執拗なグレタ叩き

はじめに 

このページは地球温暖化懐疑論の一部である。

何故、グレタ叩きをするのか 

グレタ叩きには次のような傾向が見られる。

疑似科学については論外である。 疑似科学のために、グレタ嬢の態度等を槍玉にあげるのも同様である。 次の指摘の通り、主張内容に反論せずに叩いている時点で科学に反していることは言うまでもない。

だけど、少なくとも表現行為で飯を食っているいい大人が、社会に向けて公言するのに、ただ感情をそのまま文字にしただけの批判って、どんだけ浅いの?と思ってしまいます。 それは批判ではなく、ただの悪口、誹謗中傷でしかありません。 地球温暖化問題の、ここが間違っているとかここに反対とか、そういった論で批判できないんですかね。 そうできないくらい彼女の言い分が正しくて、正面から批判しようがないので腹いせで罵詈雑言を並べているだけ、ということなのでしょうか? まあ、そう考えざるを得ない程度のレベルの発言が、「グレタ嫌い」に多いことは歴然としています。

内容を批判できないということかな? (8) - 楽天ブログ

むしろ、疑似科学を目的としない人が、疑似科学を目的とする人たちと一緒になってグレタ叩きをしていることの方が理解できない。 もちろん、グレタ嬢の主張も、誰かの受け売りであろうし、その内容を鵜呑みにすべきでもない。 また、主張内容がかなりエキセントリックであることも事実だろう。 しかし、現在の世界の動向を鑑みれば、グレタ叩きが馬鹿げた行為であることは言うまでもない。 音楽家ケラリーノ・サンドロヴィッチ氏の次の呟きこそが正論であろう。

グレタさん叩きが思いの外多くて面食らった。 俺は彼女が聖人でなくても全く構わないと思ってる。 彼女を持ち上げたり叩いたりすることが目的化され、肝腎な地球温暖はないがしろにされていくことの不条理。

twitter(ケラリーノ・サンドロヴィッチ)

後で詳細に説明する通り、地球温暖化が人類にとって喫緊の課題であることは科学的事実である。 もちろん、細かい部分には不正確な内容が含まれる。

ただし、この点について、今回の彼女のスピーチは誤解を招くと筆者には思われたので、補足しておきたい。 筆者の理解する限り、「1.5℃」を超えると必ずその連鎖反応が起きるとはいえない。 現在の科学では、そのような連鎖反応が本当に起きるかも十分に理解されていないし、起きるとしても、何℃でそれが始まるかはわかっていない。

しかし、「最悪の場合」それが1.5℃付近で始まってもおかしくはないし、彼女が「最悪の場合」を心配するのであれば、それはよく理解できる。

それに、彼女がスピーチで指摘したように、あと10年で世界のCO2排出量を半減できたとしても、気温上昇を「1.5℃」で抑えられる可能性は五分五分なのだ。 「五分五分の賭け」に彼女が安心できないことは、極めてよく理解できる。

このようにみて、グレタさんの主張する危機感は、大筋において最新の科学を踏まえたものだといえるだろう。

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しかし、「大筋において最新の科学を踏まえたもの」である。 そして、その解決策は、技術革新で対応するにしろ、ライフスタイルの変更で対応するにしろ、温室効果ガスの削減以外にあり得ない。

グレタさんが具体的にどういう対策を求めているかわからないという人がいるようだが、そんなのは当たり前だ。 彼女はまだ16歳なのだから、問題解決の処方箋を彼女に求めるのは無理筋である。

その代わりに彼女が主張しているのは、科学者の声を聞くことだ。 とりわけ、昨年10月に発表された、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の「1.5℃の温暖化についての特別報告書」は彼女の持っていた危機感と共鳴した。

加えて、彼女がニューヨークのスピーチで強調したのは、気温上昇がある臨界点を超えると、フィードバックの連鎖反応が起きて、人間がどんなに対策をしても、気温上昇が止まらなくなる可能性についてだ。

