科学的人工地震研究
はじめに
何と、真っ当な科学研究で人工地震が可能であることが判明している。 その事実だけ強調すると、あたかも、陰謀論が真実であったかのように聞こえるだろう。 しかし、研究内容を詳細に検証してみると、陰謀論のような人工地震とは全く違うことが分かる。
- 注水によって比較的規模の小さな群発地震(改良大森公式に従う減衰特性を示さず、本震と余震の区別ができない)が発生する
- 震源は注水地点から水平垂直共数kmの範囲
- 注水開始後すぐに地震が頻繁し、注水中止後すぐに地震が激減する
- 地震のエネルギー源は地質的に蓄えられていた歪エネルギー
- 小さな地震で歪エネルギーを解放して大きな地震を防ぐ技術への応用が期待されている
CCS地震原因説にて、この理論を2004年の新潟県中越地震(M7.2)や2018年の北海道胆振東部地震(M6.7)に当てはめた検証を行う。
人工地震全般論
一般に、地下核爆発以外では大規模な人工地震は起こしにくいとされる。
様々な人間活動により微小な地震を起こす事があることは良く知られている(宇津、19991)など)。 たとえば、鉱物資源の採掘や岩石・土砂の採取(McGarr,19762);Richardson & Jordan,20023))、人工空洞の陥没、斜面崩落や雪崩、ダム貯水(Simpson, 19764))、石油や天然ガスの生産 (Segall,19895); Grasso, 19926); Segall et al., 19947))、地熱開発、各種の地下注水(Raleigh et al., 19728); Seeber et al., 20049))、地下核爆発(Boucher et al., 196910))や火薬の爆発等である。 ただし、地震とは言っても、地下核爆発以外はほとんどはきわめて小さな地震しか発生しない。 人間が感じることができるような大きさの地震が起きる事はごく稀である。
水圧破砕や流体地下注入やダム貯水などによる地下の間隙流体圧変化によっておきる人工誘発地震は,ほとんどM2級以下の微小地震であり,M3級以上の地震が起きることは少ない。 少数ながらM4級やM5級の人工誘発地震が起きることはあるが,M6級はごく稀な最大級の人工誘発地震であり,M7級以上は人工誘発地震としてはほぼありえない大きさと考えられていた。
ただし、地形的な理由で自然地震が多い場合は、「M7級以上の大地震を誘発する恐れ」があるとされる。
オクラホマ州は,米国中部では比較的自然地震が多い地域である。 南オクラホマ・オーラコゲン(Southern Oklahoma Aulacogen)と呼ばれる古いリフト構造の存在が,比較的自然地震が多い一因である。 同じく米大陸中央部にあって,似た古いリフト構造であるリールフット・リフト(Reelfoot Rift) が米国中部最大のM7.6ニューマドリッド大地震を1811-1812年に続発している。 南オクラホマ・オーラコゲンは断層としてはあまり活動的ではないが,高圧大量の注水により再活性化すれば,M7級以上の大地震を誘発する恐れもある。
また、ダムは大きな誘発地震を引き起こすケースが稀にある。
従来,インドのKoynaダムによるM6.3地震が最大のダム誘発地震とされていたが,2008年中国四川大地震により M8級のダム誘発地震が発生しうることが示された(コラム 8)。
ダムが原因と疑われる地震は、M6級が数件ある。 尚、四川大地震原因はダム貯水なのか - SciencePortalChinaのように、M8級の中国四川大地震はダム誘発地震でないとする説もある。
- ほとんどのダム誘発地震は5km以内で発生しているが、四川大地震の震央は紫平鋪ダムから5kmを超えている(筆者注:GoogleMapで測定すると約3km)
- 紫平鋪ダムは地震活動度の高い地区に位置していて、ダムが建設される前に少なくとも5回もの大きな地震が発生している
- 四川大地震は史上最強のダム誘発地震のエネルギーの200倍
- ダムが誘発地震を引き起こす確率は低い
- 四川大地震には、前震がないので、ダム誘発地震の特徴と食い違っている
- 四川大地震は逆断層型だが、これまで逆断層型のダム誘発地震の事例はない
人工誘導地震
デンバー群発地震
詳細はデンバーの人工地震に記載する。
オクラホマ群発地震
詳細はオクラホマの人工地震に記載する。
浦項地震(2017年)
詳細は浦項の人工地震に記載する。
中国栄昌天然ガス田の誘発地震
第3図に注水の履歴,地震時系列及び主な統計パラメータを示す. 注水履歴と調和的に,地震活動が三つの特徴的なフェーズ(期間)に分けることができる. フェーズI(1988–1992)は初期注入期間(低い注入レートと圧力)に対応し,地震活動は時間がたつにつれて次第に増加する発生率,減少するb値,増加するSCL(空間相関距離)とD2(震源分布のフラクタル次元)を示す. フェーズII(1993-1997)は月間注入量8000m3を超えた期間で,高い地震発生率,低くて短期間に変動するb値,および減少するSCLが特徴づける.フェーズIII(1998-)は主要注入井の注入レートが減少する期間に対応し,減少する地震発生率,低b値,増加するSCLを示す.
第4図にフェーズIIに対し地震の月頻度と主要注入井Luo-4における月注入量を示す.地震の日頻度と日注入量も示されている. 第4c図に地震の月頻度とLuo-4における月注入量との関係を示し,二者の間に正の相関が認められる. また,日注入量曲線のピークの後数日~数週間遅れて地震発生頻度のピークが来ることも認められる.
