地球温暖化懐疑論者たち
はじめに
このページは地球温暖化懐疑論の一部である。 以下も参考にどうぞ。
長辻象平氏(産経新聞論説委員)
どう見ても異常な気象だ。 多くの人が寒暖の激しさを地球温暖化の仕業と受け止めている。
学界やメディアをはじめ、国際政治や日本政府も、そうした立場で対応している。
二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出削減を世界の国々が目指す「パリ協定」は、その典型だろう。
「多くの人が寒暖の激しさを地球温暖化の仕業と受け止めている」とは何を根拠に言っているのか。
IPCC第5次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約 - 気象庁P.5の表SPM1によれば、「ほとんどの陸域で寒い日や寒い夜の頻度の減少や昇温」、「ほとんどの陸域で暑い日や暑い夜の頻度の増加や昇温」ともに、現象が発生している可能性も人間活動の寄与の可能性も「非常に高い」としている。 IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書 よくある質問と回答 第2章 FAQ 2.2 - 気象庁でも、「世界のほとんどの地域において暑い日や暑い夜は増加し、寒い日や寒い夜は減少しているとの結果が得られる」としている。
IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書 よくある質問と回答 第2章 FAQ 2.2 - 気象庁
ようするに、IPCCは寒い日も暑い日も全体的に気温が上がっていると結論づけており、「寒暖の激しさ」が増大している事実すら認定しておらず、当然、それが「地球温暖化の仕業」などとは言っていない。
気象庁も「寒暖の激しさを地球温暖化の仕業」とはしていない。
気候変動とは
気候が一方向へ変化する
「異常気象レポート2014」付録A - 気象庁
もの(地球温暖化など)と
定常的な安定した状態のまわりを変動する
「異常気象レポート2014」付録A - 気象庁
気候のゆらぎ
「異常気象レポート2014」付録A - 気象庁
の
2つの現象を指している
「異常気象レポート2014」付録A - 気象庁
とされ、その原因は外的要因、内的要因の様々な要因があるとして、このうちの気候のゆらぎの拡大が「地球温暖化の仕業」とはしていない。
以上の通り、「学界」「をはじめ、国際政治や日本政府も、そうした立場で対応している」とやらの事実はどこにも存在しない。
東京工業大学地球生命研究所・特命教授の丸山茂徳さんを訪ねると、過去140年の温度変化とCO2排出量のグラフを並べて「CO2と気温は無関係だよ」と説明してくれた。
地球惑星科学を専門とする丸山さんは「46億年の地球史を解析せずに気候変動を予測するのはナンセンスだ」と、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)に代表されるCO2主因論と脅威論を一蹴する。
気候に大きな影響を与えてきたのは、太陽活動、宇宙線、地磁気、火山活動、大気組成などであるという。
過去100年以上、地球の平均気温は上昇してきたが、20世紀は太陽活動が非常に活発な時代であったのだ。
丸山さんは「地球の寒冷化は100年から数百年周期で繰り返されている」と話す。
「東京工業大学地球生命研究所・特命教授の丸山茂徳さん」は、地質学の世界では、プルームテクトニクスを提唱した大家である。 しかし、彼は、地面の下の地質学の専門家ではあるが、地面の上の気象分野や「太陽活動、宇宙線」については全くの素人である。 専門家の裏付けを取らず、素人の主張をそのまま紹介するのでは、ジャーナリスト失格であろう。
「今の地球は、温暖化の終わりと寒冷化の始まりを迎えている」と丸山さんは話す。
そうした寒冷化の開始において気温は特徴的な振る舞いを見せる。 「夏は一段と暑く、冬は一段と冷え込む」そうだ。
まさしく、近年の異常気象そのものではないか。
極端化の前例を示す研究を紹介してくれた。 前回の寒冷期の氷を含む米ワイオミング州の氷河の分析だ。 温暖期には小幅な振れだった気温が、寒冷期に入ると寒暖の振れ幅が数倍以上に拡大している。 その後約30年間の気温の平均は、低温側に大きくシフトしているが、振れ幅が大きくなっているために猛暑もしばしば顔を出している。
目下、太陽活動は低下中だ。 変化は1990年頃から始まった。 丸山さんは2035年頃に最も弱まるとみている。
地磁気も弱まる傾向を強めているので、地球に届く宇宙線が増加する。 宇宙線は低層雲を生む作用(スベンスマルク効果)を持つので、上空からの日射を遮る雲が多くなる。
気候に関わる諸要素は地球寒冷化の方向を示しているのだがIPCCはCO2の増加だけをよりどころに、さらなる温暖化を主張してきたわけである。
国際政治も経済もIPCCのCO2温暖化論に追従した。 全人類が、スパコンのシミュレーションが演出する集団催眠に陥っている感もある。
「太陽活動」の「変化は1990年頃から始まった」とする1990年以降も世界平均気温は上がり続けている。
「太陽活動」の「変化は1990年頃から始まった」とする1990年以降も平均海面水温は上がり続けている。
「気候に関わる諸要素は地球寒冷化の方向を示している」などという事実はどこにも存在せず、むしろ、観測データ上は近年の気温上昇の方が激しくなっている。 つまり、「IPCCはCO2の増加だけをよりどころに、さらなる温暖化を主張してきた」は明らかに事実に反する捏造であり、実際に気温が上昇しているから温暖化しているとは判断しているに過ぎない。 「太陽活動は低下中」の「1990年頃から」は太陽要因を除外した人為的要因による温暖化は加速している。
IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書 よくある質問と回答 第5章 FAQ5.1 - 気象庁
つまり、長辻象平氏が、素人の妄想理論「が演出する」「催眠に陥っている」だけであろう。
現実の気候システムで最大の温室効果を発揮しているガスは水蒸気なのだが、その基本的な事実さえ一般の人々には届いていない。
地球温暖化懐疑論で紹介した通り、水蒸気の温室効果が計算モデルに組み込まれていることはIPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書 よくある質問と回答 第8章 FAQ8.1 - 気象庁でしっかりと解説されている。
寒冷化の負の影響は、温暖化をはるかに上回る。 予防原則の立場からも寒冷化対策を議論の視野に入れるべきだろう。
既に示した通り、観測データ上では、明らかに「寒冷化の負の影響は、温暖化をはるかに」下回っている。
団塊の世代以上の人なら覚えているはずだが、1960~70年代にも豪雨や気温低下などの異常気象が続き、世界中で地球寒冷化が心配されていた。
局地的な「豪雨や気温低下などの異常気象」は「地球寒冷化」とは全く関係がない。
その一方で、太陽の活動は、この30年ほど低下中。 1800年ごろ以来の異変だ。
と言っても、太陽から地球に届く光のエネルギー量は、この間も安定していて変わっていない。 変化が確認されているのは太陽表面の黒点数だ。
中心部で核融合反応が進む太陽は、磁場の星。その磁力線が太陽表面を貫いている場所が黒点なのだ。 だから、黒点数は太陽の活動度の「表示目盛り」となる。多いほど活発だ。
IPCCなどは地球に注ぐ太陽の光エネルギーが一定なことを理由に、気候変動に及ぼす太陽の影響を軽視しているが、それでよいのか大いに疑問だ。
長辻象平氏はいい加減に捏造をやめるべきではないか。 長辻象平氏は「太陽の活動は、この30年ほど低下中」としているが、「この30年ほど」で気温の観測データは上昇しているのである。 「太陽の活動は、この30年ほど低下中」の時期に太陽要因を除外した人為的要因による温暖化は加速している。
IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書 よくある質問と回答 第5章 FAQ5.1 - 気象庁
さらに言えば、、「地球に注ぐ太陽の光エネルギーが一定」ではなく、日射エネルギー量も年々減少している。
日経エコロミー 連載コラム 温暖化科学の虚実 研究の現場から「斬る」! 第4回 太陽活動が弱くなっている?—温暖化への影響は(江守 正多 - 国立研究開発法人 国立環境研究所 地球環境研究センター
以上を踏まえて、「IPCCなど」は、「この30年ほど」の気温上昇の原因は、低下し続ける「気候変動に及ぼす太陽の影響」でなく、他に原因があると結論づけているのである。 このように、「IPCCなど」は、低下し続ける「気候変動に及ぼす太陽の影響」を適切に評価しているのであって、「気候変動に及ぼす太陽の影響を軽視している」ことなどない。 「IPCCなどは地球に注ぐ太陽の光エネルギーが一定なことを理由に、気候変動に及ぼす太陽の影響を軽視している」が長辻象平氏の創作であることは疑う余地がない。
平安時代は温暖だったが、そのころ二酸化炭素を排出する産業が活発だったのか。
「平安時代は温暖だった」とは何を根拠に主張しているのか。 それは、地球全体の気温を指しているのか。 季節にとらわれない年間の傾向を指しているのか。
地球温暖化懐疑論で紹介した通り、定量的な推測手法が確立した今日では、地球規模では中世は現在より寒冷であり、紀元以降は近年が最も温暖であるとするのが定説である。
IPCC第4次評価報告書第1作業部会報告書 技術要約 - 気象庁P.37,38
IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書技術要約 - 気象庁P.78
今のように太陽磁場が弱まると地球に注ぐ宇宙線が増加し、その作用で雲が増えて気温が下がったり、豪雨を促進したりするという研究報告もある。
長辻象平氏は、「研究報告」を正しく読み取る能力がないようである。
この記事を読むと、あたかも、純粋に理論的計算から太陽磁場の影響を定量的に予測した「研究報告」があるように見える。
しかし、真相は全く逆である。
太陽活動の変化にともなう日射量の増減は0.1%程度と非常にわずかで,地球の温暖化や寒冷化を説明できるほどの変化ではない
『科学』(岩波書店)2009年12月号 特集 太陽活動の謎と発見 太陽活動と宇宙線,そして気候変動 - 東京大学宇宙線研究所
ことから、
太陽に関連する他の因子が気候に与える影響
『科学』(岩波書店)2009年12月号 特集 太陽活動の謎と発見 太陽活動と宇宙線,そして気候変動 - 東京大学宇宙線研究所
が推定され、
太陽活動に応じて増減する宇宙線が,大気の電離度を変化させ雲の量を増減させているという説がデンマークのスベンスマルク博士らのグループによって提唱された
『科学』(岩波書店)2009年12月号 特集 太陽活動の謎と発見 太陽活動と宇宙線,そして気候変動 - 東京大学宇宙線研究所
ということである。
つまり、この「研究報告」では、「その作用で雲が増えて気温が下がったり、豪雨を促進したりする」効果の大きさは、モデルから定量的なシミュレーションしているのではなく、太陽活動が気温変化の主原因となるように推定している。
簡単に言えば、太陽活動が気温変化の主原因という結論ありきの主張であり、従来理論では困難だからつじつま合わせの新理論を提唱しただけである。
導きたい結論に合わせた都合の良い仮説であって、科学的な検証が全くされていないのである。
この仮説の妥当性は次のグラフを見れば明らかだろう。
