地震予知のトリック

科学的な地震予知研究 

科学の条件を満たした真っ当な地震予知研究も行われている。 しかし、これを書いている時点で、実用的精度で地震予知ができる技術は全く確立されていない。 宏観異常現象(地震の前兆とされる現象)を予知に利用しようとする動きもあるが、実用的精度での地震予知には成功していない。

では、これらの地震予測サービスは、科学的に見て信ぴょう性のないものなのだろうか。 上川氏は、電波の"異常"も地殻変動の"異常"も、ただの観測ノイズである可能性が極めて高いと指摘している。

ほとんどの地震学者も、おそらく同じように考えている。 地震の前兆として、電波や地殻変動に何らかの変化があってもおかしくはない。 しかし、その微妙な変化は観測ノイズに埋もれて検出できないだろう、と。

データを見れば「誰でも15分で地震予測ができる」ことをご存知か - ブルーバックス(講談社)

ノイズと明確に区別できるような地震の前兆は見つかっていないし、ノイズに埋もれた中から地震の前兆だけを取り出す技術も確立していない。

未だに、どこの国も実用的精度で予測できる地震予知技術を採用していない。 現状の技術では地震は予知不可能で、予知が可能になるには技術の大きなブレイクスルーが必要であることは、大多数の地震学者の共通見解であろう。 一方で、近い将来に大きなブレイクスルーが期待できるかや、大きなブレイクスルーを実現するために現状の地震研究が有効かどうかについては、必ずしも、地震学者の見解は一致していないようである。 例えば、ロバート・ゲラー氏(スタンフォード大学地球物理学科助教授、東京大学大学院理学系研究科教授を経て東京大学名誉教授)は否定的な立場のようである。

この辺りは、どちらが正しいのか判断が難しい。 というのも、科学研究は、1勝9999敗でも成績が良い方だからである。 真っ当な科学研究では成功が全く保証されておらず、鳴り物入りで研究されていたものが何の実も結ばないことも多い。 地道に多数の研究を行なって、その中の一握りのものだけが成功を収めるのである。 だから、万に一つの成功の可能性があるなら、莫大な予算をかけてでも研究する価値がある。 一方で、億に一つの成功の可能性以下であれば、研究する価値があるかどうか怪しくなる。 地震予知の研究が身を結ぶ可能性が極めて低いことは疑う余地がない。 しかし、それが、万に一つの可能性なのか、億に一つの可能性なのかは、判断材料が足りないため、知りようがない。 可能性がどの程度あるかわからない以上、将来のために研究を続けることは、必ずしも、間違いとは言えないだろう。

疑似科学の手口 

疑似科学的な地震予知が横行しており、これらの地震予知は的中することになっている。 しかし、その何れもが、何らかのトリックを使って的中したことにしているだけに過ぎない。

アリバイ・トリック 

椋平廣吉氏の地震予知トリックに詳細を記載する。

確率がほぼ100%になるまで精度を下げる 

「この先1ヵ月の間に、東北地方でM5程度の地震が起きる」。 いかにも地震予測サービスが出しそうなこの予測は、実は私がほんの15分ほどで立てたものだ。 使ったのは、気象庁が公開している地震のデータベースのみ。

理屈も単純である。 過去1年間(2017年5月〜)、東北地方ではM4.5〜5.5の地震が月平均3回以上発生しているのだ。 したがって、この予測は相当高い確率で当たるだろう。 裏を返せば、予知情報としては何の意味もない。

日本周辺でM5程度の地震は年平均160回ほど、震度5弱以上の地震は年平均18回起きている。 けっして頻度の低い事象ではないのだ。 地震予測サービスの情報に振り回されないためには、このような数字を知っておくことも大切だろう。

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CCS地震原因説を唱える人は、「苫小牧のCCS施設の近くで地震が起きるという予知があたった」と主張する。 しかし、CCS地震原因説に記載している通り、2018年の北海道胆振東部地震において、圧入場所から震源までは水平距離で約31kmはなれており、かつ、圧入開始から2年5ヶ月経過して発生している。 つまり、CCS地震原因説を唱える人の主張する予知は、周辺数10km圏内かつ数年という極めて精度の低い予測である。 ここで、次の資料を見てもらいたい。

