コンピュータ・シミュレーション超初心者である武田邦彦氏の誤解

最初に 

疑似科学者列伝:武田邦彦にて詳しく紹介するが、武田邦彦氏には次のような特徴がみられる。

  • 基本的な科学的知識・理解がない
    • 専門家を自称する原子力分野ですら素人同然
  • 参照資料はつまみ食い
    • 持論に都合の悪いデータは闇に葬り「未だに公表されない」と嘘をつく
  • データは全てデタラメ
    • 出典にないデータを捏造する
    • 変動を隠すスケール操作も当たり前
  • ウケると見れば何でも逆張り
  • 有り得ない夢物語を語る
  • たまに正しいことを言う時は、手垢まみれの二番煎じのみ

武田邦彦氏のトリックの手口は武田氏のトリックパターン類型化 - 環境問題補完計画で類型化されている。 このような人物の主張を真に受ける人はリテラシーがない。 武田邦彦氏は、言い訳ができるなら、次の件(後で詳細に説明)に言い訳してみると良い。

  1. 専門家が目の前に居る時と居ない時で主張内容が180度違うこと
    • 専門家と話すときは「私はほとんど○○先生が正しいと思っています」
    • 専門家の居ない所では「温暖化しない」とか、「人間のせいじゃない」
  2. 「太平洋を囲む陸地の気温」が上がってないように見せ掛けるためのスケール操作
    • 「ハワイ、日本の南の香港、南鳥島、アンカレッジ、サンフランシスコの順に、グラフ」だけ横方向に拡大する
    • 「ハワイ、日本の南の香港、南鳥島、アンカレッジ、サンフランシスコの順に、グラフ」だけ縦方向に縮小する
    • 以上のトリックが発覚しないように「ハワイ、日本の南の香港、南鳥島、アンカレッジ、サンフランシスコの順に、グラフ」は月平均値を採用
  3. PETボトルリサイクルに関するデータ捏造等
    • 「焼却を含ん」でいない「材料としてリサイクルしている量(再利用量)」が参照資料に明記されているのに「今に至っても」「『数字』を言う人はいない」と大嘘
    • 武田邦彦氏の想像に基づいた変則的な計算で、かつ、不確かさの幅も無視した「推算」なのに、「出所:PETボトルリサイクル推進協議会」
  4. 次の前提では「タバコを吸うと肺がんの死亡率は10倍以上減る」という結論が導けなくなるので、「必要なデータ」である年齢調整死亡率をコッソリと消去
    • 「タバコの害は継続的に20年ぐらい吸った人が、さらに20年ぐらい後に肺がんになる」
    • 「ガンは年齢と共に増えるので、粗死亡率(その年に肺がんで死んだ人の数)ではなく、それを年齢調整した死亡率をとる」
  5. 「理研は『研究室に任せないで、理研の総力で詐欺をする』と決めた」が「理研の委員会自体がそう言っている。武田の推定ではない」とする大嘘
  6. 「透析に追いやる薬」「平均寿命が延びたから透析患者が激増しているというわけではありません」と大嘘
    • 参照資料に記載されている患者平均年齢の推移を闇に葬った
    • 参照資料に記載されている年齢階層別患者数推移を闇に葬った
  7. 荒唐無稽な夢物語の「地球を簡単に冷やす方法」
    • 「200万平方キロメートル」に「『銀紙(ぎんがみ)』を敷く」手間や費用の「程度問題」
    • 全地球規模で「海の深いところから水をくみ上げる」手間や費用の「程度問題」

コンピュータ・シミュレーションの初心者なのに何もかも知っているかのように語る 

武田邦彦氏は、コンピュータ・シミュレーションの達人であるかのように自称している。 しかし、その説明内容を見る限り、コンピュータ・シミュレーションを使った経験があるというだけの初心者に過ぎない。

私は研究の必要上、ながくコンピューターを使用したシミュレーションをやってきた。 そして、「シミュレーションでは未来を予測することはできない」ということを知っている(ここでいう未来とは、1日後のような直後のことではない)。