地震活動の変化はETASモデル手法により検出できた. 第5図はその結果を示したもので,ETASにより検出した地震活動の変化点は第3図に示している特徴的なフェーズと良く一致している. フェーズIでは8%の地震が外部的に(つまり注水)引き起こされ,残りは大森-タイプの自己誘発活動である. フェーズIIではランダム成分が45%に上り,外部的トリガーが重要であることを意味する.フェーズIIIにおいてはランダム成分が支配的になり,大森-タイプの自己誘発活動は非常に低いことが分かった. 注水誘発地震のメカニズムとして間隙圧の上昇による既存断層のクローン破壊応力(CFS,Coulomb Failure Stress)の変化(ΔCFS)が要因である. 例えば,1MPaの間隙圧の増加で,あらゆる方向の断層に約+0.5MPaのΔCFF(断層の摩擦係数が0.5とすれば)を付加することになる. これは断層の破壊強度が約0.5MPa低下することと等しい. 以上の結果によると,注水初期段階ではセルフトリガーがメインであったが,後半では外部トリガーが支配的な要素となった. これは地震活動に伴い応力が解放され,注水による大きなΔCFFがなければ地震自身で引き起こしたΔCFFだけで地震を誘発できなくなることを意味する.
グラフを見ると注水と地震の発生の時間的相関性が明確である。 注水前にもM3級の地震は10年に5〜6回、有感地震全体では年に2〜3回の頻度で発生しており、ある程度は注水と無関係な自然地震も含まれると考えられる。 本文では、「地震が外部的に(つまり注水)引き起こされ」た確率が計算されているが、その「外部的トリガー」が「つまり注水」とする根拠は何も示されていない。 注水前にも一定頻度の地震が起きていることから、「セルフトリガー」以外の「外部的トリガー」には自然地震も一定程度含まれると考えられる。
尚、Hはhorizon(水平)の意味であろうから、M4.9以上の地震は水平距離13km以内で発生しているようである。
第187回地震予知連絡会 12-13 注水誘発地震の統計的な特徴 - 地震予知連絡会
フェーズⅠ(1988–1992)では本震が誘発した余震が92%と計算されているが、図ではどれが本震で余震かは区別されていない。 この図では、注水井からの距離と地震の規模の関係が読み取れ、注水井から遠くなるほど規模が小さくなることがわかる。 M4級以上の地震は注水井から10数km以内、もしくは、断層近辺でのみ発生している。
ダムによる誘発地震
詳細はダムによる人工地震に記載する。
全米研究評議会(National Research Council)の報告書
Executive Summary (重要な要旨)
Earthquakes attributable to human activities are called induced seismic events or induced earthquakes. In the past several years induced seismic events related to energy development projects have drawn heightened public attention. Although only a very small fraction of injection and extraction activities at hundreds of thousands of energy development sites in the United States have induced seismicity at levels that are noticeable to the public, seismic events caused by or likely related to energy development have been measured and felt in Alabama, Arkansas, California, Colorado, Illinois, Louisiana, Mississippi, Nebraska, Nevada, New Mexico, Ohio, Oklahoma, and Texas.
人の活動に起因する地震は、誘発地震事象または誘発地震と呼ばれる。 過去数年の間に、エネルギー開発プロジェクトに関連した誘発地震事象が注目を集めている。 米国の何十万ものエネルギー開発拠点でのごく一部の注入および採掘活動だけが一般に目立つレベルの地震活動を誘発したが、アラバマ州、アーカンソー州、カリフォルニア州、コロラド州、イリノイ州、ルイジアナ州、ミシシッピ州、ネブラスカ州、ネバダ州、ニューメキシコ州、オハイオ州、オクラホマ州、およびテキサス州では、エネルギー開発によって引き起こされたまたはエネルギー開発に関連したと思われる地震事象が測定され、感じられている。
Anticipating public concern about the potential for energy development projects to induce seismicity, the U.S. Congress directed the U.S. Department of Energy to request that the National Research Council examine the scale, scope, and consequences of seismicity induced during fluid injection and withdrawal activities related to geothermal energy development, oil and gas development including shale gas recovery, and carbon capture and storage (CCS). The study was also to identify gaps in knowledge and research needed to advance the understanding of induced seismicity; identify gaps in induced seismic hazard assessment methodologies and the research to close those gaps; and assess options for steps toward best practices with regard to energy development and induced seismicity potential.
エネルギー開発プロジェクトが地震を誘発する可能性についての一般の懸念を予測して、米国議会は、National Research Councilに対して地熱エネルギー開発、シェールガス回収を含む石油・ガス開発および二酸化炭素貯留(CCS)に関連した流体注入および回収活動中に引き起こされる地震活動の規模、範囲、および影響の調査を依頼するよう米国エネルギー省に要請した。 この研究はまた、1)誘発地震活動の理解を深めるために必要な知識と研究のギャップを特定する。2)誘発地震危険評価方法論におけるギャップとそれらのギャップを埋めるために必要な研究を特定する。3)エネルギー開発と誘発地震活動の可能性に関して、ベストプラクティスに向けた中間段階の選択肢を評価する。
Three major findings emerged from the study:
- The process of hydraulic fracturing a well as presently implemented for shale gas recovery does not pose a high risk for inducing felt seismic events.
- Injection for disposal of wastewater derived from energy technologies into the subsurface does pose some risk for induced seismicity, but very few events have been documented over the past several decades relative to the large number of disposal wells in operation.
- CCS, due to the large net volumes of injected fluids, may have potential for inducing larger seismic events.