震央分布図

平成30年北海道胆振東部地震の評価(平成30年9月6日公表) - 気象庁

これを見れば、2018年の北海道胆振東部地震が発生する前も、その周辺ではM5やM6クラスの地震が頻繁に起きていたことがわかる。 これは「苫小牧のCCS施設の周辺数10km圏内で数年のうちにM5(もしくはM6)以上の地震が起きる」と予知すれば、CCS施設と地震の間の因果関係に有無に関わらず、ほぼ100%、その予知の内容通りの地震が起きることを意味する。 もちろん、範囲、時期、震度をもっと細かく指定すれば、予知を的中させることは困難であろう。 しかし、「数10km圏内で数年のうちにM5(もしくはM6)以上」という指定でよければ、誰でもほぼ100%的中させられるのである。 いや、距離も「近く」と曖昧にし、時期も震度も指定しなければ、外す方が難しい。

もっとひどい事例を次に示す。

電子基準点の動きなどから地震予測をする、村井俊治・東大名誉教授ら地震科学探査機構(JESEA)の『週刊MEGA地震予測』では、この地震の直前、以下のような予測を発表していました。

MEGA地震予測

…日本中に出した11個もの予測円のひとつで、ギリギリのところで地震が起きた、というだけだとしか言いようがありません。 完全な予測失敗とは言えないかもしれませんが、「地震の発生する場所を事前に言い当てた」とは、到底言えるような精度ではないと思います。 特に、胆振東部を含む北海道南部~青森に出していた「要注意」よりも警戒度が高い「要警戒」のエリアが6か所もあるのですから、予測成功とはとても言えないでしょう。

そもそも、『週刊MEGA地震予測』は、このときだけでなく、ほぼ常に、日本中をこのような予測円だらけにしています。 ですので、発生時期の予測もできたとは全く言えません。

いずれにしても、『週刊MEGA地震予測』は、このように「常に日本中を危険だと言っている」というだけの予測は、もうやめたほうが良いのではないでしょうか。 一部の週刊誌などでは、「北海道の地震を予測した」と既に宣伝されているようですが、「実は北海道以外にもたくさんの予測を出していた」という事実に気を付けてください

有料地震予測は北海道胆振東部地震を予測していたか - 横浜地球物理学研究所

「ほぼ常に、日本中をこのような予測円だらけ」にしてしまっては、その中のどこかで地震が起きない方が珍しいだろう。

外した時の言い訳(外した予測を当たりにすり替える) 

悉く外れる石田氏と予知と後付けの口実での的中宣言にて詳細に解説するが、地震爆発論(笑)を提唱する石田氏は次のようなトリックを駆使している。

  • 石田氏は、予知が的中したかどうかに関わらず、コジツケで的中宣言を出す
    • 圧入地点から30km以上離れた場所で、圧入開始から2年5ヶ月経過してから発生した地震を的中例として扱った
    • 増圧が地震の原因だと主張して的中宣言を出した後に減圧後の地震だと判明すると、減圧が原因でも地震が起きると主張して予知が外れていないことにした
    • 「5日後の2月15日ごろまでは特別に注意をしておいたほうがいい」と予知して、2月19日まで地震が起きなかったのに的中宣言した
      • 「石田氏が警告する『苫小牧CCSが地震を誘発する』はその理論から言っても正しいことが証明された」らしい(笑)
    • 「4月1日~10日前後は要警戒日」の期間がかなり残っている4月3日の速報値M3.8にすぎない小規模地震で早々と的中宣言
  • 予知を悉く外しているので、これ以上外さないよう、後から出した予知ほど予知内容がより曖昧になる
    • 「5日後」で予知を外したので、「4月1日~10日前後は要警戒日」と期間を倍に広げた
    • 「しばらくの間は、過去の経緯から見て」「警戒した方がいい」と期間設定を放棄
    • 「実験終了後2年半後に発震したケースもあります」
    • 「小さな地震も頻繁に起きるのかもしれませんし、最終的な発振日もずれるかもしれません」

既に説明した通り、地理的範囲、時期、規模を広く取れば、地震の予知はほぼ100%当たる。 だから、圧入地から数10km圏内で数年以内に地震が起きたという事実は、周辺地域での過去の地震発生頻度から見て、偶然で十分に説明がつくものである。 しかし、「しばらくの間」と期間を曖昧にすることで100%当たるように細工されたインチキ予知は、石田理論と全く適合しない。 なぜなら、「減圧効果」が最も高い圧入停止直後に発生せずに圧入停止から長期間経ってから発生したのでは、石田氏による情報歪曲等で紹介した「圧入を中断して減圧効果が出た頃に発生」という石田理論と適合しないからである。 石田氏の化学や物理の法則に対する無理解石田氏による情報歪曲等で紹介した「『地下水脈』の中でトコロテン式に地下水が『押し出される』」という石田理論では、水中での縦波の伝搬に要する時間以上の遅延は説明できない。 つまり、このようなインチキ予知は、石田理論の間違いを認めていることと同じである。