日経エコロミー 連載コラム 温暖化科学の虚実 研究の現場から「斬る」! 第4回 太陽活動が弱くなっている?—温暖化への影響は(江守 正多 - 国立研究開発法人 国立環境研究所 地球環境研究センター
実測データでは、宇宙線強度と世界平均気温の相関性は極めて乏しい。 よって、宇宙線強度が世界平均気温に支配的な影響を与えていないことは一目瞭然である。
松田卓也(宇宙物理学者)
物理学分野では疑似科学批判をしている当人が、自身の専門外の分野では平然と疑似科学的主張を発信していることにはあきれる他ない。
出典も酷く、気象・気候分野の専門誌ではない日本物理学会誌に掲載されたもの(後で紹介するが、これは査読を受けていない「話題」記事である)とアメリカ物理学会のPhysical Reviewに掲載されたもの(こちらは地球温暖化とは全く関係がない)が各1つあるだけで、それ以外は全て、誰でも編集できるWikipediaの記述、専門外の人物による個人サイトや出版物である。 専門誌に掲載された査読済み論文が1つも挙げられていない。 全く逆のことを想定してみれば良くわかる。 気象・気候分野の専門誌の論文1〜2件のみ挙げて、それ以外は全て、誰でも編集できるWikipediaの記述、専門外の人物による個人サイトや出版物を出典にして、「相対性理論は間違っている」なんて主張すれば、紛うことなき疑似科学である。 松田卓也氏の主張は、この例と全く変わりない。
もし地球気候の内因説が正しいなら、われわれ天文学者、宇宙物理学者の出る幕はない。 しかし、恐竜絶滅が内因説から隔石衝突による外因説に変わったことを見ても、地球温暖化の宇宙起源説は捨てがたい。 そうすれば我々の出番なのである。
疑似科学批判をしているくせに、松田卓也氏は科学の基本条件を全く理解していないようである。 科学の世界では、従来理論で説明できない現象があり、かつ、新理論で従来理論より上手く説明できるときに、新理論が受け入れられる。 ここで言う「説明できる」とは、単に定性的に辻褄が合っていることだけでなく、定量的にも矛盾がないことを示す。 そういう過程を経て相対性理論や量子力学は受け入れられてきた。
それに対して、疑似科学では、無知・無理解による納得論法や「かもしれない」論法に基づいて、既存理論に対する架空の矛盾を作り出し、かつ、矛盾だらけの代替理論の辻褄が合っていることにする。 疑似科学では、物理の基本法則を無視したファンタジー理論で定性的な辻褄を合わせるが、定量的な辻褄を合わせることはしない。
地球温暖化懐疑論では、「内因説」(既存理論)に対する架空の矛盾を作り出し、かつ、矛盾だらけの「外因説」(代替理論)の辻褄が合っていることにしている。 地球温暖化懐疑論では、現実の測定データを無視したファンタジー理論で定性的な辻褄を合わせるが、定量的な辻褄を合わせることはしない。 故に、真っ当な人が見れば、地球温暖化懐疑論は、(現存するものに限れば)科学的性質を全く持ち合わせておらず、かつ、擬似科学的性質100%の代物である。
気象・気候学においては、「天文学者、宇宙物理学者」は素人同然である。 だから、気象・気候学者で辻褄の合う仮説が提示できている限り、素人同然の「天文学者、宇宙物理学者の出る幕」などあるわけがない。 気象・気候学者の提唱する仮説で説明できない現象があって、初めて、気象・気候学者が想定していない分野の理論の「出番」があるのである。 気象・気候学者の提唱する仮説で説明できない現象がない以上、素人同然の「天文学者、宇宙物理学者の「出番」などあるわけがない。 尚、「恐竜絶滅が内因説から隔石衝突による外因説に変わった」なんてことは、地球温暖化議論が気象・気候学者の提唱する仮説で説明できないことを全く示していないので、素人同然の「天文学者、宇宙物理学者」が出しゃばる理由に全くなっていない。 例えるなら、松田卓也氏のやっていることは、気象・気候学者が相対性理論(量子力学でも良い)の内因説(理論物理学の範囲の理論で説明可能とする説)を疑って外因説(気象・気候学の理論を想定する必要があるとする仮説)を提唱するようなものである。
そもそも、気象学者や気候学者でなくても、公的機関の公開している全地球の気温の観測データや太陽活動のデータを取り寄せることは誰でも可能である。 科学を専門に研究していない人であって、検索の仕方さえ知っていれば、公的機関の公開しているデータに容易にアクセスできる。
IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書 よくある質問と回答 第5章 FAQ5.1 - 気象庁
日経エコロミー 連載コラム 温暖化科学の虚実 研究の現場から「斬る」! 第4回 太陽活動が弱くなっている?—温暖化への影響は(江守 正多 - 国立研究開発法人 国立環境研究所 地球環境研究センター
これらデータを見れば、宇宙線強度や日射量エネルギーと世界平均気温の相関性はほとんど見出せない。 それでは「地球温暖化の宇宙起源説」は全く成り立たない。 松田卓也氏がこの文章を書いた時期は本文の内容から2008年5月以降と推測されるので、太陽活動縮小期のデータは充分に蓄積されている。 だから、データにアクセスすれば「地球温暖化の太陽活動原因説」を容易に検証できたはずである。 そうしたデータにアクセスせずに妄想で語っているなら科学者失格である。
今や地球温暖化問題は科学的な議論より、国益か否かという政治的基準、儲かるか損をするかという経済的基準、信じるか信じないかという宗教的基準、正義か不正義かという倫理的基準で語られることが多い。
懐疑論こそが「地球温暖化問題は科学的な議論」では勝ち目がないから「国益か否かという政治的基準、儲かるか損をするかという経済的基準、信じるか信じないかという宗教的基準、正義か不正義かという倫理的基準」に持ち込んでいるのだから、その点を批判するなら懐疑論の姿勢を批判すべきだろう。