この研究から3つの主要な発見が明らかになった。
- シェールガス回収のために現在実施されている井戸を水圧破砕するプロセスは、有感地震事象を誘発する危険性が高いわけではない。
- エネルギー技術から発生する廃水を地下に注入することは誘発地震活動の危険性をはらんでいるが、運転中の多数の処分井戸に関して過去数十年間に報告された事象はほとんどない。
- CCSは、注入される流体の正味量が大きいため、より大きな地震が発生する可能性がある。
Induced seismicity associated with fluid injection or withdrawal is caused in most cases by change in pore fluid pressure and/or change in stress in the subsurface in the presence of faults with specific properties and orientations and a critical state of stress in the rocks. The factor that appears to have the most direct consequence in regard to induced seismicity is the net fluid balance (total balance of fluid introduced into or removed from the subsurface), although additional factors may influence the way fluids affect the subsurface. While the general mechanisms that create induced seismic events are well understood, we are currently unable to accurately predict the magnitude or occurrence of such events due to the lack of comprehensive data on complex natural rock systems and the lack of validated predictive models.
流体の注入または引き抜きに関連する地震の誘発は、ほとんどの場合、特定の性質と方向の断層の岩石中の臨界応力状態下で間隙水圧の変化と(または)地下の応力の変化によって引き起こされる。 誘導地震に関して最も直接的な影響を与えると思われる要因は純流体バランス(地下に注入された、または地下から除去された流体の総バランス)であるが、流体が地下に与える影響に追加の要因が反映される。 誘発地震事象を生成する一般的なメカニズムはよく理解されているが、複雑な天然岩石系に関する包括的なデータがなく、検証済みの予測モデルがないため、現在のところそのような事象の規模や発生を正確に予測することはできない。
Energy technology projects that are designed to maintain a balance between the amount of fluid being injected and withdrawn, such as most oil and gas development projects, appear to produce fewer seismic events than projects that do not maintain fluid balance. Hydraulic fracturing in a well for shale gas development, which involves injection of fluids to fracture the shale and release the gas up the well, has been confirmed as the cause for small felt seismic events at one location in the world.
ほとんどの石油およびガス開発プロジェクトのように、注入および回収される流体の量のバランスを維持するように設計されているエネルギー技術プロジェクトは、流体のバランスを維持しないプロジェクトより地震事象の発生が少ないように見える。 シェールガスを開発するための坑井内の水圧破砕(これは頁岩を破砕してガスを坑井の上方に放出することを含む)は、世界のある場所で小さな有感地震事象の原因として確認されている。
Wastewater disposal from oil and gas production, including shale gas recovery, typically involves injection at relatively low pressures into large porous aquifers that are specifically targeted to accommodate large volumes of fluid. The majority of wastewater disposal wells do not pose a hazard for induced seismicity, though there have been induced seismic events with a very limited number of wells. The long-term effects of a significant increase in the number of wastewater disposal wells for induced seismicity are unknown.
シェールガス回収を含む石油およびガス生産からの廃水処理は、通常、比較的大量の流体を収容することを目的とした比較的低い圧力で大きな多孔質帯水層への注入を伴う。 非常に限られた数の井戸で誘導地震事象があったが、大多数の廃水処分井戸は誘導地震活動の危険を引き起こさない。 誘発地震活動のための廃水処理井戸数の大幅な増加の長期的な影響は知られていない。
Projects that inject or extract large net volumes of fluids over long periods of time such as CCS may have potential for larger induced seismic events, though insufficient information exists to understand this potential because no large-scale CCS projects are yet in operation. Continued research is needed on the potential for induced seismicity in large-scale CCS projects.
CCSのように長期間にわたって大量の流体を注入または抽出するプロジェクトでは、より大きな誘発地震事象が発生する可能性があるが、大規模なCCSプロジェクトはまだ運用されていないため、この可能性を理解するには情報が不十分である。 大規模CCSプロジェクトにおける誘発地震の可能性についての継続的な研究が必要である。
Induced seismicity in geothermal projects appears to be related to both net fluid balance considerations and temperature changes produced in the subsurface. Different forms of geothermal resource development appear to have differing potential for producing felt seismic events. High-pressure hydraulic fracturing undertaken in some geothermal projects has caused seismic events that are large enough to be felt. Temperature changes associated with geothermal development of hydrothermal resources have also induced felt seismicity.
地熱プロジェクトによる誘発地震は、純流体バランスの考慮事項と地下で生じる温度変化の両方に関係しているように思われる。 地熱資源開発の形態が異なれば、有感地震を発生させる可能性が異なるようである。 いくつかの地熱プロジェクトで行われた高圧水圧破砕は、体感できるほどに十分に大きい地震事象を引き起こした。 水熱資源の地熱開発に伴う温度変化も有感地震活動を引き起こしている。
Governmental response to induced seismic events has been undertaken by a number of federal and state agencies in a variety of ways. However, with the potential for increased numbers of induced seismic events due to expanding energy development, government agencies and research institutions may not have sufficient resources to address unexpected events. Forward-looking interagency cooperation to address potential induced seismicity is warranted.
誘発地震事象に対する政府の対応は、さまざまな方法で多くの連邦および州の機関によって行われてきた。 しかし、エネルギー開発の拡大により誘発地震事象の数が増加する可能性があるため、政府機関や研究機関は予期しない事象に対処するのに十分なリソースを持っていない可能性がある。 潜在的な誘発地震に対処するための将来を見据えた省庁間協力が保証される。
Methodologies can be developed for quantitative, probabilistic hazard assessments of induced seismicity risk. Such assessments should be undertaken before operations begin in areas with a known history of felt seismicity and updated in response to observed, potentially induced seismicity. Practices that consider induced seismicity both before and during the actual operation of an energy project can be employed in the development of a “best practices” protocol specific to each energy technology and site location.