シミュレーションを経験した科学者は例外なく、この結論に同意するだろう。 その理由を明確に示したい。

シミュレーションでは未来を予想できない - 武田邦彦

武田邦彦氏が、コンピュータ・シミュレーションを少しだけ齧ったことがあるのは事実のようである。 しかし、以下に検証するように、武田邦彦氏は、コンピュータ・シミュレーションの初歩的な体験をしただけに過ぎない。 ようするに、武田邦彦氏は、コンピュータ・シミュレーションに関してはど素人なのである。

コンピュータ・シミュレーションは主に次のような現象に用いられる。

  • 実験や観察による結果が得られる現象
    • 全てのパラメータが実測可能な現象
    • 一部のパラメータが実測不可能な現象
  • 実験や観察による結果が得られない現象

このうち、全てのパラメータが実測可能な現象のコンピュータ・シミュレーションは次のような用途で使われる。

  • 初心者のための体験
  • 既知の理論の検証
  • 実験や観察による結果が得られない現象のシミュレーションのための検証

武田邦彦氏はこの1番目のみを経験したに過ぎない。 武田邦彦氏は、入口に立っただけなのに、全てを知り尽くしたかのように語っているのである。 例えて言うなら、作用反作用の法則を理解しただけで物理学の何たるかを語っているようなものである。

「シミュレーションを経験した科学者」のうち、ごく初心者には「この結論に同意する」人がいるかもしれない。 しかし、一定以上の経験がある科学者は「例外なく」武田邦彦氏の主張を嘲笑うだろう。

コンピューター・シミュレーションは実験を越えられるか?という設問はコンピューター・シミュレーションの研究者にとって重いテーマである. コンピューター・シミュレーションは実現できないほどの高温でも,測定が不可能な程の高速の条件下の現象も計算することができる.


コンピューター・シミュレーションが実験を越えられるか?という設問には多くの視点からの議論が必要であるが,本論では人間の五感の作用を通じてコンピューター・シミュレーションが実験を越えうることができる可能性について論じた.

コンピュータ・シミュレーション(1) - 武田邦彦

「コンピューター・シミュレーションは実験を越えられるか?という設問」は全く無意味である。 実験で十分に事足りることなら、実験を行えば良いのであって、コンピューター・シミュレーションは必要ない。 コンピューター・シミュレーションは、検証や教育用途等をのぞいて、通常、実験ができない場合に行うものである。 実験とコンピューター・シミュレーションは、用途の違いに合わせて使い分けたり、相互に結果を補完したりするものであって、どちらが優れているかを比較するようなものではない。

仮にコンピューター・シミュレーションを行うに当たって,①我々が用いる方程式などの数学的手段に誤りが無く,②境界条件などの考慮すべき補助的数式や条件設定が対象物を正しく反映し,かつ③離散化方法など数値計算手法も正しく行われたとすると,それで得られた結果は我々がコンピューター・シミュレーションを実施する以前の対象物に対する認識と一致することであろう. 上記コンピューター・シミュレーション3条件が満たされることがコンピューター・シミュレーションの最善の経過(過程?)であるとするならば,コンピューター・シミュレーションで新規な自然科学的発見をなす可能性は極めて少ないといえる.

対象物の物理的状態や変化を書き表す数式などがそれを記述する前の知見によるのであれば,その後の正しい手続きはその知見を補強するものであっても,その知見を否定するものにならないからである. 従って,もし物理的知見に優れ,数学的手法をマスターし,ある出題に対して正確な答案を書くことのできる学生であれば,どの学生も同じ答えに到達するであろうからである.

すなわち大学の教育のように対象物においてすでに判明している科学的事象を繰り返し示し,あるいは問題を解くのと何ら変わらない研究となる. もしコンピューター・シミュレーションの研究自体がそのような内容を持つのであれば,如何に表面的に複雑で,研究している本人しか理解できないような近似方法や離散化方法を採用したとしても,それは従来の自然科学の研究とは著しく異なる概念のものであることが指摘できる.