この問題を調べ始めると、日本のマスメディアが喧伝するほどには、議論は決着がついていないことが分かる。 欧米のネットを調べると、激しい論争が延々と続いている。 懐疑派、否定派が結構多いこと、それも結構著名な学者にも多いことが分かった。 例えば、後で紹介するのだが、日本の有力な地球物理学者、宇宙物理学者に懐疑派、否定派がいる。 オーロラ研究で有名なアラスカ大学名誉教授の赤祖父とか、日本気象学会の元理事長の廣田とか、そうそうたる人物もその中に含まれる。
そのシンボジウムの主催者とその講演者を見て驚いた。 主催者には惑星科学で有名な東大の松井孝典、天文学者で旧知の戎崎俊一、草野完也、寺沢敏夫、評論家の桜井よし子などが名を連ねている。 講演者の人選も度肝を抜くものであった。 科学者は当然として、鳩山法相や前原民主党元代表を始めとする政治家、ジャーナリスト、官僚などが名を連ねている。 もっとも正直なところ、政治家の二名(自民党の村上誠一郎と小野晋也)を除いては、普通の正統派の立場を述べるか、おざなりな話をしただけであった。
「欧米のネットを調べると」「激しい論争が延々と続いている」「懐疑派、否定派が結構多い」ことをもって「議論は決着がついていない」と主張するのは、疑似科学の主張そのものである。
地球温暖化論の分野において「そうそうたる人物」と言える人物は、その専門家である気象学者・気候学者である。 それは、松田卓也氏が具体的に挙げた「懐疑派、否定派」の中では廣田勇氏だけである。
- 気象学者・気候学者ではない懐疑派、否定派の科学者
-
- 赤祖父俊一:地球物理学者
- 槌回敦:物理学者
- マーティン・リース:天文学者
- 丸山茂徳:地質学者
- 科学者ではない懐疑派、否定派
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- 田中宇:ジャーナリスト
- 村上誠一郎:政治家
- 小野晋也:政治家
- 米本昌平:科学史家
- 気象学者・気候学者ではない立場不明の科学者
-
- H.スベンスマーク:宇宙物理学者
- 科学者ではない立場不明の人物
-
- 清家彰敏:経済学者
- 大藤茂:都市デザイン学
- 堺展太ー:評論家
- 磯崎茂雄:不明
- 「普通の正統派の立場を述べるか、おざなりな話をしただけ」の気象学者・気候学者ではない科学者
-
- 松井孝典:惑星科学者
- 戎崎俊一:天文学者
- 草野完也:宇宙物理学者
- 寺沢敏夫:宇宙物理学者
- 「普通の正統派の立場を述べるか、おざなりな話をしただけ」の科学者ではない人物
-
- 桜井よし子:評論家
- 鳩山法相:政治家
- 前原民主党元代表:政治家
マンのホッケー・スティック図とは、過去1000年間の地球の平均気温を樹木の年輪などから割り出したグラフである。 この図では1000年から1900年までは、気温はほぼ一定であるが、20世紀になって急に気温は上昇していると読み取れる。 この図をIPCCは、その報告において地球温暖化の有力な証拠として採用した。 しかし、歴史的に明らかな中世温暖期や江戸時代初期の小氷期などの存在が無視されているとして批判もされている。
この文章から、松田卓也氏がIPCCの報告書を全く読まずに、「報告において地球温暖化の有力な証拠として採用した」と主張していることが分かる。
IPCC第4次評価報告書第1作業部会報告書 技術要約 - 気象庁P.38
縮小で図が見辛くなっているので、IPCC第4次評価報告書第1作業部会報告書 技術要約 - 気象庁P.38を直接見てもらった方が良いだろう。 「マンのホッケー・スティック図」とは、このグラフのMBH1999のことである。 MBH1999には、弱いながらも「中世温暖期や江戸時代初期の小氷期などの存在」が現れている。 また、MBH1999は1970年頃以降がなく、「20世紀」の気温上昇はそれほど顕著ではなく「急に気温は上昇している」とまでは言い難い。 実際に観測された気温に比べれば変動が非常に小さい。
加えて、IPCCの報告書では、古気候的研究の不確実性にも言及している。 そのような不確実なデータを「地球温暖化の有力な証拠として採用」できるわけがない。 加えて、古気候的研究は様々な研究が記載されており、「マンのホッケー・スティック図」だけが特別扱いされているわけではない。 言うまでもなく、「地球温暖化の有力な証拠として採用」しているのは、「マンのホッケー・スティック図」ではなく、実際に観測された気温の上昇である。
つぎに私の目を引いたのは、物理学会誌に掲載された槌回敦氏の論文である。 そこでは近年の平均気温と一酸化炭素の変化の関係を示したキーリングのグラフを示し、まず気温が上昇してから二酸化炭素量が増えていることを主張した。 つまり二酸化炭素が気温上昇の原因ではなく結果だというのである。 槌田氏は個性の強い研究者として毀誉褒貶があり、氏の主張をそのまま信ずるわけにはいかないが、私は正直、ヘエーそんな考えもあるのだと思ってしまった。
「物理学会誌に掲載された槌回敦氏の論文」が原論文を歪めていることは多方面から指摘されている。
原論文のInterannual extremes in the rate of rise of atmospheric carbon dioxide since 1980 - Natureに明記されているが、「キーリングのグラフ」は
人為的なCO₂の増加分が除かれている
気温が上がって二酸化炭素が増えたのではない - 海の研究者
観測値から長期的上昇傾向と季節変化を取り除いた大気中二酸化炭素濃度変動と気温変動の関係
IR3S/TIGS叢書No.1地球温暖化懐疑論批判 - 東北大学東北アジア研究センター
のデータである。
そのCO₂の変動は、長期的上昇傾向に比べて
振幅・タイムスケールは非常に小さなもの
IR3S/TIGS叢書No.1地球温暖化懐疑論批判 - 東北大学東北アジア研究センター