誘発地震リスクの定量的、確率論的ハザード評価のための方法論を開発することができる。 このような評価は、有感地震の歴史が知られている地域で操業が開始される前に行われ、観測された潜在的誘発地震に対応して更新されるべきである。 エネルギープロジェクトの実際の運用前および運用中の両方で誘導地震を考慮したプラクティスは、各エネルギー技術および設置場所に固有の「ベストプラクティス」プロトコルの開発に採用できる。
Although induced seismic events have not resulted in loss of life or major damage in the United States, their effects have been felt locally, and they raise some concern about additional seismic activity and its consequences in areas where energy development is ongoing or planned. Further research is required to better understand and address the potential risks associated with induced seismicity.
誘発地震事象は米国での人命の損失や大きな損害をもたらさなかったが、それらの影響は地元で感じられ、そして彼らは追加の地震活動とエネルギー開発が進行中または計画されている地域における影響についていくらかの懸念を提起する。 誘発地震に関連する潜在的なリスクをよりよく理解し対処するためにさらなる研究が必要である。 Summary (概要)
Although the vast majority of earthquakes that occur in the world each year have natural causes, some of these earthquakes and a number of lesser-magnitude seismic events are related to human activities and are called induced seismic events or induced earthquakes. Induced seismic activity has been documented since at least the 1920s and has been attributed to a range of human activities, including the impoundment of large reservoirs behind dams, controlled explosions related to mining or construction, and underground nuclear tests. In addition, energy technologies that involve injection or withdrawal of fluids from the subsurface can also create induced seismic events that can be measured and felt. Historically known induced seismicity has generally been small in both magnitude and intensity of ground shaking. Recently, several induced seismic events related to energy technology development projects in the United States have drawn heightened public attention. Although none of these events resulted in loss of life or significant structural damage, their effects were felt by local residents, some of whom also experienced minor property damage. Particularly in areas where tectonic (natural) seismic activity is uncommon and energy development is ongoing, these induced seismic events, though small in scale, can be disturbing to the public and raise concern about increased seismic activity and its potential consequences.
毎年世界で発生する大多数の地震は自然の原因を持っているが、これらの地震のいくつかとより規模の小さい地震事象のいくつかは人間の活動に関連しており、誘発地震事象または誘発地震と呼ばれている。 誘発地震活動は少なくとも1920年代から報告されており、ダムの背後にある大きな貯水池の貯水、採掘や建設に関連した管理された爆発、地下核実験を含むさまざまな人間活動によるものとされてきた。 加えて、地下からの流体の注入または回収を伴うエネルギー技術もまた、測定可能な有感誘発地震事象を生み出す可能性がある。 歴史的に知られている誘発地震活動は、一般的に規模と震度の両方において小さかった。 最近、米国におけるエネルギー技術開発プロジェクトに関連したいくつかの誘発地震事件が注目を集めている。 これらの出来事のどれもが死者または重大な建築物被害をもたらさなかったけれども、それらの影響は地元住民によって感じられ、そして、そのうちの何人かはまた軽い物的損害を経験した。 特に地殻(自然)地震活動が珍しく、エネルギー開発が進行中の地域では、これらの誘発地震事象は小規模ではあるが公衆を害し、地震活動の増加とその潜在的影響についての懸念を生じさせることがある。
This report addresses induced seismicity that may be related to four energy development technologies that involve fluid injection or withdrawal: geothermal energy, conventional oil and gas development including enhanced oil recovery (EOR), shale gas recovery, and carbon capture and storage (CCS). These broad categories of energy technologies, including underground wastewater disposal, are discussed in detail as they relate to induced seismic events. The study arose through a request by Senator Bingaman of New Mexico to Department of Energy (DOE) Secretary Stephen Chu. The DOE was asked to engage the National Research Council to examine the scale, scope, and consequences of seismicity induced during the injection of fluids related to energy production; to identify gaps in knowledge and research needed to advance the understanding of induced seismicity; to identify gaps in induced seismic hazard assessment methodologies and the research needed to close those gaps; and to assess options for interim steps toward best practices with regard to energy development and induced seismicity potential. The report responds to this charge and aims to provide an understanding of the nature and scale of induced seismicity caused by or likely related to energy development and guidance as to how best to proceed with safe development of these technologies while minimizing their potential to induce earthquakes that can be felt by the public.
