 規模の閾値がどちらも同程度になるよう設計されているなら、カリフォルニアと同様、「全域で検知能力が格段と良くなっています」以前も以後も、M3以上の検知の空白地帯は存在しないと考えるべきであろう。

常識的な補足 

地震の増加の主原因が検知能力の向上のせいだとする主張は、次のような無茶苦茶な前提に基づいている。

  • 国立の専門機関が大チョンボをしている
  • 国立の専門機関が意図的に検知の空白地帯を作っている

こうした主張するなら、まず、それを示す明確な証拠を示すべきだろう。

Increasing Rate of Earthquakes Beginning in 2009 - USGSでは、M3以上の地震の件数をグラフにし、2009年頃から地震発生率が急増したと書いてある。 もしも、仮に、2009年頃にM3以上の地震を観測できない空白地帯があり、M3以上の地震の取りこぼしがあるとすれば、それを考慮せずに地震発生率が急増したと結論づけるのは明らかに初歩的なミスである。 しかも、センサー整備を自分たちでやっておいて、そのような初歩的なミスを犯すなら、言い訳のできない大チョンボであろう。 さて、United States Geological Surveyは、米国の国立の地質調査所である。 欧米の国立の専門機関が大チョンボをしたと主張するなら、それ相応の根拠を示さなければただの妄言に過ぎない。 今回の場合は、欧米の国立の専門機関の大チョンボを疑う根拠が何も示されていない以上、その疑いが妄言であることは言うまでもない。

そもそも、常識で考えて、規模の閾値を均一に整備しないことがあり得ない。 規模の閾値を地域によって変えたり、検知の空白地帯を作れば、地域毎の地震の比較が困難になる。 一見すると、実用的な側面で考えれば、人の住んでいない地域には検知の空白地帯を作っても良さそうに思える。 しかし、地震研究の観点では、検知の空白地帯を作れば、その空白地帯で発生する貴重な研究データを得られない可能性がある。 地震研究の成果は、地震の予知や対策などの実用的な用途に活用されるものだから、実用的な側面でも、検知の空白地帯を作る意味はない。 センサーの技術や予算が足りなかったとしても、観測の空白地帯を作ることは考えにくい。 均一な観測を優先して閾値を犠牲にすれば、閾値以下のデータを取りこぼす可能性はあるが、少なくとも閾値以上のデータは漏れなく収集できる。 だから、閾値以上の地震に限定されるものの、地域毎の様々な地震のデータを蓄積し、それらを比較検証することが可能となる。 一方で、閾値を優先して空白地帯を作れば、空白地帯での地震は規模の大きなものでも取りこぼす可能性がある。 そうすると、地域毎の様々な地震のデータを蓄積することができないので、それらを比較検証することができない。 以上の通り、地震研究の観点で考えれば、技術や予算の不足があったとしても、それは閾値を犠牲にする理由にはなっても、観測の空白地帯を作る理由にはならない。

何故、間違えるのか 

ハッキリ言えば、結論先取が間違える原因であろう。 科学的な正しさを追求するなら、結論に対する姿勢はニュートラルであるべきである。 一定の可能性を追求することは問題ないが、その可能性の真偽は中立的に検証しなければならない。 検証した結果、どんなに受け入れ難いと思えることであっても、それが多数の追試を受けた実験等で導かれる真実であるなら、それを受け入れなければならない。 それができずに、最初から特定の結論に誘導しようとして、それに都合の良い証拠を集めようとするから、間違ってしまうのである。

一見すると、「全域で検知能力が格段と良くなっています」という話は、地震の増加の原因が検知能力の向上によるする結論を支持しているかのように見える。 しかし、情報を精査すれば、細部の情報はその結論を全く支持していない。 例えば、M3以上の検知件数はその検知能力と連動した急増が全く読み取れないので、M3以上の検知件数の増加は検知能力の向上では説明がつかない。 中立的に検証すれば、こうした細部の情報も含めて判断することになる。 しかし、結論先取に囚われている人たちは、誘導したい結論に都合の悪い情報は全て無視する。 これは、CCS地震原因説を唱える人が、注水によって地震が起きた事例がある事実のみを採り上げ、空間的な相関性、時間的な相関性、注水量と規模の関係等の都合の悪い情報を無視するのと同じ構図であろう。

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