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にも関わらず、反対勢力の妨害工作により、トランプ大統領をはじめ、地球温暖化懐疑論が広く浸透している。 これまでも多くの人が正論を主張してきたが、それでも世界の動向は変わらなかった。 そうした状況を少しでも改善しようと、グレタ嬢を英雄のように担ぎ上げることは手段として間違っているのか。 このまま正論のみを説き続けて、反対勢力の妨害工作に太刀打ちできずに、取り返しのつかない事態になっても構わないのか。 これまで行われてきた地球温暖化以外の様々なキャンペーンも、正しい事実を正確に伝えてきただけなのか。 非論理的な感情論で世間を焚きつけて来なかったのか。 もちろん、間違ったことを信じさせるために、そうした手段を利用することは許されないだろう。 しかし、後から正論に基づいた議論を深めることを前提として、議論に耳を傾けてもらう下地を整えるためにそうした手段を利用することは許されないのだろうか。

私には、次のような態度や言動のエキセントリックな部分を殊更に取り上げて、執拗なグレタ叩きをしなければならない理由が見当たらない。

グレタさんが飛行機に乗らず、肉を食べないことから、他人にもそれを要求していると思う人がいたら、それは違う。

彼女は、個人の変化だけでなく、社会システムの変化が大事だと主張している。 人々に「我慢」や「不便」を強いることは、彼女が特に求めていることではないと思われる。

飛行機に乗らないことなどは、彼女自身のこだわりの面が強いと想像される。 もちろん、気候の危機を認識するならば、グレタさんほど徹底しなくても、飛行機には必要最小限しか乗らない、肉はほどほどに食べる、くらいの意識の変化は個々人にあってしかるべきだろう。

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反対勢力と一緒になってグレタ叩きをすることは、彼らの思う壺だと気づくべきではないか。 グレタ嬢個人が抱える問題は、グレタ嬢自身と家族が解決すべき問題であり、赤の他人にとっては他人事である。 だから、我々が論じるべきことは、地球温暖化の事実、危険性、対策と、そこから目を背けてきた事実であって、グレタ嬢の態度や言動のエキセントリックさではなかろう。

背景 

人為的地球温暖化の事実 

地球温暖化懐疑論で紹介した通り、人為的地球温暖化は科学者の大多数のコンセンサスが得られた科学的事実である。

人為的地球温暖化について3146人の地球科学者の意見を調査した論文(Doran 2009)によれば、気候学の研究に貢献している科学者は97.5%、一般の科学者も82%、非気候科学者の77%が同意している。

温暖化の科学的コンセンサス

地球温暖化の科学的コンセンサスは存在しない - Skeptical Science

現在、科学界では、地球温暖化についての論争はない。 地球温暖化についての論争があるのは疑似科学の世界だけである。

1880年以降の世界平均気温は次のようになっている。

世界の年平均気温(陸上のみ)

世界の年平均気温(陸上のみ) - 気象庁

1891年以降の平均海面水温は次のようになっている。

海面水温の長期変化傾向(全球平均)

海面水温の長期変化傾向(全球平均) - 気象庁

両方とも、観測以降増加傾向にあることが見て取れる。 気温変動に影響を与える要因は次の通り。

基本変動要因

IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書 よくある質問と回答 第5章 FAQ5.1 - 気象庁

人為的要因以外で地球の温暖化を説明できない。 シミュレーションの結果は次の通り。

気候モデルによるシミュレーション

IR3S/TIGS叢書No.1地球温暖化 懐疑論批判 - 東北大学東北アジア研究センターP.20

人的要因を組み込んだシミュレーションの結果は実測値とよく一致するが、人的要因を組み込まなければ実測値と大きく食い違う。

人々の反応 

石油産業が、温暖化懐疑論を潰すために、裏工作を行なっていたことは、米紙ニューヨーク・タイムズや英紙ガーディアン(いずれも電子版)などで報じられている。

彼らは、人為的地球温暖化論の方を陰謀に仕立てようとした。 CRUメール流出事件(Climategate事件)もその目的で仕組まれたものである。 しかし、冷静になってみれば、それは荒唐無稽である。

人為的地球温暖化を否定する陰謀は比較的容易に実現できる。

  • 首謀者の利害関係が明確である
  • 陰謀に加担している人のうち、自らの意志で加担する人は少数で済む
    • 自覚ある嘘をつくスポークスマンは必ずしも必要ない(本気で勘違いしている人を探して支援すれば良いだけ)
    • 故意に嘘をつく人は首謀者周辺の限られた人間だけで良い