このレポートは、流体の注入または回収を含む4つのエネルギー開発技術である地熱エネルギー、石油増進回収(EOR)を含む従来の石油およびガス開発、シェールガス回収、および二酸化炭素貯留(CCS)に関連すると思われる誘発地震活動を取り上げている。 地下廃水処理を含むこれらの幅広いカテゴリーのエネルギー技術は、誘発地震事象に関連しているので詳細に論じられている。 この研究は、ニューメキシコ州のBingaman上院議員からエネルギー省(DOE)のStephen Chu長官への依頼によって行われた。 DOEは、National Research Councilに、エネルギー生産に関連する流体の注入中に引き起こされる地震活動の規模、範囲、および影響を調査するよう依頼するよう求められた。 1)誘発地震活動の理解を深めるために必要な知識と研究のギャップを特定する。 2)誘発地震危険評価方法論におけるギャップとそれらのギャップを埋めるために必要な研究を特定すること。 3)エネルギー開発と誘発地震活動の可能性に関して、ベストプラクティスに向けた中間段階の選択肢を評価すること。 本報告はこの主張に対応し、地震発生の可能性を最小限に抑えながらこれらの技術の安全な開発を進める最善の方法に関して、エネルギー開発によって引き起こされるまたは関連する可能性が高い有感誘発地震活動の性質と規模を理解することを目的とする。
Induced Seismicity Potential in Energy Technologies (2013) - the National Academies Press
重要部分を抜き出すと次のようになる。
- エネルギー開発によって引き起こされたまたはエネルギー開発に関連したと思われる地震事象が測定されている
- 米国の何十万ものエネルギー開発拠点でのごく一部の注入および採掘活動だけが一般に目立つレベルの地震活動を誘発した
- 誘発地震事象は米国での人命の損失や大きな損害をもたらさなかった
- シェールガス回収のために現在実施されている井戸を水圧破砕するプロセスは、有感地震事象を誘発する危険性が高いわけではない
- 大規模CCSは、他のエネルギー開発と比較して相対的により大きな地震が発生する可能性があるが、可能性を検証するには情報が足りない
- 大規模CCSにおける誘発地震の可能性についての継続的な研究が必要である
- 現在のところ、誘発地震事象の規模や発生を正確に予測することはできない
大規模CCSについては、相対的により大きな地震が発生する可能性が指摘されているが、絶対的に大きな地震の可能性が指摘されているわけではない。 中止すべきとは書かれておらず、「継続的な研究が必要」とされている。
Carbon Capture and Storage (二酸化炭素貯留)
For several years researchers have explored various methods for reducing carbon emissions to the atmosphere, such as by capturing CO2 and developing means for storing (or sequestering) it permanently underground. If technically successful and economical, CCS could become an important technology for reducing CO2 emissions to the atmosphere. The risk of induced seismicity from CCS is currently difficult to accurately assess. With only a few small-scale commercial projects overseas and several small-scale demonstration projects under way in the United States, few data are available to evaluate the induced seismicity potential of this technology (Table S.1); these projects so far have involved very small injection volumes. CCS differs from other energy technologies in that it involves continuous CO2 injection at high rates under pressure for long periods of time, and it is purposely intended for permanent storage (no fluid withdrawal). Given that the potential magnitude of an induced seismic event correlates strongly with the fault rupture area, which in turn relates to the magnitude of pore pressure change and the rock volume in which it exists, large-scale CCS may have the potential for causing significant induced seismicity. CCS projects that do not cause a significant increase in pore pressure above its original value will likely minimize the potential for inducing seismic events.
数年前から、研究者たちは、CO2を捕獲し、それを永久的に地下に貯蔵する(あるいは隔離する)ための手段を開発するような、大気への炭素放出を減らすための様々な方法を探究してきた。 技術的に成功し、かつ、経済的であれば、CCSは大気中へのCO2排出量を削減するための重要な技術になる可能性がある。 CCSから誘発された地震活動のリスクは現在正確に評価するのが難しい。 海外では小規模の商業用プロジェクトがいくつかあり、米国で小規模な実証プロジェクトがいくつか進行中であるため、このテクノロジによって引き起こされる地震の可能性を評価するためのデータはほとんどない(表S.1) これらのプロジェクトは今までのところ非常に少量の注入量を含む。 CCSは、加圧下での高速での連続的なCO2注入を含むという点で他のエネルギー技術とは異なり、意図的に永久保存を目的としている(液体の抜き取りなし)。 誘発地震活動の規模が断層の破断面積と強く相関していることを考えると、孔隙圧変化の規模とそれが存在する岩石の体積に関係しているので、大規模CCSはかなりの誘発地震を引き起こす可能性がある。 間隙水圧が当初の値を大幅に上回らないCCSプロジェクトは、誘発地震事象の可能性を最小限に抑えるだろう。
Induced Seismicity Potential in Energy Technologies (2013) - the National Academies Press
重要部分を抜き出すと次のようになる。
- CCSの地震の可能性を評価するためのデータがほとんどなく、現在正確に評価するのが難しい
- 大規模CCSはかなりの誘発地震を引き起こす可能性がある
- CCSの誘発地震は間隙水圧によって変わる可能性がある
基本的に、Executive Summary (重要な要旨)やSummary (要旨)に書かれていることと大差はない。
スタンフォード大学の研究チーム
CCS地震原因説を唱える人は「スタンフォード大学の研究チームは『CCSは大きな地震を誘発する可能性がある』と指摘している」主張する。 その「スタンフォード大学の研究チーム」とは地球物理学のMark Zoback教授と環境地球科学のSteven Gorelick教授であろう。 しかし、彼らの主張は、CCS地震原因説を唱える人が言っている内容とかなり違う。
Our principal concern is not that injection associated with CCS projects is likely to trigger large earthquakes; the problem is that even small to moderate earthquakes threaten the seal integrity of a CO2 repository.
私たちの主な関心事は、CCSプロジェクトに関連する注入が大地震を引き起こす可能性があるということではなく、問題は、小規模から中程度の地震でも、CO2貯蔵庫の封印の健全性を脅かすことです。
Earthquake triggering and large-scale geologic storage of carbon dioxide - PNAS
Zoback has previously described wastewater-induced quakes as manageable, low-risk events. Carbon injection is unlikely to trigger large, destructive earthquakes, the professors argue, but "the implications are different if you're trying to store carbon for thousands of years." Zoback said.
Zobackは以前、排水による地震を扱いやすい低リスクの事象として説明している。 炭素注入は大規模で破壊的な地震を引き起こす可能性は低いと教授は主張しているが、「何千年もの間炭素を貯蔵しようとしているならば、その意味は異なる」とZobackは言った。
Zoback and Gorelick state that even a fault slip of a few centimeters could allow stored CO2 to reach the surface – a serious concern, since the researchers argue that carbon repositories need a leak rate of less than 1 percent every thousand years to be effective.