である。
これを分かりやすく図で説明すると次のようになる。
よって、「キーリングのグラフ」を正しく解釈すると、人為的変動よりも遥かに小さいものの
気温変化に伴って陸上生物や海から放出・吸収される気候要因のCO₂の増減
気温が上がって二酸化炭素が増えたのではない - 海の研究者
もあり、
この気候要因のCO₂増減が、人為的なCO₂変化傾向を部分的に隠したり、あるいは強調している
気温が上がって二酸化炭素が増えたのではない - 海の研究者
可能性を示唆しているに過ぎない。
さらに、「キーリングのグラフ」から
二酸化炭素濃度の長期的上昇を説明しようとすると、25度といった大幅な気温上昇を仮定せざるを得なくなる
IR3S/TIGS叢書No.1地球温暖化懐疑論批判 - 東北大学東北アジア研究センター
ため、現実の観測データと全く辻褄が合わなくなる。
とはいえ、この説明は少々回りくどい。
実測の気温上昇値から予想される二酸化炭素濃度の上昇が実測の二酸化炭素濃度の上昇よりはるかに少ないことを説明した方が自然な説明であろう。
もっと簡単に説明するために、槌田敦氏の論文の図を引用する。
この図から、次の2つが読み取れる。
- 気温変動は、長期的変動に比べて比較的大きな短期的変動も見られる
- CO₂濃度変動は、長期的変動に比べて短期的変動が極めて小さい
このことは、二つのデータの変動の感度が、長期で大きく、かつ、短期で小さいこと、そして、その差が極めて大きいことを示している。 この感度の差は、短期的変動の小さい側が原因であると考えると、結果側が別の原因によっても変動していると想定することで容易に説明できる。 しかし、短期的変動の大きい方が原因であると考えると、長期に比べて短期の感度が著しく小さくなる理由の説明が難しい。 長期的感度も小さくして良いなら、短期的感度が小さくなる理由はいくらでも考えられよう。 しかし、長期的感度を小さくせず、かつ、短期的感度だけを小さくするという条件では、それを説明できる理論は極めて限定される。 例えば、α年遅れの成分と(α+X)年遅れの成分が相殺していると考えれば、X年周期の変動の感度が悪くなることは説明できなくはない。 しかし、そのためには次の2つを説明できるメカニズムが必要になる。
- (α+X)年も遅れること(槌田敦氏の論文ではα≒1、X≒3であるので、α+X≒4)
- (α+X)年遅れの成分がα年遅れの成分と拮抗するほど大きい
さらに、このメカニズムにおいても、短期的変動の周期が一定でない場合は、周期が変化すると感度も変化する。 実測データを見ると、気温の短期的変動の周期には年単位での変化が見て取れる。 年単位で周期が変化すると、2つの成分が相殺されている状態が著しく崩れてしまうので、短期的感度も著しく変化するはずである。 しかし、実測データには、そのような短期的感度の著しい変化は見て取れない。 もっと多数の成分が複雑に相殺し合っていると仮定すれば、短期的感度の著しい変化がないことも説明可能かもしれないが、その場合はかなり複雑なメカニズムが必要となる。 このように、短期的変動の大きい方が原因であると仮定すると、その辻褄を合わせることは極めて困難となる。 一方で、短期的変動の小さい方が原因であると仮定した場合は、そのような無理が全く生じない。 つまり、CO₂濃度変動が主たる原因であり、それに他の原因も併さって、それらの複合的な結果として気温変動が生じていると考える方が遥かに自然なのである。
以上踏まえると、「キーリングのグラフ」は、「二酸化炭素」の濃度変化の極一部は「気温上昇の原因ではなく結果」であることを示唆しているが、濃度変化全体が「気温上昇の原因ではなく結果」であることを示していない。
よって、
この図をもって二酸化炭素の変動が常に気温に追随すると考えるのは拡大解釈
IR3S/TIGS叢書No.1地球温暖化懐疑論批判 - 東北大学東北アジア研究センター
である。
以上は、原典でキーリング自身が指摘していることである。
「キーリングのグラフ」の意味を歪めている「槌回敦氏の論文」が「物理学会誌に掲載された」のだとすれば、その査読者は原典にあたるという仕事を放棄したことになる。
これはどうことか。
2005年の「CO₂による地球温暖化は本当なのだろうかー大気汚染による温暖化の可能性についてー」は、日本物理学会誌に投稿されたが掲載はされていないようである。
日本物理学会誌第62巻第2号に掲載された「CO₂を削減すれば温暖化は防げるのか」と日本物理学会誌第65巻第4号に掲載された「原因は気温高,CO₂濃度増は結果」はいずれも、「話題」欄である。
日本物理学会誌投稿規定には「話題」欄は
広く会員の関心をひくニュースや話題,大型実験装置の立ち上げ報告,多くの会員が興味を持つ国際会議やイベントの報告,物理で説明できる身近な現象,珍しい実験結果や計算結果などを紹介する.原著論文を発表する場ではない
日本物理学会誌投稿規定
とされている。
「原著論文を発表する場ではない」のだから、当然、原著論文としての厳格な査読などないのである。
「原著論文を発表する場ではない」、ニュースや話題,報告,紹介記事であるということは、定説も含めて発表済みの仮説に反する新説を唱える場ではなく、その発表済みの仮説を紹介する場である。
であれば、科学者が悪意を持ってフェイクニュースを投稿するという前提に立たなければ、厳格に査読する必要はない。
その採否は会誌編集委員会で決定
日本物理学会誌投稿規定
されるものの、原典にあたるなどの詳細な査読を行わない内容の表面的な審査では、気象学や気候学に疎い物理学者では真偽の判断まではできない。
