ド・ブロイ&ボーム理論

パイロット波理論 

ド・ブロイが1927年のソルベー会議で提案した隠れた変数理論数学的裏付けがなく、多体系の非弾性散乱では通用しなかったため、フォン・ノイマンによるノーゴー定理を覆せなかった。

ボーム力学 

1952年、デビッド・ボームは、隠れた変数理論と題した論文で、実現可能な隠れた変数の式を示した。 デビッド・ボームは、フォン・ノイマンによる隠れた変数理論が不可能とする証明を覆し、隠れた変数理論の可能性を示すために論文を発表したとされる。

参考 

隠れた変数の理論-フォン・ノイマンが『量子力学の数学的基礎』という著書で、隠れた変数の理論の不可能性を“証明”してしまった。

ところが、「フォン・ノイマンの定理」は成立していなかった。 数学的には正しいが、三つの仮定のうちの一つが、量子力学で扱わねばならない重要な場合に成り立たないことが後に明らかになったのだ。 このことを1952年に具体的に示したのがボームであった。

★阿修羅♪掲示板(量子力学の反乱 著:町田 茂)


しかし、量子力学の数学的基礎の確立に重要な働きをしたノイマンは、ある数学的前提をおいて、「隠れた変数」理論が存在しないことを証明した。 ひとつの「理論」または「主張」に対する否定的証明を、しばしば、「ノーゴー定理」(NO-GO THEOREM)ということがある。 彼のノーゴー定理は、彼の数学的権威の威力もあって、その方向の研究に冷水を浴びせたのである。 現場研究的量子力学の圧倒的な進撃が続いた時期と重なったこともあって、「隠れた変数」理論は一時忘れられ影を潜めた。

第二次大戦後になって、物理学者ボーム(D. Bohm:上の写真)は、ノイマンのノーゴー定理を突破して、ひとつの「隠れた変数」理論を作り上げた。 実はノイマンの数学的証明はその前提が厳しすぎたのである。 ボームはある種のあまり面倒でない数学的処理をして、シュレーディンガー方程式から古典的なニュートン方程式を導いたのである。 ただし、そのニュートンの方程式には、普通の力の他に「量子力学的力」と呼ぶ新しい力がつけ加わっていた。 彼はこれを未知の媒質からくる「ゆらぎ」の力と考えた。 繰り返しだが、ボームは量子力学を抹殺して、古典力学に戻そうとしたのだ。

だが、調べれば調べるほど、ボームのいう「量子力学的力」は、普通の古典的な力とはまったく違う、常識はずれのグロテスクなものであることがわかってきた。 一個の粒子の場合は、それでもよい。 二個以上になると、前項で問題にとなったアインシュタインの嫌う非局所的長距離相関がまともに顔を出し、否応なく非局所的な力が古典的なニュートン方程式に登場する。 粒子の個数が増えていく場合、さらには場の量子論になるともっともっと複雑になってしまう。 古典力学化することで簡単になるどころか、かえって複雑になってしまうのだ。 これでは困るではないか!

その複雑化の大きな原因の一つがアインシュタインの嫌う非局所的長距離相関である。 では、それを取り除くことはできないだろうか? ボームの「隠れた変数」理論は量子力学の成果をすべて取り入れようとしているので、この非局所的長距離相関から逃れることはできない。 しかし、その煩わしさを捨てた”局所的”な「隠れた変数」理論が考えられないわけではない。 だが、ここでその試みを紹介することはしない。

「隠れた変数」理論と異端者たち - Albert Einstein's science and life(量子力学入門 著:並木美喜雄)


1952年 「隠れた変数理論」(An Interpretation in Terms of Hidden Variables. Phys. Rev. 85, 166-193)による新しい形式の量子力学を発表する。 この理論はノイマンによる隠れた変数の禁制には抵触しない。

この理論のアイデアは、かつて、30年代にド・ブロイが試みたパイロット・ウェーブ理論の発展形である。 ド・ブロイのモデルは、多体系では通用しないことが明らかにされたが、ボームはこれを修正し洗練させ、復活させた。 そして、この理論は発表から半世紀以上を経た現在でも、標準的なコペンハーゲン解釈へのもっとも強力な対抗馬の一つと目されている。 これを単なる、古くさい古典物理学への帰還である、などと考えるのは誤解である。 事実、この第一歩によって、古典とは似ても似つかない世界像をボームは提示することになるからである。

デビット・ボーム - Ryo Morikawa's Personal Web Site


この別冊の最後の論文は,「もうひとつの量子力学」である。観測問題の権威で量子力学のわかりやすい啓蒙書も著している科学哲学者のアルバートによって,異端の物理学者ボームの量子力学が手際よくまとめられている。 ボームの理論は,いわゆる隠れた変数をもっているため,ベルの定理によって否定されたと誤解している人も多いようだが,非局所的なボーム理論は量子力学のもう1つの定式化として立派に生き残っている。 有名な二重スリットの実験にしても,「粒子か波か」と考えるのではなく,ボーム流に「粒子と波」と考えると直観的に理解できるのである。

量子力学のパラドックス - 別冊日経サイエンス112