すなわち,実験は常にこれまで考えてきたことが間違っていることを期待して行われるものであり,期待通りの結果を得ることが確実であるならば,それは一般的な概念からは研究とは言えず,単なる確認作業に他ならない.


これらのことから,我々の物体や自然に対する認識は数値で表現されたデーターによって理解され判断されるのではなく,我々の五感で物体や自然そのものを“つかみ”,その後数値的データーなどを補助的手段として理解を深めているに過ぎない.

従って,コンピューター・シミュレーションにおいても結果として数値として得られるデーターはすでにその結果が予想できるものであり,そのコンピューター・シミュレーションを実施する前における概念を越えないものである範囲において理解できる性質を本来有していることが判るのである.

コンピュータ・シミュレーション(1) - 武田邦彦


実験がしばしば実験を計画するものにとって意外な結果になることがあり,まさにその過程の中にこそ学問的な発見が含まれているといえる. 従って,実験はその中に必然的にその目的を達成しうる要素を含んでいる. これに対して,コンピュータ・シミュレーションにおいては,計画段階に於ける数式の選択,計算手段の検討,及び計算自体に全く誤りが無くても,新しい事実が発見されると言う意味で所期の目的が達成されない. むしろ,計算が数学的,物理的に正しければ,得られる結果に新しい事実は含まれていないと言える.

すなわちコンピュータ・シミュレーションにおいてはすべての過程において現在の認識から正しいと考えられる行為をなしえた場合にはその結果は計画段階で予想した範囲を超えないことが明らかとなる. 従ってその結果から新たな知見をうることはできない.


現在のコンピュータ・シミュレーションは次の2つの点から学問領域として成立するか疑わしい. その第一はコンピュータ・シミュレーションの実施手順の中に自らの錯誤を発見することが出来ないと言うことである. このことによって結果の真実性が失われ,また現在の認識を覆す新しい発見が困難であり,進歩を持って学の本質とする学問それ自体の定義に反するからである.

コンピュータ・シミュレーション(3) - 武田邦彦

「単なる確認作業に他ならない」となるのは、コンピューター・シミュレーションの持つ本質的性質ではなく、武田邦彦氏が「単なる確認作業に他ならない」コンピューター・シミュレーションしか経験していないことに他ならない。 武田邦彦氏の主張は循環論証に近い物であり、「上記コンピューター・シミュレーション3条件」が満足するなら、それが実測値と一致するのは当然のことである。 しかし、実際には「上記コンピューター・シミュレーション3条件」のうちの①が絶対に正しい保証はない。 ①が絶対に正しいなら、それこそ、武田邦彦氏が主張するように学問を行う意味はなくなる。 また、実測値と「我々がコンピューター・シミュレーションを実施する以前の対象物に対する認識」も必ずしも一致しない。 そのため、シミュレーションに何ら間違いがなくても「我々がコンピューター・シミュレーションを実施する以前の対象物に対する認識と一致すること」ことは保証されない。 あくまで、武田邦彦氏が「それで得られた結果は我々がコンピューター・シミュレーションを実施する以前の対象物に対する認識と一致する」コンピューター・シミュレーションしか経験していないだけである。 もちろん、比較的単純な計算式で答えが求まる場合は、「それで得られた結果は我々がコンピューター・シミュレーションを実施する以前の対象物に対する認識と一致する」可能性が高い。 しかし、複雑な計算式で計算する場合は、「それで得られた結果は我々がコンピューター・シミュレーションを実施する以前の対象物に対する認識と一致」しないことがある。 その場合は、当然、「上記コンピューター・シミュレーション3条件」の②③を検証することになる。 検証した結果、「上記コンピューター・シミュレーション3条件」の②③が正しく満足されているなら、①が正しくないことになる。 つまり、それにより、これまでの物理法則の誤りという「これまで考えてきたことが間違っている」ことを示す「新たな知見をうること」ができるのである。

例えば,超電導現象の発見において,従来からの知見に基づく原子配置と電子の運動を考慮したら,どんなに正確にコンピューター・シミュレーションを行っても,全体温度4℃付近で抵抗が不連続にゼロになる結果を得ることができないと考えられるからである.

