浦項の人工地震
はじめに
このページは科学的人工地震研究の一部である。
韓国政府調査団の発表
2017年11月に慶尚北道浦項市で発生したマグニチュード(M)5.4の地震が、近くの地熱発電所で地中に水を注入したことにより触発されて起こったという結論を政府調査研究団が下したと19日、明らかになった。 大韓地質学会を中心に構成された政府調査研究団は20日午前10時30分からソウルプレスセンターで記者会見を開き、この1年間の調査結果を発表する。
地熱発電は地下4キロメートル以上の深さに穴を2つ開け、一方に水を注入して地熱で温め、この時に発生する水蒸気をもう一方の穴に流して発電機のタービンを回して電気を作るものだ。 同地震の発生直後、科学関係者の間では、震源地が地熱発電所からわずか600メートルの地点で起きたことから、「地下に注入した水が地震の原因だ」という主張があった。 地下で高い水圧が発生して周辺の地層が分かれたか、既に形成されていた断層がずれたということだ。
昨年4月には高麗大学のイ・ジンハン教授と釜山大学のキム・グァンヒ教授も国際学術誌「サイエンス」に同様の結論の論文を発表している
浦項地震:「地熱発電所が触発」 韓国政府調査団が結論 - 朝鮮日報Online
政府調査研究団が、地熱発電が浦項地震を触発した原因と指定したのは、地熱発電活動で誘発された微小地震が起きた平面と浦項地震を起こした断層面解が一致するという事実が決定的な根拠になった。 イ・ガングン政府調査研究団団長(ソウル大学教授)は「研究チームが最も尽力したのが震源の位置決定だ。 浦項地震が地熱発電の地熱井から数キロメートル以上離れていれば解釈が変わりうるため」と話した。 研究団は、2009年1月1日以後に浦項地域で発生した520回の地震のうち、地熱発電実証研究敷地から震央までの距離が5キロメートル以内、震源の深さが10キロメートル以内の98回を対象に精密地震位置分析をした。 その結果、2本目の地熱井(PX-2)から水を注入して誘発された微小地震がほとんど平面に近い分布様相を見せ、さらにこの平面が浦項地震本震の断層面解の走向と傾斜がほぼ一致していることを明らかにした。
浦項地熱発電実証研究は、2010年12月に始まり、二本の地熱井をボーリングして2016年1月から2017年9月28日まで5回にわたり1万2800余立方メートルの水を注入し、7000立方メートルの水を取り出す水理作業をした。 この期間に数十回の微小地震が発生した。 3回目の水注入が終わった2017年4月15日には、最も大きい規模3.2の地震が起きた。
政府調査研究団の海外調査委員会委員長を務める米国コロラド大学のShemin Ge教授は、浦項地震を誘発(induced)地震ではない触発(triggerd)地震と表現したことに対して「誘発地震は水の注入による圧力と応力の変化で岩石の空間的範囲内で起きる地震、触発地震は人為的影響が最初の原因だが、その影響で刺激を受けた空間的範囲を大きく外れた規模の地震と定義した」と説明した。 浦項地震は、誘発地震の範囲を越えているが、自然地震と区別するために触発地震という用語を使ったという話だ。
研究団は、浦項地震が触発地震であることを示す証拠が、地震発生後にも確認されると明らかにした。 一本目の地熱井(PX-1)は地下約4100メートルまで映像撮影が可能な反面、2本目の地熱井(PX-2)は3800メートル付近で詰まっていた。 浦項地震の断層面を延長すれば、この深度と一致する。 浦項地震でボーリング孔が破裂したという解釈だ。 この地熱井で急激に水位が低下して地下水の化学的特性が変わったのも、浦項地震が触発地震であることを裏付けると研究団は明らかにした。
他の科学的人工地震研究と同様、2017年11月の浦項地震も注水場所に極めて近い場所(600m)で発生した中規模(M5.4)地震である。 「イ・ガングン政府調査研究団団長(ソウル大学教授)」は「浦項地震が地熱発電の地熱井から数キロメートル以上離れていれば解釈が変わりうる」ことを理由に「研究チームが最も尽力したのが震源の位置決定」と説明している。
同新聞掲載のグラフは、「累積水注入量」から推定して、赤線が注水量、青線が排水量を指していると思われるが、緑線は何を指しているか不明である。 グラフを見ると注水時期と地震発生時期に明確な相関が見て取れ、水圧と地震発生の相関が窺われる。 ただし、科学的人工地震研究で紹介した「北大の研究者」の「論文」と比べると注水量に対する地震の規模が大きい。
CCSやシェールガス採掘は深刻な地震活動を誘発する可能性がある(資源・素材学会春季大会講演集2014) - 北海道大学
しかし、これは水圧との関係で説明可能である。 デンバーの人工地震等では、次の通り、水圧値と地震の発生頻度に高い相関が見られる。
ハイドロフラクチュアリングとマグマフラクチュアリング(地質ニュース 1978年10月号 No.290) - 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
以上のことから、他の人工誘発地震より規模が大きいことは、「震源地が地熱発電所からわずか600メートルの地点」であったために高い水圧に晒されたことで十分に説明できる。
総合案内
科学一般
疑似科学等
- 疑似科学
- 数学や科学への無理解
- 疑似科学を批判する疑似科学
- STAP細胞論文捏造事件
- CCS地震原因説
- 地球温暖化懐疑論
- 疑似科学者列伝