量子テレポーテーション
概要
量子力学における量子テレポーテーションはオリジナルを破壊した上で量子状態のコピーを作る技術である。 量子テレポーテーションの原理等については非常に有名なのでここでは説明しない。
複製か?転送か?
ミクロの世界では全く区別できないものは同一と見なして良いと言われる。 そして、「だから、量子テレポーテーションは複製ではなく転送である」とも言われる。 しかし、ここでは区別できないものを本当に同一と見なして良いかどうかは論じない。 というのも、量子テレポーテーションが複製なのか転送なのかを論じるにあたっては、そのことに言及する必要がないからである。
量子テレポーテーションで作られたコピーがどれだけオリジナルに近いかは忠実度:F(fidelity)で表され、F=1のとき完全にオリジナルと同じになる。 実際に行われている量子テレポーテーション実験ではF=1は実現しておらず、F値の世界記録を更新する研究も普通に行われている。 つまり、劣化コピーを作っているだけに過ぎず、それなら複製前後の区別は可能であるから、量子テレポーテーションは転送とは言えない。
もちろん、F値が1に達しなくても、一定値以上なら、量子通信等の実用化は可能である。 というように、量子テレポーテーションの世間的なイメージと科学的な意義は全くかけ離れている。
転送装置を作れるか?
量子テレポーテーションを用いればマクロの物質の転送も可能だと誤解している人がいる。 確かに、物理学者にはそうした主張をする者もいるようだが、それは明らかなジョークである。
なお、ザイリンガーなど一部の物理学者は、物質転送がさも実現できそうな文章を書いていますが、私には、彼らが本気であるとは思えません(物理学者は、ジョークが好きなのです)。
まず、量子テレポーテーションの実験装置そのものでマクロの物質の転送などできないことは原理を知っていれば直ぐにわかるだろう。 また、別の原理の転送装置に量子テレポーテーションを組み込むことも全く意味がない。 どのような原理の転送装置であろうとも、その実現に必要な技術は量子テレポーテーション以外の技術であり、その技術は量子テレポーテーションより遙かに難易度が高い。 そして、その技術が実現が可能になれば、量子テレポーテーションを用いなくても、マクロの物質の転送は可能である。 つまり、量子テレポーテーションは、マクロの物質の転送には全く無用の長物である。 以上の詳細は、量子テレポーテーションでは転送装置は作れないを参照のこと。
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