コンピュータ・シミュレーション(1) - 武田邦彦

超電導現象は量子力学効果によって生じる現象であるから、それを正確にシミュレーションするには量子力学効果を組み込む必要がある。 だから、量子力学的効果を組み込まないシミュレーションで「全体温度4℃付近で抵抗が不連続にゼロになる結果を得ることができない」のは当然のことである。 これは、コンピューター・シミュレーションの問題ではなく、適用する理論の問題である。 「上記コンピューター・シミュレーション3条件」の①が誤っているのに、それを修正しないで②③を弄っても「全体温度4℃付近で抵抗が不連続にゼロになる結果を得ることができない」のは当たり前である。 尚、武田邦彦氏の科学的理解・知識で量子力学を理解するのは極めて困難であろうと予想される。

次に結果の信頼性と検証という要素について解析を行う. 本稿で最初に限定したような自然の原理を適用し,簡単には出来ない事象や未来を推定する様なコンピュータ・シミュレーションにおいて,多くの場合かなり複雑な数式を用いる. 特に学問の先端領域においては用いる数式がすでに良く知られたものであっても,計算に至るまでの境界条件に設定,近似法の選択,誤差の処理,計算手順の適否などの過程は複雑である. それらの過程はその領域での専門家でないと正否や適否を判断することが難しいし,対象とする物理的事象と数値計算の手法を取り扱う学問分野が異なることも少なくない. このような状況の下で,計算過程のいずれかで数学的,物理的な間違いを犯した場合,得られた結果において正否の判断が可能であるとすることはできない.

上記の様な本質的な過程ではなく,単純なプログラミングやビジュアリゼーションの段階で間違いは起こりうるし,現実にも頻繁に間違うことを我々は経験として知っている. 基礎的に採用する数式からプログラミングに至る総ての過程を第三者がチェックをするのは困難である. コンピュータ・シミュレーションの学術的な報告において「計算結果は満足すべきであった」とされる場合でも実験に於ける「追試」に当たる「追計算」に多くの人が関心を持たないことも事実である. それはコンピュータ・シミュレーションが実験と異なり,「自然に真実を聞く」という内在的な目的を持っていないことに起因すると考えられる.

実験結果の信頼性はその結果が自然から与えられることから,常に答えが同一である. 従って,仮にある実験が誤りを含んでいる場合,比較的早期にその間違いが発見されることが多い. 実験の場合「第三者が追試が出来るように実験項を記載する」という学術論文の記載方針を現実に守った場合,実験項の分量は通常1ページにも満たない記述になる.

これに対してコンピュータ・シミュレーションの場合には,第三者が同じ計算をしようとする場合,学術論文から基礎的な数式と近似方法に関する方針を理解することが出来るに止まり,プログラミングはもとよりコンピュータ・シミュレーションの詳細を検証することはできない. しかし,この問題はコンピュータ・シミュレーションに内在する基本的な欠陥ではなく,コンピュータ・シミュレーションの学術論文を,その持つ特徴を十分に吟味せずに伝統的な学術論文の形式の中に含ませているという便宜的な手法の中に存在する. コンピュータ・シミュレーションの持つ学問としての特徴を吟味し,それに適合した検証手段を考案する必要もある.


第二にコンピュータ・シミュレーションの結果を第三者が容易に検証できないという理由からである. また,このコンピュータ・シミュレーションの社会的意義としては,学問的な衣を着ていながら実際には学問的な厳密性を保っていないにも関わらず,社会が学問的厳密性をもって結果を提供していると考えていることから,その意義は低いと結論される.