ZobackとGorelickは、数センチメートルの断層すべりでさえも貯留されたCO2が地表に達することを許すことができると述べている。 深刻な懸念として、研究者らは、炭素貯蔵所が1000年毎に1パーセント未満の漏れ率を必要とすると主張している。
Zoback believes that storing large amounts of carbon dioxide underground could trigger small to moderately sized earthquakes which, unlikely to hurt people or property, are still enough to break the seal on the storage of carbon, allowing it to seep back into the atmosphere.
Zobackは、地下に大量の二酸化炭素を貯蔵すると、人や財産を傷つけることはないと思われる中小規模の地震を引き起こす可能性があり、それでも炭素貯蔵の封印を破って大気中に浸透することを可能にすると信じる。
これらから彼らの主張をまとめると次の通りとなる。
- 大規模CCSは人や財産を傷つけることはないと思われる中小規模の地震を引き起こす可能性がある
- CCSが大規模で破壊的な地震を引き起こす可能性は低い
- 中小規模の地震でも、CO2貯蔵庫の封印の健全性を脅かす
- よって、大規模CCSは実効性に疑問がある
Because of the critically stressed nature of the crust, fluid injection in deep wells can trigger earthquakes when the injection increases pore pressure in the vicinity of preexisting potentially active faults. The increased pore pressure reduces the frictional resistance to fault slip, allowing elastic energy already stored in the surrounding rocks to be released in earthquakes that would occur someday as the result of natural geologic processes (8). This effect was first documented in the 1960s in Denver, Colorado when injection into a 3-km-deep well at the nearby Rocky Mountain Arsenal triggered earthquakes (9). Soon thereafter it was shown experimentally (10) at the Rangely oil field in western Colorado that earthquakes could be turned on and off by varying the rate at which water was injected and thus modulating reservoir pressure. In 2011 alone, a number of small to moderate earthquakes in the United States seem to have been triggered by injection of wastewater (11). These include earthquakes near Guy, Arkansas that occurred in February and March, where the largest earthquake was M 4.7. In the Trinidad/Raton area near the border of Colorado and New Mexico, injection of produced water associated with coalbed methane production seems to have triggered a number of earthquakes, the largest being a M 5.3 event that occurred in August. Earthquakes seem to have been triggered by wastewater injection near Youngstown, Ohio on Christmas Eve and New Year’s Eve, the largest of which was M 4.0. Although the risks associated with wastewater injection are minimal and can be reduced even further with proper planning (11), the situation would be far more problematic if similar-sized earthquakes were triggered in formations intended to sequester CO2 for hundreds to thousands of years.
地殻の重要性が非常に強調されているため、深井戸への流体注入は、既存の潜在的に活発な断層の近くで注入が間隙水圧を高めると地震を引き起こす可能性がある。 間隙水圧が上昇すると断層すべりに対する摩擦抵抗が減少し、周囲の岩石に既に蓄えられている弾性エネルギーが、自然の地質学的プロセスの結果としていつか起こる地震で解放されることを可能にする(8)。 1960年代にコロラド州デンバーでこの現象が最初に記録されたのは、近くのロッキー山脈Arsenalの深さ3kmの井戸に地震が発生したときである(9)。 その後まもなく、コロラド州西部のRangely油田で、水の注入速度を変えて貯留層の圧力を調節することで地震を発生および停止できることが実験的に示さた(10)。 2011年だけでも、米国の小規模から中規模の地震の多くは、廃水の注入によって引き起こされたようである(11)。 これらの地震には、最大の地震がM4.7であった2月と3月に発生したアーカンソー州ガイ近郊の地震が含まれる。 コロラド州とニューメキシコ州との国境近くのトリニダード/ラトン地域では、炭層メタン生産に伴う生産水の注入が多数の地震を引き起こしたようであり、最大のものは8月に発生したM5.3事象である。 地震は、オハイオ州ヤングスタウンのクリスマスイブと大晦日の近くでの排水注入によって引き起こされたようで、その最大のものはM4.0だった。 廃水注入に伴うリスクは最小限であり、適切な計画を立てることでさらに減らすことができるが(11)、数百年から数千年の間CO2を隔離することを意図した地層で同じ規模の地震が引き起こされた場合、状況ははるかに問題になります。
As mentioned above, sequences of small to moderate earthquakes were apparently induced by injection of waste water near Guy, Arkansas, Trinidad, Colorado, and Youngstown, Ohio in 2011 and on the Dallas-Ft. Worth airport, Texas. Although these earthquakes were widely felt, they caused no injury, and only the Trinidad earthquake resulted in any significant damage. However, had similar earthquakes been triggered at sites where CO2 was being injected, the impacts would have raised pressing and important questions: Had the seal been breached? Was it still safe to leave previously injected CO2 in place?
前述したように、2011年のガイ、アーカンソー、トリニダード、コロラド州、オハイオ州ヤングスタウン付近、およびテキサス州ダラスフォートワース空港の近くで、小規模から中程度の地震のシーケンスが廃水の注入によって引き起こされたようだ。 これらの地震は広く感じられたが、怪我人はなく、トリニダード地震だけが重大な被害をもたらした。 しかし、CO2が圧入されている場所で同様の地震が引き起こされたとすれば、その影響は差し迫った重要な問題を提起していただろう。 封印は破られたか? 以前に注入したCO2を元の場所に残しても安全か?