ようするに、槌田敦氏は、定説に反する新説(「キーリングのグラフ」を歪めていることから見て、キーリングの論文の紹介記事ではないことは明らかである)を発表するにも関わらず、査読のある論文としての投稿を避けて、意図的に、査読のないニュースや話題,報告,紹介記事を選んだわけである。 しかも、投稿先は気象学・気候学の専門ではない物理学会誌である。 というか、日本物理学会誌投稿規定を見る限り、JPSJやPTEPの掲載論文を紹介する場はあるが、「原著論文を発表する場」が全く見当たらない。 ということは、日本物理学会が発行する「原著論文を発表する場」はJPSJやPTEPであって、日本物理学会誌は「原著論文を発表する場」ではないのである。 つまり、槌田敦氏は、専門外の分野の査読のない雑誌を選んで記事を投稿したのである。 このようなことをしていれば、明らかに嘘だと分かった上での行動であると疑われても仕方ない。 つまり、槌田敦氏は、故意に気象学・気候学のフェイクニュースを流すために、悪意を持って専門外の日本物理学会誌を利用したのである。 まじめに新説を唱えるつもりなら、気象学・気候学の専門誌に査読を受ける論文として投稿すべきだろう。
ちなみに、日本物理学会誌第65巻第4号には、同じく「話題」欄であるものの、
地球温暖化の科学の現在の到達点をわかりやすく解説し,「遅れてきた懐疑論者」である槌田敦氏の主張の虚構を暴くことを目的とした
地球温暖化の科学-遅れて来た懐疑論の虚妄と罪(国立研究開発法人産業技術総合研究所:阿部修治 - J-Stage
も掲載されている。
槌田敦氏が似非科学者の証拠に槌田敦氏の科学者としての評価を記載する。 松田卓也氏は「槌田氏は個性の強い研究者として毀誉褒貶があり」とするが、専門家の間では槌田敦氏には「毀貶」はあっても「誉褒」などないのである。
天文学者ならだれでもその名前を聞いたことがあるであろう、英国のマーティン・リースはその著書の中の「いまだに不明な気候要因の変動」と題した章の中で、中世温暖期にはグリーンランドで農耕が行われ、小氷期にはテムズ川が凍ったことを例に挙げて、その原因を太陽活動に求めている。
これらの局地的エピソードをもって地球全体の温度を推測することは不可能である。 「中世温暖期にはグリーンランドで農耕が行われ」ていたことが間違いのない事実だとしても、それは、中世温暖期のグリーンランドが現在のグリーンランドより温暖だったことを示しているだけに過ぎず、他の地域がどうだったかの比較はできない。 「小氷期にはテムズ川が凍った」ことが間違いのない事実だとしても、それは、小氷期のテムズ川が氷点下になる日があったことを示しているに過ぎない。 テムズ川のエピソードは、期間も限定されるため、小氷期のテムズ川が現在のテムズ川より寒かった証拠にすらならない。 これらのエピソードは、定性的に一定の印象を誘導するものの、定量的な根拠とはならない。 定量的な研究としては、先ほど紹介した古気候的研究が挙げられる。
IPCC第4次評価報告書第1作業部会報告書 技術要約 - 気象庁P.38
多数の古気候的研究を総合的に判断すると、小氷期の地球が寒冷であったことと、中世温暖期が小氷期より温暖だったことが窺われるが、中世温暖期は現在と比べれば寒冷であったと推測できる。
IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書技術要約 - 気象庁P.78
尚、中世温暖期と小氷期の温度差の原因の1つが太陽活動によるものであることはほとんどの気象学者・気候学者が認めている。
いまは説明が付かないからと目の前の証拠を退け、科学者はこれまでさんざん墓穴を掘ってきたのだ。
観測データでは、少し前の太陽活動が増大しているときにも地球は温暖化しているが、近年の太陽活動が縮小しているときには地球の温暖化がより激しくなっていることこそが「目の前の証拠」である
IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書 よくある質問と回答 第5章 FAQ5.1 - 気象庁
この「目の前の証拠」が示すことは、
1つは近年の地球温暖化の主要な原因が太陽活動の変動によるものではないこと
日経エコロミー連載コラム第4回 - 国立環境研究所地球環境研究センター
と
もう1つは、最近の太陽活動の弱まりが地球温暖化を打ち消すほどの大きさの効果をもたらしそうにはないこと
日経エコロミー連載コラム第4回 - 国立環境研究所地球環境研究センター
である。
この「目の前の証拠を退け」ているのは、他ならぬ、地球温暖化懐疑論者と松田卓也氏である。
スペンスマークの説の重要点は次のようなものだ。
太陽活動に伴って作られる太陽表面の磁場が太陽風によって地球に運ばれる。 その磁場は、銀河宇宙線を跳ね返す作用がある。銀河宇宙線は地球大気をイオン化する。 イオン化された大気は雲の凝結核を作る。雲が出来ると太陽光に対する反射能(アルベド)が増大する。 すると気温が低下する。 つまり太陽活動が増加すると、地球近辺の磁場が強くなり、地球に到達する銀河宇宙線が減少し、雲が少なくなり、気温が上昇する。
先ほども紹介した通り、この「スペンスマークの説」は、
太陽活動の変化にともなう日射量の増減は0.1%程度と非常にわずかで,地球の温暖化や寒冷化を説明できるほどの変化ではない
『科学』(岩波書店)2009年12月号 特集 太陽活動の謎と発見 太陽活動と宇宙線,そして気候変動 - 東京大学宇宙線研究所
ことから、
太陽に関連する他の因子が気候に与える影響
『科学』(岩波書店)2009年12月号 特集 太陽活動の謎と発見 太陽活動と宇宙線,そして気候変動 - 東京大学宇宙線研究所
が推定され、
太陽活動に応じて増減する宇宙線が,大気の電離度を変化させ雲の量を増減させているという説がデンマークのスベンスマルク博士らのグループによって提唱された
『科学』(岩波書店)2009年12月号 特集 太陽活動の謎と発見 太陽活動と宇宙線,そして気候変動 - 東京大学宇宙線研究所
ものである。
つまり、「スペンスマークの説」では、