その梅野健教授の地震予知手法に疑問を持つというサイトがありましたので、紹介し、疑問を解消しておきたいと思います。

そのサイトにある「電子数による地震予知」を疑う理由から一部を抜粋して紹介します。


電子数の異常発生と地震発生までの時間差は上に述べたように地震の規模と関係しています。大きな地震になるほど、時間差は大きくなると推定されます。

電子数が増える原因は地下における水の熱解離現象によって自由電子が放出されるからだと推定できます。

神戸の地震では様々な電磁気異常が観察されたことが「阪神淡路大震災 前兆証言1519!」(弘海原清編著)に載っています。唐山地震でも多くの電磁波や電気的な異常現象が報告されています。

電子数の増加から地震を予知する手法はまだまだ、研究の緒についたところだと思います。地殻の変形を観測して予知しようとするグループは「地震予知は不可能」と決め込んでいるようですが、電磁波的な異常を観測して予知に繋げる研究は大いに希望の持てる手法だと地震爆発論学会は考えています。

新・地震学セミナー(3071-3090) - 石田地震科学研究所

「神戸の地震では様々な電磁気異常が観察された」「電磁波や電気的な異常現象が報告」なんて話は、終わった競馬の解説をしているのと同じである。 過ぎた出来事に対して後付けでそれっぽい解説ができることは、事前に結果を予測できることを全く示さない。 「この馬が勝ったのにはこういう理由があったのだ」と偉そうに解説する人間は掃いて捨てるほどいるが、その中に事前に勝ち馬を予想できる人はいない。 何故なら、事前に勝ち馬を予想できるなら、他人に予想法や予想結果を教えずに、自分で馬券を買えば大儲けできるからである。 他人に予想法や予想結果を教えては、自分の得るはずの配当が激減してしまい、儲ける機会を逸してしまう。 予想が当たらないならこそ、それっぽい理屈をもって他人に自己の分析力をアピールして、予想を売りつける必要があるのだ。

石田氏は、「電子数による地震予知」を疑う理由 - 横浜地球物理学研究所を引用すると言いながら、その核心部分を闇に葬り去っている。

  • 「(1)地震と関係がない場所でも電子数異常が起きている」
  • 「(2)電子数の増大が本当に「異常」かどうか疑わしい」
  • 「(5)地震を予測した実績がない」

地震予知のトリックにて解説した通り、地震の前兆としての宏観異常現象があったとしても、事前に、ノイズから宏観異常現象を分離抽出できない限り、「電磁波的な異常を観測して予知に繋げる」ことは不可能である。 「東日本大震災を起こした東北地方太平洋沖地震や、熊本地震の直前に、上空の電子数が異常に増えたと主張」するだけなら、終わった競馬の解説と同じで誰にでもできることであり、結果の予測には繋がらない。 「地震と関係がない場所でも」「起きている」「電子数異常」から、事前に、地震の前兆である「電子数異常」と地震とは無関係に起きた「電子数異常」を区別できて、初めて、地震の予知ができるのである。 しかし、梅野氏は、その区別方法を示していない。 というか、「震源近くの異常値だけを強調し、地震とは関係なさそうな場所でも異常値を示していることを黙殺」しているようでは、区別する必要性への言及すらままならない。 だからこそ、「地震を予測した実績がない」という結果に繋がっているのである。

「上空の電子数が増える原因」を「電子数が増える原因は地下における水の熱解離現象によって自由電子が放出されるから」などというファンタジー理論で説明した所で、「『電子数による地震予知』を疑う理由」の核心部分が全く崩せない以上、「疑問を解消」することは不可能である。 相手の反論の核心部分を中心に抽出し、その相手の反論が成立しないことを示すことこそが、的確な再反論である。 石田氏のような、他人の反論にうちの答えやすい所だけ抽出して回答し、答えにくい所は無視するというやり方は、再反論としては全く意味がない。

予測を外した実績を闇に葬る 

高橋学教授は、2016年の6月4日と7月31日に、ジャーナリストの岩上安身氏らにメールを送り、地震予測を披露しています。 このメールの内容は、岩上氏によって以下に公開されています。