CO2規制は、石油産業にとって大きなマイナスであると当時に、他の多くの産業にとっても生産性の低下やコスト増を引き起こしかねない。 温暖化懐疑論で得をする巨大勢力は確かに存在し、実際に裏工作を行なっていた存在も明らかになっている。 また、彼らにとっては、人々に否定多数だと思わせる必要はなく、賛否両論だと思わせれば十分なのである。 だから、少数の異端者に資金提供して活動を支援するだけで事足りる。

一方で、人為的地球温暖化を否定する陰謀は非常に困難である。

  • 温暖化論で得をする巨大勢力が存在しない
  • 多数の人や団体を抱き込む必要がある

温暖化論で得をするとすれば、原子力関係者くらいであろうが、産業全体で見れば小さすぎる。 また、CO2規制=原子力推進という単純なものでもない。 というのも、原子力に反対する人たちにとって、その反対理由とCO2規制は全く別の問題だからである。 CO2規制を強化する必要性を唱えても、原子力に反対する理由がなくなるわけではない。 だから、CO2規制が受け入れられたとしても、即、原子力推進が受け入れられるわけではない。 このような成果が不確かなことには、陰謀を働く動機が生じにくい。 産業全体で見て損をする人が圧倒的多数で、かつ、少数の得をする人にとっても動機が生じにくいのでは、陰謀の首謀者になる者がいない。 トランプ米大統領は中国の陰謀だと主張するが、世界有数の産油国であり、かつ、急成長中の新興国でもある中国にとっても温暖化論を唱えることは自国にとってマイナスでしかない。 排出権売買で儲けようとする陰謀だとの主張も見られるが、ギャンブル要素が強すぎて失敗して大損する可能性が高い陰謀を誰が企むだろうか。 環境団体の陰謀だとの主張も見られるが、それは時系列が完全に逆である。 むしろ、環境団体は、放射能汚染を目の敵にするから、原子力否定を目的とした温暖化懐疑論に走りやすい。

また、地球温暖化論を陰謀だとするならば、人々に賛成多数だと思わせる必要があり、そのために専門家の大多数を故意に陰謀に加担させる必要がある。 それが如何に荒唐無稽かは少しでも考える力がある人なら分かることだろう。

このような非科学的な論争が政治に与えた影響は小さくない。 それは、トランプ大統領の言動などを見れば明らかだろう。

技術革新の可能性 

地球温暖化を防ぐ方法は大きく分けると次の2つが考えられる。

  • 地球規模の吸熱
  • 温暖化の抑制

地球全体を0.92℃上昇させる熱量を1km四方に集中させれば、単純計算で、4億6千万℃上昇する計算になる。 海水(14億km3弱)全てを0.54℃上昇させる熱量は史上最大の水爆「AN602」の100万個以上に相当する。 つまり、水温が「100年あたり0.54℃」上昇する熱量は、単純に計算すると、1日あたり30個の「AN602」を毎日爆発させているのと等しい。 これほど巨大な熱を吸収させる技術の実現はほぼ不可能と言って差し支えない。 核燃料から莫大なエネルギーが引き出せるのは、最初のトリガーを引いて、かつ、条件さえ揃っていれば、後の反応は自然に持続するからである。 熱力学第二法則(エントロピーの法則)により、逆の反応を自然に持続させることはできない。 結果、1日あたり30個分の「AN602」に相当する熱量を吸収するためには莫大なエネルギーが必要になり、現実的には不可能となる。

温暖化の抑制は、さらに次の2つに分けられる。

  • 温室効果の相殺
  • 温室効果ガスの排出削減

温室効果の相殺も、地球規模の吸熱と同じく、全地球規模で行わなければならないため、非現実的である。 例えば、寒冷効果ガスを開発する。 といっても、原理的には、透明度の低いガスしかあり得ない。 仮に、人畜無害な不透明ガスを作り出せたとして、そのガスを大量撒いたり濃度を適切な範囲にコントロールするための人、金、エネルギーは膨大なものとなろう。 武田邦彦氏の荒唐無稽な地球温暖化懐疑論にて武田邦彦氏の「サハラ砂漠に『銀紙(ぎんがみ)』を敷く」「海の深いところから水をくみ上げる」なるアイデアも紹介したが、これも膨大な人、金、エネルギーを必要とする荒唐無稽な御伽話に過ぎない。 結局、どのような手法であろうとも、全地球規模で行わなければ焼け石に水であるから、膨大な人、金、エネルギーが必要になることは変わらない。