「その作用で雲が増えて気温が下がったり、豪雨を促進したりする」効果の大きさは、モデルから定量的なシミュレーションしているのではなく、太陽活動が気温変化の主原因となるように推定している。
簡単に言えば、太陽活動が気温変化の主原因という結論ありきの主張であり、従来理論では困難だからつじつま合わせの新理論を提唱しただけである。
導きたい結論に合わせた都合の良い仮説であって、科学的な検証が全くされていないのである。
宇宙線が短期的に減少するForbush_decreaseと呼ばれる現象と雲の量の関係を調べたところ、スベンスマーク説を裏付ける関係が見られなかった
日経エコロミー連載コラム第4回 - 国立環境研究所地球環境研究センター
とする研究結果や
気候モデルにスベンスマーク効果を入れて計算したところ、宇宙線の増減に伴う雲の変化は非常に小さかった
日経エコロミー連載コラム第4回 - 国立環境研究所地球環境研究センター
とする研究結果では、「スペンスマークの説」に否定的である。
宇宙線によるイオン化は高度が高いほど活発になるはず
「地球温暖化の原因は太陽の活動」説を否定する新論文(1) - Wired
なのに「スペンスマークの説」は
宇宙線と下層雲の関係に注目する一方で、これ以外の高度にある雲のことを完全に無視している
「地球温暖化の原因は太陽の活動」説を否定する新論文(1) - Wired
という問題も指摘されている。
「スペンスマークの説」の妥当性は次のグラフを見れば明らかだろう。
IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書 よくある質問と回答 第5章 FAQ5.1 - 気象庁
日経エコロミー 連載コラム 温暖化科学の虚実 研究の現場から「斬る」! 第4回 太陽活動が弱くなっている?—温暖化への影響は(江守 正多 - 国立研究開発法人 国立環境研究所 地球環境研究センター
実測データでは、宇宙線強度と世界平均気温の相関性は極めて乏しい。
よって、宇宙線強度が世界平均気温に支配的な影響を与えていないことは一目瞭然である。
これが示すことは、
1つは近年の地球温暖化の主要な原因が太陽活動の変動によるものではないこと
日経エコロミー連載コラム第4回 - 国立環境研究所地球環境研究センター
と
もう1つは、最近の太陽活動の弱まりが地球温暖化を打ち消すほどの大きさの効果をもたらしそうにはないこと
日経エコロミー連載コラム第4回 - 国立環境研究所地球環境研究センター
である。
「スペンスマークの説」が太陽活動で地球温暖化を説明しようとするものである限り、実測データと全く一致しないのである。
地球の気候が太陽に支配されていることは疑いようがない。
既に説明している通り、観測データでは、少し前の太陽活動が増大しているときにも地球は温暖化しているが、近年の太陽活動が縮小しているときには地球の温暖化がより激しくなっている。
IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書 よくある質問と回答 第5章 FAQ5.1 - 気象庁
これが示すことは、
1つは近年の地球温暖化の主要な原因が太陽活動の変動によるものではないこと
日経エコロミー連載コラム第4回 - 国立環境研究所地球環境研究センター
と
もう1つは、最近の太陽活動の弱まりが地球温暖化を打ち消すほどの大きさの効果をもたらしそうにはないこと
日経エコロミー連載コラム第4回 - 国立環境研究所地球環境研究センター
である。
しかし、太陽活動と気候が密接に関係しているという間接的な証拠は多い。 太陽黒点はガリレオが発見した。 それ以後、黒点の数は詳細に記録されている。 それによると17世紀にマウンダー極小期とよばれる、太陽総点がほとんど無い時期があった。 それと小氷期とよばれる寒冷期が一致している。
黒点が増えると、太陽からの可視光の放射は、常識に反して増える。 黒点周辺の温度が上昇するからである。 しかし放射の変化量はわずかであり、これが気温に大幅な影響を及ぼすとは考えにくい。 このことが、地球気候に対する太陽の影響を無視する有力な理由とされてきた。
「放射の変化量はわずかであり、これが気温に大幅な影響を及ぼすとは考えにくい」などという理由で「地球気候に対する太陽の影響を無視する有力な理由とされ」た事実は存在しない。
中世温暖期と小氷期の温度差の原因の1つが太陽活動によるものであることはほとんどの気象学者・気候学者が認めている。
同時期に火山活動が活発であった点を計算に入れると、現在推定されている日射エネルギーの変動の範囲で(スベンスマーク説のような増幅効果を考えなくても)おおむねつじつまが合
日経エコロミー連載コラム第4回 - 国立環境研究所地球環境研究センター
うとされている。
最近、地球温暖化問題がかまびすしいので、現在はとてつもなく高温期であるか、それに向かっていると思われるかもしれない。 しかし、歴史的に見ても、先に述べた中世温暖期は現在と同様、あるいはそれ以上に高温であった可能性もある。
既に説明した通り、各種エピソードは、定性的に一定の印象を誘導するものの、定量的な根拠とはならない。 定量的な研究としては、既に説明した古気候的研究が挙げられる。
IPCC第4次評価報告書第1作業部会報告書 技術要約 - 気象庁P.38
多数の古気候的研究を総合的に判断すると、小氷期の地球が寒冷であったことと、中世温暖期が小氷期より温暖だったことが窺われるが、中世温暖期は現在と比べれば寒冷であったと推測できる。
IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書技術要約 - 気象庁P.78
歴史時代からさらに遡ってみると、過去1.1万年前に地球は氷河期から脱して間氷期に突入した。