Earthquake triggering and large-scale geologic storage of carbon dioxide - PNAS
中小規模の誘発地震のほとんどは怪我人を出していないが1件だけ「重大な被害をもたらした」事例があるとしている。 では、「重大な被害」とはどの程度かと言えば、調べようにもほとんど情報がない。 アメリカの地震と津波の歴史を分析、起こりやすい地域はどこ?災害に関する英語表現 - イナミーズ英会話によれば、岩滑りと数件の家が地震によりダメージを受けた程度で大きな被害は発生していないようである。 大きな被害が出ていれば報道されているはずであり、情報がないことは考えにくい。 全米研究評議会(National Research Council)の報告書にも「米国におけるエネルギー技術開発プロジェクトに関連したいくつかの誘発地震事件」の「どれもが死者または重大な建築物被害をもたらさなかった」としていることからも、大きな被害があったとは考えにくい。 以上のことから、岩滑りと数件の家が地震によりダメージを受けた程度で大きな被害は発生していないという情報は信じて良いように思われる。
この論文では、完全に自然に発生した大きな地震の危険性にも言及しているが、それとCCSの関連性には触れていない。 しかし、言外に大きな地震を誘発する可能性がゼロではないなら、実効性に疑問があるプロジェクトを進めるべきではないと主張しているようにも聞こえる。 しかし、この論文には、次のようなことも書かれている。
Because of the need to carefully monitor CO2 repositories with observation wells, geophysical and geochemical monitoring systems, etc., it is likely that most sites will have to be located on land or very near shore. Otherwise, highly porous reservoirs located offshore, like those adjacent to salt domes along the US Gulf Coast, would be relatively ideal sites because salt formations are known to be excellent seals for hydrocarbons.
観測井戸、地球物理学的および地球化学的監視システムなどを用いてCO2貯蔵所を注意深く監視する必要があるため、ほとんどのサイトは陸上または海岸近くに配置する必要があると思われる。 さもなければ、塩の形成が炭化水素のための優秀な封印であることが知られているので、沖合に位置する非常に多孔質の貯水池、例えばアメリカ湾岸沿いの塩ドームに隣接するものは比較的理想的な場所だろう。
Depleted oil and gas reservoirs are potentially suitable for CO2 storage for a variety of reasons—an infrastructure of wells and pipelines exist, and there is a great deal of geologic and subsurface property data available to characterize the subsurface from decades of study. In addition, from an earthquake-triggering perspective, depleted reservoirs are attractive because at the time injection of CO2 might start, the pore pressure would be below the value that existed before petroleum production. Thus, there could be significant injection of CO2 before pressures increase to preproduction values, thereby reducing the potential for triggering earthquakes.
枯渇した石油とガスの貯留層は、さまざまな理由でCO2貯留に適している可能性がある。 井戸やパイプラインのインフラストラクチャが存在し、何十年もの研究から地下を特徴付けるために利用できる地質および地下特性データがたくさんある。 さらに、地震を誘発する観点からは、CO2の注入が開始される時点で細孔圧力が石油生産前に存在していた値を下回るため、枯渇した貯留層は魅力的だ。 そのため、圧力が生産前の値に増加する前にCO2が大量に注入される可能性があり、それによって地震が発生する可能性が低くなる。
Earthquake triggering and large-scale geologic storage of carbon dioxide - PNAS
誘発地震のリスクの少ないCCSに適した場所の例として、「枯渇した石油とガスの貯留層」等を挙げている。 この論文が言っていることは、危険だから止めろと言っているのでもなく、効果に疑問があるから止めろと言っているのでもなく、メリットやデメリットをしっかりと検証して様々な可能性を検討すべきだということである。
高橋慧(北大院)氏、藤井義明(北海道大学)氏の論文
概要だけを読むと、CCSやシェールガス採掘が大規模地震を誘発すると指摘しているように見えなくもない。 しかし、この論文が指摘していることは、大規模地震の危険性ではない。 他の人工地震研究と同じく、CCSやシェールガス採掘が中小規模の地震を引き起こすことを指摘している。 違う点は、中小規模の地震の評価である。 論文では、「社会的に容認できる震度を1と仮定する」と、中小規模の地震であっても社会的に容認されないということである。 もちろん、社会的に容認できる震度がいくらかという点については、議論の余地があろう。
汚染水注入6事例、地熱回収3事例(塩水),地震調査1事例(Table1)について、注入体積と誘発地震の最大マグニチュードとの関係を求めた(Fig. 2, Eq. 1)。
M =0.715logV-0.0655
- M : Maxmum magnitude
- V : Total volume of fluid injection (m3)
同様の試みは Nicol et al. (2011)によって行われており、ほぼ同じ式が得られている。