以上踏まえると、現実的には、温室効果ガスの排出削減しかあり得ない。 技術革新で対応するにしろ、ライフスタイルの変更で対応するにしろ、いずれにしても温室効果ガスの排出を削減するなら、排出量規制に反対する理由はない。 もちろん、規制の内容には議論の余地があろう。

努力の必要性 

地球温暖化は技術革新だけで解決できる問題ではない。 例えば、省エネ家電が発売されても、古い家電を使い続ける限り、温室効果ガスの排出を削減できない。 とくに、官公庁や企業が省エネ技術の採用に後ろ向きでは、削減量を大きく減らすことはできない。 例えば、官公庁や企業が、蓄熱空調システム等の夜間電力の有効利用に取り組めば、昼間帯の電力需要が減るので、発電量を減らして化石燃料の使用を削減することができる。 しかし、現在では、そこまで徹底した取り組みは為されていない。 つまり、できることをしていないのである。

もちろん、経済活動との両立の可能性を模索することなく、経済活動を犠牲にしろと主張するのは極論である。 グレタ嬢はそこまでは言っていない。

なのに、あなた方が話すことは、お金のことや、永遠に続く経済成長というおとぎ話ばかり。 よく、そんなことが言えますね。


しかし、この数字は、(気候変動が急激に進む転換点を意味する)「ティッピング・ポイント」や、変化が変化を呼ぶ相乗効果、有毒な大気汚染に隠されたさらなる温暖化、そして公平性や「気候正義」という側面が含まれていません。 この数字は、私たちの世代が、何千億トンもの二酸化炭素を今は存在すらしない技術で吸収することをあてにしているのです。


今日、この数字は、すでにあと350ギガトン未満となっています。 これまでと同じように取り組んでいれば問題は解決できるとか、何らかの技術が解決してくれるとか、よくそんなふりをすることができますね。 今の放出のレベルのままでは、あと8年半たたないうちに許容できる二酸化炭素の放出量を超えてしまいます。

グレタさん演説全文 「裏切るなら絶対に許さない」涙の訴え - NHK政治マガジン

グレタ嬢が指摘していることは、現在の規制が不十分であることと、その言い訳として経済を用いる不当性である。 この演説では、経済活動を犠牲にしてまで二酸化炭素の放出量を抑えろとまでは言っていない。 先にも説明した通り、経済活動を犠牲にすることなく削減できる限界まで二酸化炭素の放出量は削減されていない。 各国は、そのレベルの規制には及び腰である。 だから、その言い訳に経済を用いることが不当であることは言うまでもない。

また、グレタ嬢の演説を社会制度の変革が不十分であるとの指摘だと解釈する人もいる。

筆者の解釈になるが、たとえば、飛行機がすべてバイオジェット燃料や水素燃料で飛ぶようになれば(そしてそれらの燃料をCO2を出さずに作るならば)、人々は気兼ねなく必要な飛行機旅行をすることができる。 あるいはテレプレゼンス技術によって、実際に移動せずとも海外に「居る」のと同じ感覚を味わえるようになるかもしれない。

肉にしても、代替肉はすでにできているし、みんなが食べるようになれば、安く、おいしく改良されていくだろう。

「技術でなんとかなる」という楽観論をグレタさんが喜ぶはずはないが、筆者の考えでは、彼女が求める社会システムの変化のための行動には、こうしたイノベーションを含めた社会や常識の大転換や、それを促進するための制度整備や投資を急速に進めることが含まれると思う。

国連 気候変動スピーチで注目のグレタ・トゥーンベリさんについて知ってほしい5つのこと - YAHOO!ニュース

グレタ嬢の指摘を「経済活動を犠牲にしてまで二酸化炭素の放出量を抑えろ」という意味に解釈してギャーギャー騒いでいる人がいるが全くもって見当違いも甚だしい。 何故なら、彼女が経済活動を犠牲にすることを求めているかどうかは本論とは直接関係がないからである。 これ以上削減するには経済活動を犠牲にするしかない水準まで削減努力を尽くしていてこそ、初めて、経済活動を言い訳にする余地がある。 その努力を尽くさないうちに、経済活動を言い訳にすることが不当であることは言うまでもない。 そして、既に指摘した通り、経済活動を言い訳にしても、現状での削減努力は全く足りていない。 経済活動を犠牲にすべきかどうかという論点での主張こそ、必要な努力を放棄したいがための言い訳に過ぎない。


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