コンピュータ・シミュレーション(3) - 武田邦彦

この記述から、武田邦彦氏には「簡単には出来ない事象や未来を推定する様なコンピュータ・シミュレーション」の経験が全くないことがわかる。 どうやら、武田邦彦氏は、コンピュータ・シミュレーションを設計・製造し、計算して終わりだと思っているらしい。 この途中の重要かつ膨大な検証過程がスッポリ抜け落ちているから、武田邦彦氏は「得られた結果において正否の判断が可能であるとすることはできない」と誤認しているのである。 通常、「簡単には出来ない事象や未来を推定する様なコンピュータ・シミュレーション」を行う場合、「基礎的に採用する数式からプログラミング」の検証だけでなく、計算結果の検証も行うのである。 もちろん、未来の事象等は検証できない。 しかし、過去と未来に同じ物理法則が適用されるなら、過去のデータを入れることでシミュレーションが正しい結果を出力するかどうかを検証することはできる。 過去のデータを使った検証を否定するなら、それは、コンピュータ・シミュレーション以外にも波及する。 過去の法則と未来の法則が一致するなら、過去のデータを使ってコンピュータ・シミュレーションの検証ができるはずである。 言い換えると、過去のデータを使ってコンピュータ・シミュレーションの検証ができないなら、それは、過去の法則と未来の法則が一致しないことを意味する。 法則を立てることは別に科学に限ったことではない。 過去の法則が未来の法則と一致しないと疑うなら、あらゆる学問における法則が意味をなくす。 というのも、法則とは、過去の経験をもとにして導いた、未来を予測する方法だからである。 法則が意味を持たないなら、学問において法則を導くことは意味がないことにある。 そうなると、過去の経験から未来を予測することは不可能となり、おそらく、全ての学問が無に帰すだろう。 「簡単には出来ない事象」を目的としていても、それに簡単にできる事象のデータを入れることでシミュレーションが正しい結果を出力するかどうかを検証することはできる。 考えうるありとあらゆるデータを入力して、矛盾する出力が出てこないかの検証は可能なのである。 そうした膨大な検証に耐えたものだけが「簡単には出来ない事象や未来を推定する様なコンピュータ・シミュレーション」として実用的に使えるのである。

シミュレーションの第一の関門は「人間の間違い」が計算に入るからだ。 どんなに優れた研究チームでもシミュレーションには間違いがつきもので、しょっちゅう、研究室の中では「これ少しおかしいんじゃないか?」という会話が交わされる。

これは現在のコンピュータ言語が必ずしも人間の思考と合っていないことによっておこることである。

シミュレーションでは未来を予想できない - 武田邦彦

「『人間の間違い』が計算に入る」があるからこそ、シミュレーションでは検証作業が重要なのである。 その検証作業をしないで良いと思っているところが武田邦彦氏の事実誤認である。 尚、「シミュレーションには間違い」が起きる原因は様々であり、一概に「現在のコンピュータ言語が必ずしも人間の思考と合っていないこと」が原因だとは言えない

この第一の関門をくぐると、次に「最新の学説を正しく理解しているか」が問題になる。

シミュレーションをするときには、まずそこで使う式を確定し、定数や必要な変数を組み込む必要がある。 まったく古い学問ですべてが確定している場合は別にして、最新の研究では学説が分かれたり、必ず「まだ解明されていない」というところが入る。 これをどのように処理するかだ。

たとえば、温暖化では二酸化炭素の拡散速度、気流のかく乱、海水表面と熱と二酸化炭素のやりとり・・・と無数の検討項目がある。 その一つでも違うと100年もの間の推定をするときに、誤差が拡大して意味のない結果がでる。

シミュレーションの恐ろしいところは「間違っていても答えが出る」ということであり、まして将来のことは「検証できない」という問題点もある。 だから、温暖化では古生代からの歴史、人類の3000年間の気温などを正確に説明できることを最初に示さないと意味がない。