グラフを見ればわかる通り、1千万m3もの大量注入でM5クラスの地震が誘発される。 日本で行われているCCS実証実験はこれよりずっと小規模であり、懸念されるのはM4以下の地震であろう。
また、ランダムに抽出した我が国で2004~2013年に発生した震度1~6強の96個の地震についてマグニチュード・深度と最大震度との関係を求めた(Fig. 3. Eq. 2)。
震源と人里との距離を考慮せずに「ランダムに抽出した」データで一般化することは少し乱暴と言わざるを得ない。 なぜなら、震源が人里から遠ければ、それだけ、人里における震度は低くなることが期待できるからである。 だから、震源と人里との距離もパラメータとした3次元の関数を導いて、人里からどれだけ遠ざけるべきかを論じるのが妥当だろう。
震源育成
水の圧入とは逆の事例だが、地下水の汲み上げが地震を引き起こしたと疑われる事例もある。
昨年5月にスペイン南部ロルカで発生したマグニチュード(M)5・1の地震が、地下水くみ上げに伴う地盤沈下によって引き起こされた可能性を指摘する研究結果が、英科学誌で発表された。 この地震では9人が死亡し、多くの建物が倒壊した。
研究はカナダのウェスタンオンタリオ大学のパブロ・ゴンザレス氏らが実施し、科学誌「ネイチャージオサイエンス」で21日に発表。 衛星データを使い、地震が引き起こした地殻のゆがみを調べた結果、過去50年の地下水くみ上げにより帯水層の地下水位が約250メートル低下し、地殻のゆがみに相関性があることが判明。断層に人為的な圧力が加えられ、地震を発生させるだけでなく断層のずれに影響を与える可能性があると指摘した。
ゴンザレス氏は、今回の調査結果が他の地震と関連性を示すとは断言できないとする一方で、ダムや帯水層など水源に近い場所で発生する地震についての手掛かりとなるとの見方を示した。
スペイン地震は「人為的起因」も、地下水くみ上げで地盤沈下 - REUTERS スペイン地震は「人為的起因」も、地下水くみ上げで地盤沈下 - 朝日新聞
「ネイチャージオサイエンス」はNatureグループの査読付きの真っ当な学術専門誌である。
注水による誘発地震は、それまで溜まっていた地殻的な歪エネルギーが水圧破砕による刺激で一気に解放されることにより発生するとされる。 一方で、スペイン南部ロルカで発生した地震では、「断層に人為的な圧力が加えられ」たことが歪の原因と書かれている。 これらの原理説明を真に受けるなら、注水は歪を解放するのに対して、揚水は歪を蓄積させる方向に働くため、両者は全く逆方向の作用をしていることになる。 揚水開始から地震発生までに50年の間が空いていることからも、両者は別の原理で発生していると考えた方がよかろう。
一般に、M5クラスは、人命の損失や大きな財産上の損害を出さないとされている。 しかし、スペイン南部ロルカで発生した地震では、9人もの死者が出ている。 この原因はいくつかある。
米地質調査所(USGS)によると、震源の深さは1キロメートル。
震源は情報源によりマチマチだが、概ね1〜3kmとされている。 スペイン南部ロルカで発生した地震は、震源が非常に浅いために、規模の割に震度が大きかった。
スペイン南東部ロルカ(Lorca)で11日発生した地震は、マグニチュード(M)5.1と規模はそれほど大きくなかったにもかかわらず、9人の死者を出し、多くの建物が損壊した。
スペイン地質学協会のテナ・ダビラ(Tena Davila)氏は、「規模、震源ともに予測の範囲内だった」と語る。
それでも大きな被害が出たことについてダビラ氏は、ロルカが2000年以上の歴史を誇る古い都市で、中世やバロック時代の建築物も多かった点を指摘している。 たとえば、耐震性を考慮した現代的な建物が多い都市であれば、同じ規模の地震でもここまで被害は甚大にならなかっただろうという。
ダビラ氏によると、スペイン南東部は同国内では地震が多い地域と考えられているという。 とはいえ、今回の地震で放出されたエネルギーは、3月11日の東北地方太平洋沖地震(M9.0)の1万分の1にすぎない。 また、スペインであれほどの巨大地震が起きる可能性は低いと地質学者らは見ている。
ダビラ氏は、「スペインも開発に合わせて地震対策を進めているが、もっと準備しておくことができたのは事実だ」と語った。
同地質学協会のルイス・スアレス(Luis Suarez)会長も、今回の地震の規模は建物が倒壊するレベルではなく、建物そのものに構造的な問題があったためだと指摘している。
もっとも大きな原因は、耐震性のない「中世やバロック時代の建築物」が多かったことである。 耐震構造の建築物であれば、M5クラスは人命の損失や大きな財産上の損害を出さないという評価は妥当であると思われる。
尚、地下水汲み上げは日本では地震の原因にはなりにくいと考えられる。 というのも、日本では、高度成長期等に全国各地で過剰揚水が問題になったからである。
近代,急激な工業化による水需要の増大に対して地下水を過剰に汲み上げ,地下水位が低下して地盤沈下が至るところで発生した。
日本各地で過剰揚水による地盤沈下が問題となり、過剰揚水を規制する法律まで制定されているが、地震は問題になっていない。
東京は、明治時代には富国強兵・殖産興業の拠点として発展し、工場数が増加していった。 この工場の増加は、新たな工業用水の需要を生み、河川のように「水利権」が明確にされていない地下水の利用量は飛躍的に増加した。 図1-3-1に、水準基標主要8地点の累積沈下量、亀戸第1観測井の地下水位、江東区の揚水量を代表値として示す。
第二次世界大戦により産業が停滞した際には、地下水位が回復し、それに伴い地盤沈下が一時停止した。 戦後の復興により過剰な揚水が始まると地下水位は急低下し、沈下が再度発生した。 高度経済成長期には、膨大な量の地下水が汲み上げられ、東京低地を中心に各地で地盤沈下が発生したため、昭和30年代には、「工業用水法」と「建築物用地下水の採取の規制に関する法律」(以下、「ビル用水法」という。 また、両法律をあわせて「用水二法」と表記する。)が制定され、厳しい揚水規制がかけられた。
「これからの地下水保全と適正利用に関する検討について」-平成27年度地下水対策検討委員会のまとめ-(平成28年7月29日)第1章総論 - 東京都環境局P.13,14
図3-1-1に区部低地部の江東、墨田、江戸川の主要観測井の地下水位の推移を示す。
「これからの地下水保全と適正利用に関する検討について」-平成27年度地下水対策検討委員会のまとめ-(平成28年7月29日)第3章地域ごとの地下水と地盤の状況 - 東京都環境局P.53
東京都では50mも地下水位が低下したが、これによる地震は発生したという記録はない。
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