もっと長期的な視点でみるなら、地球は温暖化しているどころか寒冷化しているのである。 5億年前から現在に至る温度変化を概観すると、気温は大きく変動してきた。
この主張は以下の2点で馬鹿げている。
- 万年単位や億年単位での気温の変化は、今を生きる人には直接関係がない
- 「長期的な視点」における地球気温の変化は、化学や物理の法則を無視して起きるわけではない
まず、地球温暖化論とその対策は、せいぜいか百年、長く見積もっても千年程度の先の未来に向けた議論である。 そこに万年単位や億年単位の話を持ち込むことは馬鹿げている。
また、万年単位や億年単位での気温の変化は、そのような気温変化を起こす何らかの化学的または物理的現象によって引き起こされているのであり、化学や物理の法則を無視するわけではない。 そして、原因を全て検討しても、二酸化炭素の影響を無視しては現在の温暖化を説明できないし、近いうちに寒冷化が起きる兆候も全く見られない。 だから、万年単位や億年単位での気温の変化を持ち出したところで、現在の温暖化を否定する根拠にはならない。
というか、ここから先の松田卓也氏の言説は支離滅裂である。 結果原因逆転説や太陽原因説は、無知・無理解と無検証という態度の問題で片付けられる。 しかし、「長期的な視点」云々以降の話は、科学の基本的な理解力と思考力に疑問を投げかけざるを得ないほど酷い。 これ以上、現役時代の彼の業績を汚さないうちに誰か止めてあげるべきだろう。
いっぽう過去5千万年前の始新世高温期には現在の気温よりはるかに高く、シベリアの平均気温は18度Cもあり、極地方には氷はなかった。 現在の気温上昇など目ではないのである。 ではその当時は死の世界であったかというと、まったく逆で、生命に満ちあふれた時代であった。 二酸化炭素も現在の10倍近くあったのではないかと言われている。 二酸化炭素の多さと高温は植物にとって好適なので、植物は繁茂した。 するとその植物を食べる生物が繁栄し、さらにそれらをエサにする肉食動物も繁栄した。 生命一般にとっても人類にとっても、「温暖化は善、寒冷化は悪」なのである。
松田卓也氏は、ついに、気象・気候学だけでなく、生物学においても素人であることを忘れてしまったようだ。 「現在の気温よりはるかに高」い「5千万年前の始新世高温期」が「死の世界」ではなく「生命に満ちあふれた」という主張に何の意味があるのか。 「5千万年前」では原人さえ生まれていない。 当時繁栄していた種が現在繁栄している種と全く違うなら、当時繁栄していた種にとって「温暖化は善、寒冷化は悪」であることは、現在繁栄している種にとって「温暖化は善、寒冷化は悪」であることを示さない。 温暖化しようが、寒冷化しようが、今と大きく環境が変われば、現在繁栄している生物の多くは死滅するだろう。 そして、環境変化に適応できる遺伝子をもった生物は生き残る。 もちろん、一時的に生物が激減しても、万年単位の時間が経てば、進化した種はまた繁栄するだろう。 しかし、地球温暖化論とその対策は、今生きている人たちが生き残る方法を議論しているのである。 松田卓也氏は、将来進化した種が繁栄するならば現在の生物(人間含む)が大量に死んでも良いとでも主張するつもりなのか。
それではなぜ、地球温暖化の危機が叫ばれるのか。 それは人類、とくに温帯地方に住んで、その温和な気候を利用して発展した先進国は、現在の気候に適応しているからである。 現在の気温上昇は地質学的な悠長なものではなく、100年程度の時間で起きる変動である。 つまり、そのような気候変動に先進国は適応できないのではないかという危機感が、地球温暖化問題の真の原因であると私は考える。 つまり先進国の人聞にとっては、現在の温度、環境が最適であり、それを壊して欲しくないと考えているのだ。
田中宇流に言ってみよう。 中国やインドなどの発展途上国は、これから化石燃料をもやして発展して、西欧先進国並の生活をしたいと考えている。 しかし、先進国にとって見れば、これ以上、二酸化炭素を増やして現在の環境を破壊して欲しくないと考える。 だから地球温暖化問題とは、政治的に見るならば、ヨーロッパを中心とする先進国の既得権擁護運動であると私は考えている。 それに政治的正義の衣をかぶせたのが地球温暖化防止運動である。 田中宇は、地球温暖化問題とは、西欧とくにイギリスの陰謀であるとさえ主張する。
つぎにこれらの主張は特に特異なものではなく、日本の著名な学者たちによっても語られていることを次に紹介する。
誰か、これを日本語に翻訳してもらいたい(笑)。 慎重に読み解いてみると、次のような矛盾点が見つかる。
- 「気候変動に先進国は適応できない」のに、途上国は適応できるのか?
- 途上国には熱帯にある国も多いのに先進国が適応できない温暖化に適応できるのか?
- 途上国も適応できないなら「先進国の既得権擁護運動」にはならない
- 二酸化炭素は温暖化の原因になるのか、ならないのか?
- 温暖化の原因になるなら懐疑論が成立しない
- 温暖化の原因にならないなら「先進国の既得権擁護運動」にはならない
これに対して、「これらは田中宇氏の主張を紹介しただけであって、松田卓也氏の考えではない」と言う人もいるかもしれない。 しかし、この直後に松田卓也氏は「これらの主張は特に特異なものではなく、日本の著名な学者たちによっても語られている」と記載している。 よって、他人の主張を紹介しただけで自身が支持しているわけではないという主張は通らない。 尚、松田卓也氏が「日本の著名な学者たち」と言っている人たちの中に地球温暖化論の専門家である気象学者・気候学者が一人もいないことは既に説明したとおりである。 また、「次に紹介する」「日本の著名な学者たちによっても語られていること」には、この田中宇氏の荒唐無稽な陰謀論を支持するものはひとつも紹介されていない。
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