シミュレーションでは未来を予想できない - 武田邦彦

「間違っていても答えが出る」のは事実であるが、既に説明した通り、「検証できない」は武田邦彦氏の創作である。 実際に、気候シミュレーションでは膨大な検証がされている。 暑いだけじゃない地球温暖化2-世界の気候モデルが予測する東アジアと日本の雨- - 東京大学大気海洋研究所P.20に記載されている通り、地球温暖化の予測に使われるCMIP5モデルは長期的気候のシミュレーションだけでなく短期的気象のシミュレーションにも使える。 だから、過去の気候現象や気象現象のデータを投入して、シミュレーションの検証が行えるのである。 もちろん、「古生代からの歴史、人類の3000年間の気温などを正確に説明できる」ことは真っ先にシミュレーションで確認されていることである。 また、ココが知りたい温暖化Q17気候のシミュレーションモデルはどんな結果でも出せる? - 国立環境研究所地球環境研究センターに記載されている通り、「無数の検討項目」の値を変更した気候モデルの「変種」も多数作られており、それにより結果がどの程度変化するかも確認されている。 このように、武田邦彦氏の指摘する懸念事項などとっくに解決済みなのである。

さらに第三の関門は、 「気象学は今後、研究テーマがないのか?」 ということにこたえる必要がある。

普通は学問は対象を完全に理解することはできない。 気象学や物質循環、熱伝導などでも多数の未知の部分がある。 たとえば「従来の学説とはまったく異なる新しい台風の発生メカニズムが明らかになった」などということがあるが、これは学問が進歩するということを意味している。

シミュレーションは「現在の学問で分かっているところだけを算入できる」ということであり、よほどの場合を除いて、それが100年も続くことはない。

だから、簡単にこの矛盾を表現すると、 「もし、シミュレーションで100年後の気候がわかるなら、気象研究は中止する」 ということになる。

つまり、気象研究をするのは気象にかかわる現象で未知の部分があるからであり、それが全部分かっているなら研究費はいらない。 そして、もし未知の部分があるならシミュレーションの結果は間違っている

シミュレーションでは未来を予想できない - 武田邦彦

これは二極論を用いた詭弁である。

  • 全くわかっていない
  • 完全にわかっている

実際には、ある程度分かっている状況があるが、武田邦彦氏はそれを考慮していない。 例えば、100年後の気温が±0.5℃の範囲で予測できるなら、±0.5℃の誤差を生む「未知の部分」が存在するが、「シミュレーションの結果は間違っている」とは言えない。 「未知の部分」があるなら、研究テーマがなくなるわけではない。 そして、実用的な誤差で予測できるなら、シミュレーションを行うことにも意味がある。 武田邦彦氏の主張は、笑い話としては面白いが、真面目に聞くと馬鹿馬鹿しいだけである。

今、温暖化で示されている結果はトリックなのである。

また、「100年後」という設定は実に奇妙である。 100年後は誰も生きていない。 だから100年後の状態を発表して、どんなに間違っていても問題はない。

なぜ、1年後、2年後の予測をしないのだろうか? すでに北極の氷が明確に少なくなっており、世界で異常気象が多発しているというのだから、現状を示すことができるはずである。

シミュレーションでは未来を予想できない - 武田邦彦

これまで説明してきたとおり「トリック」は武田邦彦氏の主張の方である。 確かに、「100年後の状態を発表して、どんなに間違っていても」「100年後は誰も生きていない」ので誤魔化しは効く。 しかし、そのことは「100年後」のシミュレーションの信頼性とは何の関係もない。 論点とすべきことは、シミュレーションが検証されているどうかと、その検証結果である。 「100年後」云々は、その論点をごまかす詭弁に過ぎない。 尚、中短期の予測は天気予報 - 気象庁長期予報 - 気象庁で活用されている。 「2年後の予測」は、カオス現象の影響が大きくなるので結果を公表する意味はないが、計算されていないわけではない。

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