偏波・偏光

電磁波 

光は電磁波の一種である。

一般に、波には、縦波と横波があるとされる。 電磁波は横波である。 横波と言っても、地震波の横波(S波)とはやや性質が違う。 地震波の横波(S波)は進行方向と垂直な空間方向に振動している。 それに対して、電磁波は、電界や磁界の向きが進行方向に垂直ではあるが、その場で大きさや向きが変わるだけで、空間的に振動しているわけではない。

進行方向に垂直な向きは一方向だけではない。 ゆえに、横波には、さらに、偏波の向きがある。 電磁波では、電界の向きを偏波の向きと定義する。 偏波には、さらに、直線偏波、円偏波、楕円偏波などがある。 一般的なダイポール空中線等から放射される電磁波は直線偏波である。 90°位相がずれ、かつ、偏波の向きも90°ずれた2つの直線偏波を同量足し合わせると円偏波となる。

 

光の偏波は偏光と呼ぶ。 自然界に存在する光は円偏光か楕円偏光であることが多い。

偏光板 

偏光板(偏光フィルタ)と呼ばれる素子があり、これは特定の向きの直線偏光のみを通す性質を持っている。 円偏光や楕円偏光を偏光板に通すと、直線偏光成分だけが通過できる。 では、直線偏光を偏光板に通すとどうか。 これは、直線偏光の成分を、偏光板の通す向きと平行な成分と、それに直交する成分に分けて考える必要がある。

偏光と偏光板

直線偏光の偏光の向きと偏光板の通す向きの角度差をθとすると、平行な成分の振幅はcosθであり、直交する成分の振幅はsinθである。

結果、この平行な成分だけが通過するため、この直線偏光の振幅ベース透過率はcosθ、エネルギーベース透過率はcos2θとなる。 そして、偏光の向きは結果的にθだけずれる。

θが90°なら、振幅ベース透過率もエネルギーベース透過率も0となる。 この2枚の偏光板の間に、45°ずらした偏光板を挟むと、振幅ベース透過率はおおよそ1枚の偏光板の振幅ベース透過率の半分となる。 これは、直感的には不思議な気がするが、偏光板の性質を考察すれば理論通りの結果となる。

ここで、複数枚の偏光板を少しずつずらして重ね、最初と最後の偏光板板の角度差がちょうど90°になる場合、最初の偏光板を通った光は、出口で偏光の向きが90°曲げられることになる。 この場合の1枚の偏光板と比べた振幅ベース透過率を計算すると次表の通りとなる。

偏光板の数 1段階の角度差 1段階の振幅ベース透過率 全体の振幅ベース透過率
290°00.00%00.00%
345°70.71%50.00%
430°86.60%64.95%
618°95.11%77.81%
715°96.59%81.22%
1010°98.48%87.13%
1198.77%88.35%
1699.45%92.09%
1999.62%93.37%
3199.86%95.97%
4699.94%97.30%
9199.98%98.64%

面白いことに、偏光板の数が多いほど透過率は高くなる。

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