少々分かり難い文面ですが、この地震予測をまとめると、

  • 千葉・茨城で、2ヶ月後を中心に1ヶ月の前後幅で、M7以上(6月4日のメール)
  • 長野北部~新潟上越地方でM5以上、1週間~1ヶ月が危ない(7月31日のメール)

…という2つの予測をしていることが分かります。 では、この予測期間に、国内で実際に発生した主な地震をみてみましょう。


…ご覧のように、高橋学教授が予測したような地震は、全く起きていません。 そもそも、M7以上の地震が全く起きていません。長野北部~新潟上越地方でも、M5以上の地震がこの期間内に1件も起きなかったばかりか、この記事を書いている2017年1月27日現在まで、M5以上の地震は1件も起きていません。

さらに、高橋学教授は、『週刊女性』2015年10月6日号において、「1~2年のうちに大噴火が起きそうな10火山」を挙げています。


…この予測発表から既に1年4ヶ月ほどが経過しましたが、このうち実際に噴火した火山は、1つもありません。 「大噴火」どころか、小噴火さえも1つも起きていないのです。

ただ、2015年10月6日から2年後といいますと今年2017年の10月ですから、まだ時間はあります。 高橋学教授の噴火予測が当たるのか、今後も見守ってみることにしましょう。

(※追記: 結局、2017年の10月まで、以上の10火山の全てが小噴火すらしませんでした)


高橋学教授は、実に積極的に週刊誌に電話やメールを送りつけ、ご自身の地震予測を披露されているようです。 言い換えると、週刊誌に自分を「売り込む」タイプの方のようです。 そして、売り込まれた側の週刊誌が、以上のハズレ予測には全く触れずに、また大きな地震や噴火を予測した実績もないにもかかわらず、専門的にみておかしな発言を繰り返していることにも目を瞑り、「地震や火山の専門家が大地震や大噴火を予測している」などと危機感を無意味に煽るような記事を、繰り返し書いているのです。 かなりの無理を感じますし、メディアとしてあまり褒められた行為だとは思えません。

いずれにしても、高橋学教授がこれまでに、大きな地震や噴火の発生を、事前に精度高く予測したという実績は、全く無いと言って良いようです。 週刊誌が危機感を煽るべく次々と紹介する、高橋学教授の地震予測や噴火予測に、不必要に怯えてしまう必要は全くないと思います。

高橋学・立命館大学教授の地震・噴火予測は信用できるのか - 横浜地球物理学研究所

高橋学教授は、地震予知を数多く行い、その悉くを外しながら、その外した実績を完全に闇に葬り去っている。 もしも、いつでも予知が当たったら、それを事更に取り上げて、予知に成功したことをアピールするのだろう。

過去を捏造する 

多くの人にとって、誰それが地震を予知していたという話を知るのは、大抵は、その地震が起きた後である。 大きな地震が起きた後に、実は、誰それがその地震を予知していたという情報が実しやかに出回る。 しかし、それを後から知った人にとっては、本当に、地震前から予知されていたのかを確認することは難しい。 逆に言えば、後付けの予知を地震前に発表していたことにしても、その嘘の証拠を掴むことは難しい。 このように、過去を捏造することは、やろうと思えば、いくらでもできてしまう。 だから、地震を予知したという他人からの伝聞を真に受けるまでに、信頼できる情報源で調べるべきだろう。

人柱 

これは他とは少し違い、予知を行う本人ではなく、メディアやオカルト信者等が英雄を作るために用いる手段である。

ある時、ある番組で、出演者が、その年のプロ野球の優勝チームを予想した。 その時、ある占い師は、セリーグでは阪神タイガースが優勝すると予想した。 他の出演者は、阪神タイガースが長いこと優勝から遠ざかっており、とても優勝できるはずがないと言った。 しかし、プロ野球のことをよく知らないその占い師は予想を変更しなかった。 そして、その年、阪神タイガースは21年振りにリーグ優勝を果たした。 その結果、その占い師は、よく当たる占い師として持ち上げられた。 その後、その占い師は毎年優勝チームを予想したが、約20年後にパリーグの優勝チームを的中させただけで、悉く予想を外していた。 その占い師は細木数子と名乗っている。

的中率から考えれば、この予想の的中が単なる運に過ぎないことは言うまでもない。 そして、多数の人がいれば、その中に、大方の予想とは違う予想をして結果的に的中させる人がいるのは当然だろう。 このような大勢の中のたまたま予想を的中させた1人を採り上げて、奇跡の預言者として紹介することはメディアやオカルト信者等の手口として取り立てて珍しいことではない。

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